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トヨタに学びたければトヨタを忘れろ
稼働率神話が工場をダメにする

定価(税込)  2,160円

著者
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サイズ A5判
ページ数 144頁
ISBNコード 978-4-526-07890-3
コード C3034
発行月 2018年10月
ジャンル 生産管理

内容

生産性を上げるとはどういうことか、どこに着目しどのような行動をとるべきかを若手管理者向けに分かりやすく解説した本。機械の稼働率を手がかりに『部分最適でなく全体最適』という視点から工場管理を学ぶ。既存手法を方程式通りに適用することしか考えない管理者ではなく、自分の頭で考えて導き出すような管理者になるための気付きを提供する、働き方改革を促す一冊。

近江堅一  著者プロフィール

(おうみ けんいち)
1962年 日本大学理工学部電気科卒業。
大手電気メーカー入社。32年間工場管理に従事。この問、トヨタ生産方式の真の実践者より7年間(月1回)現場指導を受ける。さらにデミング賞審査員より15年間方針管理(TQM)の指導を受ける。これをベースに工場改善を重ねFL法(中小メーカー向けトヨタ生産方式)を確立し、協力会社(15社)に適用し、FL法の経済効果を確認し、独立を決意した。
生産効率化推進部長、工場長、品質管理部長歴任。

1994年 近江技術士事務所設立。
生産コンサルタントとして工場改善指導に従事。
・中小メーカー生産性指導 400社
・方針管理(TQM)指導 40社
・ISO9001認証取得指導 35社
・ISO9001審査 398回(617日)
・QC サークル指導 50社

資 格
・技術士(経営工学)
・ISO9001主任審査員

近江良和  著者プロフィール

(おうみ よしかず)
1997年 日本大学理工学部数学科卒業。
大手コンピュータシステム開発会社、翻訳サービス会社で、12年間英語ソフトウェアの日本版製作に従事する。

2009年 近江技術士事務所入所。
生産性向上(FL法)指導、公的機関における経営支援やセミナー講演に従事する。「10カ月間で工場の生産性を25%アップさせる」という目標を 掲げ、食品加工業、板金加工業、プラスチック成形などさまざまな業種の工場指導経験を持つ。専門は、生産管理、管理者教育、現場改善

資 格
・中小企業診士

目次

はじめに
まずは正しい用語を理解しよう

第1章 稼働率を上げたら儲けが減った?
1-1 あなたの工場が儲からない理由を本気で突き詰めよう
1-2 なぜ稼働率の向上が問題なのか
1-3 稼働率神話の弊害を見てみよう
(1)稼働率を上げたら人件費が増えた
(2)稼働率を上げたら仕掛品が増えた
(3)稼働率を上げたら納期遅れが頻発した
1-4 儲けてるつもりで損をしてはいないか?
1-5 そもそも在庫ゼロは正しいか

第2章 工場が良い仕事をした尺度を決める
2-1 製造業は顧客を満足させることができるか否かが勝負になる
(1)納期遅れ
(2)品質クレーム
(3)顧客感動を生む
2-2 工場で起こるすべてのことは金額で把握しよう
(1)管理者は自部門の数字を把握しよう
(2)改善するまえに優先順位をつけよう
2-3 工場が良い仕事をした尺度
(1)付加価値生産性の定義
(2)なぜ、どうやって付加価値生産性を上げるか
2-4 生産性向上の目標を決める
2-5 目標達成のためのストーリーを考える

第3章 工場改善の正しい進め方
3-1 生産性の改善とは、時間をつくり出すことである
3-2 何よりトップダウンの決断が重要となる
3-3 工場改善メンバーとリーダーの選び方
3-4 目標達成の宣言書の作成
3-5 まずは現状を正しく知る
3-6 顧客に近いところから改善する
3-7 材料置場の改善ポイント
3-8 現場を正しく観察するポイント
3-9 改善を推進する5か条の心得
(1)拙速
(2)60点でもいいから始めよう
(3)できない理由よりできる方法を考える
(4)金を使うな知恵を出せ、知恵がなければ汗を出せ
(5)改善活動を1年間は続けてみよう

第4章 現場改善により生産性を向上する
4-1 目につくムダではなく、目に見えない大きなムダに気づけ
4-2 工場の“おばけ”を退治する
4-3 残業時間を先に決めるな
4-4 どんなに安くても外注に出すな
4-5 整理整頓の鉄則は“物申す”
4-6 段取時間を短縮する
4-7 動作分析による動作改善(R、Gp、M)
4-8 複数作業者による分業が生産性を下げている
4-9 少人化による生産性向上
4-10 優秀な作業者はラインから抜く
4-11 人の仕事と機械の仕事を分けて考えよう

第5章 社内不良を減らして生産性を向上する
5-1 社内不良撲滅は誰の仕事か
5-2 現場リーダーをラインから離せ
5-3 不良が出た瞬間に現場に行け
5-4 不良の責任を決めよ
5-5 予防処置 4つの視点
(1)標準が守られていない場合の予防処置
(2)微調整を要するところに関する予防処置
(3)金型類の摩耗に関する予防処置
(4)機械故障に関する予防処置
5-6 不良を出さない3つのポイント
5-7 異常報告を上げよ
5-8 ミスを確実になくす方法
5-9 原因究明しないで不良をなくす方法
5-10 品質管理は製造条件を学べ
5-11 品質保証の基準を明確にせよ

