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スマートグリッド解体新書
―動き出した巨大産業と企業戦略

定価(税込)  1,980円

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サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-06482-1
コード C3034
発行月 2010年06月
ジャンル ビジネス 環境

内容

電力の需要と供給をITによって効率的に調整する新しい送配電網「スマートグリッド」が新市場として注目されはじめている。本書は、スマートグリッドの概念を整理するとともに、最新の企業の動向を中心に解説する。
※巻末に参入企業・関連企業の銘柄リスト付き!

日刊工業新聞特別取材班  著者プロフィール

執筆者一覧
青柳一弘/明豊/石橋弘彰/江刈内雅史/占部絵美/長田善行/梶原洵子/加藤正史/
川口哲郎/斎藤実/鈴木真央/鈴木岳志/堀田創平/三島浩樹/米今真一郎

目次

第1章
動き出した巨大市場「スマートグリッド」
(1)2030年までにスマートグリッド市場は1兆2500億ドル規模に!
(2)米国電力業界の規制監視からスタートしたスマートグリッド
(3)スマートグリッドの構築で一歩リードする欧州連合
(4)導入に向けて異例のスピードで動き始めた日本
(5)新興国の需要増加に合わせて激化するアジアの受注獲得競争
(6)経済産業省が構想する日本型スマートグリッド社会とは
(7)地域社会が一体となって取り組むスマートグリッド社会化プロジェクト
(8)太陽光発電システムから生じる逆潮流の課題に挑む電力中央研究所
(9)NEDOが推進する日米共同の実証プロジェクト
(10)市場創造には大学・研究機関の先導が不可欠
(11)電力会社が目指す日本版スマートグリッド
(12)海外展開を見通して繰り広げる離島でのスマートコミュニティ実証実験
(13)国際標準化における各国の思惑
(14)次世代都市「スマートシティ」の実現でもたらされる新たな商機
(15)実証試験は米国先行
(16)本格普及に向けて動き始めた日本国内での取り組み
(17)環境車の普及には充電インフラの整備が急務

第2章
巨大市場を支える技術
(1)自然エネルギーからの電気を効率的に活用
(2)期待高まる風力発電
(3)脚光を浴びる地熱発電と温室効果ガスの分離回収技術
(4)原子力ビジネスはオールジャパンの戦略が不可欠
(5)量産化が進む超電導ケーブル用線材「ビスマス系」
(6)交流送電にも対応できる超電導ケーブル用線材「イットリウム系」
(7)新興国での導入が期待される超高圧地中送電網
(8)2020年には国内スマートメーター市場は1000億円規模に!
(9)電力を"こぼさず"運ぶ技術で先頭を走る日本メーカー
(10)小規模地域にはマイクログリッドも有効
(11)自然エネルギーからの電気を最大限活用する「DCハウス」
(12)電力情報の双方向通信にPLCを活用
(13)太陽電池と燃料電池のダブル発電による「スマートハウス」
(14)各社が開発にしのぎを削るリチウムイオン電池
(15)各種用途に応じた開発が求められる蓄電池
(16)省エネ意識の高まりで海外から注目されるインバーター
(17)不安定な自然エネルギー活用のカギを握るキャパシター
(18)環境車の普及にともない市場規模が拡大する車載用電流センサー
(19)スマートハウスの普及に向けた家電メーカーの成長戦略

第3章
高効率化の頭脳を担うIT企業の戦略
(1)スマートシティ実現に重要となるITベンダー
(2)アプリケーション提供での市場開拓も進む
(3)通信インフラに関するノウハウも武器となる
(4)日本勢はIT+α

