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わかる!使える!塗料入門
<基礎知識><設計><製造>

定価(税込)  1,944円

著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-07870-5
コード C3043
発行月 2018年08月
ジャンル 化学

内容

塗料は多機能材料として多くの分野で使用されている。その機能の高度化に加え、多様化が進み、塗料の知識が必要とされる機会が多くなっている。本書では、塗料を作る立場から、樹脂、顔料、溶剤、添加剤など各種塗料材料の機能や種類、特徴、それらの選択や組み合わせ方について、わかりやすく解説する。

小林敏勝  著者プロフィール

(こばやし としかつ)
1980年     京都大学大学院工学研究科工業化学専攻修士課程 修了
同 年     日本ペイント株式会社 入社
1993年     京都大学博士(工学)「塗料における顔料分散の研究」
2000年〜 岡山大学大学院自然科学研究科 非常勤講師(2000年度のみ)
2002年〜 社団法人色材協会理事
2002〜2005年 色材協会誌編集委員長
2010年   社団法人色材協会 副会長 関西支部長
2010年〜 東京理科大学理工学部 客員教授
2010年     日本ペイント株式会社 退職
2011年     小林分散技研 代表
2014〜2017年 一般社団法人色材協会 副会長 関西支部長
2018年〜 一般社団法人色材協会 名誉会員 監事

1989年 色材協会賞 論文賞、1997年 日本レオロジー 学会賞 技術賞、1998年 色材協会賞 論文賞、2009年 大阪工研協会 工業技術賞

主な著書
「きちんと知りたい粒子分散液の作り方・使い方」、日刊工業新聞社
「きちんと知りたい粒子表面と分散技術」、日刊工業新聞社(共著)
「塗料における顔料分散の考え方・進め方」、理工出版

目次

第1章  塗料を作るための基礎知識
1 塗料って何?
・塗料の役割
・塗装の方法
・塗料の構成成分
2 塗料用樹脂って何?
・ポリエステル樹脂の特徴と使い方
・アクリル樹脂の特徴と使い方
・エポキシ樹脂の特徴と使い方
・メラミン樹脂の特徴と使い方
・ポリイソシアネートの特徴と使い方
・ポリウレタン樹脂の特徴と使い方
・フッ素樹脂の特徴と使い方
・シリコーン樹脂の特徴と使い方
・樹脂の性質を示す主な指標
3 塗料用顔料って何?
・塗料で使われる顔料とその機能
・使う前に調べよう!顔料のこんな性質
・堅牢な無機着色顔料
・鮮やかな色彩の有機顔料
・カーボンブラック顔料
・キラキラ感を付与する光輝顔料
・コスト削減だけが目的ではない体質顔料
・金属を腐食から守る防錆顔料
・顔料の表面処理
4 塗料用溶剤はどうやって選ぶの?
・溶解性パラメーターで溶ける・混じるを予想する
・表面張力がぬれる・ぬれないを支配する
・溶剤としての水の特異性
5 塗料にはどんな添加剤が使われるの?
・塗料用添加剤の種類
・顔料分散剤の働きと種類
・増粘剤の働きと種類
・表面調整剤の作用機構と使い方
・紫外線吸収剤・光安定剤の作用機構と使い方

第2章  塗料配合の設計
1 バインダーを選ぼう
・塗料が固まるメカニズム
・常温で固まる1液型バインダー樹脂
・分散した樹脂粒子が融着して固まるエマルション樹脂
・使う前に主剤と硬化剤を混合する常温硬化の2液バインダーシステム
・加熱して固めるバインダーシステム
・紫外光を当てて固めるバインダーシステム
・強靭な塗膜を作るバインダーシステム
2 ビヒクルを決めよう
・ビヒクルシステムの設計

