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今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしい接着の本

定価(税込)  1,540円

著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-05134-0
コード C3034
発行月 2003年05月
ジャンル ビジネス

内容

身近な日用品からスペースシャトルまで幅広い分野で接着剤は使われている。本書は接着剤のルーツ、接着の理論、機能を高める接着剤、接着と環境問題など、さまざまなテーマをとりあげ、図やイラスト、わかりやすい文章でトコトンやさしく解説している。

三刀基郷  著者プロフィール

三刀基郷(みとう もとのり)
1966年3月大阪市立大学大学院修了。工学博士。1971年2月大阪府立工業奨励館勤務、1999年3月大阪府退職、同年7月(財)大阪科学技術センター勤務、2003年同センター退職。同4月大阪市立大学事務局勤務、現在に至る。
接着剤の構造・物性と接着強さに関する研究などに従事。

主な著書
『接着ハンドブック(共著)』日刊工業新聞社(1990年)、『接着と材料(共著)』裳華房(1996年)、『機能性接着剤と最新技術(共著)』CMC(1997)、『接着の科学(共著)』講談社(1997)

目次

第1章 接着剤のルーツ
1 メソポタミア文明のアスファルト「接着剤はアスファルトから始まった」
2 縄文のハイテク「縄文時代天然アスファルトが使われた」
3 うるしも石器時代から「うるしも接着剤であった」
4 にかわとでんぷん「原料は魚・獣・稲」

第2章 現代の接着剤
5 接着剤の分類「高分子の性質により3つに大別」
6 溶剤が蒸発して固まる「将来は無溶剤形へ」
7 水が蒸発して固まる「エマルジョン系とラテックス系」
8 冷えて固まる「ホットメルト形接着剤」
9 重合して固まる「瞬間接着剤」
10 分子をつないで固める「鎖延長と橋架け」
11 網目構造をつくる「付加反応と縮合反応により硬化」
12 固まらない接着剤「粘着剤も接着剤の仲間」

第3章 技術革新をもたらす接着剤
13 合板にみる接着の技「20世紀初頭から作られたベニヤ板」
14 家具・木工にみる接着の技「木材資源の有効利用へ」
15 繊維製品にみる接着の技「不織布やビロードも接着剤が必要」
16 紙・包装製品にみる接着の技「ホットメルト接着剤で生産性が向上した製本」
17 靴・履物にみる接着の技「合成ゴム底の靴が主流に」
18 建築にみる接着の技「釘の出番がなくなってきた」
19 自動車にみる接着の技「ブレーキにも高性能接着剤が」
20 飛行機にみる接着の技「ジャンボジェット機には1トンもの接着剤が使われる」

第4章 接着の理論
21 ガラスは水で接着できる「水だけなのになぜ剥がせない」
22 分子と分子の引き合う力「接着の原点は分子間力」
23 界面に働くその他の力「接着の要因は1つではない」
24 ファンデルワールス力(1)配向力「各分極分子は静電気引力で引き合う」
25 ファンデルワールス力(2)誘起力と分散力「非分極分子も電場をかけると分極が起こる」
26 水素結合力「水分子は水素結合でがんじがらめ」

第5章 分子間力と表面特性
27 分子間力と表面自由エネルギー「液体内部の分子と表面の分子は違う」
28 表面自由エネルギーと表面張力「表面積が増えると表面自由エネルギーも増える」
29 分子間力、表面張力とぬれ「水は自然の状態では球状」
30 ぬれの評価「接触角が評価の指標」
31 臨界表面張力「液体が固体表面をぬらす条件」
32 液体と固体の接着エネルギー「接着仕事を計算する」
33 固体の表面自由エネルギー「表面張力の実測方法は?」
34 くっついているエネルギーとくっついている力「くっついているエネルギーの計算」
35 くっつきやすさ「最適接着剤はどうして選ぶ」

第6章 界面化学から破壊の科学へ
36 接着強さを測る「物の強さは壊し方で変わる」
37 試験片の大きさによっても強さが変わる「接着強さはラップ長の増加につれて減少」
38 粘弾性「接着剤に使われる高分子材料は粘弾性体」
39 粘弾性モデル「接着剤の耐クリープ性の説明に」
40 高分子材料の粘弾性「粘弾性の簡易な体験法」
41 接着強さと測定温度「温度で接着強さはどう変わる」
42 接着強さと破壊速度「はく離速度ではく離強さが変わる」
43 はく離エネルギー「はく離強さからはく離エネルギーを求める」
44 はく離エネルギーと接着仕事「真のはく離エネルギーの求め方?」
45 極性基の導入で界面を強くする「はく離強さが大きくなる」
46 水素結合の導入で界面を強くする「水酸基濃度が大きくなるとはく離強さも大きくなる」
47 化学結合の導入で界面を強くする「シランカップリング剤で化学結合をつくる」

