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図解 よくわかる水処理膜

定価(税込)  2,090円

著者
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サイズ A5判
ページ数 192頁
ISBNコード 978-4-526-05737-3
コード C3043
発行月 2006年09月
ジャンル 化学

内容

世界的に深刻な水不足と水汚染。これを解決するキー技術が分離膜を利用した「膜処理システム」である。本書では、最新の現状から、今後、さらに大規模になっていく水処理プラントを実例を多数交え、わかりやすく解説していく。

岡崎 稔  著者プロフィール

岡崎 稔(おかざきみのる)
1953年 京都大学工学部卒業 工学博士
1956年 栗田工業(株)入社。取締役総合研究所長、常務取締役開発本部長などを歴任。
1990年 日本メムテック(株)代表取締役社長に就任。USフィルター・ジャパンなどの社長を経て、現在日本ポール(株)取締役。
イオン交換、逆浸透膜などによる、純水、超純水製造技術の開発、育成を長年手がけ、1988年科学技術長官賞を受賞。研究発表論文多数。
著 書 「超純水のはなし」共著(日刊工業新聞社)
「調べてみよう暮らしの水・社会の水」共著(岩波書店)
「科学で見なおす体にいい水・おいしい水」共著(技報堂出版)

谷口良雄  著者プロフィール

谷口 良雄(たにぐちよしお)
1955年 鳥取大学農学部農芸化学科卒 工学博士 技術士(化学部門)
1961年 栗田工業(株)入社。栗田工業総合研究所所長、九州大学農学部非常勤講師、横浜国立大学工学部客員助教授を歴任、現在(財)造水促進センター技術アドバイザー。
長年にわたり逆浸透膜による海水淡水化技術の開発と海外への普及に貢献した功績により、日本海水学会技術賞を受賞(2003年)。国際会議等への研究論文発表多数。海水学会特別会員。
著 書 「膜利用技術ハンドブック(逆浸透法・限外濾過法「応用)」共著(幸書房)
「膜処理技術大系(上巻)」共著(フジ・テクノシステム)
「おもしろい海・気になる海Q&A」共著(工業調査会)

鈴木宏明  著者プロフィール

鈴木 宏明(すずきひろあき)
1956年 多摩美術大学デザイン科卒業
1956年 (株)主婦の友社入社、編集局勤務
1962年 栗田工業(株)入社。社長室広報課長、経営企画室技師長などを歴任。
1990年 (有)テクノライターズを設立、テクニカルライターとして活動。
2006年4月 永眠
著 書 「水なんでも質問箱」(社会思想社)
「超純水のはなし」共著(日刊工業新聞社)
「ヤミ金融・クレジット社会の落し穴」(岩波書店)
「調べてみよう暮らしの水・社会の水」共著(岩波書店)
「水のはてなQ&A55」(桐書房)
「科学で見なおす体にいい水・おいしい水」共著(技報堂出版)

目次

第1章 21世紀は「水の世紀」
1.世界各地で進む深刻な水不足、水汚染
2.4分の1世紀で、世界の水は危機的状況に
3.飲料水の不足で、途上国では伝染病、水紛争が増大する
4.用水の不足で農産物、工業製品の生産も低下し、経済成長も止まる

第2章 水問題を解決するためには
1.塩水、海水の淡水化
2.期待される水の浄化と再利用技術
3.下水、工場排水の回収再利用

第3章 海水淡水化は人類長年の夢
1.地球の水の97.5%は海に
2.需要の増大で淡水化が国家プロジェクトに
3.海水を淡水化する方法と技術
4.淡水化にコストの壁
5.20世紀になつて膜技術が登場

第4章 注目される膜分離技術
1.生体膜の神秘とすぐれた働き
2.生体膜を手本に開発された分離膜
3.分離膜の仕組みと機能
4.高分子技術が実現した人工の生体膜

第5章 水処理膜とは
1.水処理膜の種類
2.膜によって除去できる物質が違う
3.膜モジュールの種類
4.膜で捕捉した濁質の除去法(膜洗浄法)にはどんな方法があるか

第6章 暮らしから産業まで―膜技術の幅広い用途
1.海水、塩分を含む地下水の淡水化に
2.原虫(クリプトスポリジウム)汚染を防ぐ、膜処理浄水施設
3.工場排水―電子産業排水の回収再利用、埋立地浸出排水処理、下水再利用、膜分離活性汚泥法
4.下水からつくったボトル水、シンガポールの「NEWater」
5.ハイテク産業に欠かせない超純水の製造
6.人工腎臓、透析液の精製から、病院、製薬工場に欠かせない無菌水の製造に
7.びん生ビール、野菜・果実、清涼飲料水、海洋深層水飲料の製造、宅配便ボトルウオーター、非常用浄水器など

第7章 わが国における膜技術開発プロジェクト
1.世界初の工業規模の逆浸透膜装置の完成
2.省エネルギー型海水淡水化技術開発プロジェクト・・基礎実験から800m3/日プラントの実証試験へ
3.産業廃水の再生利用技術開発プロジェクト・・アクアルネッサンス'90計画(水総合再生利用システムの研究開発)
4.新しい浄水技術
5.国際技術協力事業について

第8章 世界各地で進む膜プロジェクト
1.世界で最初に50,000m3/日を超える大型の逆浸透法海水淡水化プラントが設置されたのは、どこの国か?
2.西半球最大の逆浸透膜法海水淡水化プラントはどこにあるか?
3.わが国で大規模な海水淡水化プラントはどこに建設されているか?
4.水資源の少ない中近東では豊富な下水を回収して生活用水、工業用水に再利用することができないのか?

