内容
3DCADや3Dプリンタなど普及に伴い、デジタルデータを利用したモノづくり(デジタルファブリケーション)が個人レベルでも比較的手軽にできるようになっている。「自らが必要なモノを自らで作る」というムーブメントが起きている。本書は、3DCADを利用した3Dモデリング、今話題の3Dプリンタの原理や使い方、さらには低コストでできる3Dプリンタの自作までをわかりやすく紹介する。
門田和雄 著者プロフィール
(かどた かずお)
博士(工学)
1968年 横浜市生まれ
東京学芸大学教育学部技術科卒業
東京学芸大学大学院教育学研究科
技術教育専攻(修士課程)修了 教育学修士
東京工業大学大学院総合理工学研究科
メカノマイクロ工学専攻(博士課程)修了 博士(工学)
現在、 東京工業大学附属科学技術高等学校 機械システム分野教諭
慶應義塾大学教職課程センター 工業科教育法非常勤講師
ファブラボ関内 ディレクター
機械技術教育の実践と研究を活動の柱として、機械やロボットに関するさまざまな研究活動に取り組んでいる。2011年よりFabLab Japan Networkの活動に加わり、デジタル・ファブリケーションにも活動の範囲を広げている。
著書
「FABに何が可能か-つくりながら生きる-」フィルムアート社(編著書)
「実践Fabプロジェクトノート」グラフィックス社(編著書)
「基礎から学ぶ機械設計」SoftBankCreative、サイエンス・アイ新書
「トコトンやさしい歯車の本」日刊工業新聞社
「トコトンやさしい制御の本」日刊工業新聞社
「トコトンやさしいねじの本」日刊工業新聞社
「絵とき『ロボット工学』基礎のきそ」日刊工業新聞社
「絵とき『ねじ』基礎のきそ」日刊工業新聞社
「絵とき『機械要素』基礎のきそ」日刊工業新聞社
など多数
目次
はじめに
【巻頭グラビア】
3Dプリンタがわかる
3Dプリンタを使う
3Dデータを作る
3Dプリンタを作る
第1章 3Dプリンタがわかる
1-1 3Dプリンタの活用
(1)2Dプリンタと3Dプリンタ
(2)何を3Dプリンタするのか
①製造業
②教育
③医療
④建築
⑤食品
1-2 3Dプリンタの原理
(1)光造形法
(2)粉末積層法
①粉末積層固着法
②粉末積層焼結法
(3)インクジェット法
(4)熱溶解積層法(FDM法)
第2章 3Dプリンタを使う
2-1 3Dプリンタの構造
(1)材料
①ABS樹脂
②PLA樹脂
(2)部品
①ステッピングモータ
②歯付きベルト
③ねじ
④全ねじ
⑤エクストルーダ
⑥ホットエンド
⑦フレーム
(3)制御ボード
2-2 3Dプリンタをセットアップ
①Replicator
②Replicator2
2-3 3Dデータの転送
(1)3Dデータの種類
(2)3Dデータの編集
(3)3Dデータを転送する
2-4 3Dデータの出力
(1)部品を組み合わせた3D出力
(2)機械要素の3D出力
2-5 3Dデータへの期待
(1)積層する雰囲気の温度管理
(2)エクストルーダの最適設計
(3)材料不均一性の影響
(4)加工時間の迅速化
第3章 3Dデータを作る
3-1 3Dデータの作り方
(1)3DCG
①Metasequoia(メタセコイア)
②Blender(ブレンダー)
③Shade(シェード)
(2)3DCAD
①SolidWorks(ソリッドワークス)
②Autodesk123D Design
③Rhinoceros(ライノセラス)
(3)3Dスキャナ
3-2 3DCGを使う
(1)メタセコイアの基本動作
①軸方向への図形の移動
②軸方向への図形の拡大・縮小
③軸まわりの図形の回転
(2)メタセコイアによるオブジェクト作成
3-3 3DCADを使う
(1)SolidWorksの概要
①図面の種類
②図面の構成
(2)SolidWorksの基本操作
(3)機械要素の出力
①歯車
②ねじ
3-4 3Dスキャナを使う
(1)3Dスキャナの概要
(2)3Dスキャナによるオブジェクト作成
第4章 3Dプリンタを作る
4-1 3Dプリンタの自作
4-2 標準型3Dプリンタを作る
(1)機械設計
(2)回路設計
(3)ソフトウェア
4-3 デルタ型3Dプリンタを作る
(1)デルタ型3Dプリンタとは
(2)デルタ型3Dプリンタの自作
4-4 フィラメント製造機を作る
(1)フィラメント製造機とは
(2)フィラメント製造機の自作
コラム
3Dプリンタを発明したのは日本人
3Dプリンタと教育
世界に広がり、つながるFabLab
フィラメント台
目に見えない「極小物質」分子を手に持てる時代
あとがき
はじめに
近年、FABやFabLab、MAKERSなど、モノづくりをする人や施設、またモノづくり活動自体に注目した言葉がムーブメントとして語られる機会が増えています。その中でも、3Dプリンタやレーザ加工機などの工作機械を活用したモノづくりは、デジタル・ファブケーションという言葉とともに注目されています。
このような一種のブームの中で、「3Dプリンタがあれば、工場なしでものが作れる!」「金型が不要になり、新たな産業革命が起きる!」などという文言を見かけることも増えていますが、実際のモノづくりはコンピュータをワンクリックするだけで何でもできるようなことはなく、いくらデジタル技術を活用したとしても、モノづくりを行うデジタルデータをどのように作成するのか、モノづくりの精度や加工時間はどうなのかなど、検討しなければならないことは数多くあります。
日本国内の製造業離れが進む中で、これまでモノづくりにそれほど関心を示さなかった人々がこのムーブメントの中で、自分だけのオリジナルのモノづくりをしたり、大企業に所属することなく、比較的少量生産で個人工場的な活動をする人々が増えることは興味深いことです。一方で、3Dプリンタがあれば何でも作れるというような報道などを見聞きすると、モノづくりの実際を的確に反映しているとは思えず、残念に思うこともあります。
3Dプリンタは材料を加工して、何らかの付加価値のある形状を生み出す工作機械の一種であり、洗濯機や冷蔵庫などの一般的な家電製品とは異なります。すなわち、スイッチを押すだけで、何でも作ってくれるという魔法の箱ではなく、加工データに基づいて加工を行う工作機械なのです。また、加工データをどのように作るかという課題もあり、現時点では比較的安価な3Dプリンタを導入すれば、どんな形状でも一発で作ることができるというわけではありません。
それでも、3Dプリンタの登場が広く市民のモノづくりへの情熱を高めていることは確かなことであり、今後、他のデジタル・ファブリケーション機材の普及とともに、さらなる技術開発が進展することにより、モノづくりを広く市民に開放することができる可能性は大いにあります。本書を通じて、3Dプリンタがわかる、使う、作るということの基本事項を身につけていただければ幸いです。
2013年10月
門田和雄