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利益を上げ続ける逆転の発想
「あいまい・もやもや」こそが高収益を生む

定価(税込)  1,620円

著者
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サイズ 四六判
ページ数 256頁
ISBNコード 978-4-526-07839-2
コード C3034
発行月 2018年03月
ジャンル ビジネス

内容

キーエンスで要職を率い、「儲けの仕組み」を知り尽くした著者が語る事業創出の指南書。不透明な時代だからこそ主観で“決めつけない”ビジネスモデルを重視。ありのままの情報を整理せず事業化し、完成途上で投入~絶えず変化する商品展開を提唱する。

菅原 伸昭  著者プロフィール

(すがはら のぶあき)
1991年京都大学卒業後、日商岩井株式会社に入社。産業機械などの日本・中国・アジアでの営業を経験後、自費にて中国へ語学留学。1996年に㈱キーエンスに入社し、30歳にて現地法人責任者として台湾法人を立ち上げ、その後中国の現地法人を設立、現地法人責任者として中国事業拡大に貢献。さらにアメリカ・メキシコ現地法人責任者を歴任。2014年からTHK㈱にて執行役員事業戦略特命本部長として、グローバルマーケティング・商品企画・データ分析の部署を立ち上げる。2017年からはAIベンチャーを立ち上げるとともに、営業組織構築のコンサルティングや業界構造・ビジネスモデル解明のリサーチなどを行っている。

藤井 幸一郎  著者プロフィール

(ふじい こういちろう)
1975年東京都生まれ。早稲田大学法学部を卒業後、1998年に中央官庁に入省し、資産流動化・不動産投資信託法の法案作成や国会質疑対応業務などに従事する。その後、東京大学大学院を経て、公会計基準の策定業務を行う。2006年にコンサルティング会社へ転職し、プロジェクトマネジャーとして、事業戦略の策定などの上流工程から、組織・業務の設計、ハンズオンでの現場改革といった下流工程までのプロジェクトを様々な業界に対して実施する。2013年に独立し、経営戦略策定や市場分析などのコンサルティングを大手・中堅企業に対して実施するほか、東日本大震災の被災地のNPOとともに、地域のデータブックの作成を行う。2017年にアトラトル㈱を設立し、海外市場の消費者や販売チャネルの「ありのまま」の調査とその背景データを分析して提供するサービスを行っている。
本書に関するお問い合わせは下記にご連絡ください。
nobu.sugahara@euler-intl.com
www.euler-intl.com

目次

■前編:事業編
はじめに

第1章  市場という幻想
1-1 市場は予測可能だった
1-2 「なくてはならないニーズ」から「あったらいいなというニーズ」へ
1-3 変化する時代の新商品・新事業創造は「やってみないとわからない」
1-4 追うべきはMarket(市場)という概念ではなく、Customers(個々の顧客)という実態
Column1 利益は最適化から生まれる

第2章  個客の時代に必要なProduct-Customers-Fit
2-1 Product-Customers-Fitとは
2-2 商品はそもそも多層化されている
2-3 多層間の連携が価値の創造を生む
2-4 Product-Customers-Fitによって変わる仕事の役割
2-5 価値創造の出発点は最上層における個客接点
2-6 他社が模倣できない基盤を作る最下層
2-7 個別化と標準化の試行錯誤から利益を生む“あいまいな”中間層
Column2 自然の生態系は多層化構造で変化に強い構造を作り出している
Column3 Product-Customers-Fitにおける営業と、従来の「凄腕営業マン」との違いとは
Column4 商品、商品グループ、事業、企業で異なる多層化構造

第3章  Product-Customers-Fitの始め方・進め方
3-1 Product-Customers-Fitを実行する6つのステップ
3-2 Product-Customers-Fitを始める際の注意点
3-3 多層化された商品に合わせた意思決定プロセス
3-4 創業時に当たり前のことが実行のヒント

第4章  個客情報の蓄積が次の商品・事業を生むProduct-Customers-Fitのもう一つの効果
4-1 質を伴う個客情報は企業にとって大きな資産
4-2 価格は個客が認めている価値のものさし
4-3 最上層の個客とのつながりを生かして新事業・新商品を創る

