現在在庫がありません

科学立国日本を築く
―極限に挑む気鋭の研究者たち―

定価(税込)  1,980円

監修
編者
サイズ A5判
ページ数 372頁
ISBNコード 978-4-526-05635-2
コード C3050
発行月 2006年03月
ジャンル その他

内容

資源の少ない日本にとっては、最先端の科学技術を創出し、世界をリードしていく“頭脳”を生み出していくことが不可欠。本書では、最先端エレクトロニクス分野の若手研究者が、それぞれの技術分野の背景や現状、展望などをわかりやすく解説する。

榊 裕之  著者プロフィール

榊 裕之    東京大学生産技術研究所 教授
        (丸文研究交流財団 選考委員会 委員長)

目次

初めに  

第1章 青色から紫外光へ:LEDとレーザの新展開
1 青色発光ダイオードの夢  (天野 浩) 
2 窒化ガリウム(GaN)と関連半導体の結晶成長  (天野 浩) 
3 4元窒化物(AlGaInN)による深紫外発光  (平山 秀樹) 
3.1.はじめに 
3.2.紫外LED高効率化・短波長化の問題点と解決策 
3.3.InAlGaN4元混晶を用いた紫外高効率発光の実現 
3.4.InAlGaN4元混晶を用いた310~350nm帯紫外LED 
3.5.まとめと今後の展望 
4 Ⅲ族窒化物半導体の発光メカニズム  (秩父 重英) 
4.1.励起子について 
4.2.ひずみ量子井戸における分極電場誘起量子閉じ込めシュタルク効果 
4.3.インジウム系混晶における局在励起子 
4.4.まとめ 
5 化粧品が紫外発光ダイオードに大変身―酸化亜鉛LED―  (川崎 雅司) 
5.1.はじめに 
5.2.ZnOとは 
5.3.GaN系LEDとZnO系LEDの比較 
5.4.ZnO薄膜の高品質化 
5.5.ZnOのp型化とLED 
5.6.今後の展開 
6 波長変換結晶CsLiB6O10の発見と実用化  (森 勇介) 
6.1.発明発見 
6.2.光の色を変える魔法の材料:非線形光学結晶 
6.3.新材料探索 
6.4.3つ目の幸運 
6.5.異分野への展開 
6.6.まとめ 

第2章 赤外発光デバイスの進展:光通信・光計測の未来
1 光ファイバ通信のためのレーザはこんなにすごい  (中野 義昭) 
2 分布帰還型レーザの進化と光集積回路  (中野 義昭) 
3 面発光レーザの進展と並列化:大容量光通信に向けて  (小山 二三夫) 
3.1.面発光レーザとは 
3.2.面発光レーザの進展 
3.3.波長集積・制御技術 
3.4.金属ナノ構造面発光レーザと光近接場 
3.5.むすび 
4 光ファイバ増幅器の広帯域化:大容量光通信に向けて  (田部 勢津久) 
4.1.背景 
4.2.光増幅器材料の選択と設計 
4.3.希土類イオン遷移確率制御による広帯域光増幅器用ガラス材料の設計 
4.4.Sバンド増幅用Tmドープ光増幅器用酸化物ガラス材料の開発 
4.5.まとめ 
5 新しい半導体レーザ:量子カスケードレーザ  (大谷 啓太) 

第3章 フォトニック結晶で光を操る
1 フォトニック結晶とは何か  (野田 進) 
2 フォトニック結晶による光の自由自在な制御  (野田 進) 
2.1.2次元フォトニック結晶 
2.2.線・点複合欠陥系による自在な光制御 
2.3.ヘテロ構造の導入とその効果 
2.4.高Qナノ共振器とその応用 
2.5.非線形機能、アクティブ機能の導入 
2.6.まとめと展望 
3 フォトニック結晶を用いたナノ素子と光集積技術  (馬場 俊彦) 
3.1.ナノレーザとナノ共振器 
3.2.VCSELとLED 
3.3.ナノ導波路とスローライト 
3.4.スーパープリズム光学系 

第4章 テラヘルツ帯への挑戦
1 未開拓電磁周波数領域・テラヘルツ波帯  (川瀬 晃道) 
2 非線形光学効果によるテラヘルツ波の発生  (川瀬 晃道) 
3 半導体量子構造が拓くテラヘルツデバイスの可能性 (平川 一彦) 
3.1.古典的世界と量子力学的世界の境界に位置するテラヘルツ領域 
3.2.100フェムト秒の現象が見えるTHzオシロスコープ 
3.3.半導体超格子中の電子のブロッホ振動とTHz電磁波増幅の可能性 
3.4.まとめ 
     
