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災害列島日本の地盤を探る

定価(税込)  2,640円

著者
サイズ A5判
ページ数 272頁
ISBNコード 978-4-526-06370-1
コード C3050
発行月 2009年12月
ジャンル 環境

内容

多くの自然災害に常に関連してくるのが地盤・土壌。地滑り、崖崩れ、液状化などは、いずれも地盤環境に関連したものである。本書は、その災害と地盤の関係について、それぞれの地盤の仕組みから説き起こし、その謎に迫るもの。

前野昌弘  著者プロフィール

(兵庫県神戸市生まれ)

《経歴》1956年 東京大学大学院工学系研究科修了(工学博士)。



化学系企業の取締役研究所長を経て東京理科大学に招聘され、同大学材料工学科教授(兼)図書館長として勤務。

《専攻分野》地質鉱物・材料工学

《研究実績》日本の天然資源を原料として、数多くの工業製品の研究開発に成功、そのうち十数件が企業化され、その国産技術と製品は世界数十か国へ輸出されている。

また著者の研究が米国の世界的に著名なコロイド科学者R. K. Iler教授にユニークな研究と評価され、米国イリノイ州立大学客員教授として招聘されて研究指導にあたる。

現在、公立研究所の研究指導員。

《論文と特許》日本化学会などの学会誌に数十件の研究論文発表、発明特許数100件以上。

《著書》専門誌に総説と解説20件以上発表のほか、単行本の著書20冊以上。

目次

目次



はじめに

第1章 地盤とは何か?

─地盤の基礎知識─



1 地盤の定義

(1)地球規模から見た地盤

(2)地殻の構造

(3)リソスフィアとアセノスフィア

(4)変化する地盤

2 地盤の構成

(1)砕屑物の粒子の大きさの区分

3 地球の年齢

(1)化石が語る

(2)放射性元素から知る

4 縄文海進

5 地盤の生い立ち

(1)グリーンタフの誕生

(2)グリーンタフ造山運動の仕組み

6 地盤の性質

(1)柱状図の例

(2)地盤の強さ

(3)コンシステンシー限界

7 地盤の成り立ち

(1)川がつくる地形

(2)沖積低地

(3)沖積平野



第2章 崩れる地盤のナゾに迫る

─崖崩れと地すべり─

1 斜面地盤の災害

(1)新潟県中越地震

(2)兵庫県南部地震

2 地すべりの地形

3 地すべりの原因

(1)地すべりの起こる理由

(2)崖崩れの起こる理由

4 地すべりが起こる条件

5 地すべりと崖崩れ

6 地すべりの種類

7 斜面地盤の災害対策

(1)宅地を選ぶ際に避けるべき場所

(2)地すべり対策工法



第3章 沈む地盤のナゾに迫る

─地盤沈下─

1 地盤沈下による被害

2 地盤沈下とは?

3 地盤沈下と地下水

4 地盤沈下の原理

5 地盤沈下と沖積層

6 地盤沈下の対策



第4章 流れる地盤のナゾに迫る

─液状化─

1 軟弱地盤と液状化

2 液状化による被害

(1)地盤の横すべり

(2)新潟地震

(3)兵庫県南部地震

(4)人災による液状化

3 液状化が起こる条件

4 液状化の原理

5 液状化と粘土

6 液状化の対策



第5章 揺れる地盤のナゾに迫る

─地 震─

1 地震とは何か?