第5章  高収益を生む4つの理由
5-1 個客への個別対応と量産・標準化のバランスの最適化
5-2 積み上げでなく個客接点の価値で決める価格
5-3 個々の顧客の生涯価値の最大化
5-4 失敗する確率の低い開発投資
Column5 Product-Customers-Fitは最適化のスポットを見つける仕組み

第6章  Product-Customers-Fitの応用
6-1 B2Bへの応用
6-2 AI・IoTへの応用

第7章  自然の生態系と進化はProduct-Customers-Fitの手本
7-1  Product-Customers-Fitを自然の生態系から学ぶ
7-2 ビジネスや企業も進化する
7-3 Product-Customers-Fitの進化

■後編:組織・風土編
はじめに

第8章  Product-Customers-Fitに欠かせないパターン認識と気づき
8-1 Product-Customers-Fitになぜ気づきが必要か
8-2 高次脳の役割はパターン認識
8-3 気づきとは何か
8-4 気づきを阻む罠
8-5 もやもやこそが気づきの源泉

第9章  気づきを生む組織を作る
9-1 気づきは会話から生まれる
9-2 気づきを組織の学びと行動に変える
9-3 ありのままの情報が気づきの出発点
9-4 多くの気づきを生む組織を作るには

第10章  共有化された価値観が気づきを組織の行動に変える
10-1 組織的な気づきは価値観が共有されていないと生まれない
10-2 企業における価値観や思い
10-3 価値観が共有化されればあらゆる行動は容易になる
10-4 複数の価値観を追いかける企業では、組織的な気づきは生まれない
Column6 日本企業によくある価値観

第11章  気づきを生むリーダーの思いと気づきを生み続ける組織風土
11-1 組織に命を吹き込む人と、風土を作る人は別
11-2 気づきを生み続ける組織風土
11-3 風土を設計する
11-4 人員構成は気づきを生み出す風土に大きな影響を与える

