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英文テクニカルライティング
読み手の心を動かすレトリック入門

定価(税込)  2,160円

著者
サイズ A5判
ページ数 200頁
ISBNコード 978-4-526-07855-2
コード C3050
発行月 2018年08月
ジャンル その他

内容

研究者、設計者、技術者に必須の英文テクニカル・ライティングのノウハウを紹介した本。従来の「伝える」から、相手を効果的、効率的に「説得する」ための書くレトリック(表現技法)を集中的に紹介。様々なビジネスシーンで実際に使える目からウロコのノウハウを満載し、より効果的に読み手の心を動かす英語表現を学べる。

片岡英樹  著者プロフィール

(かたおか ひでき)
 岡山大学医学部非常勤講師(英語テクニカルライティング:書くレトリック)、国際技術コミュニケーション教育研究所所長、元国立循環器病センター研究所講師(英語テクニカルライティング:英語論文)、豊田工業大学元非常勤講師(英語テクニカルライティング)、産業カウンセラー、特許・技術翻訳アドバイザー。
 国立大学工学部卒業後、数社の大手ハイテク企業において、開発設計製造、貿易(輸出入実務)、海外駐在、海外生産、国際財務・法務(連結決算業務)、英文特許申請業務および海外現地法人の Managing Directorとして国際ビジネスに従事。この間ミシガン大学に派遣されテクニカルライティングコース修了後、グローバル人材養成の責任者として、国際化研修プログラムの企画運営、およびテクニカルライティング講師として、論文・レポート、特許文書、契約書、マニュアル、スペック、プロポーザル、レター、Eメール等の英文ドキュメントの効果的書き方・翻訳を指導。現在、企業、大学、研究所において研究者、設計者、技術者、新入社員のコミュニケーション教育、英語テクニカルライティング(書くレトリック)の指導・啓蒙・育成を行っており、その指導方法には定評がある。
 日本英語コミュニケーション学会会員、日本医学英語教育学会(JASMEE)会員、日本メディカルライター協会会員
 著書に「ハイテク企業における英語研修」「特許法務英和・和英辞典」(いずれも国際語学社刊)、「必携技術英文の書き方55のルール」(創元社)、「技術英文 効果的に伝える10のレトリック」(丸善)、「NASAに学ぶテクニカルライティング」(京都大学学術出版会)、「NASAに学ぶ英語論文・レポートの書き方」(共立出版)、「読み手の心を捉える!英文テクニカルライティング」(日刊工業新聞社)などがある。

目次

序章 テクニカル・ライティングの目的は伝えることではなく、説得すること
1.読み手を説得するには書く技術が必要だ
2.書くレトリックとは
3.研究者、技術者こそ書くレトリックが必須

第1章 テクニカル・ライティングに必要なレトリックとは何か
1.テクニカル・ライティングに必要なレトリックの手法
2.レトリックを使った文章と、使わなかった文章の違い
3.読み手分析で読者像を明確にしよう
(1)誰がドキュメントの本当の読み手なのか?
(2)読み手分析のための7つの事前チェックポイント
(3)読み手の5分類による「読み手分析」
(4)読み手を阻害する要因も把握しておこう

第2章 まずは分かりやすい文章の基本戦略を考えよう
1.書くレトリックの基本3原則を知ろう
(1)ONEWORD=ONEMEANING(一語・一義/一義・一語)の原則
(2)ONESENTENCE=ONEIDEA(一文・一概念/一概念・一文)の原則
(3)ONE PARAGRAPH=ONE TOPIC(一段落・一話題/一話題・一段落)の原則
2.ABC構成を使って分かりやすい文章構成にしよう
(1)パラグラフのABC構成とはどんなものか
(2)パラグラフのABC構成方法
(3)パラグラフのABC構成を実践的に理解する
(4)複雑な技術・ビジネス英文文書でもABC構成方法の基本は同じ
3.良い要約文をいかに書くか工夫しよう
(1)良い要約文とは何か
(2)要約文の改善方法

