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ストップ!温暖化
データセンタ・情報機器の電力消費のムダを切る

定価(税込)  2,592円

編著
著者
サイズ A5判
ページ数 192頁
ISBNコード 978-4-526-06533-0
コード C3050
発行月 2010年09月
ジャンル 環境

内容

IT化が進む現代社会の中で、データセンタ・情報機器の消費電力量は加速度的に急増しており、この省エネをどう進めていくかが大きな課題として浮上してきている。そこでこの本では、その消費電力の本当の数字を測定、そこからムダを解明し、今後の改善策などをわかりやすく解説していく。

藤本 淳  著者プロフィール

(ふじもと じゅん:Chapter1,3,5,6)
東京大学先端科学技術研究センター 特任教授(工学博士)。広島大学環境科学研究科終了後、日本電気株式会社中央研究所を経て現職。東京大学人工物工学センターの客員研究員。専門は、ITと環境問題、社会のエコデザイン。主な著書に「2050年脱温暖化社会のライフスタイル(電通)」、「エコライフのすすめ(丸善)」などがある。

CREST ULP 前田チーム  著者プロフィール

伊藤 智(いとう さとし:Chapter2、4)
産業技術総合研究所 情報技術研究部門 副研究部門長(理学博士)、筑波大学大学院物理学専攻終了(博士号取得)後、株式会社日立製作所 中央研究所を経て現職。電気通信大学非常勤講師兼務。材料シミュレーション、並列計算機利用技術、グリッドコンピューティング、グリーンIT、クラウドコンピューティングなどの研究開発に従事。

伊藤寿浩(いとう としひろ:Chapter5)
産業技術総合研究所 集積マイクロシステム研究センター 副研究センター長(工学博士)。東京大学大学院工学系研究科 精密機械工学専攻 博士課程修了後、東京大学先端科学技術研究センター・工学系研究科 准教授を経て現職。無線センサーネットワーク,大面積MEMSデバイス、MEMS実装などの研究開発に従事。

河本 薫(かわもと かおる:Chapter1)
大阪ガス(株)情報通信部 情報ソリューションチーム 課長(工学博士)、京都大学大学院工学研究科修了後、大阪ガス(株)入社。米国ローレンスバークレー国立研究所客員研究員、東京大学先端科学技術研究センター客員研究員を歴任、神戸大学経済学部非常勤講師を兼務。専門は、ITとエネルギー問題、エネルギー需要予測、地球温暖化問題。エネルギー需要予測。

中本信也(なかもと しんや:Chapter2、4)
独立行政法人科学技術振興機構 研究開発戦略センター フェロー。
大阪大学基礎工学研究科修士課程修了後、日本電気株式会社中央研究所、同ITプラットフォームソリューション事業部を経て現職。バイオセンサ、化学物質のリスク管理、データセンターの省エネ等に従事。

秦 智之(はた ともゆき:Chapter2、3、4)
日本電気株式会社 ITプラットフォームソリューション事業部 主任。東京大学大学院工学系研究科精密機械工学専攻修士課程修了。環境コンサルティング会社勤務などを経て現職。専門は、設計工学、エネルギーマネジメントシステム、データセンターの省エネ対策。

藤本 淳(ふじもと じゅん:Chapter1,3,5,6)
東京大学先端科学技術研究センター 特任教授(工学博士)。広島大学環境科学研究科終了後、日本電気株式会社中央研究所を経て現職。東京大学人工物工学センターの客員研究員。専門は、ITと環境問題、社会のエコデザイン。主な著書に「2050年脱温暖化社会のライフスタイル(電通)」、「エコライフのすすめ(丸善)」などがある。


Chapter5 社会像ディスカッションメンバー
     (2008年12月6、7日:当時の所属)

堤 孝志(三井住友キャピタル(株))/渡邊 哲((株)マキシマイズ)/飯野将人(東京海上キャピタル(株))/前野拓道(オリエンタル白石)/
由比藤光宏、飯橋真輔(NTT)/南谷 崇(CREST ULP研究統括)、藤本 淳(東京大学)/伊藤 智、小林克志、前田龍太郎、伊藤寿浩、松本光崇(産業技術総合研究所)/田村徹也、中本信也、秦 智之(NEC)/室田泰弘(湘南エコノメトリックス)/河本 薫(大阪ガス)

目次

はじめに 

Chapter1 地球温暖化と情報通信技術
1.1 社会を変えた情報通信技術 
1.2 石炭をもっと掘れ!米国における研究の動向 
(1)IT機器の電力消費量に関する研究 
(2)「エネルギー・スター・プログラム」の制度設計に関する研究 
(3)IT機器がエネルギーに及ぼす間接的な影響に関する研究 
1.3 情報通信技術は地球温暖化を加速?それとも救世主? 
(1)利害に翻弄される地球温暖化への影響 
(2)情報通信技術は地球温暖化の救世主か? 

