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現場で役立つ
めっき加工の勘どころ

定価(税込)  3,300円

著者
サイズ A5判
ページ数 296頁
ISBNコード 978-4-526-05835-6
コード C3057
発行月 2007年03月
ジャンル 金属 機械

内容

高品質のめっき加工を効率よく行うためには、部品設計および要求品質に適しためっき素材、めっき種、めっき加工法の選定がカギになる。本書は被加工材の材質ごとに、最も適した加工の仕方を具体的に示しためっき加工の実務書。

星野芳明  著者プロフィール

星野 芳明(ほしの よしあき)
1944年 東京都に生まれる
1971年 横浜国立大学工学部応用化学科卒業
1978年 株式会社キザイ(旧社名日本化学機材株式会社)退社
(1966年入社以来めっき技術,排水処理技術の研究開発及び現場導入指導を担当)
1979年 環境計量士(1977年登録)作業環境測定士(1979年登録)により,環境計量,環境改善の技術指導に取り組む
1987年 技術士登録により,星野技術士事務所開設し,現在に至る
1991年 労働安全コンサルタント登録により,生産設備機械安全対策に取り組む
現在 株式会社ハイテクノ技術スタッフ・上級表面処理講座講師
東京都鍍金工業組合高等職業訓練学校 電気めっき科講師
日本技術士会,埼玉技術士会所属
労働安全衛生コンサルタント会所属
社団法人表面技術協会会員
著書 「めっき加工のトラブル対策」日刊工業新聞社,「バレルめっき」槇書店 など



目次

はじめに  
この本を読むにあたって  

基 礎 編
第1章 代表的なめっき素材の種類とそれに適した前処理工程
    Materialの基礎知識 素材の種類と前処理工程の勘どころ
  1.1 鉄鋼および合金鋼素材の種類とそれに適した前処理工程  
  1.2 銅および銅合金素材の種類とそれに適した前処理工程  
  1.3 アルミニウム合金素材の種類とそれに適した前処理工程  
  1.4 亜鉛合金素材の種類とそれに適した前処理工程  
  1.5 その他特殊金属素材の種類とそれに適した前処理工程  
  1.6 プラスチック素材の種類とそれに適した前処理工程  
  1.7 セラミック素材の種類とそれに適した前処理工程  
第2章 代表的なめっき皮膜の種類と特徴およびその用途
    Materialの基礎知識 めっき皮膜の特性を生かす勘どころ
  2.1 亜鉛および亜鉛合金めっき皮膜  
  2.2 ニッケルおよびニッケル合金めっき皮膜  
  2.3 すずおよびすず合金めっき皮膜  
  2.4 貴金属および貴金属合金めっき皮膜  
  2.5 クロムおよびクロム合金めっき皮膜  
第3章 代表的なめっき加工方法の種類と特徴およびその用途
    Materialの基礎知識 めっき方法の種類と加工の勘どころ
  3.1 ひっかけ治具方式による電気めっき方法  
  3.2 バレル方式による(あみ付け方式も含む)電気めっき方法  
  3.3 各種方式による無電解めっき方法  


事 例 編
第4章 ひっかけ治具方式による電気めっき加工方法
     Machine,Measurement,Manに関するめっき加工の勘どころ
  4.1 主設備および補助設備の維持管理  
  4.2 めっき膜厚ばらつき改善と動的計測技術  
  4.3 めっき品質計測技術と予防対策  
第5章 バレル方式による電気めっき加工方法
     Machine,Measurement,Manに関するめっき加工の勘どころ
  5.1 通電継続とバイポーラ現象  
  5.2 バレル用めっき浴組成への改善と維持管理のための動的計測技術
  5.3 バレルめっきにおける品質改善策(ころがり混合の改善)  
  5.4 バレルの水洗性と改善策  
第6章 無電解ニッケルめっき加工
     Machine,Measurement,Manに関するめっき加工の勘どころ
  6.1 主設備であるめっき槽の管理  
  6.2 現場で役立つビーカーによる析出試験(動的な計測技術)  
  6.3 微細加工部品への無電解ニッケルめっき加工における改善例  
第7章 不良品のめっき剥離方法と再めっき方法の勘どころ
     Machine,Measurement,Manに関するめっき加工の勘どころ
  7.1 めっきの剥離方法  
  7.2 めっき剥離位置の決定と再めっき方法  
  7.3 剥離方法および剥離剤の選定と剥離作業の管理  

