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実用電気亜鉛めっき技術

定価(税込)  2,640円

著者
サイズ A5判
ページ数 200頁
ISBNコード 978-4-526-06486-9
コード C3057
発行月 2010年06月
ジャンル 金属

内容

亜鉛めっきは多用途向けに広く普及・発展した技術で、近年は6価クロムを使用しない代替技術などの環境対応も進んでいる。この本では、電気亜鉛めっき技術に長年携わってきた著者が基礎からトラブル対策、上手なめっき付けのポイントまでを解説した。めっき実務に役立つ1冊。

青江徹博  著者プロフィール

(あおえ てつひろ)
1936年 鹿児島県に生まれる
1961年 宮崎大学工業化学科卒業
1961年3月 東栄化学(株)(現・デイップソール(株))研究所入社
1961年10月 東栄化学(株)(現・デイップソール(株))退職
1961年10月 日本表面化学(株)設立に参加 研究所、営業技術に勤務
亜鉛めっき処理剤の開発に従事、亜鉛合金めっきの開発を担当、特に亜鉛めっき、亜鉛合金めっきの日本国内、米国、台湾、韓国、中国、東南アジアの拡販に従事。11年間表面技術協会実務表面技術編集委員歴任、6県の技術アドバイザーとJIS原案作成委員に参加
1991年5月 日本表面化学(株)を退職
1991年5月 OEAガルバノ事務所を設立し、今日に至る
〒259-1211 神奈川県平塚市ふじみ野1-33-20

目次

はじめに

第1章 亜鉛の性質と防錆機構
1-1 亜鉛の性質    
1-2 亜鉛の発錆機構と鉄の錆    
1-3 亜鉛めっき浴の分類と特徴    
1-4 まとめ    
Column 1 光沢剤の発展 (1)─シアン化亜鉛めっき光沢剤

第2章 アルカリ性亜鉛めっき(シアン化亜鉛めっき浴とジンケート浴)
2-1 アルカリ性亜鉛めっきの種類と特徴    
2-2 アルカリ性亜鉛めっき浴の構成    
2-3 シアン化亜鉛めっき    
2-3-1 シアン化亜鉛めっき浴の化学    
2-3-2 シアン化亜鉛めっきの処理工程    
2-3-3 M比(金属亜鉛とシアン化ナトリウムの比)    
2-3-4 水酸化ナトリウム    
2-3-5 炭酸ナトリウム    
2-3-6 温度    
2-3-7 光沢剤    
2-3-8 陽極    
2-4 ジンケートめっき       
2-4-1 ジンケート浴の化学    
2-4-2 亜鉛・水酸化ナトリウムと陰極電流効率    
2-4-3 ジンケート浴の管理    
2-5 めっき液の試験法    
2-5-1 ハルセル試験法    
2-5-2 ベントカソード法    
2-5-3 ハーリング-ブルム試験    
2-6 アルカリ亜鉛めっき液の分析    
2-6-1 アルカリ亜鉛めっき液の分析    
2-6-2 ジンケート浴の分析    
Column 2 光沢剤の発展 (2)─ジンケートめっき光沢剤    

第3章 酸性亜鉛めっき
3-1 硫酸亜鉛めっき    
3-2 酸性塩化亜鉛めっき    
3-2-1 酸性塩化亜鉛めっき浴の種類と特性    
3-2-2 酸性塩化亜鉛アンモニウムめっき    
3-2-3 酸性塩化亜鉛カリウムめっき    
3-2-4 酸性塩化亜鉛アンモニウム・カリウム折衷めっき    
3-2-5 酸性塩化亜鉛めっき液の分析    
Column 3 光沢剤の発展 (3)─酸性塩化亜鉛めっき光沢剤

