現在在庫がありません

京セラ稲盛和夫 心の経営システム

定価(税込)  2,200円

著者
サイズ A5判
ページ数 240頁
ISBNコード 978-4-526-06705-1
コード C3034
発行月 2011年06月
ジャンル ビジネス

内容

激烈な企業間競争に勝ち抜いて利益をあげ続けることと、従業員の物心両面の幸福とを両立させる仕組みである、京セラ経営の本質「心の経営システム」についてまとめた本。

青山 敦  著者プロフィール

(あおやま あつし)

1960年京都生まれ、鹿児島県立国分高等学校卒業。京都大学大学院化学工学専攻修了後、三菱総合研究所で、社会の要求と先端技術を結ぶシステムズアプローチの研究に従事。1994年に米国パデュー大学よりPh.Dを授与される。1995年より英国ロンドン大学インペリアルカレッジ研究員として、大規模かつ複雑なシステムの管理・制御の研究に従事する。1999年から2005年まで、東京工業大学資源化学研究所助教授として、大規模システムの安全管理、生産管理、維持管理の研究に携わる。2005年より立命館大学MOT大学院教授。現在、企業や公共機関の価値創出能力向上のためのシステム工学・情報学的アプローチをキーワードに研究を行っている。化学工学会安全部会長。祖父の青山政次は、京セラの創業に参画した。

目次

はじめに
従業員の幸福と企業競争力を両立させる経営とは 
フィロソフィと人と人との信頼関係をベースとする経営
精密機械のような経営システム
心の経営が幸福な社会の礎になる

第1部 心の経営とは何か
今なぜ心の経営か
利益至上主義が危機をもたらす
企業の堕落が社会に害を与える
企業が変われば世界が変わる

心の経営が目指す企業とは
企業は社会の公器
企業が果たすべき5つの責任
利益は義務
競争は善
社格を持つ企業とは
従業員の力を極限まで引き出す企業とは
今こそ求められる心の経営
 
心の経営の主題・価値観・人間観
心を主題に置いた経営とは
なぜ「従業員の幸福」が第1でなければならないのか
「従業員の幸福」を目指すことの4つの効果
なぜ「人類社会への貢献」を第1にしてはいけないのか
従業員の心の動きを考え抜いた経営システム
心の経営の価値観
心の経営の人間観
心の経営が目指すもの

第2部 心の経営システム
心の経営実践のための仕組み
なぜ心の経営の実践は難しいのか
ビジョンへの挑戦に必要な7つの環境
6つの実践的要素とアメーバ

要素1 経営理念─価値観を共有する
なぜ経営理念が必要か
なぜ経営理念を明示するのか
経営理念は企業の存続より大事
正しい経営理念とは
企業を発展に導く経営理念の3つの効果
経営理念が形骸化する3つの理由
経営理念の形骸化を防ぐ2つの方策
経営理念を機能させ続ける企業とは

要素2 リーダーシップ─リーダーの人格が企業に魂を入れる
リーダーシップとマネジメントの違い
心の経営がリーダーシップを必要とする5つの理由
リーダーの7つの役割
リーダーシップを発揮できる環境とは
心の経営のリーダーが備えるべき人格
心の経営のリーダーを養成する方法

要素3 全員参加─全員で課題を共有し、知恵を出し、成果を喜ぶ
全員参加とは何か
全員参加の5つのプロセス
全員参加の8つの効果
全員参加を機能させる6つの仕組み
全員参加に不可欠な勇気・努力・覚悟・信念

要素4 目標管理─従業員の能力をぎりぎりまで引き出す
京セラ流目標管理の5つの特徴
目標管理の5つの役割
目標管理を機能させる5つの構成要素
目標管理に不可欠なリーダーシップと人と人との信頼関係

要素5 会計管理─経営を見える化し、人間の弱い心を補完する
京セラ流会計管理の2つの目標
京セラ流会計管理の4つの特徴
会計管理の使命 4つの正しさの追求
会計管理の7つの原則
会計管理に不可欠な経営トップのコミットメント

要素6 フィロソフィ教育─考え方を共有し、伝え続ける
京セラのフィロソフィ教育
フィロソフィ伝承は重要だが難しい
フィロソフィ希薄化の6つの要因
フィロソフィ希薄化の3つの帰結
フィロソフィ教育の7つの方法
海外におけるフィロソフィ教育

すべての基盤 アメーバ─実践的要素に場を提供する
アメーバが6つの実践的要素に場を提供する
アメーバの8つの機能

第3部 心の経営の未来
心の経営を導入する 
一般の企業への導入は可能か
米国での導入事例─フェアチャイルド社事業所の譲り受け
日本での導入事例─富岡光学の再建
JALで何が起こっているのか
なぜ心の経営の導入は難しいのか
心の経営の5ステップ導入手順

心の経営と全体最適
アメーバ経営と戦略経営のジレンマ
全体最適を支援するアメーバ経営の2つの特性
全体最適を阻害するアメーバ経営の4つの特性
全体最適のための3つの仕組み

