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めっき加工のトラブル対策

定価(税込)  3,300円

著者
サイズ A5判
ページ数 296頁
ISBNコード 978-4-526-05588-1
コード C3057
発行月 2006年01月
ジャンル 金属

内容

めっきの品質は、各種工業製品の外観の出来不出来を大きく左右している。それだけにめっきの出来映えはその製品の商品価値を決定していると言っても過言ではない。本書はそのめっき加工に関するトラブル対策を事例をもとに解説。めっき実務者必携の実用書。

星野芳明  著者プロフィール

1944年 東京都に生まれる
1971年 横浜国立大学工学部応用化学科卒業
1978年 株式会社キザイ(旧社名日本化学機材株式会社)退社
 (1966年入社以来めっき技術,排水処理技術の研究開発及び現場導入指導を担当)
1979年 環境計量士(1977年登録)作業環境測定士(1979年登録)により,環境計量,環境改善の技術指導に取り組む
1987年 技術士登録により,星野技術士事務所開設し,現在に至る
1991年 労働安全コンサルタント登録により,生産設備機械安全対策に取り組む
現在 株式会社ハイテクノ技術スタッフ・上級表面処理講座講師
 東京都鍍金工業組合高等職業訓練学校 電気めっき科講師
 日本技術士会,埼玉技術士会所属
 労働安全衛生コンサルタント会所属
社団法人表面技術協会会員

目次

はじめに

基礎編
第1章 めっきのトラブル
  1.1 品質保証,製品安全の要求
  1.2 めっきに関するトラブル要素
  1.3 トラブル対策に対する意識改革
  1.4 品質不良トラブルとM. A. I. C. 技術

第2章 トラブル対策に必要なめっきの基礎知識
  2.1 水の化学
  2.2 金属の性質
  2.3 水溶液の化学
  2.4 めっきに必要な電気の基礎
  2.5 電気化学の基礎
  2.6 めっき浴組成に関する基礎知識

事例編
第3章 めっき工程でのトラブル対策
  3.1 素材加工に伴うトラブル
  3.2 前処理工程でのトラブル
  3.3 めっき浴種とトラブル
  3.4 後処理工程でのトラブル

第4章 めっき設備に関するトラブル対策
  4.1 主要設備のトラブル対策
  4.2 整流器のトラブル対策
  4.3 その他付帯設備のトラブル対策

第5章 排水処理でのトラブル対策
  5.1 シアン含有排水の処理とトラブル
  5.2 6価クロム含有排水の処理とトラブル
  5.3 重金属含有排水の処理とトラブル
  5.4 ふっ素含有排水の処理とトラブル
  5.5 ほう素含有排水の処理とトラブル
  5.6 キレート剤含有排水の処理とトラブル

トラブル対策事例一覧
   1.光学顕微鏡でのM. A. (計測と解析)によるトラブル対策
   2.SEM―EDXでのM. A. (計測と解析)によるトラブル対策
   3.イオン交換樹脂による純水精製のトラブル対策
   4.品質検査時の“すり傷”不良とトラブル対策
   5.カーケンダルボイド発生によるトラブル対策
   6.水溶液の濃度表示とトラブル事例
   7.プレス加工不具合によるトラブル事例(めっき“ふくれ”発生)
   8.切削加工不具合による“さび発生”とトラブル対策
   9.バレル研磨加工不具合による“と粒食い込み不良”のトラブル事例
  10.アルカリ脱脂不具合による“無めっき不良”のトラブル対策
  11.珪酸塩残留付着による“異物付着不良”のトラブル対策…
  12.油乳化分散分離型脱脂剤使用に伴う排水処理トラブルとその対策
  13.初段電解脱脂による“肌荒れむらのしみ”不良トラブルとその対策
  14.陰極電解洗浄剤中の珪酸塩による“ふくれ発生”トラブルとその対策
  15.塩酸酸洗いによる“水素脆性”割れ不良トラブルとその対策
  16.酸洗い工程における“孔食”発生と耐食性低下トラブルとその対策
  17.酸活性化工程の不備による熱処理“ふくれ”のトラブルとその対策
  18.無電解ニッケルめっき不備による“こぶ状めっき”不良トラブルとその対策
  19.“流れ模様状しみ”のトラブル対策
  20.陽極からのFe不純物による“くもり”不良トラブルとその対策
  21.温度管理不備によるオルソりん酸生成“析出むら”不良トラブルとその対策
  22.光沢硫酸銅めっきにおける“ざら”不良トラブルとその対策
  23.サージェント浴でのクロムめっき“しみ”不良トラブルとその対策
  24.触媒混合浴でのクロムめっきの“こげ”不良とその対策
  25.無電解ニッケルめっきでの“クラック”発生不良トラブルとその対策
  26.3価クロム化成処理での品質トラブルとその対策
  27.乾燥工程での“変色”トラブルとその対策
  28.メンテナンス不足による主要設備のトラブルとその対策
  29.整流器の点検不備によるトラブルとその対策
  30.整流器のトラブル(交流電源の異常)による品質不良とその対策
  31.トータルシアン流出トラブルとその対策
  32.トータルクロム流出トラブルとその対策
  33.ふっ素沈降処理不全のトラブルとその対策

