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めざせ!最適設計
実践・公差解析

定価(税込)  2,640円

著者
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サイズ A5判
ページ数 224頁
ISBNコード 978-4-526-06998-7
コード C3053
発行月 2013年01月
ジャンル 機械

内容

公差解析に品質工学を融合させた複数部品の公差の設定方法を提案し、解説する。品質工学の哲学を導入することで、ユーザの使用環境温度変化による集積公差も計算し、さらに温度変化でばらつきが大きくなる部品を2水準の温度環境におけるSN比で評価して抽出する。なお、著者が作成した公差解析ツールをダウンロードすることで、その効果も体験できる。

鈴木真人  著者プロフィール

(すずき まさと)
1958年 静岡県生まれ。
1982年 芝浦工業大学工学部 機械工学科卒業。
同年 アマノ株式会社に入社。
同社にて,タイムレコーダ,駐車場管理機器,集塵機,業務用清掃機,洗剤リサイクル,電解水生成装置,信号処理,時刻配信,デジタルタイムスタンプ,電子署名の技術開発,商品開発に従事。
現在同社にて,実験計画立案,データ解析,および,品質工学の指導・支援を担当。
品質管理検定1級,統計士,データ解析士,生涯学習2級インストラクター(統計)

論文・著作
・論文
 「自動搬送車のための音源探知技術の最適化」2010
 「自動搬送車のための音響誘導技術の最適化」2011 以上 品質工学会
 「開発・設計における品質工学の有用性について」産業技術大学院大学 紀要 第3号
 「品質工学における回帰寄与率SN比の提案」産業技術大学院大学 紀要 第4号
・著作
 「バーチャル実験で体得する実践・品質工学」日刊工業新聞社 2007
 「品質工学のススメ」EDN Japan 2009 7月号
 「試して究める!品質工学 MTシステム解析法 入門」日刊工業新聞社 2012

萩原あづみ  著者プロフィール

(はぎわら あづみ)
1978年 東京都出身。
2001年 芝浦工業大学工学部 機械工学第二学科(現:機械機能工学科)卒業。
2001年~2006年
    自動車部品メーカーにてエンジン部品の加工・組立工程の生産技術業務および公差解析・構造解析に従事。
2006年~現在
    サイバネットシステム株式会社にて公差解析ツール「CETOL6σ」のアプリケーションエンジニアとして公差解析の基礎教育・ツールの導入および活用支援に従事。

論文
公差マネジメントツール「CETOL6σ」による設計問題へのアプローチ(2008年 日本設計工学会 春季研究発表講演会)
Tolerance Optimization of optical product design (6th China―Japan―Korea Joint Symposium on Optimization of Structural and Mechanical Systems, 2010)
公差解析における品質工学活用の検討(2011年 第19回品質工学研究発表大会)

目次

序 章 技術とは  

第1章 公差の基礎知識  
 1・1 公差について 互換性について  
 1・2 製品設計コンセプトと機能・コスト・品質の関係  
 1・3 設計での公差設定と製造現場での公差の管理  
 1・4 公差はどのようにきめるのか  
 1・5 公差解析とは  
 1・6 モンテカルロシミュレーションを使った公差解析と工程能力指数
1・7 公差解析の効果  

第2章 公差解析で使う統計学と品質工学の基礎知識  
 2・1 平均,分散,標準偏差  
 2・2 正規分布  
 2・3 分散の加法性  
 2・4 中心極限定理  
 2・5 工程能力指数(補足)  
 2・6 検査と品質管理七つ道具  
 2・7 品質工学について  
 2・8 損失関数  
 2・9 SN比  
 2・10 交互作用とは  
 付録1 標準正規分布表  

第3章 公差解析に使うツールと原理  
 3・1 モンテカルロシミュレーションとは  
 3・2 モンテカルロシミュレーションの例  
 3・3 システムモーメント法  
 3・4 許容差設計  

第4章 公差解析の実際  
 4・1 ばらつきの積み上げ(分散の加法性)  
 4・2 完全互換と不完全互換  
 4・3 公差寄与度とは  
 4・4 公差解析の手順  
 4・5 公差解析における係数の必要性  
 4・6 2次元の公差解析  
 4・7 3次元の公差解析  

第5章 単純積み上げによる公差解析の体験  
 5・1 はじめに  
 5・2 公差解析ツール チュートリアル  
 5・3 単純積み上げ公差の実践  
 5・4 演習1  

