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宇宙ビジネス第三の波 
NewSpaceを読み解く

定価(税込)  1,728円

著者
サイズ A5判
ページ数 200頁
ISBNコード 978-4-526-07844-6
コード C3034
発行月 2018年04月
ジャンル ビジネス

内容

宇宙ビジネスに新しい企業が次々と参入し、連日ニュースを賑わせている現在の状況をNewSpaceと呼ぶ。米ソの開発競争、宇宙ステーションを軸とした国際協調という2つの波を越えて、NewSpaceは「第三の波」である。豊富な事例をビジネスモデルの切り口から解説し、読み解く一冊。

齊田興哉  著者プロフィール

(さいだ ともや)
1976 年、群馬県生まれ、群馬県立前橋高校卒。
2004 年、東北大学大学院工学研究科を修了(工学博士)。2004 年、宇宙航空研究開
発機構(JAXA)に入社し、人工衛星の開発プロジェクトに従事。2012 年、日本総
合研究所に入社。政府が進める人工衛星の整備および宇宙事業に係る業務に従事。
専門は、人工衛星など宇宙事業に係るPFI 事業、宇宙ビジネスである。
●執筆
「第1 回~第3 回 日本の宇宙ビジネスについて」ダイヤモンドオンライン(2015 年)
「宇宙ビジネス、これからがチャンス」日経テクノロジーオンライン(2015 年)
「齊田興哉の宇宙ビジネス通信」日経xTECH(2015 年4 月~毎月配信)
「宇宙開発の技術・産業の動向から読み解く 日本の宇宙ビジネスの課題とビジネスチャ
ンス」研究開発リーダー、技術情報協会(2016 年2 月号)
「民間主導の宇宙ビジネス時代到来」金融財政ビジネス、時事通信社(2015 年)
「国内外で見られる宇宙ビジネスモデルと宇宙ビジネス発掘のポイント」研究開発リー
ダー、技術情報協会(2017 年6 月号)
「ニッチに勝機あり 既存製品で宇宙転用も」生産財マーケティング、ニュースダイジェス
ト(2017 年9 月)
「今後の日本産業で必要とされる人材とは」研究開発リーダー、技術情報協会(2018 年
2 月号)
●講演・セミナー
「民間企業主導の宇宙ビジネスの時代到来 ~世界と「別土俵」で勝負~」宇宙航空研
究開発機構、2015 年度、「宇宙用太陽電池の特性評価技術に関する検討委員会」第2
回委員会(2015 年)
「~これからの宇宙産業におけるイノベーション人材とは~ 今後の日本の宇宙産業で必
要とされる人材」パソナ宇宙プロジェクト主催『ビジネスセミナー(第二弾)』(2016 年)
「日本の宇宙産業を取り巻く情勢」宇宙航空研究開発機構、宇宙用電源および関連技術
連絡会(2017 年)
「宇宙ビジネス通信 in 福井」ふくい宇宙産業創出研究会セミナー(2016 年)
「日本の宇宙産業の未来」三井住友海上、宇宙ビジネスに関するリスクコンサルセミナー
(2017 年)
「宇宙ビジネス入門セミナー ~国内外の宇宙ビジネスの最新動向と宇宙ビジネス発掘の
ための勘所~」情報機構(2017 年)
●メディア出演・コメント
NHK ニュースウォッチナイン( 2015年4月9日)、NHK BS1 経済フロントライン( 2015
年4 月18 日)、Channel NewsAsia(2018 年1 月18 日)、日経産業新聞、読売新聞、
日経新聞、毎日新聞、フジサンケイビジネスアイ、中部経済新聞、など多数

目次

はじめに

NewSpace のビジネス領域

Part 1 Old Space からNew Space へ 

第1章 宇宙ビジネスの歴史は競争から協調へ
 米国と旧ソ連のロケット開発競争/戦後の人工衛星の開発競争/有人宇宙
 分野の争い/月への争い/宇宙ステーション開発と協調の時代到来

第2章 世界のなかの日本の宇宙ビジネス
 ロケット打上げ機会が多い米・露・中/圧倒的な国家予算を有する米国/
 世界の宇宙ビジネスの市場規模/圧倒的な官需の日本の宇宙ビジネス

第3章 政策で民間企業を後押しする
 民間の宇宙ビジネスを実施する上で重要な宇宙活動法/米国政府が民間企
 業の月面商用利用を許認可/惑星資源探査事業の法整備を進める先駆国ル
 クセンブルクと米国/世界で行われている宇宙ビジネスの民間支援機能/
 宇宙産業ビジョン2030

