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よくわかるフレキシブル・エレクトロニクスのできるまで

定価(税込)  1,980円

著者
サイズ A5判
ページ数 184頁
ISBNコード 978-4-526-06583-5
コード C3054
発行月 2010年12月
ジャンル 電気・電子

内容

自由に曲げることができる素材を使うフレキシブル・エレクトロニクス。本書では、最先端分野でとくに期待されているフレキシブル・エレクトロニクスの初歩的な紹介から、最新状況、今後の可能性、新しい材料技術、加工技術などについて、初心者にも理解できるようにやさしく解説する。

沼倉研史  著者プロフィール

(ぬまくら けんし)

団塊の世代のまっただ中として、宮城県に生まれる。
宮城県仙台第一高等学校卒業。茨城大学大学院工学研究科修了。
フレキシブル基板を中心に、エレクトロニクス実装技術関連分野で25年以上活躍してきている。最近はフレキシブル・エレクトロニクスを印刷で形成する技術の開発に熱中している。
現在、米国のマサチューセッツ州でエレクトロニクス実装関連のエンジニアリング、調査会社を経営。多くの著作がある中で、フレキシブル基板に関する本は業界のバイブルと呼ばれ、中国語、韓国語、英語でも出版されている。新しいフレキシブル基板メーカーの中には、これらの本を頼りに事業を始めたという会社も多い。定期的にエッセイやコラムを日本語と英語で出しており、そのファンは世界中に広がっている。
趣味は歴史の研究で、幕末から明治初期にかけての技術移転史については学会の権威。オフィスの一部を「マサチューセッツ歴史宿」として研究者に開放している。

電子メールアドレス:dnumakura@dknresearch.com
ホームページ:http://www.dknresearch.com

目次

はじめに

第1章 フレキシブル・エレクトロニクスとは
1-1 フレキシブルとはどういうことか
1-2 原因が先か、結果が先か
1-3 命あるものはフレキシブル?
1-4 フレキシブル化に付随する価値
1-5 フレキシブル・エレクトロニクス以前
1-6 フレキシブル・エレクトロニクスの登場
1-7 他の新しいエレクトロニクスとの関係

第2章 フレキシブル電子回路の基本構成
2-1 電子回路をフレキシブルにするには
2-2 フレキシブルにもいろいろあります
2-3 導体回路
2-4 片面回路
2-5 両面スルーホール回路
2-6 多層回路
2-7 伸縮可能なフレキシブル回路
2-8 オプティカルフレキシブル回路

第3章 機能デバイス
3-1 フレキシブル電子モジュール
3-2 埋め込み電子部品
3-3 個別部品のSMT実装
3-4 抵抗
3-5 コンデンサ
3-6 コイル
3-7 スイッチ
3-8 発光デバイス
3-9 ディスプレイ
3-10 センサー
3-11 アクチュエーター
3-12 マイクロ発電機
3-13 一次電池、二次電池
3-14 太陽電池
3-15 トランジスタ

第4章 フレキシブル材料について(選択肢が多様に)
4-1 サブストレート材料
4-2 導体材料
4-3 絶縁材料
4-4 ラミネート材料
4-5 受動部品材料
4-6 半導体材料
4-7 発光体材料
4-8 電池材料
4-9 太陽電池用材料
4-10 その他の材料

第5章 フレキシブル材料の加工
5-1 サブストレートの加工
5-2 プラスチックフィルムの成形
5-3 金属箔の成形
5-4 ラミネートの製作
5-5 スパッタリング、真空蒸着
5-6 めっきプロセス
5-7 厚膜印刷インクの調整

第6章 フレキシブル回路、部品の加工
6-1 フォトリソグラフィ
6-2 化学エッチング
6-3 レーザー加工
6-4 電鋳(エレクトロフォーミング)
6-5 厚膜印刷プロセス
6-6 両面ビアホール多層回路加工
6-7 カバーレイ、絶縁処理
6-8 受動部品形成
6-9 機能部品形成(一次、二次電池、太陽電池、発光素子)
6-10 半導体加工
6-11 後加工
6-12 フレキシブル電子回路の接合

第7章 ロール・ツー・ロール生産
7-1 RTR方式の適用の難しさ
7-2 主要プロセスのRTR化
7-3 RTR化のための共通課題
7-4 テープ回路のRTR製造ライン
7-5 新しいRTRの挑戦

