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図解よくわかる 衛星測位と位置情報

定価(税込)  2,160円

著者
サイズ A5判
ページ数 180頁
ISBNコード 978-4-526-07812-5
コード C3050
発行月 2018年03月
ジャンル その他

内容

衛星測位の基本を一通り学べる、最初に読む1冊。1項目あたり見開き2ページの、図表を用いたわかりやすいレイアウトで、丁寧に説明。1mや1cmといった高い位置精度をどのように実現しているかがわかる。日本の衛星測位システムである準天頂衛星「みちびき」の解説もする。

久保信明  著者プロフィール

(くぼ のぶあき)
・学歴
北海道大学大学院工学研究科修士課程修了(1998年)
東京大学大学院工学系研究科 論文博士(工学、2005年)

・職歴
日本電気株式会社電波応用事業部(1998~2001年)
東京商船大学商船学部助手(2001~2006年)
東京海洋大学海洋工学部講師(2006~2007年)
東京海洋大学海洋工学部准教授(2007年~現在)
スタンフォード大学 客員研究員(2008~2009年)

目次

第1章 衛星測位の基本
1無線による航法 →位置を知ることは昔からとても大事でした
2衛星測位の歴史と開発者の考察 →20世紀後半に開始したばかり
3衛星測位の概要 →3つのパートから成り立っています
4複数の衛星測位システム →今は米国のGPSだけではありません
5位置を決める原理 →三辺測量を思いだしましょう
6衛星測位ユーザに必要なもの →スマホに全部入っています
7衛星を利用して位置を測る →位置を測るのは自分の受信機です
8衛星測位のアプリケーション →身近にたくさんあります
コラム◎GPS開発の歴史

第2章 衛星の役割
9測位のための衛星 →衛星は一番高い場所にあります
10衛星の軌道 →とても重要な6軌道要素の説明です
11衛星からの信号 →CDMAという通信技術も使われています
12衛星からのメッセージ →衛星の位置を求めることができます
13衛星の概略位置 →1kmくらいの精度で計算します
コラム◎天空図と仰角・方位角

第3章 受信機の役割
14受信機の構成と特徴 →3つのパートに分けることができます
15測位衛星から受信する信号レベル →とても弱い電波を受信します
16測位衛星からの信号の捕捉 →信号処理の重要な部分です
17測位衛星からの信号の追尾 →信号処理の重要な部分(その2)です
18衛星からの距離を測る →電波が光速で伝わることを利用します
19位置を測ってみる →受信機の重要な役割です
20測位には衛星が4機必要 →受信機の時計の精度に答えがあります
21速度も測ることができる →なんと数・/sの精度で測ることができます
22時刻の同期 →世界中で1μs以内で同期できます
23受信機による性能の違い →価格による違いは多少あります
24アシストGPS →携帯電話の基地局からエフェメリスを入手します
25衛星測位の弱点 →干渉やなりすましといった問題があります
コラム◎受信機はソフトウェアの塊

第4章 位置を表現する座標系
26衛星測位の座標系と測地学 →測地学が大きな役割を果たします
27地球の球と測地系 →地球は赤道方向に少し長い楕円体です
28衛星測位の座標系 →用途に応じて選択します
29標高の基準となるジオイド →平均海水面といわれるとイメージできますね
30ジオイドの求め方 →衛星測位は標高を直接は教えてくれません
31地図の重要性 →緯度・経度だけではイメージしにくいです
32日本国内の電子基準点 →高精度測位の要です
33地殻変動 →ご存知のとおり日本は地震大国です
コラム◎ジオイドは場所によって変化します

第5章 様々な誤差要因
34精度を決める誤差要因 →正しい位置を求めることを阻みます
35衛星の位置の精度 →何が精度を決めているのでしょうか?
36衛星の時計の精度 →原子時計も完璧ではありません
37電離層を通過する影響 →太陽の活動と関係が深いですね
38対流圏を通過する影響 →地球の大気の層で一番下の部分です
39マルチパスによる影響 →電波が障害物に遮られると困ります
40直接波も反射波も受信 →電波が障害物にはねかえって誤差になります
41反射波のみ受信 →マルチパスのなかでもとてもやっかいです
42衛星の配置の重要性 →位置精度に大きく関与します
コラム◎GPS気象学

第6章 精度を高める手法
43高精度測位 →たくさんの方法があみだされてきました
44距離を測るものさし →2つの観測値が衛星測位の肝です
45基準局の必要性 →高精度測位には欠かせません
46ディファレンシャル方式 →1mくらいの精度です
47RTK方式 →1cmくらいの精度です
48搬送波位相のあいまいさ →RTK方式のcmへの関門です
49あいまいさを決定するFIX解 →さらに精度を高めます
50あいまいさを決定しないFLOAT解
→あいまいさを決定しなくても精度が高められます
51サイクルスリップ →搬送波位相が障害物で途切れるとやっかいです
52ネットワーク型RTK方式 →複数の基準局を使うと効率的です
53PPP方式 →数cmくらいの精度です
54SBAS →衛星経由で補正データを放送します
55ドップラ周波数による速度情報
→位置と速度情報を融合して精度を高めます
56それぞれの測位方式の特徴 →強みと弱みをおさらいしましょう
コラム◎1つの周波数と複数周波数

