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今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしい真空技術の本

定価(税込)  1,650円

著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-08007-4
コード C3034
発行月 2019年09月
ジャンル その他 機械

内容

真空は、「熱伝導がない」「水が蒸発しやすい」「放電が起きやすい」などの大きな特徴をもち、半導体、LED、液晶パネルの製造工程をはじめ、家電製品、自動車産業、農業や医療など幅広い分野で必要不可欠な技術である。本書では、この真空技術を図解でわかりやすく解説する。

関口 敦  著者プロフィール

●著者略歴
関口 敦(せきぐち あつし)
工学院大学 学習支援センター講師、客員研究員
1956 年 東京都生まれ
1882 年 青山学院大学理工学研究科化学専攻終了
2003 年 青山学院大学理工学研究科化学専攻で博士論文審査に合格。
博士(理学)

1882 年 日電アネルバ株式会社(現キヤノンアネルバ株式会社)入社
この間、薄膜太陽電池の製造装置、半導体集積回路素子の製造装置の 研究・開発に従事
1990 年 同社より新技術事業団(現科学技術振興機構)ERATO 増原極微変換プロジェクトへ研究員として出向
この間、マイクロ化学と反応場の創製の研究に従事
1992 年 アネルバ株式会社(現キヤノンアネルバ株式会社)復帰
(会社復帰後もプロジェクト終了の1993 年まで研究推進委員として活動)
この間、半導体集積回路素子の製造装置(CVD装置、スパッタ装置、ドライエッチング装置など)の研究・開発に従事。
研究・開発部門から事業部を経て、開発・事業管理部門へ移籍し最後は技術者教育部門の統括に従事。
2016 年 キヤノンアネルバ株式会社 定年退職
同年 より現職

2012年~2019年 公益社団法人日本表面真空学会(前 一般社団法人日本真空学会)理事
2019 年より理事を退任し協議員
2017 年~2019 年 同学会 教育委員会 委員長、
米国 AVS 会員、日本化学会 会員、応用物理学会 会員

目次

第1章 真空っていったいどういうこと?
1 真空状態ってどういう状態?「必要不可欠な真空技術」
2 真空状態だと何が起こる?「幅広い分野で応用」
3 真空はどうして見つかったのか「ガリレオとその弟子たち」
4 圧力って真空とどんな関係があるのだろう「パスカルが解き明かす」
5 真空にとっての気体ってなに「真空容器の中の空気と気体の性質」
6 どうすれば真空はつくれるのだろう?「ゲリーケの真空ポンプ」
7 ゲージ圧と絶対圧に注意が必要「私ボーっと生きていました(1)」
8 調圧器の圧力変動を理解しよう「私ボーっと生きていました(2)」

第2章 真空の分類とその特徴
9 真空はどんな種類に分けられる「4つの種類に分類」
10 真空中では気体はどう動いているのだろう「気体分子の運動」
11 粘性流と分子流ってなに「気体の流れを決める」
12 低真空ってどんな状態「簡単な機器でもできる」
13 中真空ってどんなこと「中真空向け真空システム」
14 高真空ってどんなこと「高真空向け真空システム」
15 超高真空ってどんなこと「超高真空向け真空システム」

第3章 家庭の中にある真空
16 掃除と真空技術「「大気圧を感じる」の応用」
17 料理と真空技術「真空調理器具いろいろ」
18 照明と真空技術「酸素が少なくなる性質を応用」
19 テレビと真空技術「真空管から製造工程へ」
20 収納と真空技術「シールで密閉」

第4章 真空は産業の宝箱
21 ノーベル物理学賞と真空の関係「物理学に必要不可欠な真空技術」
22 ゲーリケの夢と功績「真空技術の各種の応用」
23 白熱電球量産化のための真空ポンプ「エジソンの夢」
24 真空技術の上に成り立つ電子産業「製造過程に不可欠」
25 自動車を作るには真空技術が必須なのだ「自動車産業と真空」
26 種々の医療機器で真空が使われている「医療と真空」
27 薄膜は真空プロセスによって形成される「光学と真空」
28 缶詰やレトルト食品、フリーズドライまで「食品と真空」
29 太陽電池や光触媒の分野で利用される「エネルギーと真空」

第5章 “真空”はどうやって作るのか
30 真空システムはどのように作るの「選択のポイント」
31 真空容器はどうすればよいのか「各種の工夫が必要となる」
32 真空排気の特性はどのようなものか「やっかいな水や油」
33 真空ポンプってどんなものをどう選ぶ「排気速度と到達圧力」
34 排気速度とコンダクタンスってなに「排気速度の選定式」
35 コンダクタンスはどのように使うのか「粘性流コンダクタンスと分子流コンダクタンス」
36 流体の流速を利用するエジェクタポンプ「真空ポンプ①」
37 最も汎用的な油回転ポンプ「真空ポンプ②」
38 排気速度の大きなルーツポンプ「真空ポンプ③」
39 油を嫌うプロセスに使うドライポンプ「真空ポンプ④」
40 高真空に対応した油拡散ポンプ「真空ポンプ⑤」
41 オイルフリーの超高真空対応ターボ分子ポンプ「真空ポンプ⑥」
42 最もクリーンな真空を作るクライオポンプ「真空ポンプ⑦」
43 気体分子を化学反応させるゲッタポンプ「真空ポンプ⑧」
44 取付け方向に注意が必要な真空バルブ「真空を作る構成部品①」
45 大気と真空空間をつなぐ真空部品「真空を作る構成部品②」
46 漏れ試験はどうすればいいのか「真空を作る構成部品③」