第5章 ナノ構造による電子の制御と新素子応用
1 ナノ構造の魅力  (金光 義彦) 
2 物性物理学と光―新しい展開―  (小川 哲生) 
3 量子ナノ細線の光物性とレーザ応用  (秋山 英文) 
4 ナノ粒子の発光の物理と応用への展開  (金光 義彦) 
4.1.光と科学・生活 
4.2.新しい生活の光 
4.3.ナノ構造による性能の向上 
4.4.古くて新しい量子材料ナノ粒子 
4.5.発光材料としてのナノ粒子 
4.6.ナノ粒子への期待 
5 金属/絶縁体/半導体ヘテロ超格子デバイス  (渡辺 正裕) 
5.1.はじめに 
5.2.なぜ“金属/絶縁体/半導体へテロ超格子”なのか? 
5.3.ナノ空間による結晶成長制御と量子デバイス応用 
6 金属ナノ微粒子でのプラズモン共鳴と計測応用 (梶川 浩太郎) 
6.1.表面プラズモン共鳴とは 
6.2.金ナノ微粒子の表面プラズモン共鳴を利用した光ファイババイオセンサ 
6.3.表面プラズモン共鳴による巨大非線形光学効果 
6.4.まとめと展開 
7 原子の動きの観察と操作:ナノ構造形成に向けて (木塚 徳志) 
7.1.原子の運動を観る 
7.2.原子を観て、操り、測る実験方法 
7.3.観察結果 
7.4.最後に 

第6章 究極のトランジスタ:その姿と機能
1 電子1個でもトランジスタは動く?  (平本 俊郎) 
1.1.はじめに 
1.2.単電子トランジスタの動作原理 
1.3.単電子トランジスタの特性 
1.4.まとめ 
2 シリコン単電子トランジスタの室温動作  (平本 俊郎) 
2.1.はじめに 
2.2.単電子トランジスタの構造 
2.3.単電子トランジスタの室温動作 
2.4.負性微分コンダクタンス 
2.5.まとめ 
3 化合物半導体単電子デバイス  (本久 順一) 
3.1.化合物半導体と単電子デバイス 
3.2.有機金属気相選択成長法によるGaAs単電子デバイス 
3.3.トランジスタから回路へ 
3.4.まとめにかえて 

第7章 スピンを操る!
1 スピントロニクス創成期―スピンって何?―  (秋永 広幸) 
2 強磁性体金属と半導体の一体化:その物性と応用 (秋永 広幸) 
3 磁性体における磁壁のダイナミックス  (小野 輝男) 
3.1.はじめに 
3.2.強磁性細線の磁化反転 
3.3.単一磁壁の移動速度測定 
3.4.磁壁の電流駆動 
3.5.まとめ 
4 強誘電体と強磁性体からなる超格子:その形成と機能 (田畑 仁) 
4.1.はじめに 
4.2.レーザMBE法による原子層単位の結晶成長制御 
4.3.ペロブスカイト化合物の結晶化学と物性 
4.4.基板方位を利用したスピン配列制御 
4.5.磁性人工格子におけるスピン制御 
4.6.スピネル型フェライト(自然超格子)における高温クラスターグラスおよび光誘起磁性 
4.7.おわりに 
5 磁性を持った半導体:その物性と応用  (田中 雅明) 
5.1.はじめに 
5.2.磁性・スピン機能をもつ半導体ベースの材料 
5.3.Ⅲ―Ⅴ族磁性半導体とその強磁性転移温度 
5.4.シリコンデバイスとの融合へ向けて 
5.5.今後の課題と展望 

第8章 光で粒子・分子・原子の動きを操る
1 光で原子や分子が本当に動くの?  (伊藤 治彦) 
1.1.光は物質に力を及ぼす 
1.2.微粒子を捕まえる 
1.3.原子やイオンをとことん冷やす 
1.4.原子には2種類の力が働く 
1.5.原子をガイドする 
1.6.原子1個を飼い慣らす 
2 近接場光による原子操作とアトムフォトニクス  (伊藤 治彦) 
2.1.伝搬しない光を使う 
2.2.近接場光で原子を操る 
2.3.原子の動く向きを制御する 
2.4.原子をナノメートルのスポットに集める 
2.5.冷たい原子のビームを作る 
2.6.アトムフォトニクスの今後 
3 微粒子を光で捕らえる  (佐藤 俊一) 
3.1.三四郎おおいに驚く 
3.2.光圧力研究の進歩 
3.3.光圧力の発生 
3.4.光圧力の大きさ 
3.5.多様な応用例 
3.6.新しい光トラッピング 
4 光トラップによる一分子計測法と生体分子モータへの応用  (石島 秋彦) 
5 超精密原子時計と原子チップ―アルカリ土類原子のレーザ冷却が可能にした新技術―  (香取 秀俊) 
5.1.はじめに 
5.2.アルカリ土類原子のレーザ冷却 
5.3.光格子時計の誕生 
5.4.原子デバイスの実現に向けて 
5.5.おわりに 