はじめに

はじめに

 塗料産業は、近代社会の幕開けとともに誕生し、合成化学や高分子化学の発展とともに、技術的進化を遂げ、その時代の重要な機械や装置、社会インフラに塗装されてきました。塗料を塗装する目的は、被塗物をさび、腐食、風化、脆化などの劣化現象から保護し、光沢や色彩、意匠性などの美粧性を被塗物表面に付与することです。
 塗装や塗膜を使う方の立場から塗料の解説をした書籍は種々ありますが、塗料を作る立場で、材料や技術を総合的に解説した書籍はあまり見掛けません。本書では、基本的かつ初歩的ですが、塗料を作る立場から、樹脂、顔料、溶剤、添加剤など各種塗料材料の機能や種類、特徴、それらの選択や組み合わせ方について平易に解説します。また、製造現場で使用される装置や作業の流れも、一通りイメージができるように心掛けました。
 対象となる読者は、塗料の製造や設計に新たに関わることになった初心者ですが、塗料材料に関係する技術者や営業技術者にも参考にしていただけると考えています。
 最近では、金属や金属酸化物のナノ粒子、カーボンナノチューブやグラフェン、グラファイト、フラーレンなどの炭素微粒子、セルロースナノファイバー、新規合金粒子、新規セラミック粒子などの機能性粒子が、産官学の様々な場所で研究・開発されています。このような機能性粒子に関わる技術者からは、「粒子はできたが、フィルムやパターン、デバイスにするために塗料化・インク化がしたいのに、材料や装置、方法が分からない」というような声が聞こえます。本書では、このような技術者の方々にも、基本的な「塗って、固めて、評価する」ことができるような情報を提供できるようにしています。
 本書では、基本的、入門書的な事項を中心としており、実用に耐える高度な性能を持った塗料を作るための情報は含んでいません。例えば、樹脂は基本的な化学構造を挙げるにとどめ、変性樹脂や新しい硬化系、リビング重合法のような新しい合成方法などは取り上げていません。代わりに、キーワードをできるだけ多く記載しました。また、重要な部分には、参考文献・引用文献を示しています。興味を持たれた点や、より詳細な情報が必要な点があれば、各自で情報の入手をお願いします。情報の真贋に関しては注意が必要ですが、最近ではWeb上にも多くの情報があふれています。
 昨今は、塗料だけに限らず、工業製品の生産における有害原材料の採用や、有害原材料を含有したり環境負荷の大きい製品のユーザーへの提供が、化審法、化管法や安衛法などで厳格に規制されるようになっています。また、生産現場や製品の使用現場における、作業者の安全や健康に対する法的規制が厳しさを増しています。本書では、最小限ですが知っておくべき法令と、法令の対象物質がどこを見れば分かるかという情報を掲載しています。法令は年を追って改正や追加・修正されますので、アップデートは各自でお願いします。
 著者が塗料会社に入社して工場実習の時に、製造現場の工程責任者らしき人が、一通り作業手順を説明した後に、「わしらは何も作ってへんぞー。混ぜてるだけやぞー」と口にされたのを、今でも鮮明に覚えています。また、他社との打ち合わせの時に、「私ら、混ぜ屋ですから……」という枕詞の後に、主題に入るような人もよく見掛けました。一部、樹脂や顔料を合成している会社もありますが、確かに塗料作りは、外見的には多様な原材料を混ぜているだけです。
 ただし、その配合を設計する段階では、高分子化学、有機反応論、合成化学、物理化学、コロイド化学、界面化学、レオロジー、分析化学、色彩化学、感性工学、化学工学など、多様な学問領域の知見があって初めて高度な性能を持った塗料が生まれます。
 これから塗料作りを始められる方々は、上記の学問分野の知識を広く習得する必要がありますが、本書がその足掛かりになれば幸いです。
 最後に、本書を執筆する機会をご恵与賜りました、日刊工業新聞社出版局長の奥村功氏、並びに、執筆内容の構成において種々のご助言をいただきました出版局の木村文香氏に厚く御礼申し上げます。

2018年5月 小林敏勝

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