買い物かごへ

図解よくわかる電磁波化学
―マイクロ波化学・テラヘルツ波化学・光化学・メタマテリアル―

定価(税込)  2,200円

編著
著者
著者
サイズ A5判
ページ数 144頁
ISBNコード 978-4-526-06957-4
コード C3043
発行月 2012年10月
ジャンル 化学

内容

本書は、光からマイクロ波までの電磁波がどのように産業・技術に利用できるかをイラスト図解でやさしく解説した。電磁波を用いた化学手法が、従来の合成や抽出、分析などの化学プロセスや環境・医療分野にわたる技術を一新していく。

堀越 智  著者プロフィール

(ほりこし さとし)
上智大学理工学部物質生命理工学科 准教授
・日本電磁波エネルギー応用学会(副理事長)
・International Microwave Power Institute (USA) (理事)
・Journal of Microwave Power and Electromagnetic Energy (エディター)
・(独)日本学術振興会 先導的研究開発委員会 幹事
・東京理科大学(客員准教授)
・東京学芸大学(非常勤講師)
序章、第1章、第4章、巻末付録を執筆担当

谷 正彦  著者プロフィール

(たに まさひこ)
福井大学遠赤外領域開発センター 教授
・大阪大学レーザーエネルギーセンター(招へい教員)
・テラヘルツテクノロジーフォーラム(研究交流委員長)
・日本分光学会テラヘルツ分光部会(副代表)
第2章を執筆担当

佐々木政子  著者プロフィール

(ささき まさこ)
東海大学 名誉教授
・太陽紫外線防御研究委員会(参与)
・(独)科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業 さきがけ
 「光の利用と物質材料・生命機能」(研究領域アドバイザー)
・照明学会(専門委員) 
・CIE/ISO規格審議委員会(委員)
・Photochemical & Photobiological Sciences(エディトリアルメンバー)
・日本皮膚科学会倫理委員会(委員)
第3章を執筆担当

目次

序章 電磁波の歴史
電磁波(電波・テラヘルツ・光)の長い歴史 

第1章 マイクロ波化学
1-1 家電から宇宙技術までマイクロ波が活躍 
1-2 様々な産業でマイクロ波加熱が利用されている 
1-3 マイクロ波が化学を一新! 
1-4 マイクロ波加熱と通常加熱の違いは? 
1-4-1 不思議な加熱1(スーパーヒーティング) 
1-4-2 不思議な加熱2(逆の温度分布) 
1-4-3 不思議な加熱3(選択加熱) 
1-5 マイクロ波による化学・環境浄化技術 
1-5-1 マイクロ波有機化学 
1-5-2 マイクロ波触媒化学 
1-5-3 マイクロ波無機化学 
1-5-4 マイクロ波ナノ粒子合成 
1-5-5 マイクロ波高分子化学 
1-5-6 マイクロ波抽出化学 
1-5-7 マイクロ波励起無電極ランプ 
1-5-8 マイクロ波環境浄化技術 
1-5-9 放射能汚染物質や廃棄物のマイクロ波処理 
1-5-10 環境浄化触媒や光触媒のマイクロ波促進効果 
1-6 マイクロ波化学反応装置 
1-7 マイクロ波加熱の図解 
1-7-1 物質と電磁波の関係は? 
1-7-2 マイクロ波が物質に与える影響は? 
1-7-3 マイクロ波の加熱メカニズム 
1-7-4 加熱効率を予想するには? 
1-7-5 マイクロ波加熱は誘電加熱だけではない 
1-7-6 浸透深さ 
1-7-7 周波数を変えて化学反応を行う 
1-7-8 シングルモードとマルチモード 
1-7-9 マイクロ波加熱チェック項目 
1-8 基礎的な用語のまとめ 

第2章 テラヘルツ波化学
2-1 テラヘルツ波ってなんだろう? 
2-2 テラヘルツ波研究の歴史 
2-3 テラヘルツ波分光装置 
2-3-1 テラヘルツギャップとは? 
2-3-2 テラヘルツ波の光源 
2-3-3 テラヘルツ波パルス光源 
2-3-4 テラヘルツ波検出器 
2-4 テラヘルツ時間領域分光法(THz-TDS) 
2-4-1 THz-TDSの概略 
2-4-2 THz-TDSで何が測定できるのか? 
2-4-3 THz-TDSに適したレーザー 
2-5 化学物質の測定例 
2-6 テラヘルツ波を用いた実用例 
2-6-1 違法薬物捜査への利用 
2-6-2 防犯への利用(爆薬) 
2-6-3 芸術への利用 
2-7 テラヘルツ波関連データベースと海外の動向 

第3章 光化学
3-1 光の探求 
3-2 光とは 
3-3 光化学反応の基本法則 
3-4 光化学反応と熱化学反応の違いは? 
3-5 有機光化学 
3-6 大気の光化学(オゾン層の破壊と生成) 
3-7 光化学実験 
3-7-1 光化学に使われる光源 
3-7-2 分光法 
3-7-3 紫外・可視吸収スペクトル 
3-7-4 蛍光スペクトル 
3-7-5 光エネルギー測定法の種類と特徴 
3-8 人体における光の作用 
3-8-1 目と光 紫外光は目に要注意 
3-8-2 皮膚と光 男性こそ日焼け防止の注意が必要 
3-8-3 光による治療と診断 
3-9 光化学の応用例 
3-9-1 光化学の産業応用 
3-9-2 フォトクロミズム 
3-9-3 光触媒二酸化チタン 
3-9-4 光リソグラフィーの必須要素 フォトレジスト 
3-9-5 太陽電池 
3-10 光化学の将来展望 
3-11 光化学で使われる基本用語一覧 