日本の課題と成功に必要な条件


Part 2 宇宙ビジネス第三の波

第4章 New Space を動かすプレイヤーたち
 IT ジャイアント出身者を中心とした海外ベンチャー企業の台頭/実は宇
 宙ビジネス出身者が多くない日本のベンチャー企業/多様化する宇宙ビジ
 ネスの市場/大企業連合、大企業からベンチャー企業への出資、買収/リ
 スク回避による分社化/実は昔からあったクラウドファンディングによる
 資金調達/NewSpace 時代に求められる人材、職種とは

第5章 New Space のビジネスは始まっている
 5.1 斬新なアイデアが導くロケットビジネス
 大型ロケットのコスト削減策/航空機によるロケット打上げ/マイクロ波
 を活用したロケットベンチャー/ハイブリッドエンジンを搭載したロケッ
 ト/世界をリードするRocket Lab 社/Space X 社創業の小型ロケッ
 トベンチャー、Vector/超大型ロケットビジネスの狙い/世界初となる
 民間運営のロケット射場/夢の宇宙エレベータ建設へ
 5.2 NewSpace の花形、小型衛星ビジネス
 大規模コンステレーションによるグローバルブロードバンドビジネス/小
 型衛星の大量生産の時代到来/宇宙空間を操るビジネス/スペースデブリ
 除去ビジネス/宇宙のVR 映像化ビジネス/ビットコイン衛星の登場
 5.3 リモートセンシング画像の様々な活用法
 リモートセンシング画像と人工知能(AI)で街づくり/リモートセンシン
 グ画像と経済指標/リモートセンシング画像とAI で太陽光パネルの設置
 状況を可視化/リモートセンシング画像のカラー動画とスマートフォンサ
 ービス /人工衛星を活用した新しい牧畜業者向けビジネス
 5.4 大型衛星の新しい動き
 大型衛星の主流となるオール電化衛星/大型衛星のコスト削減策
 5.5 海外の次は宇宙旅行、そして惑星移住へ
 脱出システムとエンターテインメント性を重視した宇宙船の内装 /ハイ
 ブリッドエンジンでコスト削減を狙う /ロケットを使った高速旅行サー
 ビス /デザイン性と機能性に富んだ宇宙服ビジネスの幕開け /民間の宇
 宙旅行訓練ビジネス /一歩先を行くBigelow Aerospace の宇宙ホテ
 ル /NanoRacks 社、エアーロック事業を加速 /老舗企業vs ベンチャ
 ー企業、両社が目指す火星移住計画 /アラブ首長国連邦(UAE)の火星
 移住計画 /火星移住シミュレーターから新規ビジネスを創出するIKEA
 /Google Lunar XPRIZE から始まった惑星探査事業 /月面探査事業
 でトップを走るMoon Express 社 /月面ランダーを武器に多くの企業
 と連携/Deep Space Industries 社の惑星資源探査機/日本を代表す
 るHAKUTO /地球外生命を探す数グラムの宇宙船プロジェクト
 5.6 異分野に広がる人工衛星データの利活用
 気象データを保険事業に活用/測位信号とアニメ、VR、AR で地域活性
 化/宇宙×仮想現実(VR )/測位衛星を使って農機を自動運転、農作業
 効率向上/物流×宇宙
 5.7 技術を活かす、日本の宇宙ビジネス
 シャープの新しいフラットアンテナ/キヤノンの回折格子による光学セン
 サーの小型化/栗田工業の宇宙ステーションでの水循環システム /宇宙
 食の発展/宇宙×医療・健康
 5.8 異分野、ベンチャー、老舗企業の挑戦
 サービス全般を揃えるNewSpace 時代の宇宙商社/思いをかなえる宇
 宙葬ビジネス/国際宇宙ステーションからの360 度VR 映像/次世代の
 屋内測位ビジネス/超小型衛星キットの登場、進む低価格化 /芸能プロ
 ダクションの宇宙ビジネス参入/スカパーJSAT の低軌道衛星向けビジ
 ネス/水中ドローンによる海洋×宇宙ビジネス
 5.9 中国は宇宙強国を目指す
 中国版宇宙ステーションの整備/中国版GPS 北斗(BeiDou)/中国の
 リモートセンシングの取組み/20 人乗りの宇宙旅行機の開発計画/中
 国、宇宙旅行ビジネスに参入/惑星探査計画を意識したパルサー航法衛星
 /宇宙で使う3D プリンターの開発