あとがき

索引

はじめに

 めっきとは,金属あるいは非金属上に異種金属を被覆させ,装飾性を付与させたり,機能性をより高めたりするものである。
 めっき技術は,古代メソポタミア時代にすでにあったといわれているほど長い歴史があり,時代を経て最近では装飾を主体とする表面成膜ばかりでなく,ハイテク分野での機能を主体とする成膜法にその用途を拡大している。
 めっき加工方法には,大別して乾式法(Dry Process)と湿式法(Wet Process)とがある。さらに,乾式法は真空領域でめっき加工を行う真空めっき法(Vacuum Plating)と被覆させる金属を溶融させてめっき加工を行う溶融めっき法(Hot Dip Plating)とに分類できる。また,湿式法は一般的に水溶液を用いて被覆させようとする金属を溶解させ,イオンの状態で素材上に電解還元析出させる電気めっき法(Electroplating)および化学還元析出させる化学めっき法(Chemical Plating)に分類することができる。
 ここでは,最も広く利用されている湿式めっき法について取り上げ,水溶液を用いた電気めっき加工法および化学めっき加工法(通常無電解めっき加工法といわれている)のトラブル対策についてまとめてみた。
 「電気めっき業の21世紀ビジョン」が電気めっき経営問題等懇談会により出されている。その中に21世紀中期的電気めっき技術展望とその具体例が下記項目で記載されている。
 (1) 多層膜(人工格子)めっき技術
 多層膜めっき技術の原理は,異種金属原子を数原子層ずつ交互に積み重ねて,全く新しい性質を創出させようとするものである。気相式成膜法と湿式成膜法の2種類が考えられ,コスト面,設備面などから湿式成膜法が注目されている。
 具体的な方法として,
 ① 両金属を含む単一のめっき浴を用いて定電流パルス法により高電流パルス,低電流パルスを交互に繰り返す多層膜法
 ② 両金属を別々にしためっき浴2種類を用いて電気めっきを交互に行い多層膜化する方法
 多層膜の応用として,磁気抵抗効果や耐摩耗性効果,機械特性などの新たな性能が期待できる。
 (2) 化合物半導体めっき技術
 化合物半導体は,光通信や光情報処理など,オプトエレクトロニクス分野で重要な材料になると考えられている。
 ドライプロセスで作成され実用化されている化合物半導体材料に対して,電着法による高品質の化合物半導体薄膜の形成を目的に電気化学的原子層エピタキシーと呼ばれる単結晶基板上へのエピタキシャル成長に関する研究が盛んに行われている。
 (3) 半導体関連技術(ダマシン法というめっき技術)
 半導体産業の中で,配線材料のAl系合金が微細化による配線断面積の減少から配線抵抗による遅延やエレクトロマイグレーションによる回路の破壊が問題となっていた。この問題に挑戦したのが,IBMによる電気Cuめっきを用いた配線幅約0.3μmの配線プロセスである。さらに,現在の電気Cuめっきプロセスでは困難とされている配線幅0.1μm以下の要求にどのように対応するかが大きな課題となっている。
 (4) LIGAプロセスめっき技術(MEMSの産業化)
 LIGAプロセスは,X線を使用した深いリソグラフィと電鋳で高アスペクト比の微細構造を作製する技術である。
 MEMSとは,微細加工技術を用いてメカニカルな機能と電子回路を集積した微細なデバイスといえる。
 (5) 生体材料へのめっき技術
 インプラントを含めた生体材料の表面処理法の中で,今後発展すると考えられているのは,生体組織の構築過程を模倣して材料の表面処理に積極的に応用するバイオミメティックな表面改質法である。こうした方法により本質的に異物である材料と生体の共存が達成されると考えられる。今後,バイオテクノロジーと表面処理技術の融合によって,より生体適合性の高いインプラントの開発が期待される。
 (6) 抗菌材料としてのめっき技術
 医療,衛生器具,食器などの表面を抗菌処理する必要があり,残留による影響が懸念される有機合成殺菌剤に代わって抗菌性金属を含む無機系抗菌剤の利用や抗菌剤を金属マトリックス中に分散,複合させた複合めっき技術が注目されている。
 (7) 電池材料としてのめっき技術
 電池材料として,太陽電池,二次電池および燃料電池が注目されている。例えば,水素吸蔵合金粉末表面に無電解銅めっきや無電解ニッケルめっきを被覆することによって,寿命の向上を図る方策が図れる。
 以上のような精密微細めっき技術を特に湿式めっき法で技術開発し,工業化するためには,従来以上の工程管理技術と的確なトラブル対策技術が必要になる。
 このような背景の中で,従来からめっき加工は,長年の経験,熟練,勘が不可欠とされていたが,最近着々と学問的理論付けが行われ,各種めっき技術の基礎理論や学問的アプローチを取り扱った書籍や集大成された分厚い便覧が多く出版されるようになってきた。しかし,加工現場で手早く調べたり,教育訓練用に役立つトラブル対策を取りまとめたものはほとんどないのが現状である。
 そこで,諸賢から学び,筆者が体験したことをまとめ,本書では前述した精密微細加工品のためのめっき加工も考慮して,めっき加工の現場で役立つ水溶液の化学から素材加工と前処理工程およびめっき工程から後処理工程まで視野に入れたトラブル対策を考えてみる。

 平成17年11月
星野 芳明 

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