第4章 メタマテリアル
4-1 メタマテリアルとは 
4-2 実は半世紀前から知られていた 
4-3 屈折率と比透磁率・比誘電率の関係は? 
4-4 曲がるストロー 
4-5 パーフェクトレンズ 
4-6 透明マント(クローキング) 
4-7 右手系・左手系・メタアトム 
4-8 人工磁性体と人工誘電体 
4-9 様々なメタマテリアル構造 
4-10 メタケミストリー(Metachemistry) 
4-10-1 メタマテリアルと化学 
4-10-2 メタケミストリーの構想 
4-10-3 マイクロ波化学とメタマテリアル 

巻末付録 電磁波(電波・テラヘルツ・光)の長い歴史 

索 引 

はじめに

電磁波化学と聞いて、どのようなものだろうと考える方も多いと思います。電磁気学は大学で教わる科目の一つですが、それに化学が付いています。電磁波化学とは電磁波(光や電波)をエネルギー源とした化学反応や化学分析の総論で、筆者が東京理科大学に在職していたとき、新設した講義の名前になります。昔から電磁波を使った化学として光化学があり、れっきとした学問として基礎から応用まで確立されています。

一方、1990年ごろより、マイクロ波を使った化学反応が世界中で盛んに行われており、新しい化学の手法として研究が進められてきました。また、光と電波の隙間にテラヘルツという未開拓な電磁波があり、光と電波の両方の性質を持つことから、新しい化学分析装置として期待されています。電磁波はすべての波長(周波数)領域において化学反応や化学分析に利用できることが知られていますが、各領域において学問分野の異なる研究者が中心となって発展してきたため、これらの体系化はなされてきませんでした。

特に、新しい分野であるマイクロ波やテラヘルツ波を、化学に携わっている研究者や技術者に話すと、物理や電気をイメージし、初めから拒否される(食わず嫌い)ことがあります。もしかしたら、マイクロ波やテラヘルツ波は電磁波という見方が強いため、化学者は大学の難解な授業の一つである電磁気学を思い出し、拒絶反応が出るのかもしれません。

筆者は幸運にも、光化学に加え、マイクロ波やテラヘルツ波を使った化学の研究に携わる経験があり、これらの新しい技術が光化学と多くの類似点を持ち、また光化学にはなかった新しい発想がマイクロ波やテラヘルツ波の研究から生み出されていることを実感しました。ぜひこの分野の魅力を皆さんに知っていただくため、図だけで解説する本の出版構想に至りました。各電磁波領域の特徴を理解し、電磁波利用には垣根がないことを感じていただければと思います。特に、化学を学ぶ読者には電磁波エネルギーの魅力を、マイクロ波やテラヘルツ波の専門家の読者には、電磁波が化学にも使えることを感じていただければ幸いです。

本書では、序章で電磁波の歴史の探求と時代関係を理解するため、紀元前・中世・近代に分けて概説しました。また、本書の巻末には、偉人たちが残してきた功績を光、電気、磁気の研究に分けてまとめました。第1章ではマイクロ波化学の基礎とその特徴、マイクロ波化学の実例紹介を行い、その魅力について解説いたしました。第2章ではテラヘルツ波分光や応用例を解説していただきました。テラヘルツ波の専門書は方程式を用いて解説したものが多いため、方程式を使わず図でテラヘルツ波を解説していただく難題をお願いしました。第3章の光化学では、マイクロ波やテラヘルツ波の専門家でも光化学を理解しやすくするため、あまり化学式を使わず、人体における光の影響や産業利用などの例を中心に解説をしていただきました。第4章では、電磁波を材料で制御するメタマテリアルについても触れました。メタマテリアルは化学者が、これから積極的に取り組むべき分野です。

様々な偉人が格闘してきた電磁波を近代では使いこなすことができるようになりました。現在では、この電磁波を今まで使われてこなかった分野でも利用することで、イノベーション(新機軸)的な産業が広がると思います。本書が新しいアイデアの切掛けになれば幸いです。

本書の構想を提案してから、非常に短期間で出版に至りました。その間に、迅速に原稿をまとめていただいた、谷正彦教授(第2章著者)および佐々木政子名誉教授(第3章著者)に謝意を表します。また、本書の完成に有益なご助言をいただきました、多くの技術者や研究者の皆様に感謝いたします。さらに、日刊工業新聞社の奥村功様、三沢薫様にはご激励をいただき出版までたどり着きました。また、様々な助言をしてくれた、研究者である妻(奈津子)にも心から感謝します。

なお、この本では多くのご教示を学術的な文献やインターネットから得ております。本書の紙面を借り、著者を代表してお礼を申し上げます。

2012年10月  
上智大学 堀越 智

買い物かごへ