索  引  

はじめに

 めっき加工における作業工程を確立する場合,通常,以下のような過程を経て行われている。まず研究開発部門あるいは技術開発部門で被めっき物にめっき試作を行い,最もよいと思われる前処理条件,めっき条件,後処理条件および乾燥条件を確立する。次いで,顧客の品質要求を満足するような品質検査基準や方法を確立したのち,量産化に移る。

 その流れを図に示すと,次のようになる。

 では,何が確立しているのか? を考えてみると,図に示したように実は前処理工程は,試作段階での被めっき物を対象に基本的な前処理方法を決めただけであり,量産化した場合のLOTごとにおけるめっき素材の顔色が常にばらつきをもっていることを忘れてはならない。

 めっき素材を大別すると,金属素材,プラスチック素材,セラミックス素材に分けられるが,特に金属素材の場合は前加工のばらつき,油汚れ付着状態のばらつき,熱処理を含む表面加工変質層のばらつきなどが作業を妨げる要因としてあげられる。したがって,前処理工程は条件の標準化(マニュアル化)ができないので,できるだけ融通性をもたせながら目視観察など人の技能(観察力,判断など)が重要になる。

 それに対して,めっき工程や後処理工程および乾燥工程は,試作時の工程条件の確立でほぼ問題はなく標準化ができるので,この条件を管理範囲をもって維持管理しなければならない。その場合の作業管理のポイント(勘どころ)が重要で,常に維持と見直し改善ができる体制作りが必要である。さらに出来上がっためっき加工品の品質確認検査を出荷時だけ行うのか,あるいは工程内検査も含めるか,また,品質異常が発見された場合の再発防止対策に向けた原因解析に誤りはないかなどの解析方法の勘どころと見直しが,めっき加工現場において重要になってくる。

 各種めっき加工された部品や製品の品質トラブルは,いろいろなケースが考えられる。そのトラブル要因を計測解析し改善策をたてるためには,めっきの基礎知識をはじめ多くの失敗と成功の体験が必要である。その主な要点を事例を含めてまとめたのが前著の「めっき加工のトラブル対策」である。

 その著書のp32からp34にかけて次のようなことを記述した。

 めっき品質として,特に重要な項目は次にあげる通りである。
 ① 密着性の確保
 ② めっき膜厚の均一性
 ③ 異物付着による析出表面欠陥(ふくれ,ピット,ザラ,しみ)の防止

 従来から上記した3項目の中の①,③については,常に不良問題の上位に位置している。特に精密微細めっきにおいては,①,③はもちろん,②のめっき膜厚の均一化も極めて重要な課題になってくる。そのためのめっき技術として,均一な膜厚で析出するといわれている無電解めっきおよび電気めっきにおける電流密度分布の均一化策があげられる。

密着性の確保に対する改善技術
 密着性の確保,特に素材とめっき皮膜との密着性については,各種素材に適した前処理およびめっき液の浄化度並びにめっき皮膜の内部応力や脆さの程度など,いろいろな要因が関係している。したがって,密着不良問題が発生した時点で適切な計測(M)技術と解析(A)技術を駆使して,原因を絞り込み,改善計画をたてなければならない。

めっき膜厚の均一化に対する改善技術
 電気めっきにおける電流密度分布の改善技術はたいへん重要であるが簡単ではない。精密微細めっきでは,均一な膜厚を要求することから通常無電解めっきが考えられるが,めっき速度およびコストの面から電気めっきでの対応が考えられている。
 電気めっきでは,ファラディの法則を展開すると,電流密度分布とめっき膜厚分布とが比例関係になることがわかる。詳しくは,本書の第3章で順次説明していく。
 精密微細めっきの場合にはめっき膜厚分布が大きくなると,例えば,必要とする寸法精度の低下,ボイド,その他欠陥の発生など,品質問題が生じる。したがって,いかに電流密度分布を均一化するかが重要な課題となる。
 電流密度分布を改善するためには,次の点が重要である。
 ① めっき液の電気伝導塩の濃度改善
 ② 有機添加剤の改善

