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中小企業が始める!生産現場のIoT

定価(税込)  1,944円

編者
サイズ B5判
ページ数 136頁
ISBNコード 978-4-526-07873-6
コード C3034
発行月 2018年08月
ジャンル 生産管理

内容

「どうIoTを使えばよいかわからない!」という中小製造業経営者の悩みにズバリ答える、工場管理上の課題の見える化と対処法を詳述。今さら聞けない「IoT活用の全体像」「プロジェクトのうまい進め方」「構成装置の機能と役割」を手ほどきする。

「工場管理」編集部  著者プロフィール

品質・コスト・納期要求に応えるモノづくりを、ムダなく効率的に行うための工場実務雑誌

 「工場管理」は1955年の創刊以来、国内唯一の“現場改善雑誌”として生産部門に携わる方々を中心に、高い評価を得てきました。誌面では作業改善から各種生産様式、生産管理手法の解説に加え、現場の成長を促す人づくり・仕組みづくりや生産管理システム、小集団活動など生産に関わる情報を網羅し、経営者、工場長クラスから現場の管理・監督者、製造担当者およびスタッフ部門担当者には必読の書となっています。また、生産形態の変化やトレンドに合わせた企画をタイムリーに掲載し、読者にいち早く最新動向・ノウハウを紹介しています。

目次

第1章:管理の課題から見たIoT活用の成功モデル
 生産計画でのIoT化のポイントと現場改善の効果
 生産情報管理でのIoT化のポイントと現場改善の効果
 受注調達でのIoT化のポイントと現場改善の効果
 品質管理でのIoT化のポイントと現場改善の効果
 設備保全でのIoT化のポイントと現場改善の効果
 在庫管理でのIoT化のポイントと現場改善の効果
 原価管理でのIoT化のポイントと現場改善の効果
 技術伝承でのIoT化のポイントと現場改善の効果
  サステナビリティ・コンサルティング 石川和幸
  アムイ 山田浩貢
  ロンド・アプリウェアサービス 中崎 勝

第2章:導入プロジェクト 成否を分けるカギ
 成功するIoTプロジェクト8段階のステップ
  ワークセルコンサルティング 金 辰吉

第3章:これだけは知っておきたいIoT生産管理 構成要素の基本
 ①何の情報を拾う?〜センシング
 ②工場の制御機器の王様〜PLC
 ③どうやって伝達?〜無線通信
 ④異常を検出する〜ソフトウェア・クラウドサービス
 ⑤PDCAを高める〜生産管理システム
  編集部

第4章:中小企業ならではのアプローチがある
 独自の生産管理システムを駆使して“モノとヒトをつなぐ”究極のIoTを追求する   ワールド山内 
 昭和の古い機械設備もつなげる低コストの手づくりIoTで生産革新   旭鉄工 
 台車管理と生産管理を連動させた独自開発のIoTシステム  三松 
 木材加工会社がIoTを導入 歩留り率をつかみ、生産性向上を目指す   長谷川萬治商店 
 独自生産方式のさらなる効率アップに自作のIoTを活用 武州工業 
 作業者の位置をリアルタイムで見える化して半導体製造の改善を実現する   ジャパンセミコンダクター 
 IoTはキットで気軽に試せる時代へ 外部の支援機関とIoTキットを活用して、人と機械の生産最適化に挑む   金剛製作所 
 自律を目指した経営改革 カスタマイズ可能なIoTデバイスでボトルネックの稼働率を把握 光電子 
 老舗めっき企業が生産管理のIoT化に挑戦 顧客の要望に製販一体で迅速に応える ヒキフネ 
 IE改善にIoTを活用 作業者の実績内容と時間のデータ収集を効率化  三芝硝材 
 機械を止めずに手軽に実装、マイコンボードで安価に稼働管理 小杉織物 

第5章:IoTで工場管理のレベルを上げる10箇条
 その1 情報を集めて何をしたいかを考えよ
 その2 集めたデータを蓄積する場所、データベースを確保せよ
 その3 既存設備のログデータを自動で集めよ
 その4 既存センサからデータを自動で集めよ
 その5 既存文書データからデータを自動で集めよ
 その6 既存データベースと自動連携せよ
 その7 既存で足りない部分を、格安で実現する方法を考えよ
 その8 集めたデータを集計して“意味あり”情報に変えよ
 その9 “意味あり”情報をもとに行動せよ
 その10 決まった行動ルールは自動化せよ
   IoT技術者・改善マスター 中澤 賢

※本書は「工場管理」2017年4月臨時増刊号と2018年4月臨時増刊号の内容をもとに一部加筆し、単行本化したものです。内容は原則として掲載時点での情報であることをご了承ください。

はじめに

IoTはモノづくりの課題解決に使うべし 編集部

 世の中のさまざまな領域でIoTの活用が進んでいる。中小企業の工場責任者にとっても、もはや「IoTとは何か?」を議論する時期は過ぎ、状況に応じて「IoTをいかに導入するか」を検討するステージに移ってきた。しかし、IoTは大企業向けの先進技術で、過大な費用がかかるため中小企業には手が出せない、と考える経営者はまだ多い。また、IoTの導入には最新設備の購入が必須、と誤解する経営者も少なくない。大企業が展開する基幹システムと連携するようなIoTの活用は、誰もが着手できるわけではないが、中小工場でも取り組める“身の丈に合ったIoT”の姿が随所で提唱され始めている。
 少子高齢化や労働人口の激減による採用難で、職場の人手不足が深刻化してきた。とりわけ、中小企業ではそうした様相が強まっている。人材を採用できないとすれば、1人当たり生産性を飛躍的に高めて対処するしかない。大企業よりも中小企業にこそ、そのような生産性革命が求められる背景である。