第4章
ビッグビジネスを狙う産業界
(1)総合力が生きる大手重電メーカー
(2)独自に実証試験に乗り出した大手電機業界
(3)スマートメーター向け需要を狙う半導体メーカー
(4)デバイスメーカーにはフロンティア市場
(5)超電導ケーブル実用化を目指す電線業界
(6)電力ネットワーク構築で始まるIT企業の熾烈な競争
(7)ITサービス分野へ進出する事務機器メーカー
(8)再生可能エネルギー分野で技術力を発揮する重工業大手
(9)ビジネスチャンスの拡大を見込む制御機器メーカー
(10)車載電池に蓄電し家庭に配電
(11)「IPv6」への移行をにらみ動き出す通信業界
(12)蓄電・発電デバイスを支える素材メーカー
(13)環境負荷の小さい快適空間を目指すゼネコン
(14)経済的メリットに配慮した住宅・不動産業界の研究開発
(15)新しい社会インフラ構築に挑む商社

第5章
スマートグリッド関連企業リスト
1. 主なスマートグリッド関連銘柄
2. 「スマートコミュニティ・アライアンス」の参加企業・団体
3. 「スマートグリッド展2010」出展企業・製品一覧
〈コラム〉 いまさら聞けないスマートグリッド素朴な疑問

はじめに

 かつて、日本はカラーテレビや半導体などで世界を席巻していた。しかし、デジタル技術の時代に入り、様相は一変。薄型テレビの販売量の世界1、2位は韓国企業が占める。「産業の米」といわれ日本の産業界に大きな収益をもたらしていた半導体も、韓国・台湾勢の台頭で世界市場でのシェアを下げ、業界再編を強いられた。

 日本の強さの象徴だった製品の国際競争力の低下は、日本の産業界全体の競争力が低下傾向にあることを表している。産業界をはじめ社会全体が日本の未来に不安を感じている中で、日本の産業界を活性化する市場になりうると注目されるのが次世代電力網「スマートグリット」だ。

 電力を国の隅々に届ける送配電網は、国家における心臓や血管の役割を担う。日本は早くからこの分野で高い技術を持ち、家庭や工場などに安定した電力が届き、停電もほとんど起こらない社会を実現している。発電所の安定操業や、送配電網の運営管理を実現し、その技術も進展を続けている。それを支える産業にも、技術やノウハウの蓄積がある。日本には、腕利きの“心臓外科医”や、“循環器系の名医”が揃っている。

 また、そうした高度な電力網を構築する機器でも日本は強みを持つ。火力・水力、原子力に加え太陽光や風力など各種発電システムの実用化が進む。変圧器や高圧スイッチ類、送電ケーブルなど送配電機器では世界トップ水準の製品が揃う。さらに、蓄電池や大容量キャパシターなど自然エネルギーを電気に変換した後、蓄えるデバイスの開発も世界の最先端を行く。

 さらに、家庭や工場、オフィスなどで機器の消費電力を管理するスマートメーター、電力網の各所に設置されるであろうセンサーなども開発が進んでおり、いつでも実用化できる準備が整っている。

 スマートグリット市場は日米欧の主要市場だけで今後、20年間に100兆円の関連投資があると予測されている。インドやブラジルなど新興国を含めればさらに大きな市場のはずだ。こうしたスマートグリットの担い手を多く抱える日本は、世界に打って出ることができる。低下した競争力を挽回し、世界での存在感を高めることが可能だ。そしてこれは、日本の産業界に収益をもたらすだけでなく、世界各地に高効率な電力網を張り巡らすことになり、地球規模での省エネルギー、環境問題の改善に大きく貢献することになる。

 ただ、スマートグリット市場での競争は早くも過熱している。勝ち抜くには機器単体や、単独企業ではなく、オールジャパンでの取り組みが必要だ。すでに、日本では官民をあげ連合組織をつくり動き出している。

 「ここで勝ち残らなければ日本の未来は暗い」との危機感を持って、国、企業、大学、研究機関が総力をあげ動き出している。本書ではスマートグリットの概念や、状況を説明するとともに、巨大なスマートグリット市場に挑む企業の取り組みに焦点をあてる。
 2010年6月
 日刊工業新聞特別取材班

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