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絵とき 熱処理の実務
―作業の勘どころとトラブル対策―

定価(税込)  2,420円

著者
サイズ A5判
ページ数 192頁
ISBNコード 978-4-526-05946-9
コード C3053
発行月 2007年09月
ジャンル 機械

内容

熱処理は形が変貌するわけではなく、目に見えない技術であるため品質を確保するには各々の作業段階を確実に遂行していくことが肝要になる。 本書は熱処理を進めるに当たって、現場で陥りやすい経験的な実例を中心に解説した本。現場の管理的な立場の者だけでなく、実際に従事する作業者にとっても役立つ実例を多く収録している。

坂本 卓  著者プロフィール

坂本 卓(さかもと たかし)
1968年 熊本大学大学院修了
同年三井三池製作所入社、鍛造熱処理、機械加工、組立、鋳造の現業部門の課長を経て、東京工機小名浜工場長として出向。復帰後本店営業技術部長。
八代工業高等専門学校名誉教授
(有)服部エスエスティ取締役
ライブリー・アライブを興し代表

工学博士、技術士(金属部門)、中小企業診断士
著 書  『おもしろ話で理解する 金属材料入門』
     『おもしろ話で理解する 機械工学入門』
     『おもしろ話で理解する 製図学入門』
     『おもしろ話で理解する 機械工作入門』
     『おもしろ話で理解する 生産工学入門』
     『トコトンやさしい 変速機の本』
     『トコトンやさしい 熱処理の本』
     『よくわかる 歯車のできるまで』
     (以上、日刊工業新聞社)
     『熱処理の現場事例』(新日本鋳鍛造協会)
     『やっぱり木の家』(葦書房)

目次

はじめに 

第1章 鉄鋼材料と熱処理の考え方
 1.1 陽が当たらぬ熱処理工場 
 1.2 温度目測の必要性 
 1.3 変態とその観察 
 1.4 作業の身なり 
 1.5 鋼種と仕様 
 1.6 鋼中のCの特性 
 1.7 機械構造用鋼の熱処理の考え方 
 1.8 合金鋼の使用は熟考して 
 1.9 重要な焼入性 
 1.10 鋼材の仕様と在庫 
 1.11 鋼種の在庫と火花判別 
 1.12 炉の種類と特徴 

第2章 焼なまし・焼ならし
 2.1 焼なましアラカルト 
 2.2 特殊な焼なまし 
 2.3 焼ならしの重要性 
 2.4 焼ならし作業 

第3章 焼入れ・焼戻し
 3.1 焼入れの原理と実際 
 3.2 焼入れの種類① 
 3.3 焼入れの種類② 
 3.4 焼入れの種類③ 
 3.5 焼入れ用冷却剤 
 3.6 水油焼入れ 
 3.7 焼戻しの理論 
 3.8 焼戻しの実際 
 3.9 不完全焼入れ 
 3.10 材料試験の方法 
 3.11 硬さ試験の方法 
 3.12 変形と変寸 

第4章 浸炭焼入れ
 4.1 固形浸炭の見学 
 4.2 液体浸炭とガス浸炭 
 4.3 変成ガスと浸炭炉 
 4.4 ピット型滴注式浸炭炉 
 4.5 浸炭焼入れの作業 
 4.6 浸炭後の焼入法 
 4.7 熱処理工場と溶接機 

第5章 火炎焼入れと高周波焼入れ
 5.1 火炎焼入れの原理 
 5.2 高周波焼入れの原理 
 5.3 高周波焼入れの特性 
 5.4 高周波焼入れの事例と新技術 
 5.5 窒化による表面硬化 

第6章 熱処理の事例
 6.1 連続炉のスピード 
 6.2 鋳造品のバラツキ 
 6.3 焼結品の熱処理 
 6.4 形状と焼割れ感受性 
 6.5 混合機の羽根の材質と焼入れ 
 6.6 金型の簡単焼入れ 
 6.7 大型品の水靱処理 
 6.8 SNCM26 
 6.9 お灸で曲がり直し 
 6.10 異材の混入 

補足
 補.1 実験炉の作り方 
 補.2 金属顕微鏡の観察方法 
 補.3 金属破断面の見方 
 補.4 ショットブラスト 
 補.5 熱処理の賃単価と合理化 

索引 
あとがき 

はじめに

 熱処理の理論や技術は充分に理解していても、実際の生産工場でどのように運営していくかは難しいことです。管理する側の監督者は作業者に対して、熱処理の仕組みと作業を教育して実際に活かさなければなりませんが、作業者は同様に熱処理の何かを把握して作業にのぞみ、理屈に沿う手順を踏んで初めて仕事を完遂できるものです。

 多くの工業技術が素材を物理的あるいは化学的に形を変えて、最終的な製品に生み還すシステムであるのに対して、熱処理は形が変貌することはなく、内部の質的変化を良好なるようにすること、つまり見えない技術であると言えます。すなわち熱処理は鋼(本書は鉄鋼を基準に解説)を加熱し冷却して内部の状態を変えることですから、外面の形状的な変化はありません。

 そのため熱処理はどのように熱をかけたか、どのように冷却したか、それぞれの作業が結果に重大な影響を与えることになります。熱処理後の鋼内部は外部から観察できませんから、結果の良否は判断できません。それでは、一連の工程の品質上の合否はどういう手法を用いるのでしょうか。

 熱処理は炉などの装置を使用して遂行しますが、種々の機器や装備を使用して基準通りに作業したとき、検査上の合格と判断します。熱処理の合否はプロセスとその作業の良否であるわけです。一方で、現場的には唯一簡便なチェック方法があります。それは硬さを計測し判別することです。しかし、この方法は絶対的に正しいとは言えません。ベテランであれば故意な操作により目的の硬さを得ることができるからです。

 そうなると熱処理の品質を確実にするためには、どうすればよいかということになります。昨今の熱処理は大型装置や炉などを使用した自動化が進んでいます。熱処理は装置産業です。このようなシステムでは最初の計画が重要で、諸般の問題がない限り正しい結果を得ることができます。しかし、たとえば熱処理を専業とする職場などでは、扱う製品は多種少量のものになります。そのような製品に対してはどうなるでしょうか。監督者は1品ごと、適正な作業要領を検討して作業者に指示しなければなりません。そのような環境で恐れることは監督者の指示が正しかったとしても、その通りに作業が進んだかどうかが重要になります。

 熱処理が最終の検査工程で、硬さ測定によってすべての品質の良否を判断できるわけではなく、一連の手順の良否に左右されることになりますから、硬さの結果はあくまで付録であり、むしろ処理の一つひとつの過程が品質の基本になります。このように考えると熱処理は個々の工程、作業の信頼性により確立されると言ってもよいでしょう。

 本書は熱処理を進めるに当たって作業だけでなく管理監督の側からメスを入れ、熱処理工場の陥りやすい経験的な事例を解説しました。工場に従事し熱処理を担当する方々に対して少しでも役に立つことができれば幸いです。

2007年9月
坂本 卓 

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