第4章 亜鉛合金めっき
4-1 酸性亜鉛-ニッケル合金めっき    
4-1-1 酸性亜鉛-ニッケル合金めっきの特徴    
4-1-2 標準浴組成と作業条件    
4-1-3 酸性亜鉛-ニッケル合金めっきの耐食性    
4-1-4 最適合金比率と耐食性    
4-2 アルカリ性亜鉛-ニッケル合金めっき    
4-2-1 標準浴組成と作業条件   
4-2-2 亜鉛イオンの供給法    
4-3 亜鉛-鉄合金めっき    
4-3-1 亜鉛-鉄合金めっきの特徴    
4-3-2 亜鉛-鉄合金めっきの耐食性    
4-3-3 最適合金比率と耐食性    
4-4 スズ-亜鉛合金めっき    
4-4-1 合金比率と耐食性    
4-4-2 電流密度との共析率    
4-4-3 金属イオンの供給    
4-5 亜鉛-コバルト合金めっき    
4-6 亜鉛-コバルト-鉄合金めっき    
4-7 亜鉛合金めっきの総合評価    
4-8 まとめ    
Column 4 めっき膜厚測定 (1)─顕微鏡式断面試験法    

第5章 亜鉛めっき浴の特性比較
5-1 陰極電流効率    
5-2 均一電着性    
5-3 耐食性    
5-4 密着性    
5-5 水素脆性    
5-5-1 亜鉛めっき浴種別水素脆化率    
5-5-2 めっき時間と水素脆化率    
5-5-3 塩酸酸洗と水素脆化率    
5-5-4 ベーキングと水素脆性    
5-6 ウイスカ    
5-6-1 亜鉛めっきウイスカの性質    
5-6-2 ウイスカの発生に影響する要因    
5-6-3 亜鉛めっき浴の影響    
5-6-4 ウイスカ成長加速試験    
5-6-5 ウイスカの防止法    
5-7 光沢性    
5-8 皮膜硬度    
5-9 めっき皮膜の2次加工性    
5-10 内部応力    
5-11 まとめと総合特性比較    
Column 5 めっき膜厚測定 (2)─電解式膜厚計    

第6章 亜鉛めっきの前処理
6-1 前処理の概要    
6-1-1 前処理の目的    
6-1-2 汚れの種類と分類    
6-1-3 前処理工程    
6-2 脱脂・洗浄    
6-2-1 溶剤洗浄    
6-2-2 アルカリ浸せき脱脂    
6-3 電解脱脂と初段電解脱脂    
6-4 酸洗・除錆    
6-4-1 酸の種類    
6-4-2 電解酸洗    
6-5 脱スマット    
6-5-1 電解洗浄による脱スマットの成分と機構    
6-5-2 陽極電解洗浄脱スマット処理の特性    
6-5-3 浸せき法による脱スマット法    
6-6 活性化処理    
6-7 水洗    
6-8 まとめ      
Column 6 めっき膜厚測定 (3)─磁力式試験法    

第7章 亜鉛めっきの後処理
7-1 6価クロメート    
7-1-1 6価クロメートの種類    
7-1-2 6価クロメートの特性    
7-1-3 6価クロメート処理液成分    
7-1-4 6価クロメート処理液の管理    
7-2 代替処理剤のもつべき特性    
7-3 3価クロム化成処理    
7-3-1 3価クロム化成処理の利点    
7-3-2 3価クロム化成皮膜処理の問題点    
7-4 3価クロム化成処理以外の化成皮膜    
7-4-1 タンニン酸系化成皮膜    
7-4-2 特殊金属塩系皮膜    
7-4-3 シリカ系皮膜    
7-4-4 セリウム系化成皮膜    
7-4-5 タングステン酸系化成皮膜    
7-4-6 バナジン酸系化成皮膜    
7-4-7 モリブデン酸系化成皮膜    
7-4-8 シランカップリング処理    
7-4-9 亜鉛-高ニッケル合金めっき    
7-4-10 その他の皮膜    
7-5 まとめ    
Column 7 めっき膜厚測定 (4)─渦電流方式(高周波電流)

