買い物かごへ

アグリカルチャー4.0の時代
農村DX革命

定価(税込)  2,484円

著者
著者
著者
サイズ A5判
ページ数 192頁
ISBNコード 978-4-526-07973-3
コード C3034
発行月 2019年04月
ジャンル 経営

内容

ICT/IoTからデジタル・トランスフォーメーション(DX)化への流れが、農業ビジネスのみならず農村と社会のあり方を変えていく。「自動耕作」「農地最適管理」などの支援システムを核に、要素ユニット「DONKEY」を実装した第4次農業革命の展開策を示す。

三輪泰史  著者プロフィール

(みわ やすふみ)
1979年生まれ。広島県福山市出身。
2002年、東京大学農学部国際開発農学専修卒業。2004年、東京大学大学院農学生命科学研究科農学国際専攻修了。同年株式会社日本総合研究所入社。現在、創発戦略センター・エクスパート。農林水産省「食料・農業・農村政策審議会」委員、農林水産省系官民ファンド・株式会社農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE)社外取締役、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)アドバイザリーボード委員長をはじめ、中央省庁・地方自治体の有識者委員等を歴任。
専門は、農業ビジネス戦略、農村・地域活性化、農産物のブランド化、スマート農業等の先進農業技術、日本農業の海外展開。
主な著書に『IoTが拓く次世代農業―アグリカルチャー4.0の時代―』『次世代農業ビジネス経営』『植物工場経営』『グローバル農業ビジネス』、『図解次世代農業ビジネス』(以上、日刊工業新聞社)、『甦る農業―セミプレミアム農産物と流通改革が農業を救う』(学陽書房)ほか。

井熊 均  著者プロフィール

(いくま ひとし)
株式会社日本総合研究所
専務執行役員 創発戦略センター所長
1958年東京都生まれ。1981年早稲田大学理工学部機械工学科卒業、1983年同大学院理工学研究科を修了。1983年三菱重工業株式会社入社。1990年株式会社日本総合研究所入社。1995年株式会社アイエスブイ・ジャパン取締役。2003年株式会社イーキュービック取締役。2003年早稲田大学大学院公共経営研究科非常勤講師。2006年株式会社日本総合研究所執行役員。2014年同常務執行役員。2017年より現職。環境・エネルギー分野でのベンチャービジネス、公共分野におけるPFIなどの事業、中国・東南アジアにおけるスマートシティ事業の立ち上げ、などに関わり、新たな事業スキームを提案。公共団体、民間企業に対するアドバイスを実施。公共政策、環境、エネルギー、農業、などの分野で70冊の書籍を刊行するとともに政策提言を行う。

木通秀樹  著者プロフィール

(きどおし ひでき)
株式会社日本総合研究所
創発戦略センター シニアスペシャリスト
1964年生まれ。97年、慶応義塾大学理工学研究科後期博士課程修了(工学博士)。石川島播磨重工業(現IHI)にてニューラルネットワーク等の知能化システムの技術開発を行い、各種のロボット、環境・エネルギー・バイオなどのプラント、機械等の制御システムを開発。2000年に日本総合研究所に入社。現在に至る。環境プラント等のPFI/PPP事業では国内初となる事業を多数手がけ、スマートシティなどの都市開発事業を実施。また、農業ロボット、自動運転、エネルギーマネジメント、資源リサイクル、再生可能エネルギー等の社会インフラIoTの新事業開発、および、再生可能エネルギー、水素等の技術政策の立案等を行う。著書に「大胆予測 IoTが生み出すモノづくり市場2025」、「IoTが拓く次世代農業 アグリカルチャー4.0の時代」、「公共IoT-地域を創るIoT投資」(共著、日刊工業新聞社)など。

目次

はじめに

パートⅠ ターニングポイントを迎えた日本農業
1.日本農業の『現在地』
(1)積極的な農業政策による農業産出額の増加
回復の兆しが見えてきた日本農業/アベノミクスの一環として進展する農業の成長産業化/激変する農業マーケット/
世界に広がる日本農業のチャンス
(2)2030年、農業者100万人時代に
とまらない農業者の高齢化と離農/離農に伴い増加する耕作放棄地/2035年、農業者100万人時代に/
農業者100万人で農業生産を維持するためには

2.農業参入と法人化で加速する農業の“ビジネス化”
(1)農業のビジネス化の加速 〜農業参入企業と農業法人の急増〜
規制緩和により急増する農業参入/農産物の需要家が農業参入する垂直統合型/
異業種から参入する水平展開型/農業法人化により農業者がビジネスパーソンに
(2)“儲かる農業ビジネス”が日本農業の試金石
“儲かる農業ビジネス”が合言葉に/全国で台頭する“スター農業経営者”/異業種のノウハウを持ち込んだ成功者
(3)農業ビジネスを支える政策、制度
規制緩和が効果を発揮した農業参入/農地確保を容易にするための政策/
最新技術の研究開発・普及の推進政策/金融面からの農業ビジネスの支援策

