内容
本書では、中小メーカーがクリアしなければならない目標を、お金を掛けずに生産性を大幅に上げることと捉え、そのために現場の管理者・監督者がなにをなすべきなのかをわかりやすく解説したもの。冒頭のイラストを用いた対話形式によって強いメーカーになるために何を為すべきかがわかりやすく学べる。
目次
目 次
はじめに
第1章 中小メーカー工場の挑戦
1 中国への工場移転命令と生産性向上セミナーへの参加
2 生産性向上セミナーでの受講ショック
3 工場診断と改善の視点
4 付加価値生産性を上げる目標の設定
5 1日改善会がスタート
6 本格的な生産計画の構築と実施
7 1個流しの仕組みの構築と実施
8 具体的改善の推進
9 中国移転の回避という改善の効果
第2章 中小メーカーの生き残りの要
1 中小メーカーがFL法を採用する背景・動機は何か
2 生産性向上コンサルタントとの出会い
3 監督者はなぜ新しいやり方に抵抗するのか
(1)まず、やって見せる
(2)機械を止めるのは罪悪ではない
4 ネック工程に対する正しい理解と改善の進め方
(1)ネック工程の見つけ方
(2)ネック工程への取り組みとネック工程改善法
5 1日診断会の価値
(1)1日診断会の重要性
(2)1日診断会の見方
6 なぜ1日改善会では大きな改善ができるのか
7 リピート使用部材の在庫削減方法
(1)在庫補充方式
(2)毎日発注する
(3)調達日数の削減
8 FL法の主要ステップ
(1)第1ステップ
(2)第2ステップ
(3)第3ステップ
(4)第4ステップ
(5)第5ステップ
(6)第6ステップ
(7)第7ステップ
(8)第8ステップ
(9)第9ステップ
第3章 中小メーカーは人財を育てろ
1 強い監督者をつくれ
(1)なぜ強い監督者をつくらなければならないか
(2)監督者をはラインからはずせ
(3)部下の作業者へ日産計画書(時間指示)を出し、フォローせよ
2 部門長の役割
(1)製造課長の6つの役割
(2)技術(設計)課長の役割
(3)計測器管理課長の役割
(4)保守課長の役割
(5)生産管理課長の役割
(6)営業課長の役割
(7)品質保証課長の役割
(8)生産技術課長の役割
(9)工場長の役割
3 FL法(中小メーカーのトヨタ生産方式)が進まないA工場
4 管理者は心配の先取りをするな
5 教育訓練は最大の予防処置である
6 1日改善会で大きな改善ができる理由は何か
7 JITの実感理解と管理者のやる気の相乗効果
8 中小メーカー指導における社長の位置づけと役割
9 どうしてここでやめるのか
第4章 先頭行のため 前に1行12歯送りの行有り 文中の場合は取るFL法のステップ展開
1 第1ステップ
(1)現状把握
(2)生産性尺度の把握および生産性目標(30%以上)の設定
2 第2ステップ
(1)“物申す”“○□(マルカク)作戦”の展開
(2)1日改善会の実践
(3)メンバーに目標を持ってもらう
(4)ネック工程の調査
3 第3ステップ
(1)ライン化・週生産計画の構築
(2)表準時間の設定
(3)1個流しラインの検討(多能工化)
(4)標準作業組合せ票の活用
(5)監督者をラインから離せ
(6)段取時間の短縮
4 第4ステップ
(1)5つの目で見る管理板の設置・活用
(2)「物申す」の深化
(3)個人別・機械別日産計画書とフォロー
5 第5ステップ
(1)表準時間から標準時間への改善
(2)受注形態に対応した生産計画の見直しと
日産計画書との整合性
(3)1日改善会の深化・充実
6 第6ステップ
(1)生産性向上の現状把握、分析、改善
(2)生産リードタイム短縮状況の把握と改善促進
(3)総合リードタイムの短縮に拡大
(4)管理納期管理
7 第7ステップ
(1)メンバーの改善力評価
(2)生産計画の総合点検
(3)JITの理解度の確認
8 第8ステップ
(1)生産性向上進捗の確認と対策
(2)生産リードタイム短縮の確認と対策
(3)目標必達
9 S工場3回目の指導録
第5章 目標必達へのアプローチ
1 納期遅延1日150件を15件以下にしたアプローチ
2 T社B工場における不良低減O式ポイント
(1)成形工程の検査
(2)不良低減アプローチ
3 段取替特訓時間をつくれ
4 改善の進め方の改善をせよ
5 拙速の2つの狙いを知れ
6 ○まとめ方式の驚くべき効果
7 文書と記録を区別せよ
8 ばらつきに着眼せよ
9 研磨作業の改善
10 1人2台持ちを1人4台持ちにせよ
11 製造ロットの合併はやめよ
12 サイクルタイムで生産高ができない理由
13 ベテラン作業者に時間指示せよ
14 ジャストインタイムの誤解
15 未達先取りアクション
16 中小メーカーの営業はなぜ、新規顧客を開拓できないか
おわりに
はじめに
はじめに
第1章の生産性向上の小説(対話形式)は筆者が指導した複数の中小メーカーの特記事例をベースにまとめたものである。その意味で本書は創作小説ではない。事実小説である。
中小メーカーの経営者や管理者がお金をかけずに10カ月間(月1回指導)で生産性を30%向上させるプロセスをコンサルタント、工場長、管理者および監督者との「対話」を具体的にわかりやすく示したものである。
筆者はすでに中小メーカー向けのトヨタ生産方式の書籍をいくつか出版しているが、小説(対話形式)の方が「実感味」が出て、読者に理解してもらいやすく、かつ実践してもらいやすいと考えたからである。
この種のトヨタ生産方式の小説化は日本では初めての試みではないだろうか。
本書では第1章を事実に基づく小説、“中小メーカー工場の挑戦”(生産性を10カ月間でお金をかけずに30%向上させる方法)とした。第2章は第1章では十分説明しきれなかったことの補足説明を加えた。
第3章では、中小メーカーでは、人財を育てることが生き残る道であり、人財育成や管理職の役割を説いた。第4章では、人財育成をも可能にするFL法のステップでの展開方法を紹介する。第5章では、筆者の最近の指導特記ポイントと改善事例を示した。
これらを参考に中小メーカーの経営者や管理者は、まず自工場の生産性向上に挑戦してほしい。現在、顧客要求は「値引き」と「短納期」である。これに応えるのが生産改革である。そしてこの活動を通して管理者と監督者の改善力を開発していくのである。特に、強い監督者をつくっていくのである。
2008年8月31日
近江 堅一