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「自動運転」が拓く巨大市場
2020年に本格化するスマートモビリティビジネスの行方

定価(税込)  1,980円

編著
サイズ A5判
ページ数 176頁
ISBNコード 978-4-526-07178-2
コード C3034
発行月 2013年12月
ジャンル ビジネス

内容

車輛制御、電気自動車、IT通信などの要素技術を活用することで、高度運転支援や全自動運転の世界が実現しつつある。こうした革新技術により自動車の新市場を創造する可能性を示すとともに、具体像の見えてきたスマートモビリティビジネスの展開例を追う。

井熊 均  著者プロフィール

(いくま ひとし)

株式会社日本総合研究所

執行役員創発戦略センター所長

1958年東京都生まれ。1981早稲田大学理工学部機械工学科卒業、1983年同大学院理工学研究科を修了。1983年三菱重工業株式会社入社。1990年株式会社日本総合研究所入社。1995年株式会社アイエスブイ・ジャパン取締役。2003年株式会社イーキュービック取締役。2003年早稲田大学大学院公共経営研究科非常勤講師。2006年株式会社日本総合研究所執行役員。

環境エネルギー分野でのベンチャービジネス、公共分野におけるPFlなどの事業、中国・東南アジアにおけるスマートシティ事業の立ち上げなどに関わり、新たな事業スキームを提案。公共団体、民間企業に対するアドバイスを実施。公共政策、環境、エネルギー、農業などの分野で50冊を超える書籍を刊行するとともに政策提言を行う。

目次

はじめに

第1章 進化を続ける自動車技術
1 極限を目指すエンジン
・日本で甦ったアメリカの排ガス規制
・排ガス規制から高性能エンジンへ
・市販化されるスーパーカーの性能
・パワーと効率性を両立したハイブリッド
・ダウンサイジングで極まる性能と効率性
・先進システムの長短
2 持続性を支えるエコカー 
・普及可能性が問われるバイオエタノール
・新型バイオ燃料と水素自動車の可能性
・究極の燃費を実現するプラグイン・ハイブリッド車
・期待が続く電気自動車
・新たなビジネスモデルへの期待
・究極のエコカー燃料電池自動車
3 快適さと安全性を革新する制御技術 
・快適性高まる居住空間
・ネットと一体化する情報通信技術
・利便性と精緻さを極める日本版GPS
・建機で先行する自動運転
・車両制御技術が実現する究極の安全性
・交通事故ゼロを目指して
4 革新技術の挫折
・期待外れの電気自動車
・電気自動車に立ちふさがる電池の壁
・ハイブリッド車の成長
・電気自動車の普及阻む要素
・燃料電池自動車の可能性
・バイオ燃料車の可能性
・IT化の行方
・問われる社会インフラとの接続性
・自動運転を阻む人間心理の壁

第2章 自動車市場の成長を止めた4つの要因
1 要因1:郊外化の終焉
・なぜ、「小型車」が売れなくなったのか?
・底堅い小型の自動車の人気
・セダンが選ばれなくなった理由
・実用性で自動車が選ばれる時代
・郊外化の終焉と都心回帰
・郊外化終焉後も残ったトレンド
・実用性重視のトレンドの先にあるもの
2 要因2:公共交通の魅力の向上
・車両設計の改善による快適さの向上
・コスト競争力の向上
・都市構造の進化
・心理的不安を和らげるネットワーク技術
・モバイル端末が革新した利便性
3 要因3:社会的投資力の低下
・日本の成長を支えたインフラの先行投資
・チャンギ空港の投資に勝ったシンガポール
・先行投資を支えたビジョンと危機感
・先行投資を呪縛する財政悪化
・公共事業肥大化のトラウマ
・財務評価の限界
・未来に向けた投資を実行するために
4 要因4:相対的な魅力低下
・都会の生活に負けた郊外のマイカー生活
・不可逆の社会トレンド
・10兆円市場を生み出した携帯電話
・財布の奪い合いに勝ったスマートフォン
・喜びを提供できなかった自動車
・アジアに見る将来の自動車市場
・復活する日本の自動車会社

第3章 モバイルサービスで移動需要をつかめ
1 革新技術の普及を止めるもの
・革新技術が目白押しでも成長しない市場
・移動の常識を変えた自動車
・ガソリン車の代替が問題の根源
・水素社会はいつ来るか
・エコカーインフラの二重投資問題
・一気に普及した車両制御技術
2 新たな市場への取り組み
・目白押しの自動運転支援政策
・モビリティサービスを目指す民間企業
・モビリティサービスを活かして事業を拡大する民間企業
・コミュニティモビリティを目指す自治体の取り組み
・モビリティサービスの立ち上げを目指す官民協働体
3 公共交通と自動車の狭間の新たな市場
・公共交通でも自家用車でも満たされない「移動のニーズ」
・埋もれている移動のニーズ
・市場を拓く自動運転技術
・移動の需要を掘り起こすことで生まれる新たな市場
・ガソリン車成功の呪縛からの脱却
4 自動車市場を左右するシステム・サポーター
・自動運転をサポートするのは誰か
・影響力を持つシステム・サポーター
・活路となるコミュニティ・モビリティサービス
・コミュニティ・モビリティサービスのビジネスモデル
・サービス化する自動車ビジネス
・誰がコミュニティ・モビリティサービス事業を担うか
・自動運転時代の勝利のシナリオ
・オリンピックをマイルストーンに
・サプライズ・コンテンツの筆頭に

