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おもしろサイエンス
土壌の科学

定価(税込)  1,620円

監修
編著
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-06549-1
コード C3034
発行月 2010年10月
ジャンル ビジネス 環境

内容

地球上に生きるすべての生物は土壌の恩恵を受けている。ところが近年、この土壌が流失・損失、汚染され、大きな社会問題ともなっている。本書では、エピソード交えながら、土壌とはいったい何のかから、生物・植物を育む土壌について科学的視点からわかりやすく解説していく。

生源寺眞一  著者プロフィール

(しょうげんじ・しんいち)
 1951年愛知県生まれ。東京大学農学部卒業。農林省農事試験場研究員、農林水産省北海道農業試験場研究員、東京大学農学部助教授を経て東京大学農学部教授。専門は農業経済学。2007年4月から東京大学大学院農学生命科学研究科長・農学部長。現在、日本学術会議会員、生協総合研究所理事長、国土審議会委員。これまでに食料・農業・農村政策審議会委員(農村振興分科会長・企画部会長・食糧部会長・畜産部会長など)、農村計画学会会長、日本フードシステム学会会長などを務める。最近の著書に『農業再建』(岩波書店)、『農業がわかると、社会のしくみが見えてくる』(家の光協会)などがある。

目次

はじめに

第1章 地球上の生命を育む土壌とは?
土は陸地に生息するすべての生物の生きるための場所
土壌は3つの層に分けられる
土壌は文明を生み、文明は土壌を「母なる大地」と呼んだ
土壌での粘土の役割は大きなものがある
「団粒」は土壌の優れもの
粘土は古くから医薬、美容などに活躍している

第2章 豊かな土壌が豊かな生活を支える
微生物や土壌動物たちの小さな営みが肥沃な土壌をつくる
堆肥があるのは優秀な土壌、生ゴミも立派な堆肥
私たちは土壌に生かされている
土壌は酸性雨を中和するが、それでも森林破壊は進んでいる
土壌を壊す「灌漑」「黄砂」「土砂崩れ」
少なすぎる「土壌」に対する議論
土壌が私たちの健康を支配している
子供たちが描く土の色はけして間違いではない
低い熱帯雨林の土壌の肥沃度
日本の畑の面積の半分以上を占める黒ボク

第3章 土壌と農業の緊密な関係
20世紀半ば土壌は自然から切り離された
「畠」は「水田に対する白田」、「畑」は「焼き畑」
畑には様々な分け方、呼び方がある
畑の土は、2層に区分される
かつて日本の農業は徹底した養分のリサイクルだった
「黒ボク」は人間の手によって作り出された
化学肥料は戦後の日本経済を支えた
日本の野菜などは「見た目重視」に陥っている
野菜は「やや酸性」の土壌を好む
土壌酸性改良材には「速効性資材」と「緩効性資材」がある
生産効率と経済性を重視したため連作障害が課題にも
日本の水田の歴史は2000年?
オーストラリアの水田は日本人がつくった
100キログラムの米をつくるには、2キロの窒素が必要
田に水を張ると土の色が変わる
日本では直播栽培は劣勢
土壌の肥沃さを保つには窒素固定化がポイントとなる
農業の基本ともいえる「土」の成分の半分はケイ酸

第4章 いろいろな土壌の種類
泥と砂からなる干潟は生き物の宝庫
湿地を保護するラムサール条約
永久凍土にも植物を育てる土壌がある
ツンドラ地帯の土は巨大な六角形を作る
砂漠にも微生物がいて、環境の変化を待っている
海藻の根は栄養をとるものではない
海底の土壌には太古の地球の特殊な微生物が生きている
砂漠も緑化はできるが土壌づくりは問題も
生物の命を危険にさらす土壌汚染


コラム
運動場は土壌的には「死んだ土地」
ダーウィンも40年にわたりミミズ研究
良い田圃は生き物で一杯
生命の起源に近い古細菌は人類に有用なもの?
海藻・海草は社会にも大きな貢献

はじめに

 今、私たちは1日のうちで、どれだけ「土」を踏んでいるでしょう。都会で生活することが多い現代人では「ゼロ」という人も少なくないはずです。また、1日のうちにどれだけ「土」を目にしているでしょう。これすらも「ゼロ」という人は意外と多いかもしれません。特に都会では、マンションを出ると地面はアスファルトで覆われ、コンクリートの会社の中で大半を過ごして、またアスファルトを踏んでコンクリートのマンションに帰る、目にするのはせいぜい街路樹と、その下の土くらいでしょう。そしてそれが当たり前の生活になっています。つまり、「土」は、日常生活では意識の中にはない、忘れ去られた、きわめて縁遠い存在になっているといっても過言ではないでしょう。
 このような生活になったのは、日本人の場合、つい40年ほど前からです。それまでは都会のど真ん中にも土は常に見られましたし、住宅街には土の道が沢山ありました。しかし、車社会の到来によって、土の道はでこぼこで不便で、跳ね返りや埃などの「汚い」イメージがつきまとい、身の回りから姿を消していったのです。
 それでもコンクリートやアスファルトの道を歩くのに慣れ切っている常日頃から、山道などを歩いたりすると、歩く足元がとてもやさしく感じられます。また、土の匂いというものも感じます。そして私たちは「それが自然だ」と思ったりします。それは、私たちが潜在的に土を懐かしく、かつ、慕わしく思っているからではないでしょうか。また、体が土を欲しているのかもしれません。
 何はともあれ、いろいろな意味で、人間を含めて陸上の生物は、土なくしては生きていけないのです。その中で、人間だけが、土がない生活を、それが清潔で整備された社会であり日常であると、そう思い込んで、どうにか生きているのかもしれません。
 しかし実際は、食物はむろんのこと、住居や、仕事・勉強のペーパー等々にいたるまで、すべて直接的・間接的に土の恵みを受けているのです。その意味で、土とはまさに、私たちが生きるため、生きていることの原点といえます。
 その原点を私たちは、現実にどれほど知っているでしょうか。「皆無」といっていいかもしれません。本書では、その原点をいろいろな角度から分かりやすく見てみました。そして、それが土への興味と理解につながればと思います。
 なお、本書をまとめるにあたって、土とも縁の深い農学の第一人者である東京大学農学部長の生源寺眞一教授からは貴重なアドバイスをいろいろといただきました。また、この企画の実現に尽力してくれた日刊工業新聞社出版局の藤井浩氏には心から感謝する次第です。

 2010年 10月
土壌と生活研究会

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