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おもしろサイエンス
飲料容器の科学

定価(税込)  1,728円

著者
サイズ A5判
ページ数 152頁
ISBNコード 978-4-526-07837-8
コード C3034
発行月 2018年03月
ジャンル ビジネス

内容

飲料容器はどのようにつくられるの?中味はどうやって美味しく長もちさせるの?リサイクルはどのように行われているの?など身近なわりに知られていない飲料容器の世界を大手飲料メーカーに長年勤めた筆者が経験と最新情報にもとづいて、わかりやすく解説する。

松田 晃一   著者プロフィール

(まつだ こういち)

1960年生まれ。1984年京都大学農学部食品工学科微生物生産学研究室を卒業、キリンビール入社。以後、退職するまでの30年間、キリン社に在籍。うち23年間、6か所のビール&飲料工場で製造・品質管理・工場建設・排水処理・人財育成に従事。特に1993年~2001年、キリンビール名古屋工場のリニューアル工事を担当。当時、はじめての建設工事で多くの困難に直面したが、社内はもとよりさまざまな企業の手助けで合計6列のパッケージング列の工事を無事、乗り切る。その後、パッケージング研究所で4年間、飲料容器開発、ペットボトルのバリアなどの開発業務を担当。2011年4月キリンビバレッジ生産本部技術部長。2015年3月キリン社を早期退職後、直ちに自身の飲料ビジネスコンサルタント会社(株式会社ティーベイインターナショナル、東京都港区、www.t-bayinter.co.jp)を設立。現在は広く国内外の食品&飲料企業のコンサル業を主としている。技術士(生物工学)、エネルギー管理士、公害防止管理者(大気・水質・騒音)、経営学修士(MBA)、通訳案内士(英語)。

目次

第1章 
飲料容器の知られざる世界
1  飲料容器の元となった発明 ─19世紀のルイ・パスツールの白鳥フラスコ─
2  中味㏗で大きく違う殺菌条件 ─100℃でも死なないボツリヌス菌─
3  微生物の熱殺菌理論 ─D値・Z値・F値・PU値ってナニ?─
4  飲料容器究極の殺菌システム ─過酸化水素ガスによる無菌充塡「アセプティック充塡」─
5  壮絶なコンビニ棚の獲得バトル ─年間の新商品飲料数はなんと1400SKU─
6  飲料の基本充塡原理 ─高速充塡のために必要な要素とは─

第2章
ガラスびん 変わらない重厚感
7  飲料容器最古の歴史をもつガラスびん ─ブローブロー成型とプレスブロー成型─
8  究極の酸素除去技術 ─ダブルプリエバキュエーションによるビール充塡─
9  茶褐色のビールびん ─目的は日光によるホップ成分の劣化低減─
10  驚きの瞬間充塡ビール技術 ─ドイツdrinktec2017で初お目見え─

第3章
スチール缶とアルミ缶 金属だからできる強度
11  アルミ缶のネック加工 ─スピンフロー成型と多段ネック成型─
12  缶コーヒーといえばスチール缶 ─実はアルミ缶でも製造できる─
13  ビール用アルミ缶のさらなる軽量化1 ─缶胴を薄くする─
14  ビール用アルミ缶のさらなる軽量化2 ─缶の蓋を小さくする─
15  缶コーヒーの新フレーバー ─アロマプロテクト®法とは─

第4章
紙容器とステンレス樽 すすむ機能向上
16  牛乳といえば紙パック ─ぺットボトルで製造販売されない理由─
17  ブリック紙容器 ─賞味期限の延長を可能にした充塡方式─
18  空気の混入を極限まで減らした樽 ─生ビール用ステンレス樽容器─
19  樽ビールの冷却方式と注ぎ出し方法 ─ヘンリーの法則から導き出される適正炭酸ガス圧─

第5章
ペットボトル 最新技術のかたまり
20  増え続けるペットボトル飲料 ─人口減少の日本でなぜ増える?─
21  PET樹脂の基本の性質 ─ガラス転移点・降伏点・延伸倍率─
22  ペットボトルの軽量化 ─倉庫での保管や輸送時の耐荷重克服が課題─
23  残留応力を軽減するヒートセット ─結晶化度を上げて熱に強いペットボトルを作る─
24  ネック搬送による驚異の充塡スピード ─ペットボトル充塡の高速化─
25  ボトル内製化とアセプティック充塡 ─劇的な効率化と二酸化炭素排出量の削減─
26  無菌充塡のさらなる進歩 ─電子線によるプリフォームとボトルの殺菌─
27  超高速の炭酸飲料充塡技術 ─ドイツdrinkt2017で紹介─
28  多層・バリア・スカベンジャー ─ペットボトルは空気や他の気体を通す─
29  軽量だけどすごいキャップ ─ツーピースからワンピースキャップ・防爆機能付キャップ─
30  ペットボトルのラベル ─シュリンク・ロールから世界最薄ロールオンシュリンクへ─
31  充塡機とラベラーのドッキング ─アキュームコンベアの劇的減少─
32  ペットボトルのダイレクトプリント ─空極のプライベートラベル印刷─
33  究極のシンプルライン ─インジェクションマシンとブロー成型機の直結─