第6章 受注拡大して生産性を向上する
6-1 受注拡大による攻めの生産性向上
6-2 自社の強みを明確にする
6-3 受注情報は、きちんと製造現場に伝わっているか
6-4 営業部長は原価計算を正しく理解しよう
6-5 成約率を高める見積方法
6-6 顧客の意見を正しく聞く方法
6-7 クレームはピンチではなくチャンス
6-8 再発防止策の正しい書き方

第7章 業種別 生産性を向上するポイント
7-1 食品加工業の生産性向上のポイント
(1)食品加工業に共通する特徴
(2)食品加工業の成功事例(カット野菜工場)
7-2 印刷業の生産性向上のポイント
(1)印刷業に共通する特徴
(2)印刷業の成功事例(総合印刷工場)
7-3 成形加工業の生産性向上のポイント
(1)成形加工業に共通する特徴
(2)成形加工業の成功事例(プラスチック押出成形)
7-4 板金・鉄工業の生産性向上のポイント
(1)板金・鉄工業に共通する特徴
(2)板金・鉄工業の成功事例(建築部品の設計・製造業)

コラム
稼働率から可動率へ
第二の人生を設計しよう①資格にチャレンジしよう
第二の人生を設計しよう②経営思考を持とう
第二の人生を設計しよう③コンサルタントを目指そう
目にみえているもの
悪玉コレステロール
偶然設計

はじめに

 生産コンサルタント事業を1994年に開始し、400を超える工場を見てきたが、最近ある危機感を感じ始めている。それは、多くの工場で利益を生み出す力が不足しているということだ。売上が右肩あがりの経済成長期であれば、どんなつくり方をしても利益が出た。しかし、日本の製造業を取り巻く環境は大きく変わり、工場におけるものづくりの常識も変化している。顧客からの値引き要求や短納期要求、小ロット化、主要顧客からの受注減などにより、従来の仕事のやり方を続けていては利益を確保することが困難になってきている。確かに、従来のやり方のまま利益を出している工場もあるが、逆に危機感を持つ必要がある。それは、たまたま今の顧客に恵まれており、利益が出るような値段で製品を買ってくれているだけという可能性があるからだ。今の顧客からの注文が減ってしまうと、とたんに赤字になってしまうということもありうるのだ。日本のトップ企業であり2兆円を超す利益を生み出すトヨタでさえ、これからの将来を考えると強い危機感を持っているという。むしろ、利益が出ているときこそ、危機感を持つ必要性があるのだ。

 利益を確実に確保するために必要なことは、工場管理者が利益の出る仕事をすることだ。何事も原因があって結果がある。光を当てると影ができるように、何かの原因に対して結果が出るのだ。工場の利益とは結果であり、その原因となるのが工場管理者の仕事のやり方なのだ。この仕事のやり方には、単なる実務的なことだけではなく、工場管理者の知識、意識、考え方、価値観なども含まれる。日々工場指導をしていて痛感することは、工場管理者が先入観や思い込みにより間違った方向で努力していることだ。本書で詳しく解説していくが、工場管理においては、正しいと思っていても実は間違っていることが多々ある。そして、その間違いに気づかず、結果として利益を大きく減らしているケースが非常に多いのだ。裏を返すと、工場管理者の仕事のやり方を正すことで大きな利益を生み出すこともできるということだ。しかも、設備投資やシステム導入などと違い、お金をかけずに明日から直ぐにできることなのだ。

 平成28年経済センサスの統計資料によると、日本には22万ほどの中小メーカーが存在する。これまで20年以上に渡り、講演や研修などで「中小メーカーにはお金をかけずに利益を上げる方法がある」と伝え、これまで工場指導を通してさまざまな工場で利益を出す活動を実践してきたのだが、まだまだ伝えきれていない中小メーカーが数多くある。講演や研修が終わった後「こんな方法があったなんて今まで知らなかった」「今まで自分がやってきたことと全く違う」と感想を述べる中小メーカーの社長が多い。そこで、1社でも多くの中小メーカーに利益を出してもらいたいという想いを本書という形で実現した。

  第1章では、日本の製造業が直面している共通課題について解説している。

  第2章では、工場を正しく評価する基準を解説していく。

  第3章では、工場を改善する正しい進め方を解説していく。

  第4章〜第6章では、工場を改善する方法を解説していく。コストダウン、品質不良をなくす、売上拡大という視点から、どうすればよいかを解説していく。

  第7章では、事例集として、主な業種に絞って成功事例を紹介していく。

  筆者が調べる限り、業種や規模を問わず、全ての中小メーカーが利益を出すために何をすべきか具体的に書いている書籍は他に見当たらない。また、政府は中小メーカー支援策として、設備投資や運転資金の融資や海外進出を援助しているが、中小メーカーに本当に必要な支援とは、工場改善活動を通して工場の利益を出すことではないだろうか。本書で、お金をかけずに工場が利益を出す方法を学んで実践してほしい。


2018年10月

近江 堅一

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