内容
多くのモノづくり企業がカイゼン活動に取り組んではいるものの、意図するほど成果を上げていない例が少なくない。それは現場改善のポイントを押さえていないからだ。本書はモノづくりの盲点を7つに分け、それらから生じる錯覚や誤解を具体例を交えて解説したもの。停滞したカイゼン活動を打破するための決定版。
近江堅一 著者プロフィール
(おうみ けんいち)
1937年 東京に生まれる。
1962年 日本大学理工学部電気科卒業。
大手電気メーカ一入社。32年間工場管理に従事。この問、トヨタ生産方式の真の実践者より7年間(月1回)現場指導を受ける。およびデミング賞審査員より15年間方針管理(TQM)の指導を受ける。これをベースに工場改善を重ねFL法(中小メーカ一向けトヨタ生産方式)を確立し、協力会社(15社)に適用し、FL法の経済効果を確認し、独立を決意した。
生産効率化推進部長、工場長、品質管理部長歴任。
1994年 近江技術士事務所設立。
生産コンサルタントとして工場改善指導に従事。
・中小メーカ一生産性指導 180社
・方針管理(TQM)指導 40社
・ISO9001認証取得指導 35社
・ISO9001審査 398回(617日)
・QC サークル指導 50社
資 格 ・技術士(経営工学)
・ISO9001主任審査員
近江良和 著者プロフィール
(おうみ よしかず)
1974年 広島に生まれる。
1997年 日本大学理工学部数学科卒業。
大手コンピュータシステム開発会社、翻訳サービス会社で、12年間英語ソフトウェアの日本版製作に従事する。
2009年 近江技術士事務所入所。
生産性向上(FL法)指導、公的機関における経営支援やセミナー講演に従事する。
資 格 ・中小企業診断士
近江技術士事務所
ホームページ http://www.omi-con.com
Eメール info@omi-con.com
目次
はじめに
第1章 社内不良を減らすとクレーム減になるという盲点に気づけ!
1-01 クレームは管理者の責任なり
1-02 顧客は流出原因に強い関心あり
1-03 クレームは工場長自身が謝りに行け
1-04 なぜ、予防処置は少ないのか
1-05 いきなり不良原因を追求するな
1-06 不良は時系列で顔をとらえよ
1-07 ダブル検査をやめなさい
1-08 検査ボックスで検査力向上を図れ
1-09 クレームを撲滅する方法を知れ
1-10 検査の標準時間と品質保証の関係を知れ
1-11 平均値で考えるな
1-12 QCサークルのマンネリ化を打破せよ
1-13 品質関係者はQC手法より製造条件を勉強せよ
1-14 外注依頼の受入検査をやめよ
1-15 抜取り検査の意味を考えよ
1-16 品質は工程でつくり込め
1-17 完成品検査規格は顧客仕様書からつくれ
第2章 生産性向上を阻害する決定的な盲点に気づけ!
2-01 多品種生産において「かんばん方式」をやめろ
2-02 5Sでは生産性は向上しない
2-03 「エアーカット」はお金を生まない
2-04 1日改善会の改善道場を知らない盲点に気づけ
2-05 段取回数をどんどん増やせ
2-06 機械はどんどん止めよ
2-07 稼働率は下げ、可動率を上げよ
2-08 現場には納期を教えるな!
2-09 日産計画はJITの具現化であり、かつ作業者のやる気を引き出す
2-10 問題発生の瞬間を見たか
2-11 横工程持ち責任を縦工程持ち責任にする
第3章 「徹底したムダとり」に潜む盲点に気づけ!
3-01 目標を決めないムダとりは効率が悪い
3-02 目で気づくムダはいくらとっても生産性向上に響かない
3-03 工程のネックを知らない管理者のムダをどうとるか
3-04 「物申す」されていないムダをとろう
3-05 タクトタイムを知らないムダをとれ
3-06 1個流しを実践しないムダをとれ
3-07 偶然設計をしないムダに気づけ
3-08 工場改革は自力でできると考えるムダ
3-09 なぜ、錯覚を見破れないか
第4章 監督者がラインにいる盲点に気づけ!
4-01 監督者はなぜラインから離れられないか
4-02 監督者は作業者の作業進捗管理をせよ
4-03 監督者は品質を自工程でつくり込め
4-04 今の監督者は技能の教え方を知らない
4-05 監督者になりたくない作業者、課長になりたくない監督者
第5章 管理者の硬い思考の盲点に気づけ!
5-01 管理者はパソコンを使うな!
5-02 安い外注はコストアップさせる!
5-03 管理者は価値ある瞬間を持て
5-04 購買担当者は3年以上させるな
5-05 納期遅れ、クレーム、社内不良は今の仕事のやり方の結果
5-06 資材倉庫はなぜ満杯になるのか
5-07 死亡診断書のデータをとるな
5-08 なぜ深い観察ができないか
5-09 平均値人間から脱皮せよ
5-10 挫折を活かせ
5-11 計測器校正費は半減になる
5-12 改善時間をつくれ
5-13 在庫があれば管理者はいらない
5-14 セールスポイントをなぜあげられないのか
5-15 命がけで改善しないムダに気づけ
第6章 総合リードタイム短縮の価値を知らない盲点に気づけ!
6-01 モノづくりの全体最適は総合リードタイム短縮にあり
6-02 総合リードタイム短縮の価値を知れ
6-03 リードタイム短縮の視点から製造条件を見直せ
6-04 運搬回数はどんどん増やせ
6-05 リードタイムを短縮するとなぜ生産性が上がるか
6-06 月末の製品在庫を減らす活動をやめよ
第7章 形骸化したISO9001の盲点を事例から気づけ!
7-01 低い目標は立てないほうがまし
7-02 高い目標は目標展開せよ
7-03 なぜ「品質」に限定し「経営」ととらえないのか
7-04 ISO9001はTQMの一手段と知れ
7-05 なぜ、定期審査が近づくとガタガタと準備をするのか
7-06 遵守性確認の内部監査はやめなさい
7-07 方針管理の欠点は目標未達にあり
7-08 不良原因を検証せよ
7-09 ISO9001QMS構築時にクレーム撲滅と生産性向上を図れ
はじめに
最近、中小メーカーは儲からないモノづくりを一生懸命やって、赤字になっています。それは、モノづくりの本質や盲点に気づいていないからです。間違いだらけのモノづくりをしてしまっているのです。これは、生産コンサルティングを20年間行い、180社を指導した経験から得た実感です。
現在、顧客は値引き要望と短納期要望が強く、値引きは3~8%、2週間の納期を1週間にすることを要求しています。場合によっては、翌日出荷という要求もあります。中小メーカーは、このような状況にあって何もしないでは生き残れません。今、やっているモノづくりを根本的に変えなければならないのです。モノづくりの盲点に気づかずに、錯覚したモノづくりに邁進していてはダメなのです。
中小メーカーでは、社内不良とクレームの関係、ムダとりの間違い、管理者・監督者が行うべきこと、ISO9001の認識などに多くの盲点が潜んでいます。本書では、この盲点に気づいて、工場改革を進める術を紹介しています。
本書を読み終えたら、まず自社の生産性向上(25%)や生産リードタイム半減という目標に挑戦しましょう。この達成のための改善を通じて「改善力ある人づくり」を実現していくのです。そうして、管理者の意識改革から工場改革へと進めていきましょう。これが実現すれば、本書をしたためた望外の喜びとなります。
2013年7月
近江 堅一