3.ここまで来たスマート農業
(1)スマート農業技術の分類
①スマート農業の『眼』
ドローンや人工衛星を活用した農地のリモートセンシング/
農地センサーを活用した栽培環境のセンシング/糖度センサーや含水率センサーによる農産物の品質の見える化
②スマート農業の『頭』
農業でPDCAを可能にする生産管理システム/日本中の農業者がつながる「農業データ連携基盤」/
AIを活用した病害虫診断システム/農業データの活用事例〜収穫予測シミュレーション〜
③スマート農業の『手』
商品化が始まった自動運転農機/低価格化が至上命題の単機能型農業ロボット/自律多機能型農業ロボット“MY DONKEY”/
機能向上が進む農作業用ドローン/稲作のヒット商品“水田自動給排水バルブ”
(2)政策の1丁目1番地となったスマート農業
スマート農業推進の2本柱〜集中的な技術開発と継続的な規制緩和/
技術開発政策①:スマート農業を実用段階に引き上げた内閣府SIP/
技術開発政策②:成功事例を生み出すためのスマート農業加速化実証プロジェクト/
新技術の社会実装を後押しする規制緩和とガイドライン作成
(3)農業を魅力的な産業にするためのアグリカルチャー4.0
農業の歴史の最先端にある「アグリカルチャー4.0」/
アグリカルチャー4.0の第1のポイント:儲かる農業/アグリカルチャー4.0の第2のポイント:皆ができる農業

パートⅡ 農村デジタルトランスフォーメーション
4.デジタルトランスフォーメーションが農業を魅力ある産業に
(1)アグリカルチャー4.0の進化のプロセス
アグリカルチャー4.0を農業から農村へ/AI/IoTが解決策/アグリカルチャー4.0の進化の4ステップ/ステップ③ 安心できる農業/
ステップ④ ラストリゾートとしての農業・農村/デジタル技術が支える新たな農業・農村の姿
(2)農村DXとは
デジタル技術を駆使して構造変革を起こすのがDX/DXを構成する四つの要素/ポテンシャル高い農村のDX
(3)農村DXで“CASE”を起こす
農業と農村をまるごとデジタル化/農村DXのポイントとなる“CASE”

5.農村DXの八つの変革
(1)農業機械/資材のスマートシェアリングで負担半減
〈背景〉農業における農機の位置づけ/農業資材に求められる効率活用〈システム概要〉余剰となる農機のシェアリング/
農機メンテナンスの高精度化と効率化/農業資材のスマート調達〈効果〉
(2)農村ブランド&ダイレクト流通で収入倍増
〈背景〉〈システム概要〉ロボット等を用いたデータの自動収集/情報提供・価値訴求によるブランド構築/
生育データを活用した量と質の需給マッチング/農産物輸送のスマート化〈効果〉
(3)AI/IoTが実現する自立型農業インフラ
〈背景〉〈システム概要〉農地のモニタリングとAI診断システム/地域の農業者と連携したモニタリングシステム/
農地の災害対策に効果を発揮するAIモニタリング・制御〈効果〉
(4)スマート農業で“農作業をしない農家”が生まれる
〈背景〉〈システム概要〉負荷の大きな農作業を担う「スマート農業アウトソーシングサービス」/
データ活用で差別化を行う新たな農業〈効果〉
(5)農村から始まるエネルギー自立圏
〈背景〉電力分野の3大トレンド/現実性高まった地域の自立型エネルギーシステム/
〈システム概要〉地域の再生可能エネルギーを活用した電熱の供給/再生可能エネルギーを有効活用する蓄電池運用/
無人化されたエネルギー需給と機器の管理/費用負担の最適化/〈効果〉電力事業の経営オプション/次世代の自立的コミュニティづくり
(6)農村3R(リソース・リユース&リサイクル)が生み出す資源リッチ
〈背景〉持続可能でないマテリアルバランスの崩壊/バイオリッチの農村/〈システム概要〉地域のバイオマスの情報ネットワーク/
効率化するバイオマスの収集/中核となる堆肥化施設/〈効果〉バイオリッチを活かす住民参加とDX/
多方面に及ぶバイオマス利用の効果/農村地域のさらなる資源有効利用
(7)台頭する農村DXベンチャー
〈背景〉公共と民間の新たな関係/DXで生まれるビジネス機会/技術実証場所としての農村の可能性/〈システム等の概要〉/〈効果〉
(8)年齢リタイア、心のリタイアを受け入れる“農村スマートライフ”
〈背景〉/〈システム等の概要〉新規就職者を支援するハード・ソフトのサポート/地域生活を豊かにする共有システム/
地域に張り巡らせる健康管理ネットワーク/〈効果〉

