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トヨタ生産方式にもとづく「ちょろ引き」で生産管理を改革しよう!!

定価(税込)  2,200円

著者
訳者
サイズ B5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-05756-4
コード C3034
発行月 2006年10月
ジャンル 生産管理

内容

生産現場において、顧客の要求をもとにどのように平準化した生産計画を立案するべきか、ペースメーカーを中心とした流れをどう作るか、従来のMRPとはどう折り合いをつけるべきかなど、「平準化プルシステム」の導入から実践までの手順を詳しく解説。

目次

序文

はじめに

Part1:始めるにあたって
Part2:顧客の要求に,生産システムの能力を合わせる
Part3:ペースメーカーをつくる
Part4:上流の工程をコントロールする
Part5:システムを拡張する
Part6:システムを維持しつつ,さらに改善する

むすび

著者紹介

付録

参考文献

訳者あとがき

はじめに

 1998年の夏に,リーン・エンタープライズ・インスティテュート(LEI)初の出版物として,Learning to See1を世に出した時,私たちは,読者に対して,工場の出口から入り口までのバリュー・ストリーム・マッピングによって,あるべき姿を描き,それに向かって歩き始めよ,と急告しました.私たちの目的は,プロセス・レベルの改善――セル化,段取り時間短縮,5S,個々の工程の能力向上等々――からさらに進んで,バリュー・ストリーム全体にわたる生産性の改善に対するマネジャーたちの意識を高めることにありました.私たちは,(前掲書の中で)この進展を「プロセス改善から流れ改善へ」と称しています.
 Learning to Seeの出版後数年の間に,私たちは,これに続くワークブックを発表してきました.セルタイプの現場でいかにして「真の流れ化」を実現すべきかを解説したCreating Continuous Flow2および,流れ化を支えるリーンなモノ(部品・中間製品)の流れをいかにして構築するかを解説したMaking Materials Flow3です.私たちはまた,マッピングによる改善プロセスを,すべての製品ファミリーについて,個々の工場の壁を超えてバリュー・ストリーム全体に展開することにも取り組みました(Seeing the Whole4).
 ここに至り,私たちは,個々の製品ファミリーのバリュー・ストリームの改善から,工場の製品ファミリーのすべてを包含する生産管理システムの改善へと進む新たなステージに立ったと言えるでしょう.私たちは,このある種の「跳躍」を,システム改善と呼んでいます.なぜなら,この「跳躍」こそ,リーンな生産管理システムという手法によって,工場全体の,すべての製品の流れを統合的に管理できるようにするものだからです.このためには,多くの工場で,従来の伝統的なMRPシステムを書き換えなければならないでしょう.現行のMRPシステムは,工場内の各部門に対して計画を与え,製品を次工程へ押し込もうとするものです.あるいはMRPでなくとも,生産をきちんとコントロールしたり,平準化したりするには十全とは言えない紙と鉛筆だけのシンプルな生産計画や,内製のプル・システムから脱却する必要に迫られるでしょう.いずれにせよ,「厳密な意味でのプル・システム5」へと転換することが必須なのです.この「厳密な意味でのプル・システム」においては,個々の工程は必要なモノだけを正確に前工程に対して要求しなければなりませんし,また,工場全体にわたってスムースな生産を実現するために,顧客からの要求はペースメーカー工程で平準化されていなければなりません.
 皆さんがこの「跳躍」を成し遂げる助けとなるよう,私たちは,アート・スモーリーに彼の多年にわたるリーン実践の経験を分け与えて欲しい,と頼みました.アートは,日本のトヨタ自動車において正規社員となった最初の外国人の1人であり,トヨタ最大の機械工場である上郷のエンジン工場で働いた経験を持っています.1994年に彼はトヨタを離れ,世界十数カ所に工場を持つアメリカの自動車部品メーカー,ドネリー社のリーン生産担当の責任者となります.1999年には,アートはマッキンゼーに移り,リーン生産についての特命エキスパート兼マッキンゼー・プロダクション・システム・デザイン・センターのマネジャーとなりました.彼は,過去20年の仕事の中で,世界各国のさまざまな産業の何百もの工場で,いかにしてこの「跳躍」を成し遂げるかについて,助言を与えてきました.2003年の半ば,アートは,より多くの時間を家族とともに過ごすため,またリーン生産の教材を開発するため,さらには,リーンへの転換をめざす企業とよりダイレクトに仕事をするために,マッキンゼーを離れます.

