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今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしいVRの本

定価(税込)  1,650円

監修
編集
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-07942-9
コード C3034
発行月 2019年02月
ジャンル その他 ビジネス 機械

内容

VR(virtual reality、仮想現実)はゲームを発端に身近なものになり、応用分野が拡大している。本書では、VRの基礎から人間の感覚のメカニズム、VRが与える効果と影響、周辺技術、VRの応用と社会的意義まで取り上げる。

廣瀬通孝  著者プロフィール

(ひろせ みちたか)
東京大学大学院情報理工学系研究科 教授
東京大学バーチャルリアリティ教育研究センター長

1954年5月7日生まれ、神奈川県鎌倉市出身。1982年3月東京大学大学院工学系研究科博士課程修了(工学博士)。東京大学工学部講師、助教授、同大大学院工学系研究科教授、先端科学技術研究センター教授、大学院情報理工学系研究科教授、東京大学バーチャルリアリティ教育研究センター長(併任)を経て現在に至る。日本バーチャルリアリティ学会会長、日本機械学会フェロー、産業技術総合研究所研究コーディネータ、情報通信研究機構プログラムコーディネータなどを歴任。専門はシステム工学、ヒューマン・インタフェース、バーチャル・リアリティ。


●主な著書

『いずれ老いていく僕たちを100年活躍させるための先端VRガイド』講談社

『バーチャルリアリティ学』監修、コロナ社

『ヒトと機械のあいだ—ヒト化する機械と機械化するヒト』編、岩波書店

『バーチャル・リアリティ』産業図書 など


●主な受賞歴

総務省情報化月間推進会議議長表彰、東京テクノフォーラムゴールドメダル賞、大川出版賞 など






●編者紹介

東京大学バーチャルリアリティ
教育研究センター


2018年2月1日に設立。VR研究における国際的なイニシアティブを確立すると共に、先端技術の普及と、VRを活用した先進的教育システムの導入を推進することを目的とし、基盤研究部門、応用展開部門の2部門を置く。情報理工学系、人文社会系、工学系、医学系、新領域創成科学、情報学環、先端科学技術研究センターと、東京大学内で進むVR研究に横串を刺す組織。

目次

第1章 VRって何だろう
1 VRの誕生 「歴史は30年も前に始まっていた」
2 VRとは 「重要なのは情報のループ」
3 VRの最重要キーワード 「AIPキューブと3要素」
4 VR以前の技術とは 「VRを支えている始祖技術」
5 まだある、VR以前の技術 「様々な分野で進んだ研究」
6 ARってなに? 「リアルとバーチャルの中間」
7 VRとAR 「異なる現実世界との距離感」
8 VRという学問 「アカデミアの動き」

第2章 VRと五感の科学
9 知覚と認知の多様性への対応 「大脳と小脳の役割と協調」
10 感覚は脳内で組み合わさる 「感覚の分類」
11 感覚の強さはどのように変化する? 「物理量と感覚量」
12 目から脳までの視覚の情報ルート 「人間の発達した視覚器」
13 なぜ、見るものの状況が変化しても同一だとわかるの? 「知覚の恒常性」
14 見るものの奥行きはどのように感じるの? 「立体視の原理」
15 いろいろある3Dディスプレイ 「メガネは必須ではない」
16 臨場感を高める方法は? 「視野角が最重要」
17 VRを見る方法 「HMDと全天周ディスプレイ」
18 なぜ、音は立体的に聞こえるの? 「聴覚とディスプレイ」
19 触覚はどうやって再現するの? 「振動の波形を利用する」
20 触覚は騙されやすい 「人間の感覚は完全なセンサではない」
21 影響し合う五感 「クロスモーダル現象の応用」
22 匂いは感情や記憶に強い影響を与える 「嗅覚とディスプレイ」
23 味を変化させることができる? 「味覚・食味とディスプレイ」
24 VR空間内の動きの再現 「前庭感覚の提示方法」

第3章 VRが可能にする新しいインタラクション
25 コンピュータグラフィックスとは 「バーチャルな世界での美しい映像の作り方」
26 実写データを使ったCG 「光の反射などの最大活用」
27 3次元空間をキャプチャできるカメラ 「光線空間法」
28 シミュレーションの思想 「現実世界のモデル化」
29 身体の動きをトレースする技術 「身体型インタラクション」
30 実空間の「範囲」という制約を取り除く 「リダイレクションの技術」
31 見せたいものを見てもらう技術 「ちょうどいいインタラクション、行動誘発技術」
32 VR空間で別の身体を手に入れるとどうなる? 「アバタと身体所有感」
33 アバタはどうやって動くの? 「モーションキャプチャの仕組み」
34 アバタを通じた自己表現 「バーチャル身体がもたらす新しい可能性」

第4章 時間と空間を超える
35 遠隔地点を意のままに体験できるシステム 「テレイグジスタンスとテレプレゼンス」
36 臨場感を「超える」 「テレプレゼンスの先にある超臨場感通信」
37 時空を超えた遠隔操作 「スーパーバイザリー ・ コントロール」
38 時間を操作する撮影技術 「マシンガンカメラの世界」
39 VRにおける自然な動きと時間の関係 「高速な応答が鍵を握る」
40 ライフログとVR 「人生の記録・心の記録」
41 過去を再現し、未来を予測する 「ライフログとデジタルアーカイブ」
42 時を遡るタイムマシン 「位置情報と時間軸」