─地震の基礎知識─

(1)地震の災害

(2)地震の正体を探る

2 地震の起こる理由

(1)地盤を動かすプレート

(2)プレート間地震とプレート内地震

3 地震の起こる原因

(1)断層

(2)断層と地震

(3)活断層

(4)日本列島の活断層

(5)兵庫県南部地震の活断層

(6)活断層と地震

(7)活断層の活動度

4 地震対策

(1)国による地震対策

(2)地震観測の強化地域

(3)地震防災

5 津波

(1)津波の被害

(2)津波の原因

(3)津波の発生理由

(4)津波地震

(5)津波の対策



引用文献



おわりに

はじめに

はじめに



「地盤」とは、ふつう耳慣れない言葉かも知れませんが、私たち人間が地球上で生活する場所を表現するものです。地盤は、動植物を育て、地下水を蓄え、農業生産を行い、色々な構造物を支える場所として、人間生活に直接関わっています。自然災害の多くが、地震、地すべり、崖崩れ、地盤沈下、液状化などで代表される地盤そのものの災害なのです。このような「地盤」をキーワードとして、本書の内容としては、まず第1章に、地盤とは何かについて、基礎知識として、地盤そのものの生い立ち・性質・成り立ちなどについて記述し、第2章以下で、地盤災害の地すべり、地盤沈下、液状化、地震などについて記述しました。そして、これらの地盤災害のうち、最も大きな災害を及ぼす地震をメインテーマとして詳述しました。地震については、まず、予備知識として地震について解説し、そのうえで、地盤の問題として「活断層」を中心に説明するという構成にしました。

災害列島日本といわれるとおり、日本は昔からしばしば大規模な自然災害に見舞われてきました。この国土に住み続けるかぎり、私たちは、いつどこで大災害に遭うかわからないという宿命を背負わされています。しかもそれは、ある日突然恐ろしい牙をむいて襲いかかってくるのです。日本は、世界に比べて、きわめて自然災害の多い国です。なかでも、地震に由来する地盤災害である地すべり、崖崩れ、液状化、津波などの発生のたびに、数多くの犠牲者を出してきました。また、日本列島の位置する地理的条件により、台風、洪水、豪雪など、自然災害の多い国として、昔から日本人は災害に苦しめられ、災害とともに生きてきました。

私たち日本人は、日本列島に住み、昔から同じ地盤と自然条件の中で生活をしています。しかし近年、その生活環境は大きく変化しています。

1960年代に始まった高度成長によって、都市は立体的に過密化するとともに、各地で人為による環境の改変、国土の変貌がもたらされ、その結果、地震や集中豪雨など、自然の急変に対して、きわめて脆い地盤環境が築かれてきました。バブルの追い風に乗って日本各地で巨大な開発が進められ、海岸線は各地で切り刻まれ、山は削られ、埋立地は海を減らして人工島がつくられてきました。その勢いはまだ続き、ダムがつくられ、地下道や地下鉄が拡大され、急傾斜地の地すべり地帯や活断層の上に住宅、高層マンションなどが続々と建設されています。

地球がつくって与えてくれた自然を改造するのは、人間の叡智であり、それこそが人間の進歩だという考え方があります。しかし、こうして人間が自然を改造したり、破壊したおごりによって、より大きな自然のしっぺ返しを受けたのが、阪神淡路大震災のように突然襲ってきた自然災害でした。自然には、目で見える山や川だけではなくて、目に見えない地球の営み、つまり地震や火山噴火を起こす地球内部の動きがあるのです。

本書は、私たちが住んでいる日本を支える「地盤」が、どのようにして造られ、長い年月の中でどう変貌し、災害を起こしてきたのか、そして私たちは今後どう対処したらよいかなど、自然災害について「地盤」を中心に考えていきたいと思います。

本書は、身近の問題として誰もが知っておくべきテーマとして、一般の人々はもちろんのこと、地学・工学の学生や技術者の方々、さらに自然災害の対策に関わる方々を対象として記述しました。

本書は、専門分野が広いため、できるだけ専門用語を用いず、平易な言葉で説明するように努めました。さらに、本文の内容をさらに興味深く知るために随所にコラムを挿入しました。

本書の出版にあたり日刊工業新聞社の鈴木徹氏には、企画から校正・出版に至るまで貴重なアドバイスをいただき、終始お世話になりました。同氏に対し、心から感謝の意を表します。

本書をまとめるにあたり、多くの公的機関・大学・知人や友人より貴重な資料のご提供をいただき、さらに、多くの有益な文献資料を参考にさせていただきました。これらの方々および著者に対し、厚く御礼申し上げます。

2009年爽秋 前野 昌弘

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