第3章 
テクニカル・ライテングに必須の書くレトリックのパターン―報告文編
1.研究者、技術者には10のレトリックのパターンが必須だ
(1)10のレトリックのパターンとは
(2)報告文のレトリックのパターンとは
(3)説得文のレトリックのパターンとは
2.分析法―報告文のレトリックのパターン①
3.記述法―報告文のレトリックのパターン②
4.インストラクション法―報告文のレトリックのパターン③
(1)プロセスの作業は命令文を使って順番に述べ、注意書きは目立つように書く
(2)インストラクション法は図があれば文は簡単になる
(3)インストラクション法は分析法、記述法と使われる
5.調査研究法―報告文のレトリックのパターン④
(1)簡単な調査研究レポートでは6つのステップの一部が省略される
(2)社内調査英文メモは調査研究法で書く
(3)論文の序文はABC構成を使って明確に読み手の期待するように書く
(4)英文論文はまず日本語で書き、「書くレトリック」により修正し英文化する
6.定義法―報告文のレトリックのパターン⑤
(1)特殊な言葉を定義する場合の定義法
(2)契約書、マニュアル、スペックでよく使われる定義法
(3)定義法で使用する用語は、読み手を考え、理解しやすいものにする
7.分類法―報告文のレトリックのパターン⑥
(1)分類法はトピックを類似性により分類し、説明する
(2)分類法は読みやすくするためにパラレル表現が使われる
(3)分類法は定義法、分析法と使われる

第4章 
テクニカル・ライティングに必須の書くレトリックのパターン

―説得文編
1.説得法―説得文のレトリックのパターン①
2.問題解決法―説得文のレトリックのパターン②
(1)提案書は、問題解決法のレトリックのパターンを使う
(2)提案書は読み手の反論を予期し、前もって反論しておくことがポイント
3.原因結果法―説得文のレトリックのパターン③
4.比較対照法―説得文のレトリックのパターン④
(1)比較対照法には、完全な比較対照表が必要
(2)「再度結論を述べる」はパラグラフが短い場合は省略できる
(3)一般文と比較対照文の違いを理解しよう
(4)比較対照法でよく使われる「結合語句」「用語」「時制」、および「パラレリズム」に留意しよう

第5章 レトリックを用いた実際のテクニカル・ライティング
1.論文への応用
2.技術レポートへの応用
3.業務内容の説明への応用
4.提案書への応用
5.顧客に対する回答書への応用
6.社内Eメールへの応用
7.断りのEメールへの応用
8.相手にクレームを伝えるEメールへの応用
9.特許明細書への応用

Column豆知識
① 書く文書の背景を予め考える(レトリック認識の重要性)
② アカデミック・ライティングとテクニカル・ライティングの違い
③ テクニカルライター(書き手)の9の誤った思い込み
④ 「一貫性」「並行法」「既知情報から新しい情報への流れ」および「文のメリハリ」の方法
⑤ 良い要約文の必要性と重要性―要約文には命をかけよ!
⑥ プロセスを説明するのに記述法を効果的に使った実例
⑦ マニュアルに必須の警告(“注意書き”)の書き方
⑧ 論文とレポートを書くためのポイント
⑨ フォーマル定義法とインフォーマル定義法とは
⑩ 分類法の一種である列挙法
⑪ 「書くレトリック」には認知心理学が応用されている
⑫ 販売広告で使われている問題解決法のレトリックのパターン
⑬ 翻訳者にも書くレトリックの知識は必須
⑭ 比較対照法の一種である類似法
⑮ 研究論文・レポートを正式に書くためのIMRAD作成のポイント
⑯ 社内書類におけるレトリックのパターンの効果的使用法
⑰ テクニカル・ライティングにおけるTONE(語調)
⑱ Eメールを送信する前の10のチェックリスト(和文・英文共通)
⑲ 英文パラグラフ評価のための10のチェックリスト
⑳ 医学・生命科学のライティングにはテクニカル・ライティングが必須

はじめに

はじめに

 2017年1月から約1年半にわたって、日刊工業新聞社月刊誌「機械設計」において「英文テクニカルライティングの基礎と実践Ⅱ:相手を動かす書くレトリックの基礎と応用」を連載した。お陰様で連載は好評で編集部から出版のお誘いを受け、連載中にいただいたご意見、および改善すべき点を検討し、豊田工業大学で教えた「英語テクニカルライティング」および現在岡山大学大学院医歯薬学総合研究科で教えている「英語テクニカル・ライティング:書くレトリック」の内容も含め、使用例文も見直し、新しいものを加えて「英文テクニカル・ライティング:読み手の心を動かすレトリック入門」として、出版することになった。
 まさしく科学・医学・技術分野の研究者、技術者(翻訳者)に必須の相手(読み手)を動かし、ビジネス、アカデミアで成功するための書き方(=書くレトリック)の書籍として、読者のみなさんのご期待に添えるものと思う。