「柔よく剛を制す」日本の進むべき道


Part 3 NewSpace のビジネスモデル

第6章 多様化する宇宙ビジネスモデル
 6.1 ハードウェア製造販売を中心とするビジネスモデル
 官公庁・宇宙機関が調達するロケットや人工衛星の製造販売(G2B)/
 ロケットや人工衛星の製造販売はG2B からB2B へ /衛星通信事業者の
 ビジネスモデル /リモートセンシング事業者のビジネスモデル/小型衛
 星の製造販売ビジネスモデルは民間企業主導/ハードウェア製造に顧客サ
 ービスが伴う宇宙旅行(B2B2C) /惑星移住ビジネスのプレイヤー
 (B2B2C)/惑星探査機(ランダー、ローバー)・サンプルリターン機の
 製造と資源販売ビジネス(B2B)
 6.2 人工衛星データを活用するビジネスモデル
 リモートセンシング画像や衛星測位が農業を効率化する(G2B・B2B・
 B2C)/衛星測位とウェアラブル装置で位置情報を把握するスポーツビ
 ジネス(B2B2C) /衛星測位とスマートフォンで位置情報を活用する観
 光ビジネス(G2B2C) /位置情報を交通・物流ビジネスに活用する
 (B2B2C)/リモートセンシング画像から付加価値サービスを提供する
 (B2B2C)

第7章 全く新しい、マーケティング重視の宇宙ビジネスモデル
 市場を支配する価格破壊型ビジネスモデル(Space X)/“ 場” を提供す
 るプラットフォームビジネス(Facebook、アクセルスペース) /顧客を
 離れさせない課題解決型ビジネスモデル(SpaceKnow、三井住友海上)
 /フリーモデル(無料)で顧客を獲得する(SpaceKnow) /ブルーオ
 ーシャン戦略ビジネスモデル(アストロスケール、ALE、Space VR な
 ど)/広告塔での収益を狙うビジネスモデル(惑星探査事業企業など)/
 サプライチェーン変更型ビジネスモデル(OneWeb など) /ディファク
 トスタンダードを構築するビジネスモデル(Microsemi(旧Actel)、
 Moog など)

第8章 宇宙ビジネスに新規参入するには
 人工衛星はだいたい3 種類しかない/人工衛星を活用する6 つのメリッ
 ト/人工衛星とドローン、それぞれの強みと弱み/ニーズオリエンティッ
 ドな視点でビジネスを考える/事業構造を可視化して、ステークホルダと
 市場性を把握する/他分野のビジネスモデルを真似る、アレンジする/避
 けて通れない信頼性と品質の考え方/宇宙ビジネスのユーザを発掘する、
 開拓する /宇宙ビジネス新規参入の勘所

