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エンジニアリング・ブランドのすすめ
企業力、商品力を高める技術経営戦略

定価(税込)  1,944円

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著者
サイズ A5判
ページ数 180頁
ISBNコード 978-4-526-07809-5
コード C3034
発行月 2018年02月
ジャンル 経営

内容

ブランドが構築されていれば、特別な営業をしなくても顧客からの依頼がくるようになる。本書では、エンジニアが参画して構築していく、技術力にもとづいた「エンジニアリング・ブランド」を取り上げ、その機能や構築の手順などを、実際の企業の例を挙げながら解説する。

(一財)アーネスト育成財団  著者プロフィール


事業をするための技術経営人財の育成などで、豊かで明るい持続的な成長をする日本づくりに寄与することを目的に、理事長の西河洋一(飯田グループホールディングス株式会社代表取締役社長)が私財を投じて設立した財団である。

小平 和一朗  著者プロフィール

(こだいら かずいちろう)
1947年 栃木県生まれ。

現在、一般財団法人アーネスト育成財団専務理事、一般社団法人日本開発工学会理事・運営委員長・学会誌『開発工学』編集委員長。

1970年 芝浦工業大電子工学科卒業

2005年 芝浦工業大学大学院工学マネジメント研究科修了

2007年 芝浦工業大学大学院工学研究科博士(後期)修了(博士(学術))

1970年 大倉電気株式会社入社、技術部長、社長室長、営業部長、情報通信事業部長(2002年まで)

2004年 株式会社イー・ブランド21代表取締役(現在)

2008年 芝浦工業大学技術経営センター客員研究員(2010年まで)

2008年 電気通信大学技術経営実践スクール講師(2014年まで)

2009年 一般社団法人MOT振興協会事務局長(2012年まで)

2012年 一般財団法人アーネスト育成財団専務理事(現在)

2014年 東京経済大学技術経営実践スクール講師(2015年まで)

目次

第1章 ブランドの基礎を学ぶ
1.1 差別化の基本にブランドがある
1.2 営業をせずに売れる仕掛けづくりに取り組む
1.3 ビジネス創出過程でエンジニアリング・ブランドが重要な役割

第2章 エンジニアリングと経営
2.1 ビジネスモデルの仕組みを支えるエンジニアリング(技術)
2.2 中長期戦略で、計画的に強みをつくる攻めの経営
2.3 市場と技術を理解し、エンジニアリング・ブランドをつくる

第3章 エンジニアリング・ブランドが主張する4つの強み
3.1 企業理念の中でエンジニアリング力を伝えブランドを構築する
3.2 「独自性」を主張する
3.3 「最先端技術」であることを主張する
3.4 「独創性の高い技術」を持っていることを主張する
3.5 「新しい価値」の創造に取り組んでいることを主張する

第4章 「技術」「知恵」「価値」「顧客」の4要素で組立
4.1 ソフトウェアハウスの強みを見える化
4.2 誠意・熱意あるプロフェッショナル
4.3 知は必ず形になる
4.4 明日をかたちに
4.5 技術を知恵に
4.6 可能性をつなぐ
4.7 期待以上のパフォーマンス

第5章 ビジネス創出を支えるエンジニアリング・ブランド
5.1 産業財から一般消費財へと繋ぐビジネスづくりを学ぶ
5.2 資産活用、開発受託(OEM、ODM)企業のブランドづくり
5.3 顧客開拓、大学教授のホスピタリティとブランド構築
5.4 新技術、顧客と取り組む飲料容器メーカーのブランドづくり
5.5 新規事業創出、革新的な商品は、技術説明から始まる

第6章 エンジニアリング・ブランドで伝えること
6.1 ミニ広告のスローガンで伝える5つの要素
6.2 企業の事業領域を伝える
6.3 サービス目標を明らかにする
6.4 新しい価値の提供をプレゼンする
6.5 商品を支えている技術のコンセプトを伝える
6.6 モノづくりの領域を伝える

第7章 顧客とつくるブランド構築の手順
7.1 技術スタッフと一緒に取り組むマーケティング活動
7.2 市場創出手順
7.3 顧客と取り組むビジネス創出手順
7.4 B2BとB2Cとの違い
7.5 取引における複数パスの存在
7.6 リスクを負わずにイノベーティブな仕事はできない

