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おもしろサイエンス
アルミの科学

定価(税込)  1,650円

監修
編著
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-06379-4
コード C3034
発行月 2009年12月
ジャンル ビジネス

内容

アルミは、鉄より軽く、加工のしやすさ、優れた耐食性、熱や電気の伝導率が高いという特徴があり、各種の用途に使われその応用範囲を広げている。またリサイクルの優等生であり、環境面からも期待される。本書は多面的な顔をもつアルミを科学的な視点で面白く解説していく。

山口英一  著者プロフィール

山口英一(やまぐち えいいち) 
1929年東京生まれ、79歳。慶応大学卒、法務省を経て日立ハイテクノロジー(旧・日製産業)で、キドカラ—並びに希土類セラミックの研究開発に従事、また、自動車用ラジエタフィン材や、自動車用粉末治金、原子炉の制御棒の研究開発を従事するとともに、アルミ合金、アルミ電線の開発を行う。その後、日鉱金属商事を経て、現在、アイキョー・インターナショナル・コンサルタント代表。国際生産工学アカデミー、国際地方開発アカデミーのロシア正会員。

目次

はじめに

第1章 アルミニウム発見!その特性はすばらしかった
アルミニウムの元素構造は、「最も素直な構造」
 ——陽子核の周りを13個の電子が3重に取り巻く
アルミニウムはその正体がなかなかわからなかった
 ——他の元素と結合しやすい
他の元素としっかり結びついて隠れていたアルミニウム
 ——だから、まず明礬から使われた
アルミの発見は「明礬の中に新しい金属があるに違いない」との確信から
 ——アルミニウムの登場は画期的
日本は中国、アメリカに次いで世界で3番目にアルミニウムの消費が多い
 ——一人当たりの消費量も年間約30キログラム
他の元素が添加されると、その魅力は際限なく広がる
 ——アルミニウム合金は身近なものから宇宙まで
アルミニウムが都市鉱山として捨てられ埋もれている
 ——アルミニウムの地球埋蔵量は約200年!?
アルミ箔はリサイクルされずに捨てられている
 ——その量は1年間に約7万トン126億円分の新地金ができる
アルミニウムはリサイクルの優等生
 ——アルミ缶1個のリサイクルで、40ワットの電球10時間もの電力が節約できる

第2章 アルミニウムの原料、精錬・生産・加工
ボーキサイトは、熱帯地方で激しい風化作用の結果できる
 ——氷晶石は希少鉱物
ボーキサイトはアルミニウムの大切な原料
 ——4トンのボーキサイトから1トンのアルミ
アルミニウムの製造法は、バイヤー法と、ホール・エルー法の組み合わせ
 ——高純度を得る方法も
電解法は海を隔てた二人がほぼ同時に開発した
 ——二人は同じ年に生まれ、工場を作り、亡くなった
アルミでは“ドロス”を取ることが大事
 ——アルミの仕上がりを悪くしてしまうドロス
アルミニウムの製造加工工程には「圧延」「押出」「鋳造」「鍛造」などがある
鋳型に流し込んで冷却し、いろいろな形状に加工したものを「鋳造合金」
 ——たたいて加工したものは「鍛造合金」
アルミの接合には接合棒を高速で回転させる「摩擦撹拌接合」などがある
 ——表面処理の代表は「酸化陽極皮膜」
粒経、濃度、着火エネルギー、酸素濃度の条件が揃うとアルミ粉塵爆発のリスクが高くなる
アルミ粉防火対策は、常に清掃、飛散させず、スパーク火花を出さず、火気など近づけず

第3章 応用分野が広がるアルミニウムの未来
自動車のアルミニウム使用量は100キログラム超
 ——欧米の自動車の方が日本よりアルミは2倍も多い
バイクでは軽量化とともにアルミのデザイン性能の良さも注目の的
 ——自転車もアルミで軽量
海上保安庁は70隻以上の全アルミニウム製巡視船を建造
 ——航空機の高性能化にアルミリチウム系合金が
アルミ車両は1952年にロンドンの地下鉄で初めて採用
 ——日本のアルミ車両も1万車両以上
今では住宅の土台から屋根までアルミ
 ——とくに、「アルミ樹脂複合サッシ」は需要が伸びている
金沢駅東広場のアルミニウム製トラス構造体は
 高さ30m、幅80m、アルミ使用量約800トン
アルミ缶はデビューするや、たちまち人気もの
 ——消費者、販売者、製造者にもメリットが大きい
アルミ缶が片手で握り潰せるのはコストを下げるための努力の結果
アルミニウムは送電線を経済的なものにした
 ——意外!?プールもアルミ製が多いということ
あなどれない純アルミニウム硬貨の「一円玉」
 ——1円を造るのに実は2倍近いコストがかかる
アルミニウムは「橋」「防護柵」「照明ポール」
 「水門」など、土木にも多く活躍している
日用品として多種多様に使われる
 ——包装材としてアルミ箔は、アルミニウムの特質をフルに発揮
アルミニウムは印刷にもなくてはならないもの
 ——エアコン・フィン、デジカメ・ボディ、医療機器等々