◇何から着手すべきか
 IoTは、生産や経営の効率を高める手段の1つであることは間違いない。そのようなIoTの導入においては「目的が必須」と強調される。IoT化を急ぐあまり、生産ラインに手当たり次第にセンサをつけてデータを集めても、それを何に役立てるか目的が決まっていなければ意味がない。ムダなだけでなく、コストも余計にかかる。センサが拾ってきた膨大なデータをどう処理し、対策につなげるかなど導入前に決めておくことはいろいろある。
 IoTを導入する目的として、現場の課題解決を据えることを掲げたい。中でも、製造装置のトラブルを事前に察知する予兆管理や予知保全を挙げる人は多い。工場には長らくベテラン作業者がいて、機械に不具合が起きる前に状況を察知し、対処することができていた。しかし現在、そうしたスキルを持ったベテランは減り、現場は不安を抱えている。ここをIoT化することで、少人数で多数の装置を管理できるようにする。不具合が生じる前に、機械の振動の変化や異音をセンサで検知できれば早めに対策が打て、生産ラインを止めずに済む。外付けのセンサでも十分に使え、IoT対応の設備に刷新する必要はない。
 このほか、注目の高いIoTの活用分野として品質管理が挙げられる。生産工程をデータで細かく管理し、不具合が発生したらすぐ原因を突き止めて解決する。それにより、損害を最小限に抑える仕組みである。データを基軸に品質管理を徹底し、高品質の製品を生産できれば競合他社との差別化優位点となる。
 それには、製品履歴を管理するトレーサビリティシステムが必要である。その製品がいつ、どんな工程を経て出荷されたかがすべてわかれば、何かトラブルが起きたとき、どの工程に問題があったか把握できる。この間も工程履歴の管理は行われてきたが、紙ベースでの記録が大半だった。IoT化でそれらのデータが関連づけられ、遠隔地からもビッグデータとして活用できるようになれば、品質管理の強化につながる。

◇できることから少しずつ
 IoT導入に際して、コストに見合った効果が得られるか不安に感じている企業が多いという。そうしたこともあり、特に中小企業の場合は初めから大規模なシステムを導入しようと考えなくてよいかもしれない。一例として、現品票や納品書、検収書などをネットワーク上で運用するだけでも、立派なIoT化への第一歩といえる。個別部署のデータが他部署で活かせ、異なる業務が連携することで価値を生むシステムになる。効果を確認しながら連携を広げ、徐々に大きなシステムにしていく。
 最初から本格的なIoTを導入しようとすると、すべての社内情報を一気にデータベース化する必要があり、データ入力のための人員確保だけでも難儀する。こうした負荷により、導入そのものを諦めざるを得なくなったケースが実際に出ている。したがって、過度の負担を強いて理想を追求するよりは、要員・投資金額の面からもできる範囲で始める方が、中小企業の展開としては現実的な進め方であろう。
 製造業には、顧客からの個別引き合いに応じて作成する見積り回答という業務がある。事前の取引履歴や引き合い状況などを踏まえ、価格や条件などを戦略的に組み立てる。そのような見積書は、迅速かつ正確に出すことで顧客に提供するサービスのレベルを上げることになるが、その内容次第で利益率は大きく左右する。こうした攻めの運用が可能になるのも、IoT導入の効果の1つではないだろうか。
 企業には社内に多くの壁が存在し、営業担当者は技術者に聞かないと原価算出もままならなかった。しかし、IoTの導入により、生産に関わる多くの情報がスマートフォンを通じて得られ、正確で素早い見積り回答が可能になる。こうして社内の壁を乗り越えることでデータの相互活用を図り、その進展を見ながら本格的な投資を検討するとよい。

◇「目的」が後から見つかることも
 工場IoT化でもたらされる情報は、モニターやスマートフォンの画面に工場設備の状態や進捗など全体状況がグラフなどで表示され、個々の機能の正常・異常も瞬時に把握できるようなイメージである。詳細状況の検索も容易で、何に着手すればよいかが的確に判断できる。もしくは、AIなどの活用により自動で対策プログラムが実行される。
 こうした仕組みを講じるのに、「とりあえず目的もなくIoTを使ってみる」ことはムダにならないケースがあるという。つまりはIoTを導入したことで、従来は拾えていなかった小さな情報をもとに現場の状況が見えるようになり、想像さえしなかった改善の方向性を思いつくことがあるためだ。現場の情報がモニタリングにより超高速で入手でき、目的がなくても意識があれば、これまでの常識では知ることのなかった“インフォメーション”を手に入れられ、とんでもない発想が生まれる可能性にも期待が持てる。
 IoTの仕組みは比較的単純で、他の用途への転用もしやすい。また、初めに導入した仕組みをもとに応用展開するのも得意とする。したがって、PDCAサイクルの運営強化のためにIoTを活用することを勧めたい。IoTの導入が、自ら現場が課題を抽出し、改善への実行力を磨く場となるはずである。

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