第8章 ビジネスクリエーターに求められる人間力
8.1 エンジニアリング・ブランドを構築できる人財
8.2 エンジニアとエンジニアとの出会い
8.3 ホスピタリティを身に付けた信頼できる人財
8.4 人財に求められるセンスウェア

はじめに

推薦の辞


 主に消費財を中心とする商品ブランドや企業ブランドを対象として展開され整理されてきたブランド論は、一部産業財に関しても展開が見られるものの、それら商品の基盤ともいうべき製造技術、いわゆるエンジニアリングに関するものは、これまでほとんど散見されない。

 ブランド論に関する拙い講義での説明の中から、エンジニアリングに関するブランド論の構築と展開の可能性に着目し、長い年月をかけて独自の、新しい理論としての「エンジニアリング・ブランド論」の構築に向けて精進してこられた著者である小平和一朗氏のご努力に対して、心からの敬意を表したいと思う。
 
本書における論述は、エンジニアリングの分野で確固たる知識と経験と実績を確保してこられた小平氏の、長年にわたって蓄積されてきた識見に裏付けられた密度濃い内容になっている。製品製造の第一線におられるエンジニアの方々はもちろんのこと、企業経営者の方々にとっても示唆に富む内容であることは申すまでもないであろう。

 本書での理論がベースとなり、その実践編としてのブランド・エンジニアリング論の展開が今後の課題となることを確信しつつ、本書を問題意識のある方々に夙にご推薦申し上げる次第である。


平成30年1月

早稲田大学名誉教授

亀井 昭宏






はしがき
 
自社の強みをブランディングして、どのように表現したら良いのか。
 
多くの場合、マーケターといわれるマーケティングの担当者は、売れる仕掛けづくりのために、時間を掛けてブランドづくりに取り組んでいる。ブランドが構築されていると、特別な営業をしなくても、顧客から仕事の依頼がくるからだ。企業の差別化、商品の高付加価値化を進める手段としてブランド構築がある。ブランド化に取り組むことで、技術革新の割合が増し、社会的付加価値が増加するといわれているからである。
 
「マーケティング」に接した時、エンジニアとして長い間、市場づくりに取り組んできた筆者は、会社のブランドや商品のブランドがあるのに、技術のブランドがなぜ無いのかという単純な発想からの「エンジニアリング・ブランド」の提案であった。
 
『エンジニアリング・ブランド』は、筆者の提唱する概念であり、コンセプトである。


競争力のある売れる商品づくりに取り組む
 
今まさに大変革の時代、グローバル市場は多様化されているが、苦戦をしながらも競争力のある売れる商品づくりに取り組んでいる。変革の時代に企業が生き残るには、営業部門やマーケティング部門だけでなく、エンジニアリング部門とも連携を取って市場の動向をつかみ、市場をリードするような技術開発テーマを創出することを、中長期戦略の中で取り組むことが必要である。競争力ある商品開発やイノベーションを起こすような技術開発は、長期的でかつ継続的な取り組みの結果である。神輿に乗って経営をするようなスタイルの経営が破綻をして、社長自らが神輿を社員とともに担ぐタイプの運営でなければ、大変革時代には柔軟な対応ができなくなっている。経営者は、どのように取り組めば良いのだろうか。

 経営トップにとってはビジネスの出会いの場で、経営企画室の担当にとっては中長期戦略立案の時に、営業部長にとっては顧客になる可能性のある人との出会いの場で、技術開発部門の責任者にとっては顧客との出会いの場で、企業力や商品力を支えている自社の技術的な強みを説明しようとする時になって、ブランドとしての自社の強みが整理されていないことに気付く。


本書で何を伝えたいのか
 
エンジニアリング・ブランドというテーマは、技術者のためのブランド論のように捉えられがちであるが、経営層のための技術経営学に関する研究であるとまず位置付けたい。エンジニアリング・ブランドを学ぶことで、技術と市場との異質な2つの繋がりを理解することができるからである。エンジニアリング・ブランド構築にあたっては、異質な組織を繋ぐ活動に取り組むことが要求される。

