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今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしい自動運転の本

定価(税込)  1,650円

著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-07805-7
コード C3034
発行月 2018年03月
ジャンル ビジネス

内容

国内外の自動車メーカーだけでなく、グーグルやアップルなどのIT企業までもが「自動運転」に取り組んでいる。本書は自動運転を実現する基礎技術から様々な技術的・社会的課題までを取り上げ、各要素技術の基礎知識、人工知能の応用などの自動運転に関する基本的な知識を網羅した、日産自動車の現役エンジニアによる「自動運転」の入門書。

クライソン トロンナムチャイ  著者プロフィール

(クライソン トロンナムチャイ)
Kraisorn Throngnumchai

1958年、タイ・バンコク生まれ。1976年、来日。1986年、東京大学大学院工学系研究科電子工学博士課程修了。博士(工学)。同年、日産自動車(株)入社。現在は同社総合研究所のシニア・リサーチ・エンジニア。技術士(電気電子部門、総合技術監理部門)、ソフトウェア開発技術者、第一級陸上無線技術士などの国家資格を保有。
センサなどのエレクトロニクス技術の自動車への応用研究に従事。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のエネルギーITS推進事業、協調走行(自動運転)に向けた研究開発(2008年~2013年)の研究員を務める。2009年に精密工学会画像応用技術専門委員会第15回小笠原賞受賞。
著書に、「ワイヤレス給電技術入門」(共著、2017年、日刊工業新聞社)。

目次

はじめに
第1章
自動運転への期待と技術の全体像
1 車の普及に伴う諸問題「解決が望まれる4つの問題」
2 交通事故を減らす先進運転支援(ADAS)技術「如何にヒューマンエラーを減らすかがカギ」
3 自動運転による交通渋滞緩和「如何にブレーキを踏ませないかがカギ」
4 自動運転による省エネ・環境負荷軽減「最後は空気との戦い」
5 自動運転技術に期待されていること「自動化の価値」
6 自動運転技術のレベル「自動化の段階」
7 自律型自動運転を実現するためのアプローチ「領域を広げていく方策対レベルを上げていく方策」
8 自動運転技術開発の歴史「過去の技術の振り返り」
9 自動運転システムの概要「ハードウェアとソフトウェアの全体像」
10 「深層強化学習」対「センサ」「本書の立ち位置」

第2章
“走る”“曲がる”“止まる”を制御する技術
11 最も簡単なロボットカー、ライントレーサー「床に引いた線に沿って走るオモチャ」
12 古典制御技術「オンオフ制御とPID制御」
13 パルス幅変調と周波数可変変調「オン・オフだけで実現するPID制御」
14 現代制御技術「システムの内部まで考慮する状態空間表現」
15 状態フィードバック制御とモデルに基づく制御「具体的な現代制御技術」
16 ファジー制御「言語的な表現のルールを制御に活かす」
17 ニューラルネットワークによる制御「自ら学習する機械による制御」
18 “走る”を電子制御するパワートレイン制御技術「エンジンとトランスミッションの電子制御」
19 電気自動車のパワートレイン制御技術「モータの制御」
20 “止まる”を電子制御するブレーキ制御技術「滑らせないためのブレーキ制御」
21 電気自動車のブレーキ制御技術「回生ブレーキの制御」  
22 “曲がる”を電子制御するステアリング制御技術「横滑りさせないためのステアリング制御」
23 電気自動車特有のステアリング制御技術「トルクの向きを変えることによるステアリング制御」
24 車両の運動を安定化させる制御技術「アクセルとブレーキの協調制御」
25 バイワイヤ技術「電子だけで“走る”、“止まる”、“曲がる”を制御する」

第3章
走行環境の認知・判断技術
26 先進運転支援(ADAS)や自動運転に必要な各種センサ「いろいろなセンサが必要な理由」
27 超音波ソナー「透明なガラスでも検知できるセンサ」
28 ミリ波レーダー「相対速度を直接検知できるセンサ」
29 レーダーの最大探知距離と方位分解能「ミリ波レーダーの性能」
30 カメラ「色々なものを検知できる汎用センサ」
31 空間フィルタリング処理「画像処理の基礎」
32 エッジ抽出「エッジにこそ多くの情報が集まっている」
33 車線を見つけるためのハフ変換「直線を検知するための画像認識技術」
34 標識や信号を見つけるための拡張ハフ変換「円を検知するための画像認識技術」
35 テンプレートマッチング「特定のパターンを見つけるための画像認識技術」
36 ステレオカメラ「距離も検出できるカメラシステム」
37 単眼カメラによる距離推定技術「2台カメラがなくても距離を検知できる」
38 センサフュージョン「複数種類のセンサの混用」
39 LiDAR(ライダー)「自動運転への応用が期待されているセンサ」
40 歩行者認識のための画像処理技術「画像から歩行者を見つける難しさ」
41 遠赤外線カメラ「夜間でも歩行者を検知できるセンサ」
42 オプティカルフロー「カメラによる移動物体とその相対速度の検知」
43 畳み込み型深層学習による画像認識「画像認識に適した深層学習形式の人工知能」

第4章
航法に関する認知・判断技術
44 全地球航法衛星システム(GNSS)「人工衛星による現在地の特定」
45 オドメトリによる航法「走行距離による現在地の特定」
46 加速度センサ「加速度を検知するためのセンサ」
47 ジャイロセンサ「方角を検知するためのセンサ」
48 複合航法「複数種類の航法の混用」
49 マップマッチング「地図情報による位置情報の補正」
50 確率的な自己位置の推定「測定誤差も考慮して位置を確率とする考え」
51 SLAM「位置情報と地図情報の同時取得」
52 ダイクストラ法による最短経路検索「代表的なコンピュータによる最短経路検索アルゴリズム」
53 Q学習による最短経路検索「代表的な機械学習による最短経路検索」
54 深層強化学習による自動運転「自動運転のために期待されている人工知能技術」
55 GPGPU「人工知能の実現に適しているハードウェア」

