内容
研削作業は、研削砥石という特殊な工具を用いるため、他の機械加工作業と比べ熟練した技能が必要といわれている。本書は、現場で求められる研削作業(実務)の勘どころと、実際に起こるトラブルとその対策について、絵ときでわかりやすく解説する。
海野邦昭 著者プロフィール
海野邦昭(うんの くにあき)
1944年生まれ、職業訓練大学校機械科卒業。
工学博士、職業能力開発総合大学校精密機械システム工学科教授。精密工学会理事、砥粒加工学会理事を歴任。
主な著書に、「ファインセラミックスの高能率機械加工」(日刊工業新聞社)、「CBN・ダイヤモンドホイールの使い方」(工業調査会)、「次世代への高度熟練技能の継承」(アグネ承風社)、「絵とき『研削加工』基礎のきそ」(日刊工業新聞社)、「絵とき『切削加工』基礎のきそ」(日刊工業新聞社)などがある。
目次
はじめに
第1章 研削砥石とその選択
1. 1 砥石選択の主な手順
1. 2 いろいろな研削作業
1. 3 作業目的と研削砥石の選択
1. 4 砥粒の種類の選択
1. 5 粒度とその選択
1. 6 結合度の選択
1. 7 組織の選択
1. 8 結合剤の種類の選択
1. 9 形状と縁形
1. 10 最高使用周速度
1. 11 各種研削方法と推奨研削砥石
第2章 準備と安全
2. 1 研削砥石の取り扱い
2. 2 フランジとその選択
2. 3 フランジへの研削砥石の取り付け
2. 4 研削盤への研削砥石の取り付け
2. 5 研削砥石のバランス調整
2. 6 運転準備
2. 7 ツルーイング・ドレッシング
2. 8 安全作業
第3章 研削条件と研削現象
3. 1 研削抵抗と工作物の変形
3. 2 研削温度と工作物の熱的損傷
3. 3 ビビリマークとスクラッチ
3. 4 研削条件と研削形態
3. 5 目こぼれ形研削と強制振動
3. 6 目つぶれ形研削に伴う研削現象
3. 7 研削条件設定の目安
第4章 平面研削作業
4. 1 研削砥石の取り付けとドレッシング
4. 2 電磁チャック面の検査と修正
4. 3 工作物の取り付け
4. 4 平面の研削とそり取り
4. 5 六面体の研削(直角だし)
4. 6 角度の研削
第5章 円筒研削作業
5. 1 運転準備と慣らし運転
5. 2 工作物の取り付け
5. 3 テーブルストローク長さとタリー時間の調整
5. 4 ツルーイング・ドレッシング
5. 5 マンドレルの研削
5. 6 円筒スコヤの研削(端面研削)
5. 7 テストバー(試験棒)のテーパ研削
第6章 各種研削作業とトラブル対策
6. 1 研削砥石選択の不適合
6. 2 ドレッシングの不適合
6. 3 研削油剤関係の問題
6. 4 工作物形状とビビリ対策
6. 5 研削現象とトラブル対策
6. 6 円筒研削におけるトラブル対策
6. 7 センタレス研削におけるトラブル対策
6. 8 内面研削におけるトラブル対策
6. 9 砥石が破損したときの対策
6. 10 トラブル発生時のチェック項目
6. 11 CBNホイールを用いた研削におけるトラブル対策の現状
6. 12 ホイール寿命の評価方法とドレッシングインターバルの管理
参考文献
索 引
はじめに
研削作業は他の機械加工作業と比較し、熟練技能が必要と言われています。その理由は、通常、砥粒、結合剤および気孔から成る複雑で、比較的製造上の再現性を確保するのが難しい研削工具を用いるためです。 また工作物も通常、焼き入れが施されており、曲がりやそりがあります。そして研削時に応力が緩和され、いろいろと変形します。加えて研削盤は油圧で駆動されており、油温の変動によって、動きが変化します。また加工精度が高いために、研削盤の熱変形や振動が問題となります。このように研削作業は、非定常な問題を解くことと同じなので、熟練技能者は長年の経験に基づいてこれらの問題に対処しています。
しかしながら最近は、団塊の世代の大量退職に伴う技能継承が問題になっています。そこで研削加工の研究と教育に従事する者として、これらの技能の内容を少しでも資料として残し、技能継承の一助にしたいと考えておりました。
このような折り、日刊工業新聞社の奥村功氏と新日本編集企画の飯嶋光雄氏より、研削作業の実際とトラブル対策を執筆したらというお誘いを受けました。執筆にあたっての注文は、できるだけ多くの絵を使って、研削作業を分かりやすく解説し、また多くの人が購入しやすいように、安価にしたいということです。
私は大学校で教鞭をとっており、熟練技能者ではないので、これらの注文に対応できるかどうか分かりませんが、技能継承のお役に立ちたいという考えがありましたので、お引き受けすることに致しました。執筆を始め、トラブル対策を考えると、いろいろな情報が必要となり、だんだんと頁数が多くなってしまいました。また絵だけでは細かい内容が理解しにくいので、だんだんと説明が長くなってしまいました。そして私の経験不足により、いろいろな作業の内容を紹介することができませんでした。これらの点に関しましては、未熟の致すところなので、お許し願いたいと思います。
最後に、この本の執筆にあたり、貴重な資料をご提供いただいた日刊工業新聞社イベント事業部、三井研削砥石、ノリタケカンパニーリミテド、クレノートン、三菱マテリアル、アライドマテリアル、旭ダイヤモンド工業、ノリタケスーパーアブレイシブ、ジェイテクト、岡本工作機械製作所、大河出版および切削油技術研究会の関係各位に厚く御礼申し上げます。
2007年4月
海野邦昭