おわりに 宇宙ビジネスの未来

索 引

はじめに

 宇宙ビジネスに興味があるかたもないかたも、宇宙ベンチャー企業の
取組みをニュースやコマーシャルなどのメディアを通じて、目にする機
会が増えてきた、と感じるかたも多いのではないでしょうか。
 ispace 社HAKUTO の月面ローバーをテレビCM で見たことがある
かたも多いでしょう。その他にも、世界を代表する企業としては、米国
Space X 社が挙げられます。SpaceX 社は、Falcon 9 ロケットを打上
げた後、第1 段ロケットを地上の所定の場所へ正確に垂直着陸させて回
収し再利用する取組みでロケット市場をリードしたり、BRF ロケット
により火星などの惑星へ移住する構想を発表したりしています。
SpaceX 社のCEO イーロン・マスク氏は、Pay Pal などの創業者で、
既にIT 企業を設立し事業を成功させた経験をもつ人物です。このよう
に、世界の宇宙ベンチャー企業は、宇宙ビジネスの実績はもちろんのこ
と、宇宙ビジネスの斬新な発想や第三者へのアピールなども超一流で
す。
 従来は、このような取組みを目にすることはほとんどありませんでし
た。テレビCM、新聞、雑誌などのメディアを通じてPR する相手もい
ませんでした。それは、そもそも必要性がなかったためです。つまり、
昔と今では、宇宙ビジネスの顧客ターゲットが異なるということです。
なぜならば、従来の宇宙ビジネスは政府主導であり、国際競争力を向上
させるために宇宙技術開発を中心に進められたためです。この時代を
Old Space と呼びます。本書ではそのように定義したいと思います。
 Old Space の時代では、宇宙空間という特殊な場所で、故障なく正
常に動作させるため、高品質で高信頼性の製品を製造することを主眼に
開発が進められてきました。そのため、高い技術力と経営に関する体力
などを有する少数の大企業がロケット、人工衛星などの技術開発を担当
してきた経緯があります。その甲斐あって、日本はロケットの打上げの
成功率が高まり、人工衛星の軌道上運用において設計寿命を全うするな
ど、米国、ロシア、欧米などの宇宙先進国と肩を並べる技術水準に達す
ることができました。
 その反面、従来のような宇宙技術開発の大きなテーマも減少し、政府
も宇宙機関も予算の確保が難しくなってきていることは正直なところで
す。現時点では、宇宙技術開発にブレイクスルーを起こす必要性は希薄
になり、その時代は終焉を迎えつつあります。
 そのため、政府主導から民間主導へと、技術開発のみならず宇宙ビジ
ネスの分野においてブレイクスルーを起こすべく、民間企業が様々な取
組みを始めていると理解しています。この時代をNew Space と呼びま
す。本書ではそのように定義します。
 日本を含む世界の宇宙ビジネスにおいて、プレイヤーやビジネスモデ
ルなどがどんどん多様化してきています。従来の宇宙技術開発の時代
は、政府から民間企業へ発注するG2B(Government to Business)
のビジネス中心でしたが、G2B に加えてB2B(Business to Business)
及び B2(B2)C(Business to( Business to)Consumer)のビジネス
が主流になりつつあります。従来は、政府事業を受注するために民間事
業者は、よりよい提案書を作成すること、実績を積み高い技術力を保有
すること、などに注力してきましたが、今後は民間事業としてビジネス
をするためには、顧客を確保し、売上を立てる必要があるため、マーケ
ティング活動をしなければならなくなりました。民間ビジネスとしては
あたりまえのことですが、コスト削減策、製品・サービス開発、業務効
率化、マーケティング活動など他業界のビジネスでみられる活動が宇宙
ビジネスでようやくみられ始めています。そのため、大企業、中小企
業、ベンチャー企業など多くの企業が宇宙ビジネスに直接的にも間接的
にも参入する機会が増えると筆者は予想しています。
 