心の経営とイノベーション 
イノベーションが京セラの成長を可能にした
アメーバ経営とラジカルイノベーションとの6つのジレンマ
イノベーションのための5つの仕組み

心の経営を永続させるために
心の経営が従業員の幸福・現在の利益・未来の成長を実現する
心の経営の5つのリスク要因
心の経営永続のための不易流行

おわりに
強烈な思いがあれば夢を実現する機会は無限にある

参考図書

はじめに


従業員の幸福と企業の競争力を両立させる経営とは

フィロソフィと人と人との信頼関係をベースとする経営

  本書が紹介するのは、激しい企業間競争に勝ち抜いて利益を上げ続けることと、従業員の物心両面の幸福とを同時に実現するための仕組みである。京セラは、創業されてから半世紀の間、一度も赤字を出さず、利益を上げ続けている企業だ。その一方、従業員の物心両面の幸福を経営理念として第1に挙げている企業でもある。京セラ経営が他の企業の経営と最も異なるところは、「人間として何が正しいのか」というフィロソフィを経営のベースに置いたことだ。

京セラは、その経営理念に、「全従業員の物心両面の幸福を追求する」ことをうたっている。そして、経営には心と心の結びつきが最も大切と考え、お互い信じ合えるように、涙ぐましい努力を続けてきている。リーマンショック以来、多くの人々が、米国流の利益至上主義に対して、これでいいのかと思うようになってきている。利益至上主義の根底には、企業が、株主価値の最大化を目指して利益を追求すれば、みんなが幸せに暮らせる社会が自然にできるはずだという考えがある。しかし、リーマンショックから始まった世界の金融危機は、企業が目先の利益のみを考えて行動すると、かえって社会が大混乱に陥ることを人々に見せつけた。

企業も目先の利益ばかり追わず、社会への貢献や従業員の幸福を目指して経営すべきという声が力を持ちつつある。その一方で、社会への貢献や従業員の幸福を優先する企業が利益追求のみ考える企業と競争したら、負けしまうのではないかと心配する人々も多い。終身雇用や年功序列など、時代遅れで企業の競争力を弱める日本的経営は止めた方がよいという意見は、このような心配から来ている。

  企業競争力と従業員の幸福を両立させる経営手法を探して、京セラ経営を調べ始めた。そこで見つかったのは、単なる経営手法ではなく、米国流利益至上主義経営とはまったく異なる幸福観、仕事観、人生観、企業観をもとにした価値観の体系であり、それを実現するための精緻な経営の仕組みだった。

精密機械のような経営システム

  本書では、「経営システム」という言葉を目標管理、会計管理、人事評価制度、教育制度といったハードな仕組みだけでなく、リーダーシップや企業文化、フィロソフィ、価値観やそれを浸透させる仕組みまで含めた広い意味で使っている。京セラ経営の最も凄みのあるところは、フィロソフィ・価値観を唱えるだけでなく経営に反映し、それと同時に企業の競争力を極限まで引き出す精密な経営システムを構築していることだ。その核心は、心という概念を経営の中心に据えたことだ。心という概念を経営の中心に据えることで、従業員の心の動きを企業の競争力と結びつけ、フィロソフィ・価値観を経営に反映させ、その結果として、従業員の物心両面の幸福を達成している。

京セラの経営システムでは、経営理念、リーダーシップ、経営管理、組織運営、評価制度、人事教育制度、企業文化などの仕組みが、ばらばらではなく、相互に支え合うシステムとして精密機械のように組み合わされている。したがって、京セラの経営システムの一部だけを取り出して他の企業でやってみようとしても、うまくいかないことがある。
京セラは、アメーバ経営でよく知られているが、京セラ流の経営理念やリーダーシップの考え方を取り入れないで、アメーバ経営を導入すると、従業員が反発したり、表面上は納得しているような顔をしても実践しなかったりしてうまくいかない。また、逆に、アメーバ経営があるからこそ、京セラ流の経営理念を企業の末端まで浸透させることができ、京セラ流のリーダーシップが発揮できるという。

心の経営が幸福な社会の礎になる

本書は、京セラ秘書室経営研究部の協力を得て、京セラ経営を調査分析した結果をまとめたものである。本書は、京セラ経営の本質であるフィロソフィと人と人との信頼関係をベースとする「心の経営」と、それを具体的に実現するための仕組みである「心の経営システム」を紹介したものである。米国流の利益至上主義の企業をベースとする社会は、一方では企業不信を引き起こし、他方では環境破壊や富の偏在、社会不安の増大に歯止めをかけることができないなど多くの問題を抱えている。心の経営によって社会的責任を果たす企業が増えればこれらの問題も解決の方向に向かうと考える。

本書が、従業員の幸福と企業競争力の両立の可能性を信じ、追求し、実践しようとする人々の役に立てば、これに勝る喜びはない。

現在在庫がありません