コラム
22歳で博士号をとったエールステッド
「アルミニウムタスクフォース」
アルミニウムは「無害」「衛生」的
 ——体内に入っても約99%はそのまま排出される
アルミニウムは、健康な人の普通の食生活では
 まったく害はなく、心配のないもの
アルミニウム粉塵爆発
イーレムと原子核の生成
アルミニウムは植物の成長に影響を及ぼす重要な要素
 ——アルミニウム耐性植物も存在する
ホールとエルー
発見の陰には不運な発見も
旧アルミ工場での爆発

はじめに

いろいろな年代の人に「アルミニウムで連想するもの」と聞くと、大方の人は、すぐには答えてくれません。考えこんでしまうのです。それならば——ということで。今度は「アルミ」で聞くと、すぐに答えが返ってきます。最も多かった答えは「アルミ箔」と「アルミ缶」でした。

つまり、私たちは、「アルミニウム」という言葉を意外に身近なものと感じておらず、「アルミ」という言葉の方を何気なく日常的に使っています。これはやはり、“フルネーム”で呼ぶことがほとんどなく、しかも○○ニウムとなると学術的な感じが強くなって、馴染みにくいためなのかもしれません。

そこで、フッと気付いたことがあります。アルミニウム自体もまた、太古から人間の身近に存在し使われていたというのに、化学的にそれが何なのか、つい100年余り前まで誰にもわかりませんでした。その “経歴”が、なんとなく、「アルミ」という呼び名にも通じるモノがあるということです。

そして、アルミ自身、実に不思議なものですから、なおさら興味が湧いてきます。アルミの不思議の大きな原因は、アルミが誰とでもすぐに“仲良しになる”ことです。仲良しになったら、その相手とすぐに手を握り、肩を組み合ってしまいます。そして、一緒に住んでしまうのです。こうなると、なかなかアルミだけを探すことができにくくなります。

結局、アルミはそのようにして誰にも発見されず、人間の目から数千年も隠れてきたのです。もちろん、人間がその正体を暴こうとヤッ気なっていたのはいうまでもありません。こうなると、まるで“指名手配ドラマ”のようです。犯人を警察が必死になって追う、ちょっとしたサスペンスドラマです。しかし、それでも、なかなか見つかりません。そこで人間はアルミを、「粘土からの銀」などとも呼んだりしました。
 
そして、ついに発見されることになりますが、そのきっかけは、わずか数ミリメートルという大きさでした。刑事ドラマ風に言うと、数ミリの手がかりです。しかし、これが決定的なものとなり、ついに、その正体が明らかにされます。そして、発見されるやいなや、数十年で、今度はアルミニウムの大量生産が始まりました。つまり、アッという間に人気者になり、アルミニウムは、一気に老若男女にまで知られる、いわば“国民的(世界的)アイドル”にまでなったのです。
そのアイドルになる経緯にも不思議があります。アイドルに育てるキッカケをつくった二人の男性が、大西洋をはさんで同じ年にこのアイドルに目をつけ、そして世間にアピールしました。その二人の男性は、お互い一面識もないのに同じ年に生まれ、同じような活動をし、そして同じ年に死んだのです。これは不思議です。しかし、この二人の男性がいなかったら、このアイドルは世界的になかなか売りに出されはしなかったでしょう。

アイドルにはニックネームがつきものです。それが「アルミ」です。世界はいざ知らず、日本ではこのニックネームがもっぱら浸透しました。ですから、本名の「アルミニウム」を知っていても、ほとんどの人は口にしなくなりました。もちろん、今でも依然、アイドルですし、当然のことのように“アイドル名”で呼ばれています。

このようにしてアルミニウムというものを眺めると、なんとも面白いものです。本書は、そのような眺め方で、つまり、わかりやすく興味が持ちやすいという点に力を入れてまとめたものです。監修は、アルミ電線の開発などに携わった山口英一氏です。また、本企画の実現に尽力していただいた日刊工業新聞社出版局の藤井浩氏には心からお礼を申し上げます。

2009年12月
アルミと生活研究会

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