 私たちは,それぞれのワークブックの中で,本書で解説するステップは,以前のワークブックで求められたステップよりも,さらに厳しくなっていると警告してきましたが,ここでもう一度その警告を繰り返さなければなりません.すべての工程で厳格に生産をコントロールし,顧客の要求をきちんと平準化するという,真にリーンな生産管理システムは,ほとんどの企業にとって,それが素晴らしい変革であることを立証するものでした.結果として,私たちは,通常のケースであれば,これがリーンへの転換に向けた最終的な要素であると知ることになります6.あなたのケースがこのとおり(リーン化への最終段階)であるのなら,あなたはとてもラッキーです.本書Creating Level Pullにおいて,アートは,あなたが,あなたの工場で,リーンな生産システムの構築を始めるのに必要となる基本的な知識のすべてを提供しています.彼は,プロセス改善と流れ改善がかなり進んでいる企業の人々にとって,使いやすいワークブックとなるよう,注意深く本書をまとめてくれました.
 一方,あなたがリーンへの転換を始めたばかりであったとしても,やはりラッキーと言えるでしょう.経験豊富なリーンの指導者は,工程の安定化がそれなりにできている会社でなら,流れ改善やプロセス改善に取り組む以前であっても,システム改善として平準化生産によるリーンな生産管理を導入してしまうことで,半ば強制的にリーン生産への転換を始めさせるということも,ごく自然に実行しているからです.あなたがこのような段階にあるのなら,私たちは,あなたが勇気を奮い立たせて,この跳躍を成し遂げられるよう期待しています.あなたのビジネスにとって,得られるものは計り知れないほど大きいでしょう.そこで必要となる知識のすべては,本書にまとめられているのです.
 読者の皆さんは,それぞれの現場で,それぞれに新たな挑戦を続けられていることでしょう(あなたが始めたばかりであったとしても).私たちは,皆さんが困っていることのみならず,成功事例についてもぜひ聞きたいし,そのためにwww.lean.orgのリーン・コミュニティーを訪れて欲しいと願っています.また,あなたのコメントを,ぜひclp@lean.orgへ送ってください.

Jim Womack, Dan Jones, John Shook, and Jose Ferro
Brookline, MA, USA; Ross―on―Wye, Hereford, UK; Ann Arbor, MI, USA; Sao Paulo, SP, Brazil
序文 訳注
 1 Learning to See : 拙訳「トヨタ生産方式にもとづく『モノ』と『情報』の流れ図で現場の見方を変えよう」(日刊工業新聞社)をご覧下さい.

 2 Creating Continuous Flow : 「流れ化を実現する」.本書訳出時点では邦訳書なし.

 3 Making Materials Flow : 「モノの流れをつくる」.本書訳出時点では邦訳書なし.

 4 Seeing the Whole : 「全体を見る」.本書訳出時点では邦訳書なし.

 5 厳密な意味でのプル・システム : 本書で解説しようとするのは「厳密な意味でのプル・システム」構築への道である.本書(日本語版)のタイトル中の「ちょろ引き」は,この概念と手法の体系がトヨタで誕生し,グループ内外へ広がっていく過程で,自然発生的に呼ばれるようになった(と言われる)ある種のノスタルジックな名前を借用したもの.生産指示を多頻度化するというこのしくみの起源を重視する人々は「ちょろ仕掛け」と呼び,「ちょろ引き」とは呼び分ける(これは「順序建て」と「順引き」の関係に似ている).なお,原書では「ちょろ引き」という日本語名称は使われていない.LEIのワークブックシリーズでは,TPSテクニカルタームの英語化に際し,「自働化」「ジャスト・イン・タイム」「平準化」「かんばん」「アンドン」「先生(!)」などは(先頭文字を小文字で書く英語化した外来語として)日本語をそのまま用い,そのほかのたとえば「標準作業」「流れ化」「水すまし」「ちょろ引き」などは一貫して英語で表現している.LEIの研究者たちにより慎重に検討されたと想像される概念・手法のこの区分は,英語圏におけるTPSの伝道と受容という観点からも非常に興味深い.

 6 結果として,私たちは,通常のケースであれば,これがリーンへの転換に向けた最終的な要素であると知ることになる : 平準化プルを実行に移すと非常に大きな成果が得られる.ここに至れば会社はリーンになったと言えるであろう.これは実践してみて初めてわかることではあるが,その成果を見れば平準化プルが最終段階における改善手法であったことが自ずと理解される,という意味.

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