第8章 亜鉛めっきの不良原因究明と不良事例
8-1 めっき不良原因解明の心得    
8-2 めっき不良原因究明法    
8-3 めっき不良の要因    
8-4 めっき不良の事例    
8-4-1 素地金属の「くわれ」    
8-4-2 めっき槽離脱直後のめっき光沢消失    
8-4-3 1点掛け治具の接点部の不めっき    
8-4-4 納品後の経時めっきふくれ    
8-4-5 めっき膜厚測定の問題    
8-4-6 亜鉛濃度の増加    
8-4-7 ウイスカ    
8-4-8 酸性塩化亜鉛めっき物へのバレル目斑点    
8-4-9 水素脆性    
8-5 亜鉛めっき浴の不純物の影響    
8-6 亜鉛めっき浴中の金属不純物の許容量    
8-7 めっき液中の不純物除去法    
8-7-1 亜鉛末処理    
8-7-2 活性炭処理    
8-7-3 硫化物添加処理    
8-7-4 弱電解処理    
8-8 後処理の金属不純物許容量    
8-9 まとめ    147

Column 8 耐食性試験 (1)─中性塩水噴霧試験    

第9章 亜鉛めっきの排水処理
9-1 シアン化亜鉛めっき浴の排水処理    
9-1-1 シアンの分解    
9-1-2 亜鉛沈殿処理    
9-1-3 鉄シアン錯塩の処理    
9-2 ジンケート浴の排水処理    
9-3 酸性塩化亜鉛めっき浴の排水処理    
9-3-1 塩化亜鉛アンモニウム浴    
9-3-2 塩化亜鉛カリウム浴    
9-3-3 塩化亜鉛アンモニウム-カリウム折衷浴    
9-3-4 塩化亜鉛めっき排水処理性総合比較    
9-4 6価クロムの排水処理    
9-5 3価クロム化成処理液の排水処理    
9-6 その他の有害物質除去    
9-6-1 有機物の除去    
9-6-2 フッ素の除去    
9-6-3 ホウ酸の除去    
9-6-4 重金属の除去    
9-7 まとめ    
Column 9 耐食性試験 (2)─複合サイクル試験    

第10章 亜鉛めっきの改善集
10-1 縦・横組立て式治具    
10-2 亜鉛めっきの補助陽極つき治具    
10-3 バイポーラ利用補助陽極      
10-4 引っ掛け作業を容易にする、治具180°回転装置    
10-5 穴がなく、引っ掛けできない品物の静止めっき用治具
10-6 カップ状品物をめっきするための「浮き」利用治具    
10-7 底抜き式反転不要遠心乾燥機     
10-8 2種類の品物に利用できる治具    
10-9 チョン掛け引っ掛けを2点接点にする    
10-10 チョン掛け引っ掛けの品物落下防止にステンレス製バネや針金を
10-11 全自動エレベータ静止めっき装置でストライクめっき
10-12 サイホンを利用した水抜き付き治具    
10-13 陰極と陽極の長さ    
10-14 治具の補修に熱収縮チューブ    
10-15 回転めっきの水洗性を向上させる方法    
10-16 ジンケート亜鉛めっきで陽極に鉄板を使用    
10-17 めっき液分析用サンプリング法    
10-18 数個のハルセルを同時に試験する方法    
10-19 試験片に均一膜厚標準板の作製法    
10-20 ロングハルセル    
10-21 ハルセルパネルの写真撮影法    
10-22 酸性亜鉛めっき液の増量を防止する方法    
10-23 ポンプを使用せずに液体を移送する    
10-24 電流密度計      
10-25 陽極の異常溶解防止法    
10-26 亜鉛めっき銅・銅合金製治具の先端が針状にならない工夫
10-27 スポット溶接合わせ板や止まり穴からのしみ出し防止法

