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性能限界
モノづくり日本に立ちはだかるもう一つの壁

定価(税込)  1,650円

著者
サイズ 四六判
ページ数 200頁
ISBNコード 978-4-526-06978-9
コード C3034
発行月 2012年11月
ジャンル ビジネス

内容

産業再生に向けて、「性能が上がり続けることはない」という事実を冷静に見極めた上での対策を披露する。単品の性能が頭打ちでも、それらを組み合わせることで新たな価値が生まれる。性能限界に直面する日本企業に警鐘を鳴らし、新たなビジネスモデルの立ち上げと技術者再生法を指南する。

井熊 均  著者プロフィール

株式会社 日本総合研究所
執行役員 創発戦略センター所長
1958年東京都生まれ。1981早稲田大学理工学部機械工学科卒業、1983年同大学院理工学研究科修了。1983年三菱重工業株式会社入社。1990年株式会社日本総合研究所入社。1995年株式会社アイエスブイ・ジャパン取締役。2003年株式会社イーキュービック取締役。2003年早稲田大学大学院公共経営研究科非常勤講師。2006年株式会社日本総合研究所執行役員。
環境・エネルギー分野でのベンチャービジネス、公共分野におけるPFI等の事業、中国・東南アジアにおけるスマートシティ事業の立ち上げ、等に関わり、新たな事業スキームを提案。公共団体、民間企業に対するアドバイスを実施。公共政策、環境、エネルギー、農業、などの分野で50冊を超える書籍を刊行するとともに政策提言を行う。

目次

はじめに

第1章 性能で勝てない日本企業 

(1)日の丸メーカーの危機 
■相次ぐ日の丸の凋落 
■壁に突き当たった産業戦略 
■先端産業の凋落 
■原因はデジタル技術とグローバル化 
■活かせなかった日の丸半導体の経験 
■繰り返される凋落のメカニズム 
■固定価格買取制度(FIT)後が問われる太陽光発電事業 
■蓄電池は大丈夫か 
■凋落の理由を求めて

(2)もう性能では勝てない
■アジアを牽引した「雁行モデル」 
■「雁行モデル」の崩壊 
■汎用化する技術 
■止まらない技術流出 
■合理性増すキャッチアップ戦略 
■流出する技術人材 
■アジアの国々の成長 
■日本のスピード鈍化 
■技術戦略の限界


第2章 性能限界を受け入れる              

(1)「理論限界」という壁    
■技術には宿命的な性能限界がある
■経済成長を支えた内燃機関
■内燃機関の理論限界
■理論限界に挑む次世代エネルギー
■日本がリードする燃料電池 
■スピードが上がらない旅客機
■スピードが下がったジェット戦闘機 
■加工限界 
■開発テーマを変えて理論限界をかわす 
■棲み分けを図る
  
(2)「知覚限界」という壁 
■性能が上がっても体がついていかない 
■「視覚の限界」 
 □これ以上きれいなテレビは識別できない 
 □3次元テレビの失敗 
 □次世代高画質テレビは成功するか 
 □もうテレビの価格は戻らない
■「操ることの限界」 
 □小型化の限界とともに低落したパソコンの価格
 □これ以上小さくなれないデジタル機器 
 □性能を出し切れないスポーツカー  
■「聴覚の限界」 
 □知覚限界をかわしたオーディオ機器
 □マニアも信じられない
■「関心の限界」 
 □自己増殖する情報 
 □検索機能の増殖 
 □消化できない情報 
 □タブレットバブル 
 □人間の関心はどこまでも広がらない


第3章 「組み合わせ」の強さを自覚せよ 

(1)「組み合わせ」で価値を創る
■誰も経験の無い難しい舵取り 
■ 「性能が上がらなかったらどうする」と考える  
■ 「組み合わせ」が主戦場になるエネルギー 
■分散型とICTで「組み合わせ」の付加価値を 
■原発選択の裏に隠れた分散型エネルギーの可能性 
■BMWの選択 
■アップルの躍進 
■複雑な「組み合わせ」を作る 
■パッケージという単品 
■「組み合わせ」に命を吹き込む夢の空間 
■製造業の出発点に立ち返る 

(2)日本が強みを自覚する 96
■日本にもできた夢のある「組み合わせ」 
■ハイブリッドの意味 
■容易ではない電気自動車への移行 
■ガソリンから電気への橋渡しとしてのハイブリッド技術 
■自動車とICTのつながり 
■自動車とエネルギーのつながり 
■アップルワールドと相似のハイブリッドの進化 
■先端を走るフォルクスワーゲン・グループ 
■チャレンジングな技術を選択したハイブリッドシステム 
■革新企業トヨタ 
■日本の強みに胸を張ろう 
■他国の真似から革新は生まれない 
■トヨタが何故革新企業といわれなかったか 

(3)日本の強みを連鎖させる 
■スマートハウスは日本の産業構造の賜物 
■プリウスの成功物語を住宅分野で 
■スマートハウスからスマートタウンへ 
■ネットワーク技術への理解 
■マネジメントビジネスとして可能性 
■新興国でも売れるスマートハウス


第4章 スマートシティという究極の「組み合わせ」市場 

(1)スマートシティの現場 130 
■スマートタウンからスマートシティへ 
■新興国で拡大する都市開発市場 
■スマートシティの正しい解釈 
■成長する世界のインフラ市場  
■付加価値インフラ市場としてのスマートシティ
■先行事業に見るスマートシティの概要 
■再生可能エネルギーと需要管理を徹底するエネルギーシステム 
■省水を徹底する水システム 
■グリーン交通の徹底利用 
■リサイクルシステムと省エネ建築の徹底 
■新興国に学ぶ事業運営 
■スマートシティの歴史的な背景