第5章
ヒューマンマシンインターフェース技術
56 ヒューマンマシンインターフェースの必要性「機械と人間のコミュニケーションが重要」
57 全方位モニター「周囲360°を見渡せる分かりやすい映像を提示する技術」
58 ドライバーの状態監視・推定「大切なドライバーを見守るための技術」
59 ドライバーの意図推定「あうんの呼吸を実現するための視線検出技術」
60 音声によるヒューマンマシンインターフェース「人の言葉を理解するのに適した人工知能技術」
61 説明可能な人工知能「判断の根拠が分からないと安心して任せられない」
62 外向けのヒューマンマシンインターフェース「自車の外とのコミュニケーション技術」

第6章
自動運転技術の現状とこれから
63 車線維持と先行車追従機能付き定速走行制御システム「商品化された自動運転技術の例1」
64 駐車支援、自動駐車システム「商品化された自動運転技術の例2」
65 船の自動運転「車以外の自動運転技術の例」
66 準天頂衛星システムとダイナミックマップ「今後期待が高まる衛星航法と高精細な地図に関する技術」
67 コネクテッドカーと5G通信「今後期待が高まるネット接続と次期通信規格」
68 カーセキュリティ「今後ますます必要とされるセキュリティ対策技術」

コラム
●ブライスのパラドックス
●飛行機の自動操縦
●ライトフィールドカメラ
●四色定理
●テレパシー
●乗り物以外への自動運転技術の応用

索引

はじめに

 今、自動運転が大変話題になっていて、いろいろなところで実証実験が行われています。また、高速道路で手をハンドルに添えるだけで車線を維持しながら一定速度で自動走行したり、前の車に自動追従したりする機能や、指一本で自動駐車をしてくれる機能などを備えた車が実際の市場に出回り始めています。
 自動運転は人工知能と一緒に語られることが多く、完全な無人運転のためには深層強化学習などの人工知能が必須と言われています。その時に次のような哲学や倫理上の問題もよく話題に上り、議論されています。
1.脳は脳を理解できるか
2.システムを細かく分解して、各部分の構造やその作用を理解していけば必ず全体を理解できるとする還元主義と、いくらバラバラの各構成部品を理解しても決して全体を理解するに至らないとする全体論のどちらが正しいか
3.有限な情報処理能力しか持たないロボットは現実に起こりうる問題全てに対処できないというフレーム問題
4.ある人を助けるために他の人を犠牲にしなければならない状況で起きるトロッコまたはトロリー問題
 しかし、これらの問題は答えがないか、あっても大変難しい。例えばフレーム問題は情報処理能力が有限な人間にも起こっています。また、トロッコ問題は、この宗教ならばどのような判断を行うのか? などと時々聞かれるほど道徳や宗教にも深く関係しています。
 自動運転車がドライバーの命と車の先にいる歩行者の命のどちらかを選ばなければならないという二択しかない状況で、システムが瞬時にどのように判断すべきかの議論は大事で、その答えを準備しておくべきです。しかし筆者個人の考えとしては人間が自ら答えを導き出せない問題に対して、機械がどのような答えを出しても人間は決してそれに満足することはないだろうと思っています。そのような状況に陥らないシステムの開発にこそ最大限の努力を払うことがエンジニアとしての務めではないかと考えています。
 本書は工学の立場を貫くために、あえて先に述べた哲学や倫理、宗教の問題には触れないこととしました。また現実主義的な立場を貫き、理想的な自動運転の実現よりは、実際に商品化され始めている部分的な運転の自動化技術を中心に解説を試みました。とくに人工知能については本来の目的である人間のような知能を人工的に実現する技術については触れずに、制御や画像認識、音声認識の延長線上の技術として紹介することにしました。この方が実際に目にすることのできる自動運転車を過信したり不信の念を抱いたりすることなく、現在何ができて、何ができないのかを読者の皆様が正しく理解できるのではないかと思っています。
 自動運転は主なものだけでもセンサ、アクチュエータ、強電、弱電、ハードウェア、ソフトウェア、制御、通信、画像処理・認識などと大変幅広い多くの技術を寄せ集めることで成り立っています。9で技術の全体像をご覧頂けます。これらの技術を多くの人に紹介して興味を持って頂き、今後の自動運転の発展を担う技術者の育成促進にも貢献することが本書の目的です。そのためにできるだけ関連技術を多く紹介するように心がけたため、結果的に各技術を深く解説することができませんでした。この本で自動運転の概観をつかんでから興味を持った各分野の専門書を参考に、より深い知識を得て頂ければ幸いです。
 最後にこの本を執筆する機会を与えてくださった日産自動車(株)ならびに日刊工業新聞社、とくに企画・編集を担当いただいた平川透さんに深い感謝の意を表します。
 また、日頃から公私ともに幅広くご指導頂いている東京大学大規模集積システム設計教育研究センター(VDEC)の浅田邦博教授と、日産自動車(株)の元電子情報研究所所長の廣田幸嗣さんにこの場を借りて感謝を申し上げます。
 この本で紹介した制御やセンサなどの各技術は日産自動車(株)の佐藤宏さん、西内秀和さん、中村光範さん、出口欣高さんをはじめとする多くの同僚から教わったり議論させて頂いたりしたものです。深くお礼申し上げます。

クライソン トロンナムチャイ 

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