第7章 高機能化する接着剤
48 構造用接着剤「航空機産業から生まれる」
49 耐熱接着剤「どんどん増えるニーズ」
50 導電性接着剤「開発競争は熾烈」
51 油面・湿潤面接着剤「脱脂せずに接着できる」
52 医用接着剤「消化管や血管の吻合にも使用」
53 嫌気性接着剤「空気や酸素がなくなると接着がすすむ」
54 第2世代アクリル系接着剤「新しい構造用接着剤として注目」
55 光硬化形接着剤「紫外線の照射で硬化」
56 弾性接着剤「高い応力緩和能を発揮」
57 反応性ホットメルト接着剤「耐熱、耐溶剤性に優れる」
58 水性ビニルウレタン接着剤「常識はずれ、逆転の発想から生まれる」
59 超強力両面粘着テープ「自動車、家電製品分野などで威力を発揮」

第8章 環境にやさしい接着剤
60 脱溶剤「環境問題もからんで代替がすすんでいる」
61 脱ホルマリン「シックハウス症候群で社会問題化」
62 脱内分泌攪乱物質「疑わしきは使用せず」
63 剥がせる接着剤「昔からあった」

【コラム】
●接着剤は神代の昔から
●いまや接着剤の花盛り
●現代の匠の技
●くっつくわけ
●界面のベールを剥ぐ
●理論から生まれる
●環境を守る

単位換算表/水に対する接触角/被着材と接着試験方法
接着剤・接着用語
参考文献

はじめに

筆者は、大阪府の研究機関で長年にわたり接着にまつわる研究をしてきました。職場では、研究、技術指導・相談、依頼試験が3本柱と呼ばれ、研究以外に接着にまつわる技術相談もかなりこなした経験があります。

一番困るのが、「○○と××をくっつけたいのですが、どんな接着剤を使ったらいいですか?」という電話での質問です。

  「もう少し詳しいお話を伺えませんか?」と言うと、「○○と××がくっつけばいいのです」と返ってきます。いらぬ詮索は無用と言う雰囲気と、そんなことも知らないのかと言わんばかりのムードが受話器を通じて伝わります。

こちらも負けてはいられません。「どんな形のもので、どういうことにお使いになるのでしょう?」と切り返すのです。

このあと、接着剤の選択はそれほど容易ではないという説明を延々とすることになります。なにしろ、接着剤の種類たるや、実に多いのです。質問の答えとしては、目的にかなった接着剤を選択しなければなりませんが、かなうべき目的がはっきりしないことには選びようがありません。そのために、冒頭のやりとりをすることになります。

接着剤選定のプロセスを追いかけてみましょう。接着剤は相手を選びます。接着剤と被着材(くっつける相手)にも相性があります。○○と××をくっつける場合には、○○にも相性がよく、××にも相性の良い接着剤を数ある接着剤の中から選び出すことになるのですが、選ぶからには選ぶ基準がなくてはなりません。そのためには、物と物とはなぜくっつくのかを知っていると少しは役に立つのです。

物と物がなぜくっつくかは、大変難しい問題です。接着剤と被着材の間に界面が存在するからです。接着では、その界面に力の伝達能力がなければなりません。つまり、界面に大きな結合力が存在しなければ、簡単に剥がれてしまって接着の用をなさないのです。本書では、この「物と物とはなぜくっつくか」にかなりの紙面を割きました。内容がかなり難しくなってしまったのではないかと懸念していますが、これが、本書の特徴であるとご容赦下さい。

くっつく理屈が分ったからといって、接着剤が選択できる訳ではありません。くっつけたものの使用条件がもう一つの関門です。たとえば、半永久か、仮止めか(使用期間)、大きな力がかかるのか、ただくっついていればいいのか(応力レベル)、一定の力なのか、繰返しの力がかかるのか(応力の変動)、高温での使用か、室温近傍での使用か、あるいは低温での使用か(使用温度)、屋外で使用するのか、屋内か(水の影響、外気温の変動による変動応力の発生)、湿度が高い場所での使用か、低い場所か(水分による接着剤および界面の劣化)、薬品はかからないか(対薬品性)など、およそ考えられるだけの因子はすべて押さえなければなりません。しかし、これら使用条件と接着剤の選択基準とに関する情報をまとめて入手できるということは、まずありません。接着は現代の匠の技、経験が生きる世界でもあるのです。

さらに、作業性の問題があります。接着剤は、被着材ヘ塗布するときは必ず液体でなければなりません。塗布の方法はどうするのか、大面積か小面積か、機械を使うのか、手作業か、塗布量のコントロールは?等々です。とにかく、条件に合った塗布方法に適した性質を持つ接着剤でなければなりません。

塗布した後に被着材を貼り合わせますが、接着剤はその後固まって接合部にかかる力を支えねばなりません。固化の条件も考慮しておく必要があります。有機溶剤が飛び出してもいいか、加熱して硬化するか常温で硬化するか、二液タイプでは計量混合できるか、塗布してから貼り合わせるまでの時間(オープンタイム)はどの程度か、などです。そして、決定的なのがコストです。

接着にまつわる複雑な側面をご理解いただけたと思います。本書が、問題のすべてについての答えを用意しているという訳ではありませんが、本書が何らかの形でお役に立てば幸いです。

2003年5月
著 者

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