第6章 計算式を使った公差解析の体験  
 6・1 計算式入力による解析 その1  
 6・2 計算式入力による解析 その2  
 6・3 軸と穴で構成された構造物の解析  
 6・4 演習2  
 6・5 演習3  
 6・6 電気回路の最適化  
 6・7 演習4  
 6・8 中心極限定理を応用した公差解析ツールの使い方  

第7章 公差解析のまとめ  
 7・1 公差設計への展開(公差解析ツールとCAD,最適化ツールの関係) 
 7・2 公差解析のまとめ  

参考文献  

索 引  

はじめに

今,日本の製造業を取り巻く環境は,歴史的な円高,株価の低迷,強力な外国のライバル企業の急成長・急拡大など,非常にきびしい状況となっています。コスト競争を優位にすすめるために国内の企業各社とも,製造現場はもとより,上流工程の設計・開発部門でも乾いた雑巾をさらに絞る努力がいろいろと重ねられています。
 設計部門から成果物として出力されるもっとも量が多く価値が高い情報は,図面(あるいは,2D,3Dデータ)になるのですが,意外にもここにまだ手つかずのコスト競争を優位に進めるための金脈が眠っているのです。そして,そのことに気がついていない企業,あるいは,個人レベルとしての技術者はとても多いのです。
 その残された金脈とは,公差の最適化です。公差とはご存知のように部品の機能や寸法の理想値に対して,設計上や製造上許容されるばらつきの範囲をしめす数値です。「部品の機能や寸法が,公差でしめされている許容されるばらつきの範囲に入っていれば,部品を選別することなく製品を組み立てることができ,そして,その製品が目標としている機能が発揮されるはずである」と製品を構成する量産されたそれぞれの部品について互換性をあたえるために,設計者が定める設計・製造・管理上の指標です。
 ところが,このように重要な指標である公差をどのようにきめるかというルールは,企業の技術として標準化されていることはすくなく,技術者の個人的な手法としてすら準備されていないのが現状だと思います。
 設計者と検図者は自身のアウトプットである図面に対してすべての責任があるわけですから,製品の機能や品質がトラブルをおこさないように,類似部品については実績のある過去の公差を流用したり,新規部品については公差を必要以上にきびしくしたりしがちです。残念ながらこのようなやり方では設計作業の将来的な発展性があるとはいえません。そして,当然,国内外のライバル企業との戦いの最前線であるコスト面を改善することは難しいでしょう。公差をきびしくしていくとコストは急激に上昇するからです。その理由は,精度が高い(同時に値段も高い)加工機を使ったり,工場環境を管理したり,段取りや加工時間が長くなったり,腕のよい技能者(高給取り)を配置したり,精度が高い計測器で時間をかけて検査したり,完成した品物を厳密な環境で保管・管理しなければいけなくなるからです。
 つまり,設計者が失敗した場合の責任回避だけを目的として製造コストが上昇している可能性が高いのです。
 これを改善する方法が本書のテーマである「公差解析」,そして一歩進めて「公差設計」という考え方になります。複数の部品で構成されている製品(あるいはシステム)の生産性と製品に期待される機能,そして,その品質を獲得するために,設計者が自信を持ってそれぞれの部品の機能や寸法に関する公差を最適に設定するための技術手段です。そして,そのときのコストは機能,品質を獲得するための必然的な金額として明確になります。
 公差は製品のコストだけでなく,機能の品質にも大きな影響を及ぼしています。機能の品質(ばらつき)は工場内での品質管理や出荷後の品質保証にとって最重要な対象となる特性です。
 筆者は,「品質工学」を自身の技術哲学の主要な柱のひとつとしています。今回,本書を執筆するにあたり,製品に期待される機能,コスト,そして,機能のばらつきである品質の3つの要素が最適にバランスするように,製品を構成する複数の部品の公差を設定する方法を,「公差解析」と「品質工学」を融合させて提案しています。製品についての3つの要素を最適にバランスさせるための公差をきめるひとつの技術手段ですから,それぞれの技術者個人の思想・哲学や,企業としての技術方針などと照らし合わせて違和感を覚えることもあるかもしれません。しかし,少なくとも「機能,コスト,品質が最適にバランスした製品を設計して製造する」ことを目的として大海原に漕ぎ出すためのひとつの海図にはなるものと思います。
 筆者が経験の浅い技術者であったころ,公差のきめ方について特にルールなどは持っていませんでした。しかし,あるとき一緒に仕事をする機会があった生産技術者の方から,2乗和による集積公差の推定方法を教えていただき,非常に感動しました。本書の読者で,まだ公差解析について未経験の方には,本書で解説する公差解析方法をぜひ試していただきたいと思います。きっと,私の味わったような感動を覚えていただけるものと思います。ぜひ,公差解析を実践してみてください。その効果はかならずよい方向であらわれるはずです。
 この書籍を多くの技術者にお読みいただき,公差解析を実践していただき,活力にあふれた日本の製造業が復活することを望んでいます。
 今回,本書の第4章と第7章は,公差解析の現場でのより実践的な内容を解説,紹介していただくために,日々,公差解析ツールの導入と運用を支援されているサイバネットシステム株式会社の萩原あづみ氏に執筆していただきました。執筆を快諾していただきました萩原様とご協力いただきましたサイバネットシステム株式会社様に感謝いたします。
 また,公差解析に関する本書の企画を立ち上げ,出版に導いてくださいました日刊工業新聞社 木村文香様と,筆者の拙なる文章を校正,編集してくださった日刊工業出版プロダクションの北川元様にお礼を申し上げます。
 最後に,私に公差解析を紹介,指導してくださった故 河野達雄氏にお礼を申し上げます。そして,本書を奉げます。

