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精密機械の精度測定と評価

定価(税込)  2,592円

著者
サイズ A5判
ページ数 208頁
ISBNコード 978-4-526-06624-5
コード C3053
発行月 2011年02月
ジャンル 機械

内容

工作機械、半導体製造装置、精密測定機など、精密機械の開発と活用に必要な測定技術と評価法を基礎からわかりやすく解説。国際標準(ISO)の精度評価法に基づく測定技術の理解は高精度維持に不可欠。メーカーの開発者だけでなくユーザーにとっても必携の書。

上野 滋  著者プロフィール

(うえの・しげる)
1969年 名古屋工業大学機械工学科卒業
同 年 名古屋工業大学機械工学科助手
1970年 (財)機械振興協会技術研究所入所
1983年 神戸大学大学院自然科学研究科生産科学専攻博士課程修了(学術博士)
1999年 (財)機械振興協会技術研究所次長(生産技術部長兼任)
2004年 (財)機械振興協会理事(技術研究所次長、計量技術部長兼任)
2010年 (財)機械振興協会退任
現 在 ISO/TC39日本代表、精密工学会会員、日本機械学会会員、日本計量史学会会員、日本オーディオ協会会員、アメリカ精密工学会会員、英国物理学会フェロー。
千葉大学共同研究推進センター客員教授(1994~1997)、東京農工大学客員教授(2006~2011)を歴任。2003年、工業標準化事業功労者として経済産業大臣表彰。

著 書 「2チャンネルFFTアナライザ活用マニュアル・」(共著、日本プラントメンテナンス協会、1985)、「モード解析の基礎と応用」(共著、丸善、1986)、「新版精密工作便覧」(共著、コロナ社、1992)、「インプロセス計測・制御・加工」(共著、日刊工業新聞社、1997)、「はじめての計測技術」(工業調査会、2000)、「すぐ役に立つ精密機械ノート」(工業調査会、2006)など多数。

目次

はじめに 
本書の内容と狙い   

第1章 精密機械の基本
1.1 基本要素
1.2 温度環境
1.3 振動環境

第2章 測定の不確かさ問題  
2.1 不確かさ計算の実例   
2.2 部品計測と機械の運動精度計測の相違   

第3章 再現性の問題   
3.1 校正、補正と補償   
3.2 高再現性を実現するための機械設計   
3.3 数値制御による運動精度の向上   
3.4 補正の実例   
 3.4.1 原点シフト法   
 3.4.2 1軸直線補正法   
 3.4.3 1軸多数点補正法   
 3.4.4 複数軸直線補正法   
 3.4.5 空間誤差補正法   
3.5 再現性の実例   

第4章 精密機械の構造   
4.1 基本構造体   
4.2 基本運動軸   
4.3 精度維持のための機構   
4.4 運動駆動・制御機構   

第5章 基本構造構成の確認方法   
5.1 直進運動精度の確認方法   
 5.1.1 運動の真直度の評価   
 5.1.2 具体的な測定方法   
 5.1.3 真直度(回転誤差)の測定   
5.2 運動要素間のなす角度関係(直角、平行)の確認方法   
 5.2.1 運動の直角度   
 5.2.2 測定方法の例   
 5.2.3 運動の平行度   
 5.2.4 測定方法の例   
5.3 運動の同軸度   
 5.3.1 測定方法の例   
5.4 軸の一致度   
 5.4.1 測定方法の例   
5.5 複数運動が形作る平面の平面度の確認方法   
 5.5.1 測定方法の例   
5.6 回転軸の回転精度の確認方法   
 5.6.1 測定方法の例   
 5.6.2 回転軸の構造と精度   
5.7 直進軸の位置決め精度の確認方法   
 5.7.1 測定方法の例   
5.8 回転軸の回転角度位置決め精度(割出し精度)の確認方法   
 5.8.1 角度の基本   
 5.8.2 特定角度の検査   
 5.8.3 任意角度の場合  
 5.8.4回転軸の位置決め測定について
5.9 運動精度測定における運動部上側定点の決定

