買い物かごへ

今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしい気象の本

定価(税込)  1,540円

著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-06299-5
コード C3034
発行月 2009年07月
ジャンル ビジネス 環境

内容

40年あまり気象観測や天気予報に携わってきた著者が、気象に関する幅広い知識をわかりやすく、かつ正確に解説する。天気図や気象衛星写真、観測結果のグラフなど、ビジュアルを多用して読者の理解を容易にしている。

目次

目次



はじめに

第1章 気温って何だろう

1 一日の気温が変化するのはなぜ?「太陽放射と地球放射のエネルギーが気温を左右」

2 高緯度ほど気温は低い「太陽放射を受ける地表面積の違い」

3 地球を生命圏にする温室効果気体「地球大気が14度になる理由」

4 太陽放射と地球の構造「物体は固有の波長の電磁波を放射する」

5 日本の四季を生む太陽放射エネルギー「地球自転軸の傾きと楕円運動」

6 熱の南北輸送のしくみとはたらき「地球放射エネルギーは高緯度で不足、低緯度で過剰」

7 気温はどのように決まるのか?「気温の決定要素」

8 熱の伝わり方は3つある「放射・熱伝導・対流」

9 早朝に気温が冷え込むのはなぜ?「放射冷却を促す要因」

10 内陸平野部の放射冷却による降霜「地表面の温度は気温より5度以上も低下する」

第2章 雲・雨・雪ができるしくみ

11 地球全体の熱と水のバランスをとっている水蒸気「地球上の水の分布」

12 水蒸気の姿が消えた「気体の相変化」

13 姿の見えない水蒸気を探る「温度と飽和水蒸気圧」

14 雲はどのようにしてできるの?「雲粒形成のしくみ」

15 雲の分布で水蒸気の広がりがわかる「10種類もある雲の形」

16 暖かい雨ができるまで「雨粒は衝突して大きくなる」

17 冷たい雨ができるまで「雨はあられや雪片が融けたもの」

18 雷が起きるしくみ「電光の通り道は3万度で加熱される」

19 ひょうは透明と不透明の氷の膜が取り巻いて成長する「ひょうの成長過程」

20 エマグラムの活用「大気の状態を図で考える」

21 エネルギー不滅の法則・空気塊の体積変化と温度の変化「熱力学第1法則」

22 高度によって乾燥空気塊の温度は変わるが温位は変わらない「乾燥断熱変化と温位」

23 湿潤断熱減率と乾燥断熱減率の違い「湿潤断熱変化と相当温位」

24 断熱昇温が高温の記録に拍車をかける「山越え気流とフェーン現象」

25 「大気の状態が不安定となっています」とは「大気の状態の安定・不安定」

26 大気の状態を表す環境パラメーター「各種の安定指数」

27 下層が湿っているのが日本の大気成層の特徴「潜在不安定と対流不安定」

28 CAPE(ケープ)って何?「対流有効位置エネルギーで天候を予測」

29 霧は地面に接した雲である!?「霧の種類と発生のしくみ」

第3章 気圧と風の関係を探る

30 季節風はなぜ吹くの?「液体と固体の暖まり方の違いが風を発生させる」

31 「背の低い」高気圧って何?「冬季シベリア高気圧は500hPaでは低圧部になっている」

32 日本海側の山雪・里雪とは「冬型の気圧配置と寒気の吹き出し」

33 夏の高気圧は背が高い「北太平洋高気圧の構造」

34 もう一つの夏の高気圧「チベット高気圧の構造」

35 気圧は上方にある空気の重みに相当する「静力学平衡の式と層厚」

36 上層の風は気圧の北への傾きで吹いている「気圧傾度と地衡風」

37 地衡風を計算しよう「温度風ってなんだろう」

38 コリオリ力ってなんだ?「地球では進行方向の右側に働く力」

39 気象のバランスをとるジェット気流の蛇行「ジェット気流の成因」

第4章 さまざまな気象と予報

40 低気圧は西から東へ移動する波動「気象じょう乱とは」

41 気象をいろんな方法で見てみよう「天気図・気象衛星」

42 コンピュータが解析する大気の鉛直構造「高層天気図・断面図」

43 天気の「異常」に気づくためには「雲を観察する」

44 温帯低気圧のライフサイクルを見る「温帯低気圧の発生と発達のメカニズム」

45 温帯低気圧の最盛期と閉塞過程「上層のトラフが西にあると発達する」

46 温帯低気圧の発達は何を見るとわかる(1)「トラフの西傾と下層の暖気移流」

47 温帯低気圧の発達は何を見るとわかる(2)「渦度とジェット気流」

48 温帯低気圧に伴う温暖前線と寒冷前線の雲「アナフロント・カタフロント」

49 寒冷型は「人」に見え、温暖型は「入」に見える「閉塞前線のタイプ」

50 寒冷渦は成層圏では暖かく対流圏では冷たい「5月にやってくる寒冷渦は降ひょうに注意」

51 天気を読む・天気図を翻訳する「天気予報の環境と数値予報資料」

52 気象は鉛直構造をイメージするのが難しい「天気系概念モデル」

53 前線でなぜ雲が発生・発達するのか?「前線の形成と強化」

54 水蒸気の帯に沿ってあらわれる梅雨前線「梅雨前線は水蒸気前線」

55 地上の風はどのように吹く?「地表面摩擦と地形の影響」

56 高層と地上予想図の見方「実況把握と24時間予想図」

57 雲や降水を作る上昇流とは何か?「鉛直P速度と天気図」

58 赤外画像の読み方のポイント「気象衛星赤外画像」