 従ってこの学びは、経営層だけでなく、マーケターにも必要な知識でもある。商品の特徴を明示しようとすると、具現力であるエンジニアリングを理解できなくては、顧客に説明することができないからである。それは、新商品の市場開拓や製造業のサービス化やノンブランド商品の市場創出などに取り組んでみると、その必要性が見えてくる。
 
モノづくりやコトづくりを支えているのは、ビジネスを具体化しているエンジニアリングであることを再確認したい。商品の強みをつくり出しているのは、差別化を支える特徴あるエンジニアリングである。提供する商品やサービスの特徴を顧客目線で見て明らかにすることで、顧客はそれを理解し、購買動機に繋がるといえるのである。


想定している読者
 
本書は、技術経営書であり、コトづくりを含めたモノづくりの事業に取り組んでいる会社の経営幹部であるマネジャークラスを読者として想定している。具体的な部門としては、経営幹部、技術部門、営業部門、経営企画部門など多方面にわたる以下のようなスタッフを対象としている。

・革新的な商品の市場づくりで悩んでいるビジネスクリエーター
・市場をリードするような技術開発テーマの創出で悩んでいる技術開発スタッフ

・顧客のニーズを把握するためのコミュニケーションで悩むエンジニア

・顧客目線での会話ができないシステムエンジニア

・特徴ある商品コンセプトをいかにつくるかで悩んでいるマーケター

・長期ブランド構築戦略を打ち出して、強みづくりに取り組む経営企画スタッフ

・イノベーティブな会社に改革しようとしている経営幹部や経営企画室のスタッフ

・技術経営研究に取り組む研究者

など。


本書の構成

 第1章の「ブランドの基礎を学ぶ」では、ブランドを初めて学ぶ読者を想定して、ブランドに関する基本的なことを取り上げる。エンジニアリング・ブランドの存在を明示するとともにコーポレートブランド、プロダクトブランドについて、その関係性を説明している。

 第2章の「エンジニアリングと経営」では、モノづくりやコトづくりのビジネスを支えているエンジニアリング(技術)の存在を明らかにまずしている。企業経営の観点からのエンジニアリング・ブランドづくりの必要性を主張している。
 
第3章では「エンジニアリング・ブランドが主張する4つの強み」と題して、企業理念などの企業コンセプトでつくり上げる、コーポレートブランドとエンジニアリング・ブランドづくりについて解説する。企業が何を主張しているかを「独自性」「最先端技術」「独創性の高い技術」「新しい価値」に類型化し、事例を挙げて報告している。

 第4章の「「技術」「知恵」「価値」「顧客」という4要素で組立」では、会社の顔となるホームページで取り組むエンジニアリング・ブランドづくりを紹介する。会社の顔となるホームページで何を語るべきか。デジタル広告、最前線の取り組みの成功事例を紹介する。このデジタル広告、比較的安価な予算でブランド構築に取り組める手段である。

 第5章の「ビジネス創出を支えるエンジニアリング・ブランド」では、産業財(B2B)から一般消費財(B2C)へと繋ぐビジネスづくりを解説する。資産活用、顧客開拓、新技術、新規事業創出という4つの特徴的なビジネス創出とエンジニアリング・ブランドづくりについて取り上げている。

 第6章の「エンジニアリング・ブランドで伝えること」では、11の事例を取り上げ、アナログ広告(新聞広告)とデジタル広告の役割を解説している。いずれも、エンジニアリング・ブランド構築に繋がるお手本になるような素晴しいスローガンを掲げている。

 第7章の「顧客とつくるブランド構築の手順」では、技術スタッフと取り組むマーケティング活動を取り上げている。B2Bが基本となっているが、B2Cビジネスの新しい市場創出プロジェクトづくりの参考になる話でもある。いまや上流に遡ってサプライチェーンを把握した上で、イノベーティブなビジネスをつくらなければならない時代だからである。
第8章の「ビジネスクリエーターに求められる人間力」では、特にB2Bでのビジネスでは、人と人とのコミュニケーションからビジネスが創出されているからである。これはサービス業にも通じることで、サービス業におけるエンジニリング・ブランド構築では、人間力を求められるので、本章は参考になると思う。ブランドは、人の上に構築されていることを再確認したい。


2017年12月

小平和一朗

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