第12章  日本だからできる気づきを生む組織の作り方

はじめに

まえがき

 私(菅原)が大学生活を送ったバブル期、日本経済、日本企業はJapan as No.1と呼ばれ世界を席巻していました。専攻は理系でしたが、世界で活躍するビジネスマンの姿に憧れて総合商社に入り、数年後には「世界に日本の良さを伝えるなら製造業で…」と思い、キーエンスという会社に入社しました。
 工業用の機器を開発・製造している同社では、上司や運に恵まれ、台湾、香港、上海で海外現地法人を立ち上げ、現地法人の責任者として直販営業を行う社員を数多く採用し、営業組織をゼロから作る経験をしました。その後、米国の現地法人の責任者として赴任し、今度は米国のビジネス世界に日本式の営業や事業をどう根づかせるか、という課題に無我夢中で取り組みました。そして、あっと言う間に約14年の海外での月日が経ち、いよいよ日本に帰国する日を迎えたのです。
 私は、それまでにもときどき一時帰国はしていましたが、日本に住むのは久しぶりでした。そして、帰国後しばらくして、なんとも言えないショックを感じたのです。私の海外ビジネスへの憧れのきっかけは、世界で活躍する日本のビジネスマンの姿でしたが、そんな自信に満ち、世界に目を向けるビジネスマンは14年後の日本ではほとんど見られず、日本のビジネス界でもてはやされるのは、日本国内市場で成功したベンチャーや、米国流の仕事のやり方を行う外資系企業の経営者という状況でした。
 帰国後しばらくして、「LMガイド」という機械要素部品で世界の半分のシェアを持つ、THKという会社(売上約3000億円)にグローバルでの事業戦略の責任者として入社し、まず会社と事業を理解すること、そして新たな戦略を考えるミッションを与えられました。そこで私が用いたのは、米国のビジネススクールで学ぶような手法でした。フレームワークを駆使し、市場、事業、運営方法を整理し、自社はどうするべきか戦略を考えるためのものです。
 ところが、そのような手法はなかなか組織に馴染まず、私自身も大きな違和感を抱くようになりました。THKは40年以上にわたり世界で50%を超えるシェアを維持してきた会社です。「多くの日本企業がグローバルでシェアを失っていく中、高いシェアを維持している。そこにはそれ相応の秘密があるはず」。そういう思いから多くの方の話を聞き、最後にはすでに引退している創業者と一緒に、会社を築き上げて来た元幹部らにも話を伺いました。その結果、全く異なるメカニズムが背後にあったことを悟りました。
 その視点から、前職含め、これまで長期間自らが行ってきたことを振り返ったとき、そこにはある意味で、似たようなメカニズムがあったことに気づかされました。ところが、現場の最前線でその、日本独自のメカニズムを実践していた自分、日本のビジネスマンに憧れそれを海外に広げようと夢中で頑張っていた自分が、なぜか新たな企業に入ってそのビジネスを解き明かす際には、米国のビジネス手法を使ってしまっていたのです。
 日本独自のビジネスメカニズムに気づかなかったのは、もちろん、私自身が未熟だったこともあります。しかし、私はこれまでの経験から同時に、日本には日本のビジネスの手法を顕在知化して他人に伝えるための表現方法が、一部を除いてほとんど存在していないことに起因しているという思いに至りました。
 日本独自の経営は、終身雇用、真面目で働き者の社員、家族主義、現場主義、階級のない平等な社会など、いろいろな言葉で断片的に表現されます。また、かつて高度成長を築いてきた人たちは、その頃の熱い思いや固い結束が日本の成長を支えたことを語ります。しかし、私が勤めてきた企業も含め、今もグローバルで活躍する日本企業は、この断片的な日本の良さだけで世界に通用する会社になっているわけではなく、そこにはまだ顕在知化されていない、表現されていない経営手法があると、そう感じるようになったのです。
 そんな頃私は、縁あって本書の共著者である藤井氏と出会いました。藤井氏は、財務省に勤めた後、外資系コンサルを経て独立し、今はベンチャーを立ち上げられています。彼はコンサルがよく行うような、考えを何かの枠にはめるということがなく、非常に自由な発想の下、ゼロベースで考えることができる人です。
 私は、この日本企業の優秀さはどこから来るのかという疑問を彼にぶつけました。そして、私の経験と藤井氏の数多くの企業とお付き合いした経験を合わせ、100時間を超える議論を重ねた末、本書に記載する「あいまい・もやもやだからこそ高収益になる」というアイデアに至りました。そしてご縁をいただいた、日刊工業新聞社の井水社長に共感していただき、日本のモノづくりを支え続けた同社から本書を世に出すことができました。
 もちろん、苦労を重ねた経営者と数多のビジネスマンが、知恵と汗で築いたビジネスの結晶を、たかが10万文字程度で書き表せるはずもないことは、現場で取り組んできた人間として断言できます。もっと尊い何かがそこにはたくさんあると思います。しかし、これまでほとんど焦点を当てられてこなかった部分に、ある角度から光を当ててみることに価値があると考え、本書を執筆しようと決意しました。
 おそらく本書に目を通されると、「当たり前のことを言っているな」と感じる方も多いと思います。当たり前のことを、わざわざ難しく書いていると感じるかもしれません。しかし、欧米のビジネスのフレームワークも、よく見るとどれも極めて簡単な当たり前のことを言っています。例えば、3Cと呼ばれるフレームワークは「事業は企業と顧客と競合の3つの要素でできている」というシンプルなものです。しかし、頭(論理脳)でビジネスを考え、他人に伝えるには、結局そういうフレームワークが必要です。だから、日本企業にとっては当たり前のことだからこそ、顕在知化することに価値があると感じています。
 最後に、本書は抽象的な内容を、時に身近な例を用いて説明しています。私が経験してきた2社は、工場や研究所向けの機器を製造する会社で、ほとんどの方が触れることのない世界です。したがって、本書では例として用いることはしませんでした。著者らが経験した企業での、自らの経験に基づくリアルな話の方が説得力もあると思いましたが、書籍という多くの方の目に触れる性質上、割愛しました。ご理解・ご了承いただければと存じます。まだ不十分なところだらけの内容かと思いますが、本書のアイデアにご興味いただき、ご質問・ご指摘がございましたら、巻末に連絡先を載せておりますのでそちらにご連絡・ご意見いただければ、大変嬉しく存じます。
2018年2月
菅原 伸昭

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