 2012年12月 
 鈴木真人


 私が新卒で生産技術部門に配属されて間もないころ,担当している製品の図面を先輩から渡され,ある組立部品間の隙間がどれだけばらつくかを計算してみてくれ,と言われたことがありました。このころは公差解析という言葉すら知らず,月産数万個の製品だったにもかかわらず,分散の加法性についての知識はありませんでした(もしかしたら教えてもらっていたのかもしれないのですが,大切さを知らなかった私はすぐに忘れてしまった可能性も高いです)。そのため,隙間の求め方と同じように公差の値もそのまま足し算したり引き算したりして計算しました。さらに,これも関係あるかも,と思われる寸法の公差は乱暴に足してしまっていた記憶があります。もちろん自信のない計算だったため,先輩に報告して「バカヤロウ」と笑われました。その後先輩に計算の仕方を教えてもらい,結果を持って一緒に設計部門へ行って設計変更の打ち合わせを行ったのが,私の公差解析の扉が開かれた瞬間でした。きっと多くのメーカーの若手エンジニアの方が,似たようなきっかけを経て公差解析の扉を開かれていることかと思います。そのとき,この本が傍らにあり,少しでも助けになればとても嬉しく思います。ぜひ「おっ,あいつやるな」と言われる公差解析を行って自信をつけてください。
 また,公差解析はピンポイントで設計や製造の問題を解決するだけの道具ではないと私は思っています。これまで公差解析を通じて多くの設計や生産技術を担当される技術者の方々にお会いしてきましたが,皆さんがそれぞれの経験や信念から公差設定を行い,そしてその公差に対して物申しています。当然そうすると,おたがいの経験や信念が後ろ盾となって衝突が発生することもあります。多くの場合,どちらの意見にもはっきりとした主張があり,視点を変えれば正解になります。そして,そこに公差解析や最適化など「性能」や「コスト」という評価点に対して公差の妥当性を定量的に評価する道具があると,なんともあっさりと衝突は消え,同じゴールに向けた議論が生まれる場面を見てきました。一人でコツコツ取り組むのではなく,部署を超えて多くの関係者が取り組み,考えるのが公差解析・公差設計のあるべき姿だと,そのときはっきりと理解できました。取り組む労力に対して得られるメリットが大きい,公差解析・公差設計に取り組むマインドが多くの方に伝播していくことを祈っています。
 そして今回,品質工学会の場で声をかけていただき,ついには書籍の執筆という機会まで与えてくださった,アマノ株式会社の鈴木真人様に感謝いたします。
 また,公差解析の連載記事を@IT MONOist(http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/subtop/mecha/)で執筆するにあたり,いつも忙しい中,くだらないネタだらけの私の原稿を見事に編集してくださる,アイティメディア株式会社の小林由美様にも御礼を申し上げます。
 最後に,忙しい中,執筆の時間を与えてくれたサイバネットシステム株式会社PIDO部の仲間に感謝します。

 2012年12月
 萩原あづみ

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