第8章 フレキシブル・エレクトロニクスの実用化
8-1 デモンストレーション(その1)
8-2 デモンストレーション(その2)
8-3 RFIDアンテナ
8-4 フレシキブルEL面状光源
8-5 フレキシブル・ディスプレイ
8-6 タッチスクリーン
8-7 フレキシブル太陽電池
8-8 フレキシブル・バッテリー
8-9 メカニカル・デバイス
8-10 フレキシブル・センサー
8-11 小型発電デバイス
8-12 メディカル・デバイス

あとがきに代えて

はじめに

 人の先入観というのは怖いものです。長年その環境で生活していると、それが標準になってしまい、決まりきった範囲でしか考えられなくなっていることがよくあります。生まれた時からずっと同じ国に住んでいて、ある時よその国へ旅行や移住をしたりすると、それまでの常識では思いも寄らないことに出くわすことがよくあります。典型的な例が交通ルールやマナーでしょう。日本では車の左側通行が原則で、それを前提にして多くのシステムが出来上がっています。しかも日本では幼稚園の年齢から、「人は右、車は左」、「赤は止まれ、青は進め」というルールを繰り返し教えられますから、体も頭もそれで固まっています。ところが外国へ行ってみると、日本と同じシステムを取っているのは、英国とその影響下にあった地域だけで、世界的にはむしろマイナーであることを思い知ります。このようなことは、知識としては知っていても、現地へ行ってみると肌で感じることができます。海外旅行に出かけてみると、単に右側通行、左側通行という違いだけではなく、思いがけないところに新しい発見をすることが少なからずあります。中には逆転の発想、あるいはものごとの原点に立ち返らせられることが出てきます。
 同じようなことが、現代のハイテク産業や、技術にもいえるかもしれません。特にエレクトロニクス産業の場合、1960年代から急激に発展した結果として、ほとんどの製品が民生市場を対象とした主流の技術にしたがって製作されることになりました。このシリコンウエーハーを使った半導体技術と銅箔を導体としたプリント基板技術からなる主流技術は、極めて適用性が広かったので、多くのエレクトロニクス製品を創リ出しました。あまりにも能力があり、また急激に高密度化、高集積化、低コスト化が進んだために、新しいエレクトロニクス製品を企画設計する人たちは、このような主流技術の進展を前提にして新しいビジネスや製品を考えるようになってしまいました。その結果として、主流技術以外の技術にあえてトライすることがなくなってしまったようです。主流技術とは異なる技術でおもしろそうなものが少なからずあったはずなのですが、花火のように一瞬輝いただけで消えてしまったか、マイナーな特殊用途で細々と使われ続けています。何分主流技術としてのポジションを確保するためには、関連技術が合わせて開発され、富士山のように裾野が広がっていなければならないのです。多くの可能性を持った新技術が、裾野が広がる前に、息切れしてしまい、実用化する前に消え去る運命にありました。
 時は流れて21世紀に入り、エレクトロニクス業界もちょっと雰囲気が変わり、これまでの主流技術とは異なる技術の可能性が語られることが多くなってきました。別に従来の主流技術に限界が出てきたわけではありません。シリコン半導体をベースとした主流技術は相変わらず発展を続けています。ただ人間の欲望にはきりがなく、従来の主流技術や、その延長線上にある技術では実現できないものがあるということに、多くの人々が気付き始めたのです。その欲望を満足させる技術として、これまであまり注目を浴びることがなかったマイナー技術や新しいアイデアが再評価されるようになってきました。マイナー技術といっても、以前のそれとは違ってきています。この十年ほどの間に大きな技術の進展があり、ほとんど新しい技術といえるほどの変わりようです。関連技術の実用化も進み、新しい技術体系と裾野まで確立されつつあるといえるでしょう。
 フレキシブル・エレクトロニクスはそのような新しい技術体系のひとつといえます。しかも、かなりの有望株で、すでにフレキシブル太陽電池、フレキシブル・ディスプレイなど、メジャーな応用分野で実用化が進んできています。フレキシブル・エレクトロニクス自体の基本的なアイデアは新しいものではありません。その元の技術ともいえるフレキシブル基板の技術は、1970年代には基本的なアイデアはできていました。フレキシブル基板自体は、この30年間で、民生用電子機器分野で大きく発展し、メジャーな配線技術としてのポジションを確立したといえるでしょう。そのフレキシブル基板技術に、新しいアイデアや新技術が加わり、これまで考えられなかったような機能や用途が産み出されるようになってきたのです。
 この本では、そのような新しいフレキシブル・エレクトロニクス技術の基本的な考え方から、最新の応用技術、さらには未来の可能性までご紹介したいと思います。この本では時々簡単な数式や化学式が出てきますが、その部分を飛ばして読んでも、全体の理解には大きな影響はありません。リラックスして読んでください。

2010年12月
沼倉 研史

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