第9章 LSIの新しいアーキテクチャ
1 知能情報処理と連想メモリ  (小出 哲士) 
1.1.連想メモリの機能の説明 
1.2.最小距離検索機能を用いたアプリケーション 
2 新しい連想メモリLSIアーキテクチャ  (小出 哲士) 
2.1.最小距離検索連想メモリアーキテクチャ 
2.2.距離計算回路のメモリ領域での実現 
2.3.最小距離検索回路の構成 
2.4.全並列連想メモリLSIチップの性能 
2.5.学習機能を有する連想メモリへの展開 

索引  
監修者、編集者、執筆者紹介  

はじめに

 20世紀の初頭、プランクやアインシュタインなどの天才たちは量子物理学を生み出し、そのお蔭で人類は極微の世界を支配する原理を理解するに留まらず、極微の世界の現象を制御し、新たな技術を創造する力も獲得してきています。近年、驚くべき進展を遂げているエレクトロニクス(電子工学)は、その代表的事例と言えましょう。原子の周りを周回する電子の動きを巧みに制御することで、トランジスタ・CCD・レーザ・LEDなどの優れた機能を持つデバイス群を生み出し、それらを組み合わせて、コンピュータやデジタルカメラなどの機器、光ファイバ通信やインターネットなどのシステムを実現させています。これらの技術は、生活の利便性の向上だけでなく、X線CT・赤外線計測・DNA解析等に活かされ、健康の確保・環境計測・人間の本質の解明にも大きな役割を果たしています。

 周知のように、これらのデバイスや機器の性能を飛躍的に向上させ、世界中に普及させる上で、日本の産業界の研究者や技術者が大きな寄与をなし、優れた性能の製品を世界各地に提供することで、日本の科学技術に対する国際的な敬意を獲得するとともに、国民には経済的な繁栄をもたらしてきました。また、この分野では、わが国の大学や国立研究所でも優れた成果が達成されており、世界に発信されている学術貢献が少なくありません。こうした成功に刺激され、欧米の研究者・技術者は努力と工夫をさらに加速させており、またアジアの近隣諸国も、近年目覚しい進展を見せています。今後「知の競争」が厳しさを増す中で、わが国の独自の知的な強さを発揮し続けるとともに、資源や環境の保全など地球規模の課題に対しては、協調的で有効な貢献をなすことが求められています。そのためには、深い科学的洞察力に加えて、人間生活と地球環境の向上に資する技術や制度を生み出す創造性と意欲を備えた研究者・技術者の育成と活躍とが不可欠と言えましょう。

 幸い、こうした認識は、政府・大学・産業界・公益法人などで共有され、様々な努力が展開されています。丸文研究交流財団では、1997年以来エレクトロニクス分野で活躍する国内外の若手研究者のために、研究者の奨励表彰と研究交流への助成活動を進めてきています。特に丸文学術賞・丸文研究奨励賞の受賞者は、「光エレクトロニクス」、「先端デバイス・ナノ技術」、「LSI素子・システム」、「バイオ・環境エレクトロニクス」などの最前線で国際的に注目すべき活躍を見せています。本書は、財団設立10周年を記念し、最先端で日夜研究に勤しむ30名の受賞者に、それぞれの研究分野と主要成果を分かりやすくかつ体系的に紹介してもらい、エレクトロニクス研究の魅力と重要性および将来への展望を、多くの方々に伝えることを目的に纏められたものであります。話題を集める青色LED、最先端の光技術、一電子を制御する究極のトランジスタからスピン制御素子などまで、興味深いテーマが網羅されています。本書によって、科学と技術に興味を持つ高校生や大学生、研究者・技術者の道を進む大学院生や若手研究者、先端技術に関心のあるビジネスマンの方々に、エレクトロニクスの最前線で活躍する気鋭の研究者の熱気を感じ取っていただきたいと思います。また、本書がわが国における科学・技術を含む学術・文化の今後の発展にささやかながらも寄与できることを祈念しております。

 最後に、多忙な研究の活動の中で、原稿執筆に協力頂いた全著者に深く感謝申上げます。

2006年 3月
監修者 榊  裕之 
編集者 堀越 佳治 

現在在庫がありません