第6章 工作機械のISO規格にみる試験技術の構成ISO  

第7章 ISO検査規格に基づく測定・評価の実際 
7.1 ターニングセンタの例   
 7.1.1 静的精度試験例   
 7.1.2 工作精度試験の例   
7.2 マシニングセンタの例   
 7.2.1 静的精度試験   
7.3 大型工作機械の例   
7.4 5軸工作機械の例   
7.5 XYステージの例   

第8章 その他の精密機械の測定   
8.1 3次元測定機の性能評価   
8.2 真円度測定機の性能評価   
8.3 表面粗さ測定器の性能評価   

第9章 NC位置決め精度の測定にあたって   
9.1 試験実施時のチェックシート   
9.2 ウォーミングアップの問題   
9.3 機械温度測定点の選択   
9.4 測定の不確かさ問題   

第10章 熱変形に関する測定   
10.1 外部要因による熱変形の測定   
10.2 機械自身の発熱による変形の評価   
 10.2.1 直進運動軸の熱変形試験   
 10.2.2 主軸の回転発熱による熱変形試験   
10.3 測定装置に関する課題   

第11章 円運動精度に関する測定   

第12章 精度測定に使用される測定器   
12.1 レーザ干渉測長器   
 12.1.1 光学系の配置   
 12.1.2 ビームのアライメント調整   
 12.1.3 干渉計のピッチ、ロール、ヨウの最小化   
 12.1.4 波長の補正   
 12.1.5 物体の熱膨張補正   
 12.1.6 空気の擾乱   
 12.1.7 他の誤差要因   
12.2 ボールバー(ダブルボールバー)   
 12.2.1 ボールバーの形式   
 12.2.2 伸縮型ボールバーの構造   
 12.2.3 測定手順の基本   
 12.2.4 2次元格子型スケールの応用   
 12.2.5 レーザボールバーの応用   
 12.2.6 ボールバーの異なる応用   
12.3 水準器(電子水準器)   
12.4 光電オートコリメータ   
12.5 角度基準(直角マスタ)   
 12.5.1 反転法による自己校正   
12.6 角度基準インデックス   
12.7 直定規   
 12.7.1 反転法による自己校正   
12.8 テストバー   
12.9 基準球   
12.10 電気マイクロメータ(レバー式、プランジャ式)   
12.11 非接触変位計   
12.12 その他の特殊測定器   

おわりに   
付録

はじめに

はじめに

 第2次世界大戦後、わが国は精密機械工業を中心として発展してきた。この発展の過程では海外からの技術導入とその咀嚼、さらには独自技術開発とその応用という流れで進んできたことは知るところである。このような発展過程に必須の基本技術は何であったのであろうか。さまざまな教育体制や人材育成、また大戦中に集中的に教育された豊富な技術者層の活動などとともに精密測定技術の積極的な導入とその発展がある。
 1970年代のわが国の精度を支えたものは、イギリスから数多く輸入された表面粗さ計(タリサーフ)と真円度測定器(タリロンド)であることに異論はないだろう。多くの産業国家において本当の実力があるところはどこか、また何によって計測することができるかについて考えると、筆者は自国独自の計測技術開発能力の有無であると信じている。このような視点から見ると、現在でもドイツ、スイス、イギリス、フランス、オランダ、ベルギー、アメリカなどが計測技術開発の中心国であるというのが現実だ。わが国がこれらの計測機器輸出国への依存体制から完全に脱却しているかというと、残念ながら未だの感がある。基本計測技術の確立とその十分な活用があって初めて安定した精密機械開発とその活用が可能なのである。
 本書は、精密機械の開発と活用に必要な技術としての評価と計測技術を、規格に基ずき可能な限りわかりやすく解説し、ますます必要となる高度な精密機械類の開発の一助となることを考えてまとめたものである。