 宇宙ビジネスは、“ 事業リスクが高すぎる”、“ 儲からない”、“ 自分
や自社とは無縁の世界である” という声を多方面から多く聞きます。こ
れらの理由から、宇宙ビジネスに参入しないという意思決定をする民間
企業も現時点では、多くいることも確かです。
 筆者は、コンサルティングを生業としており、各社から宇宙ビジネス
はうまくいかないのではないのか、という問いをよく受けます。この問
いに対して筆者は、うまくいくと回答をすることはできません。Yes
でもあり、No でもあります。なぜならば、宇宙ビジネス以外のビジネ
スであっても同じことがいえるからです。このような実情も理解してい
ますが、いろいろと考える前にまず実行してみる、この点が重要と筆者
は考えており、この意思決定のスピードが速いのはIT 系企業やその出
身者、ベンチャーマインドを有する人たちです。そのため、どんどん新
しいことを実施していますし、失敗を恐れない風潮です。もし、失敗が
あればすぐに改善策に取りかかり、うまくいかないようであれば、きっ
ぱりと止める、など宇宙ビジネスを順調に運営しているのも、このよう
なかたがたが多いのが特徴です。
 繰返しになりますが、宇宙ビジネスは、“ 事業リスクが高すぎる”、
“ 儲からない” という点についての筆者の回答としては、Yes でもあり、
No でもあります。
 事業リスクが高いという点は、一例として損害賠償責任の観点が挙げ
られるのではないでしょうか。例えばロケット、人工衛星、宇宙旅行機
など打上げサービスをビジネスとする企業が、打上げを失敗してしまう
ことで、人命や物などに損害を与えてしまい、多大な賠償責任を負う可
能性は否定できません。そのため、日本でも2016 年11 月9 日に宇宙
活動法(人工衛星などの打上げ及び人工衛星の管理に関する法律)が成
立し、ロケット打上げ企業などが打上げをする際には、保険を付保する
こと、限度額以上は政府が保証することなどが盛り込まれ、宇宙活動に
係る事業リスクなどに関してルールが定められています。これにより、
事業リスクを回避するためのルールが盛り込まれたため、企業にとって
は、参入の意思決定をスムーズにするものとなるでしょう。2017 年11
月にはその一部が施行され、2018 年11 月には全面施行となります。ま
た、宇宙活動法に関する法解釈や民間企業間の契約、保険事業は、今ま
で以上に活発になることも予想されます。
 儲からないという点は、宇宙用部品という高信頼性部品の使用により
人工衛星の製造費用やロケット製造及び打上げ費用がかかるという点が
挙げられるのではないでしょうか。 従来、ロケット、人工衛星などは、
宇宙用部品と呼ばれる、宇宙空間でも耐えられる部品が使用されてきま
した。日照日陰の温度及び温度変化に耐えられる部品、宇宙放射線に耐
えられる部品、ロケットの振動や音響環境に耐えられる部品などです。
しかし、現在、ベンチャー企業を中心に宇宙用部品ではなく民生用部品
を使用することを模索している取組みがあります。民生用部品のなかか
ら、宇宙環境に耐えられる部品を選び出すという作業です。この取組み
に対して、従来の宇宙ビジネスに携わってきたエンジニアなどは、懐疑
的な意見を持つ人も多いですが、この取組みが成功すれば、コストが大
幅に下がるため、ロケット、人工衛星、宇宙旅行機などの打上げサービ
スをビジネスとする企業は、利益が出やすくなるでしょう。ただし、最
良の民生部品を選定したり、その実績をつくったりするのに、多くの時
間と労力を費やしてしまう可能性もあります。しかし、ロケット、人工
衛星、宇宙旅行機などの打上げサービス以外にも、ビジネスの機会は多
くあります。あたりまえのことですが、どの業界でも、各社企業がアイ
デアを出し、創意工夫しながら、ビジネスモデルを確立させ、試行錯誤
しながら競争し合い、自律的に成立していくものです。1 つでも成功事
例としてのビジネスが出だすと、一気に「無縁」だった世界から、参入
したい世界へと変わっていきます。反対に、このような成功がなけれ
ば、宇宙ビジネスは、大きく成長することはないと思います。
 また、別の視点として、宇宙ベンチャー企業の取組みは、技術的にも
事業的にもフィージブルなのかという意見も多く聞きます。例えば、惑
星移住計画は実現可能なのか、時間軸は確からしいのか、惑星探査事業
は資源リターンは可能なのか、事業採算が取れるのか、などです。正直
なところ、筆者は答えを持ち合わせていませんが、現在、世界の宇宙ビ
ジネスをリードしている宇宙ベンチャー企業は、他の事業で成功してき
た優秀でかつ著名な経営者であること、多方面に信頼、信用力がある人
物が実施していること、世界を代表する投資家にプレゼンテーションな
どでアピールし実際に資金調達に成功していること、他の大企業などと
連携していること、などをみるとそれほど間違った取組みではないと筆
者は認識しています。フィージブルなのか、事業採算性はあるのか、と
いう結論を急ぐのではなく、まず失敗を恐れずチャレンジしてみる、こ
れが重要なのだと筆者は感じています。成功のために努力する、失敗し
たら、次の手を考えればよい、撤退すればよいなどの正確な意思決定を
すればよい、それを重要視しているのがベンチャー企業であり、Old
Space とNew Space の企業のマインドの違いと理解しています。
 本書は、大きく3 つのパートで構成しています。
 Part 1 では、宇宙ビジネスを概観していただくために、宇宙ビジネ
スの歴史、国家予算、市場などについて、宇宙先進国のアメリカ、欧州
などを中心に紹介し、日本との相違点や世界における日本の立ち位置を
理解していただけると思います。また、New Space 時代の政策として、
世界の取組みとして、各国でみられる民間ビジネスの支援機能やルクセ
ンブルクや米国の惑星資源探査にかかる法規定の整備、日本における宇
宙活動法や宇宙産業ビジョン2030 などを紹介します。
 Part 2 では、国内外の宇宙ビジネスの最新事例を紹介します。ロケ
ット、小型衛星、宇宙旅行などの分野ごとに取り上げます。Part 2 に
より、現在のNew Space 時代のベンチャー企業の取組み、老舗企業の
取組み、ベンチャー企業と老舗企業の経営方針の相違点、競争や協力体
制に関する動向などが理解していただけるのではないでしょうか。
 Part 3 では、New Space にみられ始めたビジネスモデルについて、
事業構造を描いてプレイヤーとサービスのやりとりを図示することで可
視化します。可視化することで、個々のプレイヤーとのやり取りが明確
化され、課題の抽出や売上の把握などに役立ちます。さらに、その事業
構造を用いて、他業界でみられるビジネスモデルを取り込むなど、応用
もきくと筆者は感じています。また、宇宙ビジネスの参入の留意点を紹
介したいと思います。宇宙ビジネスの参入の留意点は、宇宙ビジネスに
特徴的なもの、ビジネス一般的にいえるものも含まれていますが、筆者
が日常の業務において感じている内容を記載しました。
 宇宙ビジネスとは、「直接的にも、間接的にも何らかの形で宇宙に関
係するビジネス全般」と本書では定義しています。「宇宙産業」、「宇宙
事業」という用語は、「宇宙ビジネス」という用語と意味に大きな差異
はありません。「宇宙産業」、「宇宙事業」という用語は、Old Space の
シーンでよく活用され、G2B(Government to Business)のシーンが
よく連想され、「宇宙ビジネス」という用語は、New Space のシーンで
活用される傾向がありますが、本書では、読者の混乱と誤解を回避する
ため、全て「宇宙ビジネス」という表記に統一することとしました。
 
