内容
モノづくり現場では、何かとトラブルに見舞われている。そのトラブルの再発防止策を講じられるようにするのが「なぜなぜ分析」で、トラブルの発生を未然に防ぐようにするのが「変更管理」。本書は、そのなぜなぜ分析と変更管理をわかりやすく解説したもので、再発防止から未然防止につなげていく改善の大きな手がかりを提供してくれる現場改善の実務書。
市川享司 著者プロフィール
(いちかわ きょうじ)
1938年群馬県前橋市生まれ。元 日産自動車(株)本社品質管理部課長。
現在パワーアップ研究所所長
品質管理士,産業技術監査士,企業コンサルタント,開発工学技術士,教育訓練指導員,創造性技法インストラクター,QCサークル上級指導士,QCサークル関東支部京浜地区顧問。
現在は,TQM,方針管理,CS,現場の管理・改善,ヒューマンエラーと防止策,儲かる5Sとムダ取り,QCサークル活動(小集団改善活動),問題解決・課題達成・施策実行活動とQC手法,創造性技法などの国内外のコンサルティング活動,ならびに日科技連の各種セミナー講師を通して,TQM,品質管理,現場の管理・改善,QCサークル活動の普及,発展に努めている。
●最近の主な著書
・なぜなぜ分析による「トラブル防止の仕組みづくり」(上・下巻),儲かる5Sによる収益改善 日本技能教育開発センター
・これで安心!「QCサークル活動の進め方」 日本技能教育開発センター
・人間力・現場力を高めるワンポイント講座 日科技連出版社
・図解・基礎からわかる品質管理,図解・基礎からわかるQC七つ道具 ナツメ社
●表 彰
日本品質管理学会 品質管理功労賞(2001年度 第1回)受賞
大勝靖一賞(工学院大学名誉教授 元 工学院大学専門学校校長)受賞(2011年)
目次
はじめに
第1章 悪さを排除する「問題解決」と良さを創造する「課題達成」
1.1 問題解決とは,課題達成とは
1.2 職場の6大任務とは
1.3 問題が見えない職場と見える職場の違い
1.4 3現,3即,3徹とは
1.5 標準化活動(ポカミス発生の例)
練習問題と解答
コラム:管理・監督者(リーダー)の心がまえ
第2章 なぜなぜ分析とは
2.1 論理的な問題解決方法のポイント
2.2 要因の解析(5M1EIによる比較)
2.3 なぜなぜ分析の考え方
2.4 事実を的確に捉える
2.5 再発防止対策から水平展開へ
2.6 慢性的な不具合は,なぜなぜ分析には向かない
2.7 特性要因図,連関図を「なぜなぜ分析」には推奨しない理由
2.8 上手ななぜなぜ分析の進め方
練習問題と解答
コラム:品質の品は口が3つ,口やかましく言って品質向上を
第3章 なぜなぜ分析を効果的に活用する
3.1 系統図によるなぜなぜ分析
3.2 良い事例と悪い事例
3.3 作業者(担当者)に見られる「ポカミス」とその対策案
3.4 なぜなぜ分析のまとめ
練習問題と回答
コラム:3Cを徹底させる戒めの言葉
第4章 変更管理とは
4.1 変更管理(変化点管理)とは
4.2 3H1Tと要因との関係
4.3 5M1EIの変更管理
4.4 異常時の変更管理
4.5 処置,対策での使用禁止8つのポイント
練習問題と回答
コラム:自分は誰のために仕事をするのか?