 本書のメインテーマである「書くレトリック」の重要性をはじめて知ったのは、筆者が当時立石電機株式会社(現オムロン株式会社)の中央研究所で主任研究員として勤務していたとき、社命でミシガン大学に派遣され「テクニカルコミュニケーション」(=テクニカル・ライティング)を学んでからである。課題レポートを教授に提出した際、“君は私の貴重な時間を奪っている”の一言で、非常にショックを受けたこと、すなわち、「英文法」「専門用語」は正しいにもかかわらず、全く通じず、相手にされなかったことである。
 これはその後学習してはじめて分かったことであるが「書くレトリック」の認識、知識が全くなかったからである。そのとき、今まで数十年の“日本での英語教育が何んであったのか”を思い知らされた瞬間で、これはライフワークになると直感したものである。
 そして「書くレトリック」の実際の事例として、「スリーマイル島の原子力事故(1979年3月28日:炉心のメルトダウン)」の原因が「テクニカルコミュニケーションのまずさ」(書類の書き方:報告の仕方)」にあったと講義で説明を受け、それはテクニカルライター(書き手)がしばしば起こす「9つの誤った思い込み」によるもので「読み手」を説得する「書くレトリック」がいかに重要であるかを思い知らされ、これは今でも鮮明に頭に焼きついていることである。

 インターネット、Eメール、SNSが普及し、研究者、技術者にとって効果的、効率的に書く技術が、あらゆる職場、場面で必須となってきている。ビジネスにおいて、企業は生き残るため、「開発力」「商品力」「販売力」にしのぎを削っているが、最終的には「コミュニケーション力」、特にライティングにおける相手を動かす「書くレトリック」のスキルが生き残りを決めるという状況になってきている。このため、これからの研究者、技術者(設計者、生産技術者、QC技術者、セールスエンジニア、管理者、編集者、翻訳者)はテクニカルコミュニケーション(テクニカル・ライティング)において、文書を従来の単なる3C(簡潔、明確、正確)で、および論理的に書くだけ(あるいは翻訳するだけ)では不十分で、「レトリック認識」(p.17、豆知識①)を持った上で「書くレトリック」をマスターしておかねばならない。
 特にポイントは研究者、技術者が技術・ビジネス英文文書を書くのに、必要とする書くレトリックのパターンは、文科系に比べて多くなく、筆者がテクニカル・ライディングの指導経験から厳選したわずか「10のレトリックのパターン」をマスターするだけでいいということである。この「10のレトリックのパターン」を単独、もしくは組み合わせて利用すれば、文学以外のすべての技術・ビジネス英文文書(論文、レポート、マニュアル、スペック、プロポーザル、企画書、稟議書、抄録、カタログ、特許・法律文、レター、Eメール)、およびエントリーシート、感想批評を効果的、効率的に書くことが可能となる。
 しかしながら、書くレトリックという言葉は、難しい響きがあり、すぐにはイメージしにくいが、筆者は「書くレトリックは“焼き鳥の串”の役割をしている」と考えれば理解しやすいのではないかと思っている。 すなわち、「焼き鳥」は、どんなにおいしい材料(鳥の部分、ねぎ等=書く材料)があっても、そのままでは十分に活かすことができない。
 「串」があることによって、
 1.焼きやすくなり(→文が書きやすくなる)
 2.食べやすくなり(→文が読みやすく、理解しやすくなる)
 3.おいしく食べられるようになる(→文が効率的、効果的に伝わり、読み手に「満足できる、期待通りの行動」を起こさせる)
 つまり、どんなにおいしい材料(=よい書く内容)であっても、バラバラに焼いたものをそのまま食べるよりは、串で料理されたもの(=書くレトリックを使って書かれた文書)の方が圧倒的においしい(=効果的な文書となる)。このように「書くレトリック(=焼き鳥の串の役割)」は、文および文書を書く上で非常に重要な役割を担っていると言える。