第6章
飲料容器の用途拡大
34  ワンウエープラスチック樽 ─欧州で進むプラスチック樽の動向─
35  伸縮性バリア素材と常温高圧殺菌技術 ─次世代の新しい技術─
36  ペットボトル入り炭酸飲料 ─窒素ガスで作るとどうなる?─
37  夢のバイオ100%ペットボトル ─遺伝子組換え・バイオ原料で作る─

第7章
飲料容器とサステナブル社会
38  ペットボトルリサイクル技術の発展 ─FDAが認証する世界最高レベルの品質─
39  リサイクル先進国オーストリア ─100%にこだわらないリサイクルPET利用─
40  多層ペットボトルの功罪 ─安価で便利だがリサイクルには障害─
41  飲料容器の環境評価 ─社会への影響と環境への配慮─
42  環境中に放出されるペットボトル ─PET樹脂を分解する微生物の存在─
43  次世代への技術伝承と技術革新 ─よりサステナブルな社会の実現に向けて─

column
飲料有用成分が劣化しない高温短時間殺菌
便利な中味量の測り方 マル正マークびん
スピアバルブのとりはずしは危険 飛出し防止機能
いろいろあるぞペットボトル
プラスチックなのに高バリア ポリエチレンナフタレート
微生物の分解能を利用するバイオレメディエーション

はじめに


まえがき




本書は「おもしろサイエンス  飲料容器の科学」というタイトルです。じゃあ、今なぜ飲料容器なのか? まず、固形物を包装している食品の容器に比べて、飲料容器は、ビールなどの高い圧力の液体や水分活性が高いもの(食品が含んでいる水のうち、雑菌などの微生物が自由に利用できる水の多いもの)を扱うため、より完全な密封性・滅菌性が要求されます。しかも、産業的な見地からいいますと、飲料工場ではより低コストでより短い時間のあいだになるべく多く作ること(高い生産性)が要求されます。低コストで生産するとは、味が良くて安価な原料を使うとか、軽い容器や肉厚の薄い容器でも十分な強度を持った容器を使用する、などといったことです。また、高い生産性とは、与えられた設備・作業員数で、単位時間当たりどれくらい多くの飲料を製造できるかということです。場合によっては高い生産性を追求するがために、現在、皆さんがよくコンビニの棚などで見かける容器の形や機能になったといえるものもあります。例えば、観光地などでは、たいへんユニークな形をしたペットボトル飲料が販売されているのを見たことがあると思います。こういったユニークなデザインのボトルは軽量化が難しく、また、高速でボトルを作ったり、中味を充填したりすることが難しいため、生産性を高くできない場合も多いのです。そのため商品の値段も高くなる傾向にあります。1本300円もするペットボトルのミネラルウォーターもあります。これに対して通常のコンビニで販売されているペットボトルなどは、できるだけ洗練された形状を維持しながらもなるべく短時間でたくさん生産することが必要なため、少しありきたりの形になってしまっているものもあります。こういったいくつもの高いハードルを乗り越えて、飲料は、それこそ目にも止まらぬ速さで製造されています。今、缶ビールの最速の充填ラインでは1分間に2000本もの缶ビールが製造されています。まさに目にも止まらぬ速さで製造されているのです。

そのため、この本ではガラスびん・缶・紙容器・ステンレス樽・ペットボトルなどの飲料容器自体の説明に加えて、その殺菌技術や充填技術、さらにいかにしてラインの高速化が実現できているのか、といったことも多く説明していきます。また、本書では物事を理解する上において、比較してものを考えるという方法を多くとりいれていきたいと思っています。読者の皆さんが日本の文化や習慣をより深く幅広く理解するためには、外国の文化や習慣(英語でcounterpartという)を学ぶことでより深く理解できるようになります。それと同じように、ペットボトルと缶や他の容器、それぞれの違いを意識して見てみるとたいへん面白いと思います。中味は同じコーヒーなのに、最近よく見かけるようになったペットボトルのコーヒーと昔からある缶コーヒーとでは何かちがいがあるのか、といったことなどです。読者の皆さんの理解が深まるように、少し難しい内容でもなるべく私たちの身の回りに見られる現象にたとえて説明したいと思っています。近年になって殺菌技術や充填技術の目覚ましい進歩のおかげで、驚くような技術が飲料製造に使われ、高い品質の製品が目にも止まらぬ速さで生産されるようになりました。

それでは「飲料容器の科学」の世界へようこそ。

 
2018年3月
株式会社 
ティーベイインターナショナル

代表取締役 飲料ビジネスコンサルタント 松田晃一

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