 筆者は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の開発員として、2 機の人
工衛星の開発プロジェクトに従事した経験があります。新卒で入社し、
様々な経験をさせていただきました。実際に現場に出て、宇宙に関連す
る多くの企業と共に、概念設計から詳細設計、打上げ、運用までの一連
の工程を肌で感じた経験を有します。また、プロジェクトメンバーとの
信頼関係、企業の枠をも超えた現場の一体感などは、言葉では表現する
ことができないものであり、一生の宝物であり、忘れることはないでし
ょう。複雑かつ大規模で先進的なシステムを開発する大規模なプロジェ
クトを皆で課題を解決しながら成功に向かって進む、これが、宇宙ビジ
ネスの醍醐味の1 つと考えています。
 その後、JAXA を退職し、日系および外資系コンサルティングファ
ームにて官公庁や多種多様な業界の企業のコンサルティングを経験しま
した。この経験を通じて、様々な業界のビジネスの課題を知り解決に導
き、また担当した企業の強み・弱み、特徴を知ることができ、リレーシ
ョンも構築することができました。筆者は、宇宙ビジネスにおいて、実
際に現場に出て宇宙ビジネスの課題を肌で感じた経験、“ 禅的” な感覚
を有していること、宇宙ビジネスの技術やプレイヤーにおける現状の強
み・弱み、特徴、課題を把握していること、そして、宇宙ビジネス以外
の多種多様な業界のビジネスの課題を知っていることを強みに持ってい
る数少ない人材であると考えています。
 本書は、こうした筆者の経験を踏まえて、国内外の宇宙ビジネスの
“ 良いところ” や“ 理想像” だけを紹介したものではなく、宇宙ビジネ
スの現状はどうであり、どのようなところに強み・弱み、そして課題が
あり、何に留意すればよいのか、どのようなところにメリットがあるの
か、デメリットがあるのかなどを正直に記載したつもりです。
 本書は、宇宙ビジネスに関連のある業界に就職を考えている学生、宇
宙ビジネスに関心のある非宇宙企業関係者、宇宙ビジネスの新しい動き
に関心のある、従来の宇宙企業の関係者を対象としています。
 宇宙ビジネス業界に就職を考えている学生には、おそらく理科系のか
たが多いでしょう。本書を読んで、宇宙技術のみ知見を有する人材に留
まらず、「誰に」「いくらで」「何の製品・サービス」を「どのように販
売するのか」というビジネスマインドを有する人材を目指そうと少しで
も思ってもらえると幸いです。文科系のかたも、今後の宇宙ビジネスに
おいては、活躍する場面が多く創出されると筆者は考えています。
 また、宇宙ビジネスに関係がないと思っていた民間企業が、少しでも
宇宙ビジネスに関心を持ち、参入を検討していただく材料になれば、筆
者は幸いです。このような観点で、支援ができることが筆者の何よりの
喜びです。
 本書を執筆する機会をいただいた日刊工業新聞社の国分未生様に深く
感謝申し上げます。
 2018 年4 月齊田興哉

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