6.農村DX実現戦略
(1)農村DXを戦略的政策に位置付けるための三つの理念
農村DXの政策的位置づけ/①日本の農村の未来を拓くのはDXである/②農村DXは日本としてのグローバル戦略商品になる/
③農村が日本の社会、産業のDXの発信地になる
(2)農村DX実現のための6人のプレーヤー
DX農村をリードするDXメイヤー/DX技術普及のハブとなるDXマイスター/農村社会の再生の中心となるDXコミュニケーター/
DX技術を支えるDXサポーター/戦略作りを支援するDXアドバイザー/政策の核となるDXポリシーオーガナイザー
(3)農村DXのパッケージモデルを創る“デジタルトランスフォーメーション特区”
垣根を越えた農村DXパッケージを構築/省庁間、官民をまたいだシームレスな農村DX政策/
特区、サンドボックス制度を活用した政策パッケージづくり
(4)農村DXをインキュベーションセンターに
インキュベータのための仕掛け/スモールスタートを農村DXベンチャーの起点に/スモールスタートの宝庫としての農村DX/
農村DXで求められるインキュベータ機能
(5)サステイナブル農村の実現
SDGsの観点からみた農村DXの重要性/サステイナブル・インフラに立脚した「持続的で儲かる農業」/
自立型農業による経済的サステイナブル・ライフの実現/農村内ネットワークと農村サポーターによるサステイナブル・コミュニティの実現

はじめに

 日本の農業は大きな変化の時を迎えている。右肩下がりが続いてきた農業産出額は直近3年連続で上向き、明るい兆しが見えてきた。また、全国で儲かる農業の好事例が生まれ、新たに農業を志す方々のお手本となっている。他方で、農業就業人口は減少の一途をたどり、2030年には「農業者100万人時代」を迎える。日本農業がV字回復するのか、それともこのまま転落してしまうのか。日本農業は重要な分水嶺に立っている。
 日本農業の未来を背負っているのが、AI/IoT等の先進技術を駆使したスマート農業である。産官学の積極的な技術開発を受け、自動運転トラクター、農業ロボット、農業用ドローン、生産管理システム等、この数年で多種多様な商品・サービスが実用化し、まさに百花繚乱となっている。スマート農業は労働力やノウハウの不足を補う、農業者を支える欠かせない存在となっていく。農業現場にとっては、トラクター等の農機が搭乗した時以来の大きな変化とも言えよう。
 ただし、スマート農業だけで日本農業の問題がすべて解決されるわけではない。それは農村地域の抱える課題だ。農業への関心の高まりを受け、若者やUターン・Iターン人材等、さまざまな方が新規就農や農村移住を志している。これらの新たな人材は、人口減少や高齢化により徐々に活力を失いつつある農村地域にとっては、未来への希望といっても過言ではない。しかし残念なことに、農業と地域の現場の課題を紐解くと、農業や田舎暮らしに憧れる方の多くが、農業の難しさや田舎の不便さゆえに短期間でギブアップしている状況が見えてくる。
 農業を起点に活気ある地域を創るには、農業と農村全体をデジタル化し、儲かる農業と住みやすい農村を両立させることが重要である。SNSやインターネット販売といったデジタル化の波は、「農村=不便」という固定観念を打破できる可能性を秘めている。デジタル技術により農村の不便さを解消することで、農村本来の魅力を再発見できる。さらにAI/IoTは、地域の農業ビジネス、インフラ、エネルギー、流通、生活サービス等の抜本的な改善・向上に貢献すると期待される。
 本書では次世代の農業・農村の姿を実現するためのデジタル化戦略として、「農村デジタルトランスフォーメーション(農村DX)」という新たなコンセプトを提唱し、具体的な実現策を示している。農村デジタルトランスフォーメーションにより、農業・農村全体をデジタル化し、「儲かるビジネスがあり、かつ住みやすい農村」を実現することで、日本の農業・農村はより魅力的な存在となる。
 スマート農業、AI/IoT、そして地域活性化に対する関心が高まる中、本書の内容が、高い志を持った農業者やビジネスパーソンに対して少しでもお役に立てば、筆者としてこの上ない喜びである。
 本書は株式会社日本総合研究所・創発戦略センターの井熊均所長及び木通秀樹シニアスペシャリストとの共同執筆である。豊富な経験と鋭い発想力を基に、農村デジタルトランスフォーメーションのコンセプト検討及びアイデアの具体化にご尽力頂いたことに感謝申し上げる。
 本書の企画、執筆に関しては新日本編集企画の鷲野和弘様に丁寧なご指導を頂いた。この場を借りて厚く御礼申し上げる。
 最後に、筆者の日頃の活動にご支援、ご指導を頂いている株式会社日本総合研究所に対して心より御礼申し上げる。
2019年4月
株式会社日本総合研究所 創発戦略センター
三輪 泰史

買い物かごへ