59 水蒸気画像で観測できること「水蒸気画像の暗域と明域」

第5章 気象災害につながる現象を考える

60 降水量と川の水位「河川増水の危険」

61 激しい雨をもたらす雲の発達のしくみ「クラウドクラスターの発生」

62 狭い範囲に猛烈な雨を降らせるクラウドセル「メソβスケールの現象」

63 クラウドセルが発生・維持する大気の状態の特徴「シアーラインに注意」

64 関東南部の対流雲の形成「シアーラインに向かう風」

65 台風の雨雲はらせん状になっている「スパイラルバンドの形成」

66 台風が発達するのはなぜ?「自己励起機構が台風を強くする」

【コラム】

生命誕生とバランス

地表面温度と海面温度の分布を覚える

水蒸気を探る

毎年のように塗り替えられる雨の記録

巻末資料

参考文献

索引

はじめに

はじめに

私たちが生きる地球には、あらゆる生命を生かし育むのにほど良い環境が作られています。その環境は45億年とも言われる途方もない時間をかけてできあがったもので、その大気中の温室効果気体の働きによって、人間や生物にとってほど良い暖かさが維持されています。このことは、地球環境に関心を寄せている人や気象に興味をもっている人なら誰でも知っています。しかし、私たち一人ひとりの寿命に比べて、途方もないほど長い時間をかけて少しずつ変わってきている地球環境を実感することは、そう簡単ではありません。それは、何をもって地球が温暖化していると言えるのか。また、どのようなしくみで地球が温暖化するのかが理解できないということがあると思います。

2008年、日本列島はあちらこちらで1時間に100mmを超える激しい雨が降りました。私たちは、このようなとき何か変だと感じています。また、このような体験は生まれてはじめてだと言います。しかし、地球環境の課題と違うのは、日本列島で08年に起きた1時間に100mmを超える激しい雨がどのようなものであったかを知っている人、その影響を直接、間接的に受けた人が圧倒的に多いということです。私たちは、まず理解しやすい、実感しやすい、できれば体験したことをテーマにして、これまでわかってきている地球大気のふるまいや、そのふるまいをコントロールしているしくみを考え、そこで得たことを下敷きにして、地球環境の課題を考えてみてはどうでしょうか。

さて、私たちが異常だと感じる08年の記録的な激しい雨がどうして降ったのかということですが、これを考える手がかりとして、こんなことを調べてみます。

地球は赤道付近で最も多くの太陽エネルギーを受けており、北極や南極に行くほど少なくなっています。もし、このような状態がずっと続いていたら、地球という惑星に生命圏はできなかったかもしれません。ところが、地球には過剰である赤道の熱エネルギーを過小である北極へ向けて輸送するしくみが準備されています。このことによって、地球の生命圏は地球一杯に大きく広がったと言ってもよいでしょう。

さて、先ほどの日本列島のあちこちに発生した激しい雨のお話に戻りますが、地表面の温度は、赤道付近で最も高く、高緯度になるほど低くなっています。しかし、私たちの身近なところでもしばしば、温度分布がくずれることがあります。くずれたかどうかは、お天気の変化に敏感な人は感じるでしょうが、普通は、地球上の温度をくまなく観測して図にして見ないとわかりません。通常は、ほぼ緯度線にそって真っ直ぐ伸びた温度線が、南北に大きく蛇行をして、これまで低いはずの地域の温度が高くなることがあります。実は、このような状態は、あちらこちらで起きていて、しかも、地球規模であったり、アジア大陸規模であったり、日本列島規模であったりするわけですが、08年の激しい雨は、その中でも非常に小さな規模の現象であったと言えます。そうです、激しい雨が降ったのは、ごく狭い範囲で普通ではない温度分布ができたため、これを元に戻そうとして激しい雨が降ったと考えることができます。このように、地球にはときどき起きる普通からちょっと離れた状態になったとき、これを正常化するしくみがいろいろと用意されていると言えましょう。

また、これら大気中に起きる現象をつぶさに見ていくと、そう言えば、私たち人間と構造や機能に似たところがあるということにも気づきます。

本書は、「気象」という分野で、これらの地球に備わった正常化のしくみをやさしく解説することを本題としています。「気象」は、私たちが生きているこの「地球大気中に起きている様々な自然現象のこと(気象科学事典、日本気象学会)」となっています。

気象のしくみは、見れば見るほどうまくできていると思いますが、それはとても複雑で、不思議であり、今回、本書をまとめてみると、うまく説明できない著者自身の未熟さを痛感します。例えば、風やジェット気流、低気圧や前線、台風など空気の運動が関係していることにしても、ちょっと立ち入って雨ってどうして降るの?という疑問に答えるにも、人間の眼には見えない水蒸気を説明するのもたいへんです。それをどう理解していただくか、その工夫として、自然現象である雨、雪、雲、霧、雷や風などの分布や状態を可視化した天気図や気象衛星の画像、気象観測結果のグラフや表を使って解説することにしました。

本書を読まれた、いや見られた方々が「地球はまさに生命圏であり、気象はその生命圏を安定化させるための見事なしくみである」ということを理解していただければ幸いです。

2009年7月

入田 央

買い物かごへ