 本書は、研究者、技術者およびビジネスパーソン、学生、先生方、そしてこれからテクニカル・ライティングに必須の「書くレトリック」を学ぼうとする方々にとって、英語で効果的、効率的に伝えるだけでなく相手を説得するための「技術文書」「ビジネス文書」および「一般文書」を書くための基本ならびにその応用についてはじめて著述した「書くレトリックの入門書」である。
 すなわち、筆者の40年以上にわたる企業ならびに研究所、大学、高専での「テクニカル・ライティング」の指導経験をもとに、相手(読み手)を動かす書くレトリックの手法をわかりやすく、初心者でも容易にわかるようにまとめたものである。これらの書く技術は、自分がこれから書こうとする文、あるいは書いた文をどのようにすれば読み手を納得させ、動いてもらえるようにするかを示し、そしてどのようにそれを改善すべきかの指針を与えるものである。
 本書の構成は、まず、初心者でもテクニカル・ライティングの本質が容易に理解できるように、序章で「テクニカル・ライティングの目的は伝えることではなく、相手を説得すること」について紹介し、第1章でテクニカル・ライティングの基本として「テクニカル・ライティングに必要なレトリックとは何か」、第2章で文書の設計に相当する「まずは分かりやすい文書の基本戦略を考えよう」、第3章で研究者、技術者にとって重要な「テクニカル・ライティングに必須の書くレトリックのパターン(報告文編)、第4章でさらに重要な本書のハイライトというべき「テクニカル・ライティングに必須の書くレトリックのパターン(説得文編)を説明し、最後に書くレトリックの理解、その応用を容易にするために役立つ実際例として、第5章「レトリックを用いた実際のテクニカル・ライティング」を説明するという6つの章からなっている。

 序章 テクニカル・ライティングの目的は伝えることではなく、説得すること
 第1章 テクニカル・ライティングに必要なレトリックとは何か
 第2章 まずは分かりやすい文章の基本戦略を考えよう
 第3章 テクニカル・ライティングに必須の書くレトリックのパターン(報告
文編)
 第4章 テクニカル・ライティングに必須の書くレトリックのパターン(説得
文編)
 第5章 レトリックを用いた実際のテクニカル・ライティング

 これらの章の内容を理解し、実践すれば、あらゆるビジネス場面で効果的、効率的に(短い時間で)成功する英文技術・ビジネス文書を作成し、見直しが可能となる。
 本書で紹介したテクニカル・ライティングにおける「書くレトリック」(相手を説得する書く技術)は、技術英文・ビジネス英文・一般英文を書くときのガイドとしてだけでなく、英語プレゼンテーション、および日本語で書類を作成するときにも応用できる。
 そのため、コミュニケーション力(書く技術)を強化、改善したいと思っておられる多くの研究者、技術者、ビジネスパーソン、編集者、査読者、翻訳者、学生、テクニカル・ライティングを教えている先生方のみならず、その他日本企業で働いている少しは日本語ができる外国人の方、およびその外国人に科学技術日本語を教えている方々にもお役に立ち、その結果ビジネス、アカデミアで成功し、「生き残ること」につながることを願っている。
 さらに本書が教材として使われるなら、あるいは科学技術日本語のグローバル化に少しでも貢献できるなら、筆者の大いなる喜びとなる。

 最後に、本書の出版にあたり、はじめて「書くレトリック」の勉強の貴重な機会を与えていただき、それがライフワークとなった現在、改めてオムロン株式会社(OMRON Corporation)に感謝するとともに、「英語テクニカル・ライティング」(書くレトリック)講座を2000年から現在まで18年にわたり、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科にて非常勤講師として教鞭をとる機会いただき、その間数々の貴重なアドバイス、資料等をいただきました、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 同研究科松井秀樹教授、山田雅夫教授に特に感謝したい。またアドバイスいただいた私の友人で“Writing a Biomedical Research Paper”の著者であるDr. Brian S. Budgell、転載を許可いただいたPearson Education, Inc.、その他ご協力いただいた方々、そして今回出版の機会をいただいた(株)日刊工業新聞社、校正、編集、出版で大変お世話になった書籍編集部の天野慶悟さんをはじめとする、関係者皆さんのご協力ご支援に、心より感謝致します。

2018年8月
片岡 英樹





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