第6章 “真空”は何でどうやって測る?
47 真空を測る真空計ってどんなもの?「真空計にはいろいろなものがある」
48 全圧計と分圧計ってどんなもの?「真空雰囲気の構成要素を知る」
49 気体の圧力そのものを測定する「水銀柱、U字管真空計」
50 大気圧以上から低真空まで安価に測定「ブルドン管真空計」
51 高真空から中真空で使用できる簡便な真空計「ピラニ真空計、熱電対真空計」
52 高真空の中間領域まで高精度で測定「静電容量型隔膜真空計」
53 高真空から超高真空領域で汎用的に使用されている真空計「電離真空計・B-A真空計」
54 熱陰極形電離真空計を中真空領域まで使用できるように工夫「シュルツ真空計、高圧力電離真空計」
55 高真空から超高真空までの圧力を測定することが可能「マグネトロン真空計」
56 二次標準真空計として使用されている「スピニングロータ真空計」
57 真空容器内の気体種類と分圧を知る「質量分析計、分圧真空計」
58 気体の流量ってなに「広まりつつある国際標準」
59 簡易的に流量を測定する「浮き子式流量計」
60 自動的に流量制御を行う質量流量制御器「質量流量計」

第7章 これからの真空技術
61 真空の特性「蒸発しやすい」を活用する「飽和蒸気圧と蒸発速度」
62 真空の特長を活かした断熱技術「気体と熱伝導」
63 真空で清浄表面の管理と酸化抑制「電子デバイスの作製」
64 真空下での放電とプロセスプラズマ「プラズマのいろいろな利用」
65 真空技術が応用される宇宙開発「宇宙工学に必要不可欠」
66 真空技術を利用した最先端研究とは「高エネルギー物理学研究」

コラム
17世紀の科学技術者の真空にかける夢
真空体験教室と子供たち
身近な真空技術
真空技術とイノベーション
エジソンのメンテナンス技術
有効数字と再現性
重力波望遠鏡と真空技術

参考文献
索引

はじめに

 生活の中で私たちは真空や真空技術を意識することはあまりありません。しかしながら、真空技術は生活の中に身近にあって、大変に役に立っている技術なのです。照明、食品保存、掃除機はもちろん、最近では真空チルド冷蔵庫や真空炊飯器など「真空」の用語が直接付いた商品も見られるようになりました。さらに携帯電話、フラットパネルディスプレイ、デジタルカメラ、発光ダイオードなども真空技術を使用しなければ作ることができません。医療、エネルギーや自動車などの産業分野でも真空技術は活躍しています。このように真空技術は今日の産業の基盤技術となっています。
 本書では、この真空技術の概略をわかりやすくまとめて解説しました。初めて真空技術に触れた技術者の皆様や大学の研究室で真空装置に触れ学び始めようとされる学生の皆様向けに真空技術の入門書となるように心がけて執筆しました。特に大学などで教わる機会が少なく、技術者が誤りやすい内容(ゲージ圧の概念など)を丁寧に解説したつもりです。この種の項目は座学と実務を結びつける内容となっています。また使用した用語は日本工業規格(JIS)や国際規格に準拠するようにこころがけました。一方、国際化の視点から規格準拠のみでは十分でない側面もあります。例えば真空技術では最も基本となる圧力の単位です。基本部分はSI単位であるPa(パスカル)を使用していますが、米国などで多く使用されている Torr (トル)も紹介しています。技術者の皆様が国際的な出会いの中で困ることのないように配慮しました。
 真空技術は超高真空領域まで含めると15桁にもおよぶ圧力範囲を制御しなくてはなりません。とても奥が深く、学ぶべき内容が多いのも事実です。超高真空などの真空技術は、一昔前までは特殊な技能を取得した人たちだけが取り扱う技術でした。ところが半導体などの固体素子製造技術の進歩によって、今では普通に取り扱いができるようになっています。このような背景を受け、真空技術に関する内容を再整理して改めて真空技術の入門書としてまとめました。
 筆者が真空産業に身を置いたとき、諸先輩より「真空技術で未来を拓く」と教わりました。その後、確かに多くの新しいトレンド商品が真空技術から生まれてきました。これらのトレンド商品で私たちの生活も大きく変化し豊かになっています。今回、改めて振り返るとその背後にある真空技術の存在に感動します。そして将来も間違いなくこの事実は続きます。本書では「真空は産業の宝箱」と表現しました。本書が読者の皆様の真空技術を手に入れる切っかけとなり、宝箱を開けることができるチャンスが生まれることを願っています。
 最後に本誌の執筆の機会を与えてくださった日本真空工業会の武田清事務局長、編集内容の調整や原稿のチェックをおこなっていただいた日刊工業新聞社の藤井浩氏に感謝申し上げます。

令和元年 9月
関口 敦

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