第5章 VRの周辺技術
43 VRとAI 「VR世界の自動生成」
44 VRと先端センシング 「身体だけでなく心の動きも表現」
45 VRとIoT 「つながる情報のコントロール」
46 VRとロボット 「主観的視点と客観的視点」
47 VRと5G 「VRに適した環境」
48 ダイナミックプロジェクションマッピング 「映像投影で物体の形状や質感を変化させる技術」

第6章 VRの可能性
49 教育とVR 「応用分野として有望視」
50 医学とVR 「VRがもたらす新しい医療」
51 医学教育・ 看護教育とVR 「体験型の講義と実習」
52 デジタル・ミュージアム 「収蔵品を見て触って学べる仕組み」
53 製品設計とVR 「デジタルエンジニアリング」
54 エンターテインメントとVR 「身近なVRの楽しみ方」
55 芸術とVR 「感覚に訴える表現方法」
56 VRで広がるゲームの可能性 「人とゲームの新しい関係」
57 コンテンツ産業とVR 「コンテンツがあって普及する」
58 脳科学とVR 「脳科学の新たな実験系」
59 電気刺激とVR 「電気刺激装置だけで様々な感覚が作り出せる」
60 感情とVR 「感情の操作の可能性」

第7章 VRと社会
61 身近なVR技術 「気づかぬうちに体験している」
62 VR酔い 「乗り物酔いとの違い」
63 VR酔いの対策 「工学的な観点から解説」
64 超高齢社会とVR 「心身への活性効果」
65 社会における「バーチャル化」の意味 「『VRでなければならない』理由」
66 若い研究者の登竜門 「VRコンテスト」

【コラム】
●IAとAI
●なぜ、錯覚は存在するのか
●デカルトとVR
●VRを体験する方法
●イノベーションのジレンマとVR
●メンタルトレーニングとVR
●VRに集う学生たち

簡単にできる! VR体験
索引
主な参考文献
執筆者一覧

はじめに

 2018年2月、東京大学にバーチャルリアリティ教育研究センター(VRセンター)が設立されました。11月に行われた設立記念式典には、予想を超える数の方々に様々な分野から集まっていただき、改めてこの分野への期待の大きさにびっくりさせられたものでした。
 「バーチャルリアリティ」という言葉は、もともとは研究者の間で使われていました。その登場から30年を経た今日、その言葉は社会に拡散し、研究者の手を離れて一人歩きを始めたようにも思われます。研究者たちが考えもしなかったようなところにまでイメージが広がりつつあります。その一方で、本来とは違った言葉の使い方をされたり、もともとの意図が誤解されたりすることも増えてきました。
 さらに、30年という歳月は、当初想定していなかった状況も作り出してもいます。この技術が登場した頃は、ウェブやスマートフォンといった、現在では当たり前の情報環境は存在すらしていませんでした。VR自体の衣替えが必要な時期なのです。私はこれからの新しいVRを「VR2・0」と呼んでいます。
 要はこの分野について、いろいろ知ってもらいたいことがあるわけです。そこで、VRセンターの社会的役割の1つとして、東京大学でVR研究に携わってきた研究者らに声をかけ、「バーチャルリアリティ」という分野の基本的な知識について、それぞれの立場から語ってもらうことにしました。VRセンターの運営委員を中心に、バランスを考慮しつつ執筆者を選びました。

 本書は、平易さをモットーとして書き下ろしましたが、決してレベルを下げたつもりはありません。内容や難易度について、あまり細かいコントロールは行わず、執筆者の自由度に任せるようにしました。その結果、入門書とはいうものの、かなり深い内容まで書き込んでくれた執筆者もいます。その部分は、ちょっと難しいかもしれませんが、学術的な歯ごたえを感じてもらうにはいいかと思っています。同じような意味で、記述の重なりを教科書のように過度に整理するようなこともしませんでした。研究者の立場によって、同じ対象を語っても、違った書き方をするからです。
 
 想定される読者は、「バーチャルリアリティ」という分野について興味を持ち、もっと知りたいと思っている人たちを想定しています。VRブームに乗って一山当てようと考えているビジネスマンかもしれませんし、自らこの分野に飛び込んでみようという学生かもしれません。この本を手に取る動機は様々でしょうが、VRという分野が知的好奇心を満足させるに足る、それなりの深さを持つ分野であること、長期的に私達の考え方や生活を変えていく重要な問題解決能力を持つことを感じとっていただければ幸いです。
 
 ところで、監修者が「バーチャルリアリティ」という言葉に最初に触れた時、「バーチャル」という単語に、何ともいえない心の高まりを感じたのを思い出します。ちょうどその年の夏から、私はこの技術の生誕地である米国カリフォルニア州のサンフランシスコ地区に滞在することになっていました。日本では元号が「平成」に変わった年です。

 「VRは平成と同い年だ」というと怒る人がいるかもしれませんが、VRは30歳を迎えようとしています。これからの日本は高齢化など、社会的課題の存在感がますます増大する時代になるでしょう。「平成」最後の年に本書が刊行されることは、なにかの因縁かもしれません。
 
 本書は東大VRセンターの開所1周年を目指して計画されました。多くの執筆者による書籍の出版には時間のかかることが多いのですが、本書はほぼスケジュール通りに完成しました。その陰には、VRセンター助教の青山一真君の奮闘や、編集部の土坂裕子さんの絶妙な日程管理など、多くの人々の献身的努力があったことを最後に記しておきたいと思います。
 
2019年2月                            
廣瀬 通孝

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