 上野 滋

 本書の内容と狙い
 なぜ本書が必要なのか
 本書では、工作機械、半導体製造装置、精密測定機など、その位置決め、運動に高い精度が要求される精密機械を、より高精度に維持、あるいは組み立てるための基本的測定技術を紹介する。現在(2010年)審議中、あるいは最新のISO、JIS規格に見られる機械の基本的な運動精度の評価方法を中心とし、その内容の理解に必要な基本的計測技術の解説を含んでいる。したがって、精度測定の分野でもっとも新しくかつホットな考え方が紹介されている唯一の書だと自負している。
 従来から精密機械、とくに工作機械に関して機構設計方法、応用方法、そして一部の測定方法を解説した書籍が発行されてきている。これらは実際に機械を設計・製造する立場の人々に向けた記述を中心としている。しかしながらシステムの複雑化、高度化に伴い、装置を受け入れる立場の人間が圧倒的に増加し、また機械や装置の製造元も国内のみならず全世界に広がり始めている。したがって作る立場から使う立場へと評価者が変わりつつあるというのが現状といえる。
 こうした状況に対応できるような測定技術を解説したい、というのが本書の1つの目的だ。第2の目的は既存設備の有効利用のための測定技術である。図Aと図Bに工作機械の位置決め精度の測定例を示す。図A1)はマシニングセンタのX軸位置決め精度の分布であり、対象は実際に製造現場内で用いられているものだ。また図Bは同じく位置決め精度試験の結果で、横軸は機械の使用年数を、縦軸が単位移動量あたりの位置決め精度を表す。この2例を見てわかることは、納入時に許容値内の性能をもっていた機械も長年使用しているうちに大きく性能変化をしていること、また、その変化は使用年数と相関がないこと、さらに詳細に元データを分析するとブランドによる劣化程度の差も見えないこと、などだ。この結果から、どれだけ日常のメンテナンスを行っているか否かで性能維持は決まっていることが明らかである。
 日常のメンテナンス、とくにNC機械にあっては各種パラメータの再調整を行うことによって機械のもつ最良の性能を発揮できることになる。そのために性能試験、精度試験は必須であり、ぜひ自らの現場での性能維持を図って欲しいというのが筆者の望みである。
 したがって本書の目的は次の5つとなる。
(1)機械製造現場における測定業務用
(2)ユーザの機械受け入れ時における検査用
(3)ユーザの定期的な機械メンテナンス情報の収集用
(4)ユーザあるいはメーカによる機械誤差補正用情報の収集と、その効果の確認用
(5)精密機械分野に従事する若手技術者教育用

参考文献
1) S. Ueno, S. Matsumaru, Evaluation of numerically controlled machine tool positioning accuracy, p485, Proc. of 6th LAMDAMAP 2003, WIT press

本書が対象とする機械は何か

 では、ここで対象とする機械は何か。本書ではもっとも一般的な精密機械の1つとして、まず金属切削工作機械を取り上げている。またXYステージ、1軸制御ステージ、半導体製造装置、ICボンダなどの直進運動軸のある機械や、精密な回転が要求される回転軸装置も対象とする。さらに3次元測定機(CMM:Cordinate Measuring Machine)などの精密測定機に関しても触れる。
 これらの機械類は外観の構成こそ異なるが、基本機能は、正確な直進運動、回転運動、そして正確な位置決め機能、運動軌跡制御機能であり、そのための必要因子は、おのおのの基本要素間の相対的な位置関係(直角、平行など)であり、これはほとんど同じと考えてよい。図Cは一般的な切削工作機械の代表であるマシニングセンタであり、回転要素である主軸、直進運動要素であるX、Y、Zの3直進運動軸の集まりであることがわかる。また図Dは半導体製造装置の1つのステッパだが、やはりいくつかの直進運動軸と回転制御軸の集成といえる。さらに最近の代表的な機械要素である産業用ロボットでは回転軸制御を中心とした要素の集合体であり(図E)、基本は共通だ。したがって、こうした基本要素の評価方法を理解すれば、さまざまな精密機械評価に応用ができることがわかる。本書では工作機械をその代表として選び、評価方法と計測方法を示すこととする。

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