第9章 膜処理システムの未来
1.期待される高機能膜技術の開発
2.膜処理システムの今後の課題
3.循環型社会における膜処理システムの役割(ゼロエミッションへの期待)
4.水危機を救う(国際貢献に果たす役割)

あとがき

はじめに

 高度成長期に建設された鹿島コンビナート(鹿島臨海工業地帯)では、水源となる霞ヶ浦、北浦が河川で海とつながり、潮の干満で海水の逆流がおこり、塩類濃度が予想を越える高値に達した。そのため沿岸の各工場では、塩分の多くなった湖水からイオン交換樹脂式の純水装置によって安定した純水の確保供給ができなくなり、工場の操業も困難となる深刻な事態を迎えた。

 35年前の1971年、この危機を乗り越えるために、原水から塩分をあらかじめ除去し、イオン交換樹脂の負荷を軽減する新しい技術として、導入したのが逆浸透膜装置であった。日量3000m3の規模で当時日本最初で世界最大のものであった。日本にまだ膜の製造メーカーもない、膜装置の実績もない時代でもあり、誕生間もない逆浸透膜装置の導入は栗田工業(株)関係者全員の用意周到の下の決断であったと同時にその陣頭指揮官はルビコン川を渡る思いであった。これはまさに水処理業界では画期的な出来事であった。関係者の懸命の努力により期待どうりの成果をあげ水危機を回避し、これが契機となり、膜の研究開発が活発化し、水処理分野を含めて各方面への膜装置の実用化がはじまった。分離膜を利用した「水処理膜時代の幕開け」である。

 筆者は幸運にもこのプロジェクトに参加、膜技術の高い性能を肌に強く感じ、その実体験を通して膜分離はこれまでの水処理技術に大きな変化を引き起こすとつよく予感し、それから膜分離に深くのめり込んでしまった。その後、新しい膜技術につぎつぎとめぐり合う人生を過ごすことになったのは幸運であった。そして今、21世紀を迎え「水処理膜の黄金時代」が到来している。

 地球の水は豊富なようでも、身近かにあって容易に利用できる地表水は、全淡水量の僅か1%にも満たない量である。さらに水源が生活や産業から出る排水により汚染され、使える水は急速に減っている。このように21世紀の水問題は、水不足と水汚染に帰結するといってよい。従って水問題を解決するためには、①海水や塩分を含む地下水を淡水化すること、②生活排水や産業排水を処理して水源を汚染から守ること、③排水を捨てずにリサイクルすること、④地下水の保全を図り砂漠化を防ぐこと、などを積極的に進めなければならない。そのためには水に含まれる塩分や汚染物質を効率よく除去する技術が必要となる。そのための技術として今注目されているのが、分離膜を利用した「水処理膜」である。

 生物の体を構成している細胞は、細胞膜を通して養分を外から取り込み、不要になった成分を膜を通して外に排出している。このような機能を持つ生体膜を、人工的に作ろうとする研究が50年ほど前から米国で始まった。40年前には、塩水から水だけを取り出すことができる分離膜の開発に成功、これにより逆浸透膜による海水淡水化が、有望な方法として認識されるようになった。

 分離膜は海水淡水化ばかりでなく、液体中の不要物を取り除いたり、逆に有用物質を回収したりすることができるため、果汁・野菜ジュースの濃縮、ビールの酵母菌を除いた「ビン生」の製造など身近かなところでも実用化されている。また半導体や精密機器を洗浄する超純水、病院や製薬工場で使われる無菌水、宅配ボトルウォーターなどの製造にも欠かせないものとなっているが、従来は比較的小規模な用途が中心だった。しかし膜製造技術や適用技術の進歩により、最近では大規模な海水淡水化プラント、浄水設備、下水の再利用施設などへの適用が可能になり、世界各地で日本企業によるプロジェクトが進んでいる。

 日本の膜・エンジニアリング技術は世界のトップレベルにあり、水不足や水汚染の解決に日本の国際協力が期待されている。さらに水処理膜とそのシステムによるプラントは輸出産業としても有望で、今後大幅に伸びることが予想される。水処理膜の原理・構造と適用技術と今後の展望についても、世界各地で進むプロジェクト事例を紹介しながら、図や写真により具体的に分りやすく解説してみたい。

2006年9月
岡崎 稔
谷口 良雄

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