内容
射出成形加工現場で出くわすさまざまな疑問や問題、トラブル、技術上の課題などに対する解答をわかりやすく解説した射出成形のための実務書。一問一答を見開き2ページで掲載、読者が知りたい解がダイレクトでわかるようになっている。
目次
目 次
はじめに
第1章 射出成形のトラブル例と成形の基礎
1―1 トラブル例
射出成形の不良対策遠隔操作/古い機械での成形条件が新しい機械で再現できない(射出制御問題)/成形品のそりの言い争い
1―2 射出成形の基礎
射出成形の基本は何ですか?/成形技術とは?/成形不良対策に機械操作技術は重要ですか?/射出成形の不良の種類
第2章 射出成形機と金型内樹脂挙動
2―1 成形機
トグル機の型締め力/トグル機ではバリは発生し難い?/成形品に必要な機械選定(1)型締め側/成形品に必要な機械選定(2)射出側
2―2 射出と保圧
射出圧力と射出速度/射出と保圧/射出波形の見方/射出速度が一定速度に制御される理由
2―3 保圧切り換えと保圧工程
保圧切り換え方法/ 保圧切り換え位置と金型内圧力/クッションと成形品重量の関係/保圧切り換え位置の調整方法
2―4 保圧とゲートシール
保圧時間の設定とゲートシール/保圧時間の設定方法/高い保圧と軽い成形品/ゲートシール時間を強制的に変える/ゲートシールとクッションとばらつき
2―5 成形と樹脂の流れ
ファウンテンフローとは/射出速度と溶融樹脂
2―6 サイクル
賃率とは何でしょう?/成形サイクルはどうやって決まりますか?/冷却時間の計算方法
2―7 スクリューの基本
押出し機と射出成形機のスクリューの違い/可塑化・計量/可塑化能力の計算方法/スクリュー径と可塑化能力/スクリュー圧縮比/材料変更時のシリンダー内残留樹脂量
2―8 可塑化
スクリュー内可塑化状況/スクリュー設計の良し悪し/溝付きシリンダー供給部/シリンダーホッパー部温度設定/安定した可塑化条件
2―9 可塑化過去トラブル例
引張強度の低下/添加剤と可塑化性能/同一機械での可塑化時間の違い
2―10 圧縮成形
射出圧縮成形の種類/射出成形と圧縮成形
第3章 射出成形に関する工学的基礎
3―1 熱
温度と熱の違いは?/熱伝導率と温度伝導率の違いは?
3―2 粘度
せん断速度?/粘度/非ニュートン流体の粘度/樹脂の粘度測定/粘度の温度依存性/粘度のせん断速度依存性
3―3 MFRと粘度補正
見掛けの粘度、見掛けのせん断速度/見掛けのせん断応力とは?/MFRと粘度/MFRから粘度を計算できますか?
3―4 収縮率とPvT
収縮率と先膨張係数の違いは何ですか?/PvT線図とはどんなものですか?/PvT線図と収縮率の関係/収縮率TDとMD/成形条件と収縮率/成形品肉厚と収縮率
第4章 射出成形不良と対策
4―1 ショートショット
ショートショットの原因/ガス抜き不良によるショートショット対策/速度によるリブ部ショートショット対策/リブ部ショートショット対策
4―2 バリ
バリと型締め力/バリと合わせ/樹脂温度を上げて直すバリ/多段保圧による薄バリ対策(流動末端のバリ)/薄いバリの条件対策方法(流動途中のバリ)
4―3 ひけとボイド
ひけとボイド/圧力とひけ、ボイド/リブ厚さとひけ/リブ、ボスのひけ対策
4―4 厚肉成形
厚肉成形品のひけとボイド対策/超低速射出速度制御
4―5 そり
そりの原因/肉厚不均一成形品のそり/そりの原因発生場所
4―6 箱そり
箱状成形品のそり原因/箱状成形品の角R/箱状成形品の間違いそり対策/箱状成形品のそり対策/箱の上そり下そり
4―7 銀条
スクリューが巻き込む銀条/金型が原因の銀条/銀条と糸引き
4―8 細ランナー
ランナー細小化による成形安定化/ランナー細小化での射出時間変化/ランナー細小化でのフローマーク
4―9 ウエルドライン、フローマーク
フローマーク/ウエルドライン部の線/ウエルドライン部の盛り上がり
4―10 寸法
工程能力とは/工程能力の改善方法/成形品の寸法の調整方法/ゲート付近の寸法調整
4―11 異物
成形品表面異物の発生原因/材料からの異物発生/スクリューシリンダーからの異物
4―12 安定成形
梯子状多数個取りの安定成形/多数個取りの流動挙動差/計量位置不安定成形/チェック弁異常時の対処
参考文献
はじめに
はじめに
プラスチックはすでに我々の生活には密着したものとなっており、プラスチックなしには今の我々の生活は考えられないものとなっている。毎日手放さない携帯電話、通勤で使う車、電車、バスの中にも多くのプラスチックが使われており、会社ではパソコンからコピー機、ファックス、電話、帰り道のスーパー、コンビニではポリ袋、PETボトル、家に帰ればテレビ、冷蔵庫、洗濯機まで、ありとあらゆるものにプラスチックは使われている。それらのプラスチック部品は、いろいろな成形方法で作られているが、そのなかでも射出成形は中心的位置づけにある。その成形の原理は簡単であり、金型のなかに溶けたプラスチックを流し込んで冷やして取り出すものである。しかし、実際には射出成形には、プラスチックや機械や金型、成形原理などいろいろなことを理解しなければ、対策できない不良がたくさんある。最近では、コンピュータを使ったCAE解析なども一般的になってきているが、まだまだ不良解析をこれらに頼り切るわけにはいかないのが現実である。また、これらの原理は理論的にもなかなか難しいものがあり、実際に現場で対策に携わっている人には難解なところもある。しかし、これが少しでもわかってくると、成形に対する理解と、成形不良の対策の考え方も変わってくるものと思われる。
次ページ以降にいくつかの成形問題の過去の実例を紹介するが、これらは読者のなかにも同様の経験したことがある人もいるであろう。また、いくつかの成形不良の項においても、過去問題の実例を紹介しているが、これらの実例から、不良原因に対してもいろいろな対策案があることもわかってくるであろう。