(2)スマートシティの立ち上げプロセス 
■第一フェーズ:スマートシティの立ち上がり段階 
■第二フェーズ:基本計画の策定段階 
■第三フェーズ:インフラの具体化段階 
■第四フェーズ:設計段階 
■第五フェーズ:建設段階

(3)日本企業はどう対応するか 
■「モノ売り」からの脱却とは何か 
■事業の上流に乗る 
■スペックインとの違い 
■グローバルエリートを動かす 
■上流を目指せば良いというものでもない 
■先行者を羨ましがらない 
■徹底して差別化をはかる 
■中流に強みを見い出せ 
■中韓、欧米にない日本の強み


第5章 日本の技術者を再生する 

(1)単品技術者の育成から脱する 
■市場と企業を変革する「組み合わせ」 
■シンプル化する技術 
■ワンストップ化するインターフェース 
■「性能限界」時代の技術構造 
■日本的技術者の転換点 
■「組み合わせ」の尖兵としての次世代技術者 
■一方通行の技術者教育 
■当面のリスクと将来ビジネスとの乖離 
■「組み合わせ」をプロモーションするための5つのC 
■次世代技術者をどう育てるか

(2)「組み合わせ」発想のための組織づくり 
■金融機関の取り組み 
■建設業界の取り組み 
■ICT分野での取り組み 
■三つの事例の共通点
■企業を支えるのは既存事業 
■「モノ売り」からの脱却の具体論 
■「組み合わせ」発想で次世代に向けた体制づくりを
  
(3)政策は何をすべきか 

はじめに

 2012年10月、山中伸弥京都大学教授のノーベル生理学・医学賞の受賞が決まった。停滞感のある日本の経済・産業界に久しぶりに光が指した。国土も狭く、資源もない日本で豊かな生活を営むためには、今でも、これからも、世界をリードする技術が必要だ。病に苦しむ人達の救いとなり、大きな市場の核となる技術が日本から誕生したことを心から喜びたい。
一方、ここのところ日本経済を支えてきた産業の先の見えない苦境が毎日のように報じられている。日本の技術力がかつてのように世界をリードすることができなくなったかのような悲壮感が漂う。しかし、山中教授の偉業にあるように、日本の技術力はいまだ健在だ。問題は、日本が過去の成功体験に呪縛され、思うように動けなくなっていることにある。多少なりとも技術をかじった人なら分かることだが、技術開発は動的なものである。新しい技術が開発されれば、それはほどなく普及し、開発者は新たなフロンティアに挑まなくてはならない。また、世に普及した技術については、利用者が便利で効率的な使い方を考えていかなくてはならない。
本来、こうした絶え間ない代謝を続けるべき技術との付き合いがどこかで硬直した。企業の中では、開発者が後にすべき技術に拘り続け、政策は過去のスキームから抜け出すことができず、事業者は安価で便利になったはずの技術を使って革新的な事業を提案できていない。日本の停滞の背景には、こうした技術の代謝不全がある。
本書では、技術は必ず性能限界という壁に突き当たるとしている。しかし、それは技術開発そのものを否定しているのではない。壁に突き当たった技術の前で立ち止まっていることに警鐘を鳴らしているのである。性能限界の壁が見えた時、企業として取るべき態度は二つだ。一つは、技術を開発する側から利用する側に転じ、顧客にダイレクトに価値を提供することである。そして、今ひとつは、新たな開発のフロンティアを見い出すことである。政策は、この二つについて支援しなくてはならない。
 本書は、企業が性能限界の壁に直面した時、その技術を使っていかに新たな付加価値を創り出すか、について述べたものである。まず、第一章では、「雁行モデル」と呼ばれたアジアの産業構造が崩壊していることを中心に述べ、第二章で、日本企業が「理論限界」と「知覚限界」という二つの性能限界の壁に突き当たっていることを示した。その上で、第三章では、海外の先進的な企業が「組み合わせ」発想で新たな価値を生み出す一方で、日本が自らの強みを見失っていることを指摘した。また、第四章では、目下筆者が取り組み中のスマートシティを「組み合わせ」市場の例として示し、日本としてのポジショニング戦略について述べた。最後の第五章では、性能限界の時代に技術者はどのように変わっていくべきか、企業はどう取り組めばいいか、政策は何をすればいいかについて提言している。
 本書は、今夏ダイヤモンドオンラインで連載した内容を大幅に加筆したものである。連載中は大きな反響を得ることができ、日本の技術力の行方に対する関心の高さを改めて理解することができた。本書が日本の産業の発展にいささかなりとも貢献することできるのであれば、著者としてこの上ない喜びである。

 本書の刊行に当たっては、新日本編集企画の鷲野氏に企画段階からお世話になった。鷲野氏は筆者の処女作の企画を取り上げてくれた恩人である。この場を借りて、長年のお付き合いに改めて感謝申し上げたい。
 本書でも取り上げたスマートシティの事業については、株式会社日本総合研究所のメンバーと日々、奮闘を続けている。日頃の頑張り、助力、助言に感謝申し上げたい。
最後に、筆者の日頃の活動にご指導、ご支援をいただいている株式会社日本総合研究所に心より御礼申し上げたい。

2012年 涼秋  井熊 均

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