第7章 日本の準天頂衛星「みちびき」
57準天頂衛星 →「みちびき」と呼ばれる日本の測位衛星です
58「みちびき」の信号 →GPSと似ていますが固有の信号もあります
59「みちびき」の軌道 →他の衛星測位システムとくらべてユニークです
60測位補完としての機能 →利用できる衛星の数をふやします
61測位補強としての機能1 →サブメータ級の補正データを提供します
62測位補強としての機能2 →センチメータ級の補正データを提供します
63災害危機情報の配信 →緊急の情報を効率的に放送します
64MADOCA →「みちびき」の技術実証試験サービスです
コラム◎RTKLIB

第8章 位置情報の利活用
65スマートフォン →スマホで数cmの精度の時代がやってくるかも
66カーナビゲーション →自動運転時代にどう変貌していくでしょうか
67ドローン →衛星測位技術がないと実現しなかった?
68自動運転 →衛星測位はどのように寄与するのでしょうか
69精密農業での利用 →担い手不足の農業に適しています
70建設現場での利用 →この業界でも人出不足をおぎないます
71船舶での利用 →AISは安全航行に欠かせません
72航空管制 →飛行機の着陸にも利用されはじめています
73地殻変動のモニタリング →国内には約1300の基準点があります
74ビッグデータ →衛星測位が品質を高めます
コラム◎衛星測位の未来

はじめに

はじめに

 
GPSの名称で知られる米国のグローバルな衛星測位システムは、1970年代に最初の衛星が打ち上げられてから、すでに40年近く経過しています。GPSの当初の開発目的は軍用であり、できるだけコストをかけずに爆弾を所定の位置へ落とすことを可能にするというミッションがありました。現在もGPSの目的は変わっておらず、軍用が第一であり、GPSにとって障害になるような電波干渉は強く規制されています。米国のGPSと同じ時期に開発を開始していたのが現在のロシアのGLONASSです。両者は信号の形式が、GPSはCDMA方式、GLONASSはFDMA方式と異なりますが、衛星をベースにした位置決定技術が、地球上どこでもグローバルに展開できる点やユーザ側の受信機のみで測位できるシンプルさに、共通の価値を見出していたと考えられます。

 1990年代に日本ではGPSを利用したカーナビが出現しており、それまで紙の地図に頼りながら運転していたドライバーが、リアルタイムに時々刻々自身の位置を表示してくれる便利なカーナビに頼るようになりました。日本のメーカの技術者たちは、この衛星測位技術への興味や関心だけでなく、今後潜在的な発展性があると認識していたのかもしれません。その後現在までの20年以上の間、カーナビは使われ続け、その形態がスマートフォンというプラットフォームに変化している部分はありますが、これに変わる他の位置決定システムはまだでてくる気配がありません。米国が軍用に開発してきたGPSを民間に開放することになった正確な理由はわかりませんが、大韓航空機撃墜事件があったのではないかといわれています。民間航空機が所定の経路を大きくはずれソ連領内に入ってしまったため、ソ連の戦闘機に撃墜された事件です。GPSのように世界中どこでも数mの精度で自身の緯度・経度・高度が表示される仕組みがあれば、このような悲劇がまぬがれたのかどうか定かではありませんが、軍用に開発してきたシステムを民間に開放するには、それなりの理由や動機があったであろうと推測されます。米国は、2000年5月に、それまで位置精度を100m程度にあえて劣化させていた仕組みを廃止しています。その後、位置精度は数mになり現在に至っています。2000年に入る頃には、位置精度を1~2mにするディファレンシャル方式が確立しており、ロシアのGLONASSだけでなく欧州のGalileo衛星の開発も計画されていたことから、100mの位置精度では民生利用において競争できないと判断したと考えられます。実際には米国のGPSとロシアのGLONASSの後に続く測位衛星は、日本の準天頂衛星、中国のBeiDou、そして欧州のGalileoが世の中にでてくるまで存在しませんでした。これらの国は今後も新たなフェーズの改良された測位衛星の打ち上げを計画しており、よほどの経済危機でもなければ、今後も10年以上ゆるやかな発展がみられるでしょう。さらに20~30年後も衛星測位技術は、重要な測位インフラとして利用が継続されるのではと予想します。

 本書のテーマである衛星測位技術や位置情報の利活用という観点でみると、経過した年数から衛星測位のベースとなる技術は新しくないことが想像できます。実際に受信機の基本となる数多くの特許は、2000年に入るまえに取られており、複数周波数を利用する高価な測量受信機を開発し販売するメーカは、現在でも世界中で数えるほどしかありません。一方、位置情報の利活用の側面でみると、高精度測位の低コスト化や様々な移動体の自律化の機運の高まりなどにより、広がりをみせていく可能性があります。その場面において、衛星測位技術の基礎を習得した人や受信機の中身のわかる人が求められます。本書が衛星測位の専門書を読みこなすためのきっかけとなれば幸いです。

 本書の構成は、衛星測位の基本からはじまり、衛星本体の役割、受信機の役割を紹介し、その後、衛星測位にとって重要な地球の座標系の定義、位置精度を決定する様々な誤差要因をみていきます。次に位置精度を高める手法について詳細に説明し、国産の測位衛星である準天頂衛星「みちびき」の機能や特徴について紹介します。最後に位置情報の利活用分野を紹介します。衛星測位における技術用語がいくつかあるかと思いますが、わからない用語がでてきたとき、この本のその用語の書いてある場所を開けば、できるだけ直感的に理解できるような記述と図を準備することをこころがけました。

 本書の執筆に際し、文献や技術資料を利用させていただいたことをここに厚く御礼申し上げます。また、本書の出版に際し、貴重なコメントやご配慮をいただいた日刊工業新聞社書籍編集部の国分様および関係各位に心から感謝いたします。

 
2018年3月

久保信明 

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