第4章 モビリティサービスが生み出す新ビジネス
1 2025年のモビリティ産業ビジョン
・革新技術普及のためのクラスターモデル
・課題が強みに変わる電気自動車
・地域のエネルギー資源を活かす燃料電池自動車
・広域軸を支えるハイブリッド
・顧客ターゲットを定める
・拡大する需要を取り込む
2 モビリティサービスが生み出すビジネス機会
・コミュニティ・モビリティサービスで生まれるビジネス機会
・システム・サポーターを狙え
・自動車分野でのビッグデータビジネス
・システム&データマネジメントサービス
・システム&データマネジメントサービスの担い手
・自動運転はどこまで受け入れられるか
3 モビリティサービスで活力を増す地域経済
・コミュニティ・モビリティサービスのモチベーション
・地域振興策としてのコミュニティ・モビリティサービス
・地域主導のシステム・サポーター
・コミュニティ・モビリティサービスの派生効果
4 モビリティサービスの展開戦略
・モビリティサービスで先行するための2つの戦略視点
・特区を輸出する
・コミュニティ・モビリティサービスのインフラ輸出
・システム&データマネジメントサービスの普及戦略
・戦略ビジネスとしての視点

はじめに

現在、自動車分野で最も注目されている技術は環境技術である、と言って差し支えあるまい。ハイブリッド車、プラグイン・ハイブリッド車、電気自動車、燃料電池自動車などの言葉が新聞紙面に登場しない日は1日もない、といってもいいからだ。エコカーの大きな流れの中で、ハイブリッド車で先行した日本の自動車会社はグローバル市場をリードしている。その一方で、ここのところ顕著になっているのが制御技術への関心の高まりだ。衝突防止システムなどの商品化が加速的に進み、グーグル、トヨタ自動車などによる自動運転走行が注目されるようになっている。

 考えてみると、エコカーが注目を獲得する傍らで、自動車の制御システムは環境技術と同等ないしはそれ以上の勢いで進化してきたことに気がつく。ABSなどに始まった車両制御技術は今や至るところで自動車の安全な運行を支えているし、エンジンも制御システムによって大幅に性能を高めた。そもそも、日本が得意とするハイブリッドシステムも制御システムの賜物である。ここ1、2年の制御システムへの関心の高まりは、自動車の隅々まで行きわたった制御システムの価値が、いよいよ舞台裏から表舞台に姿を現したと捉えることもできる。

 自動運転を頂点とする高度な制御技術は、交通事故や環境問題など自動車に関わる様々な問題を解決、ないし軽減する可能性を秘めている。本書では、それに加えて、公共交通が発達し、自動車離れが進む中で自動車業界に新たな市場を拓き、競争と合従連衡の軸を創り出す潜在力を持っているとした。その上で、自動運転を単体の技術と捉えるのではなく、システムやサービスとして育て上げることが重要である、という点が本書の主張するところである。



 本書は4章構成とした。第1章では自動産業が様々な技術革新を抱え、新たな発展の淵にいることを示し、第2章では自動車離れを起こした不可逆的な社会的要因を考えた。自動運転という革新技術を新たな発展につなげるためには、まずは自動車が置かれた位置づけを捉えることが必要と考えたからだ。その上で、第3章では日本が世界に先駆けて自動運転を社会システムとして実装するためのロードマップを示し、第4章ではそれを日本の強みとするための戦略について述べた。本書が、自動運転を頂点とする高度な制御技術の市場を拓くために、多少なりとも参考になることがあれば筆者として望外の幸せである。



 本書については、企画段階から株式会社日刊工業新聞社の奥村功様、矢島俊克様にお世話になった。この場を借りて厚く御礼申し上げたい。本書の執筆に当たっては、株式会社日本総合研究所の木通秀樹さん、井上岳一さん、赤石和幸さん、武藤一浩さん、宮内洋宣さん、浅井康太さんに一部を担当していただいた。また、筆者が担当した部分については、株式会社日本総合研究所の小幡京加さんに調査で協力いただき、助言も頂いた。多忙の中、調査、執筆に当たって頂いたことに厚く御礼申し上げる。

 最後に、筆者の日頃の活動にご支援、ご指導を頂いている株式会社日本総合研究所に厚く御礼申し上げる。



2013年 師走

井熊 均

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