索引

はじめに

 亜鉛めっきは自動車部品、電子部品、家庭用品、建材などに広範囲に使用されている。近年、特に鉄の防錆処理法として塗装と並んで重要な地位を占めている。その第1の理由は、亜鉛めっきが鉄の表面を物理的に被覆して、鉄の腐食原因である水と酸素を鉄の表面から遮断するだけでなく、鉄金属の大気中での腐食に対して亜鉛が先に腐食して鉄を電子的に防錆するいわゆる「犠牲防食効果」を発揮する。その結果、亜鉛めっき層に素地鉄が露出する欠陥があっても鉄の錆の発生を防止する。また亜鉛金属は無害で安価な金属であるため、他のどのめっきよりも比較的簡単な操作でめっきが可能である。

 第2の理由として、光沢亜鉛めっき法の改良発達があげられる。めっき光沢剤の研究開発とクロメート仕上げ効果が相乗して亜鉛めっきの美観を高める。そして第3の理由としては、金属の単価が鉄、鉛に次いで安価で、市場的に亜鉛の単価が比較的安定しているため、他のめっきよりめっきコストが安い点も見逃せない。

 さらに亜鉛めっきほど時代の要請に応えてそのシステムを変化させたものはない。このため多種類の亜鉛めっき浴が次々と開発された。たとえば、最も歴史の古い鉄鋼メーカーで使用する硫酸浴に始まり、一般めっき工場で使用されている高シアン化亜鉛めっき浴、低・中シアン化亜鉛めっき浴、ジンケート浴、酸性塩化亜鉛浴、そのほかピロリン酸亜鉛浴、グルコン酸亜鉛浴、ホウフッ化亜鉛浴など、各種亜鉛めっきが開発された。さらに、冬場凍結防止に道路に散布される岩塩類の融雪剤による塩害対策のために亜鉛めっきより優れた耐食性を求められるようになり、この要望に対応して亜鉛系の合金めっきが開発された。その種類も亜鉛-鉄合金めっき、亜鉛-ニッケル合金めっき、亜鉛-コバルト合金めっき、スズ-亜鉛合金めっきなどそれぞれ亜鉛の数倍から数十倍以上の耐食性を有するにいたり、今日現場で自動車部品や家電部品としても採用されている。

 亜鉛めっきについて述べるとき重要なことは、亜鉛の後処理であるクロメート処理がある。クロメート皮膜は亜鉛めっきの耐食性を大きく強化する。今日ではその種類も6価クロメート剤の場合、光沢、有色、黒色、緑色など文字どおり多彩である。そのうえクロメート皮膜の耐食性は亜鉛めっきそのものの耐食性をはるかにしのぐ。このクロメート処理が亜鉛めっきの価値を大いに高めている。しかし、今日6価クロムの排出に関しては各種法律により規制され、これらの規制をクリアするため、排水処理なしに6価クロム液を放流廃棄することはできない。

 さらにここにきて、6価クロメート皮膜が酸性雨に溶解されて地下水を汚染し、動植物に蓄積されてひいては人体に悪影響を与えるおそれと、6価クロメート皮膜中の可溶性6価クロムイオンが人の皮膚に触れるとアレルギーや潰瘍の原因となり、ひいては発癌性の疑いがある問題から、ELV指令(使用済み車両欧州議会指令)、WEEE指令(廃電子電気機器)、RoHS指令(有害物質使用制限)など世界的規制が行われ、6価クロムを含まない亜鉛の耐食性皮膜が求められるようになった。今日ではこの規制に従い3価クロム化成処理剤が開発されて、6価クロメートにとって代わり自動車メーカーや家電メーカーで広く採用されている。
 
 以上亜鉛めっきの特性について記したが、本書が亜鉛めっきに従事する技術者、作業者の良き指針となることを願ってやまない。本書を執筆するにあたり、(有)ファイブイーの榎本英彦先生に多大なるご指導とサゼッションをいただきましたことを心より感謝いたします。また本書の企画出版にあたり日刊工業新聞社の書籍編集部の三沢薫氏のご支援をいただいたことにお礼申し上げます。

2010年4月 青江徹博

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