Chapter2 複雑で見えない情報通信システム
2.1 網目のように広がる情報通信システム 
2.2 構成機器の種類と量 
(1)サーバー 
(2)ストレージ 
(3)パソコン(PC) 
(4)ルータ、スイッチ 
2.3 クローズアップされた"データセンタ"の電力消費 
(1)データセンタとは 
(2)データセンタ事業 
(3)データセンタの構成 
(4)マシンルーム内の構成 
(5)データセンタにおける電力供給経路 
(6)マシンルームの空調 
(7)PUE 
(8)PUE値の改善 
(9)DPPE 
(10)データセンタの信頼性 
(11)コンテナ型データセンタ、モジュール型データセンタ 

Chapter3 情報機器の電力消費量を測ってみれば
3.1 電力測定方法 
(1)電力測定用の機器 
(2)データセンタの電力モニタリングシステム 
3.2 サーバーの消費電力の計測例 
(1)メモリ/ハードディスク/CPUの組合わせと消費電力 
(2)使用環境の温度とサーバーの消費電力 
(3)サーバーのベンチマークと消費電力の評価 
3.3 パソコンの消費電力の測定例 
(1)デスクトップPC 
(2)ノート型PC 
3.4 データセンタの消費電力の計測例 
(1)電力をどこで計測するか 
(2)消費電力計測のための機器、システムの選択 
(3)データセンタのIT機器の消費電力計測例 
(4)データセンタの消費電力計測のまとめ 
3.5 データセンタにおける消費電力の把握と省エネ対策 
(1)データセンタのフロア面積と消費電力 
(2)データセンタ事業者の電力消費削減への取組 
3.6 現状、わが国の電力消費量は? 

Chapter4 "ムダ削除"で半減できる情報機器の電力消費量
4.1 情報システムにはどのようなムダが存在するか 
(1)情報機器:アイドル状態の電力消費と低い稼働率 
(2)システム構成のゆとり、冗長性によるムダ 
(3)情報機器、システムのムダのデータセンタの空調への影響 
(4)最適化されていない空調設定 
(5)電源系統のムダ 
(6)排熱の利用 
(7)ムダ削減の対策 
4.2 寄せ集めて効率よく運用する 
4.3 機器をうまく配置して空調を効率化 
(1)空調機のタイプ、仕組み 
(2)マシンルームのエアフローの改善による空調エネルギーの削減 
4.4 空調レスデータセンタの可能性 
(1)データセンタの排熱 
(2)マシンルームの空調を止めるとどうなる? 
(3)境界面からの放熱を利用して排熱できるか? 
(4)換気による排熱 
(5)データセンタのサイズとモジュール化 
4.5 積極的な省エネ対策にはディペンダビリティの壁 
(1)ディペンダビリティの壁 
(2)ディペンダビリティ以外の制約
(3)壁を打ち破るには? 

Chapter5 2025年のデータセンタ・情報機器の消費電力量
5.1 将来の情報社会を見る-2025年4つの情報社会像 
(1)センサプロテクテッドビレッジ 
(2)クリーン&グリーン社会(高度分散処理型&高度セキュリティ型社会) 
(3)リモートコンピューティングと重点センシングによる安全安心社会の到来 
(4)プロファイリング産業の勃興 
5.2 2025年の情報通信機器からの消費電力はどこまで行くのか? 
(1)2025年電力消費量の試算 
(2)社会像により異なる2025年電力消費量 
(3)どうしたら到達できるグリーンITイニシアティブの2025年2,400億kWh? 
(4)スーパーコンピュータより家庭用ルータの方が消費電力量は大きい? 
(5)逆U字曲線 
5.3 将来のユビキタス社会 
(1)ユビキタスセンサの開発動向 
(2)クランプメータ 
(3)将来のユビキタス社会 

Chapter6 将来社会へのインパクト
6.1 "ムダ排除"で現状と変わらない電力消費量を維持できる? 
(1)"流しのタクシー"のジレンマ 
(2)"経験"を打ち破れ 
(3)電力消費量を半減 
6.2 電気自動車の普及で情報機器の電力消費量はわが国の発電を圧迫するのか? 
6.3 グローバルな視点 