 有機添加剤の電極反応への関与
異物付着による析出表面欠陥の防止に対する改善技術
 最も重要なことは,めっき液中に持ち込まれた,あるいは液中で生成した異物をいかにすばやく効率よくろ過除去するかの改善技術である。異物付着による表面欠陥には,ふくれ(blister),ザラ(rough surface),ピット(pit),しみ(stain)など,いろいろなモードが考えられる。また,それと同じような現象でめっき液や作業条件に起因する異常析出による場合もある。詳しくは本文中に記載してある。
 またさらに,めっきを常に適正な状態で維持管理するには,それ相応の管理技術が必要となる。
 ① 各種素材に最適な前処理工程と維持管理技術
 ② 各種めっき液の維持管理技術
 特に,
 a)めっき液中の金属イオン濃度
 b)めっき液中の電気伝導塩濃度とpH
 c)めっき液中の有機添加剤濃度と分解生成物の除去
 ③ 設備面の維持管理技術
 a)電極接点の確保
 b)極間距離の最適化
 c)精密ろ過による清浄化
 d)活性炭処理の最適化
 以上のことを維持するためにどのような体制で管理したらよいかを常に考え,レベルアップを図ることが重要である。

 めっき技術は大型成形品から精密微細加工品まで幅広い用途に活用され,多種多様な表面機能付与に役立つ表面処理技術であることは改めていうまでもないが,その目的を果たすための維持管理は,常に安定したよい品質のめっき加工を効率よく経済的に行うための予防保全として極めて重要である。

 めっき加工を実施する前に部品設計および要求品質に適合しためっき素材の選定,めっき種(めっき皮膜の組合せと膜厚)の選定およびめっき加工方法の選定がまず必要になる。成形品の素材は何か,成形品の形状はどのようなものか,要求品質はどのようなレベルか,など多方面から検討し選定しなければならない。

 次にめっき加工を維持継続するにあたっては,5M管理の重要性とレベルアップがあげられる。よい品質を安定生産するためのめっき加工を確立する勘どころとして,5M管理がある。5M管理とは,Material(材料・素材),Method(方法・工程),Machine(主設備・付帯設備),Man(人の技能・知識・感性),Measurement(分析・計測)の5つの頭文字Mをとったそれぞれの管理とそのレベルアップである。

 まず、めっき素材(Material)を把握して,それに適した前処理工程とめっき素材の形状に適しためっき加工方法(Method)をひっかけ方式にするかバレル方式にするかなど十分検討し確立することである。次にそのめっき加工方法に適した主設備や治具など付帯設備(総じてMachine)を準備し,それらを操作・管理する人(Man)の技能,知識,感性をレベルアップしながら,分析・計測(Measurement)を繰り返し管理していくことである。

 そこで,本書では基礎編として,めっき素材およびめっき種(総じてMaterial),めっき前処理工程およびめっき加工方法(総じてMethod)について,まず代表的なめっきを必要とする素材の種類とそれに適合する前処理工程に関する基礎知識,次にめっき種(めっき皮膜の種類)と特性およびその用途に関する基礎知識についてまとめ,さらに代表的なめっき加工方法の種類と特徴およびその用途に関する基礎知識について取り上げる。

 次に,実務編として現場で即座に役立つ形式を考えた結果,めっき加工方法ごとに分類して実務で必要なめっき加工方法に関する部分が素早く把握できるように編集し,それぞれのめっき加工方法ごとにめっき素材の形状に適合した設備関係(Machine)の勘どころ,予防保全のための分析,計測関係(Measurement)の勘どころを取り上げる。

 この本がめっき加工方法に適した治工具を含む付帯設備や主設備の設計と維持管理,めっき加工方法に適しためっき浴種ごとの浴維持管理およびめっき条件の設定と維持管理などの見直しやめっきの設計や加工に係る人材の教育訓練に役立ててもらえれば幸いである。

2007年1月
星野 芳明 

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