第5章 不適合品を「つくらない」,「送らない」仕組みづくり
5.1 不適合品を「つくらない」,「送らない」
5.2 製造工程の管理とは
5.3 人事管理
5.4 機械・設備の管理
5.5 材料・部品の管理
5.6 作業方法の管理
5.7 計測管理
練習問題と解答
コラム:社内教育に力を入れよう
第6章 安定した製品品質を確保するための工程管理
6.1 工程管理とは何か
6.2 変更管理の問題点と具体的な推進方法
6.3 変更管理の内容の決定
6.4 管理基準と処置方法の決定
6.5 変更管理板(ボード)の活用
6.6 工程変更管理の目的と実施
練習問題と回答
コラム:仕事とは「業務+改善」である
第7章 工程変更の管理レベルと進め方
7.1 工程変更管理の各レベルと手続き
7.2 レベルごとのフロー
7.3 試行の押さえどころ
7.4 各レベルで使用する各種使用書式
コラム:生まれの良い品質は,育ちが良い
第8章 変更管理を展開して自工程保証を達成する
8.1 製造現場における日常管理
8.2 変化の読み取り方
8.3 変更管理(変化点管理)の必要性
8.4 日常での工程変更管理
8.5 変更管理(変化点管理)の基本
8.6 変更管理(変化点管理)の手順と展開
8.7 変更管理の改善
8.8 標準作業について
練習問題と解答
コラム:わかる・できる・変わることをわきまえ,実践する
第9章 実践して成果をあげるためのQ&A
Q&A(1)職場の体質をどのように変えていけばよいのか
Q&A(2)品質トラブル発生の対策として「チェックシート(リスト)で確認する」という内容を多く見聞するが、これでよいのか
Q&A(3)改善テーマが決まると,まず対策案や原因を考えてしまう。そのようなやり方でよいのか
Q&A(4)派遣社員は,どのように活用し、教育・訓練すればよいのか
Q&A(5)やる気のある生産現場を実現するためにどうすればよいのか
Q&A(6)改善を進めるための経営者,管理者の役割とは
コラム:これまでの「5S」とこれからの「儲かる5S」
巻末資料:品質管理関係用語集
引用・参考文献
はじめに
みなさんは仕事をするにあたって,「どうしてこのような問題が起こるのか?」,「なぜ売上げが伸びないのか?」,「なぜ利益が出ないのか?」,「なぜトラブルや品質不具合(品質ロス)が減らないのか?」,「なぜ同じ失敗(ミス)を繰り返すのか?」,「なぜケガをするのか?」などと,事あるごとに感じていませんか?
新製品の生産を開始したら,前の新製品と同じようなトラブルや品質不具合を発生させてしまい,「どうしてだろう!」と悩んだりしたことはありませんか?
企業環境はますます激化し,グローバルな品質,コスト,納期の熾烈な競争になってきています。一件のトラブルでも,経営を悪化させ,企業の存亡につながるケースもあります。
企業にとって,トラブルや品質不具合(品質ロス)は価値を生みません。品質不具合が発生すると,取引先や顧客に多大な迷惑をかけ,その対策に莫大な費用がかかるとともに企業の信頼・信用を失うことになります。また,社内においては,そのために余分な仕事(工数)や費用が発生し,生産性は低下してしまいます。
生産・品質トラブルを防止するなぜなぜ分析とは,トラブル(問題,現象,結果)を発生させている要因を,専門知識・固有技術に加えて適切な手法を活かし,論理的,すなわち「手順に沿って,順序よく,漏れなく出し切る分析方法で,トラブル発生の真因をつかみ,“再発防止対策”を行うための管理」を言います。
「なぜ,この問題,現象,結果が発生したのか?」,「なぜ,こんなことになったのか?」と,最初の「なぜ」を起点に,問題,現象,結果をよくみる(見る・視る・観る・看る・診る)とともに,5ゲン主義(原理・原則,現場・現物・現実)に基づいて「なぜ,なぜ,なぜ,……」と,問いかけながら分析する方法です。
それに対して,変更管理とは,「意図的(事前)に設計や製造工程を変えたことによって生じるトラブルの変化(要因)を,管理グラフ(管理板)や管理図などで察知し,“未然防止対策”を行うための管理」を言います。
また,変化点管理とは,「意図的(事前)に変えたわけではなく,突発的に状況が変わって(変えたくないのに変わった),結果的に何かの変化(要因)でトラブルが生じるので,そのトラブルの変化(要因)を察知し,“未然防止対策”を行うための管理」を言います。
本書では,生産・品質トラブルを防止する『なぜなぜ分析と変更管理』の解説を主眼とし,これに関連して「不適合品を『つくらない』,『送らない』仕組みをつくる」,「安定した製品品質を確保するための工程管理」,「工程変更管理のレベルと進め方」,「変更管理を展開して自工程保証を達成する」に要旨を絞り,多くの図解を取り入れ,わかりやすく解説しました。さらに,「実践して成果をあげるためのQ&A」と巻末資料として「品質管理関係用語集」を添え付けました。
本書が社内の教育・指導,演習の教材として大いに活用し,“職場の6大任務(Q・C・D・S・M・E)”の向上に役立て,強靭な企業体質の発展に貢献することを期待しています。
最後に,本書の出版にあたり,様々な観点からご指導・ご協力をいただいた日刊工業新聞社書籍編集部の野崎伸一氏に深く感謝申し上げます。
2013年1月吉日
市川享司