あとがき 
参考文献 

著者一覧

はじめに

 著名な心理学者チャルディーニによれば(影響力の武器?なぜ、人は動かされるのか)、現代人は「トリックにひっかかり易い」ことになります。それは、「人間の洗練された心的装置が、複雑で、速いペースの、情報過多の環境をつくりだし、その結果下等動物と同じようなやり方、すなわち「良い証拠が一つで十分」という簡便な方法で、この環境を扱わざるを得ない」ようになったためです。
 つまり、われわれが日常的に行っている、同意する、信じる、何かを買う際の判断は、心理的な"お返し"、"一貫性"、"社会的証明"、"好意"、"権威"、および"希少性"という6つの原理に従って、単純に行なわれる傾向があるということです。簡単に言えば、社会が複雑になり過ぎて、われわれは「分析麻痺状態」に陥っているということです。
 例えば、新しい商品の購入を決める時に、「みんなが良いと言っている」という情報(社会的証明)を用いたことはありませんか?これを逆手にとれば、人々を誘導できます。例をあげると、自然な街頭インタビューを流すテレビ広告です。一般人を装った人に「この商品はいままでに無い、すばらしい!」と言わせるトリックです(社会的証明)。この種のトリックは、社会のあらゆる分野に広がっており、工学の分野でも見られます。
 米国では「ITの急速な発達により、このまま推移すると電力供給不足になる(一貫性)」という趣旨の発言を、信頼感のある機関やマスメディア(権威)が行い、政策に影響を及ぼした例があります。しかしこれは、米国のある団体が、自らの利益誘導のために行ったことが後で明らかになりました。
 また、これとは別の、人間の不合理さを突いたトリックもあります。それは「アンカー効果」を利用したものです。まったく関係のない大きな数字を最初に提示した場合でも、モノにつける値段が、先の大きな数字につられて、高くなるというものです。このトリックは、社会ではもっと巧妙に用いられます。「昨年と今年では交通量が2倍に増加しており今後も増加は続く。だから道路整備予算を10倍にしなければいけない」と、「このまま増加すれば7年後には交通量は約100倍になる。だから道路整備予算を10倍にしなければならない」という記述では、後者の方が、説得力が高いのではないでしょうか。ここでの巧妙さは、「交通量」という道路整備予算に関係のありそうな(しかし厳密には明確ではない)要因を持ち出し、かつ大きな数字を用いたところです。情報通信の分野では、「通信トラヒック量」が同じ役割に利用されます。
☆                 ☆
 この本は、情報通信システムやデータセンタの電力消費や省エネについて、さまざまな角度から検討したものです。なぜ最初に、心理学の例をもちだしたかというと、情報通信分野は、複雑で、技術進歩や普及のスピードが猛烈に速いため、その分野に何らかの関係をもっている人さえも「分析麻痺状態」に陥りやすいからです。いたるところにトリックが隠されている可能性があります。
 「このまま情報通信技術が進展すると、国の電力消費量は○○倍になる。データセンタの増加により、原子力発電所が○○基必要になる」と言われたらどうです?厖大なデータを集めてこれらを分析する気になりますか?われわれは、これにあえて挑戦してみました。可能な限り、稼働中の機器を計測して。すると、複雑に見えていたデータセンタの電力問題も、基本は非常に単純であることがわかりました。今では、手ぶらの状態(測定器なし)でデータセンタのマシン室に入っただけで、「どのくらい電力を消費しているのか」、「省エネの可能性はあるのか」が大まかにわかるようになりました。また、将来の電力消費の推移に関しても、その道筋がうっすら見えてきました。
 本書では、われわれが計測したさまざまなデータを可能な限り提示しています。その中には、今までデータセンタの省エネに関して言われてきたことの理解を助ける、あるいはその知見を覆すデータも含まれています。まだ、研究は道半ばであり、残念ながら「すべてお見通しだ!」とはいかないのですが、本書「どんと来い、データセンタ!」(藤本が希望したタイトル)のデータや知見が、みなさまのビジネスや研究のお役にたてば幸いです。
 なお、ここで行った研究の多くのは、(独)科学技術振興機構・戦略的創造研究推進事業CREST「情報システムの超低消費電力化を目指した技術革新と統合化技術」研究領域からの支援を受けて実施しました。ここに謝意を表します。

2010年9月
東京大学先端科学技術研究センター
特任教授 藤本 淳

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