買い物かごへ

今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしいトンネルの本

定価(税込)  1,620円

著者
著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-07811-8
コード C3034
発行月 2018年02月
ジャンル 土木・建築 ビジネス

内容

トンネルは道路や橋、ダムと並ぶインフラの要。一見すると形状も似ているが、実は多彩な種類や用途場所に合わせた施工や維持管理の工夫がされている。本書は、トンネルの基本的な知識(形、力学、材料、工法、維持)からトンネルを取り巻く文化的・社会的な知識までバランスよく学ぶことができる入門書となる。

土門 剛  著者プロフィール

(どもん つよし)
1967年、東京都生まれ。91年、東京都立大学工学部土木工学科卒業。博士(工学)。同年東京都立大学工学部土木工学科助手。その後、大学名変更や組織改編などを経て、現在、首都大学東京大学院都市環境科学研究科助教。専門はトンネル工学、地下空間利用。

土木学会、地盤工学会、日本トンネル技術協会、高速道路調査会、日中トンネル安全リスク会議、日中シールド技術交流会などに所属。

主な著書は、『2016年制定 トンネル標準示方書 共通編/山岳工法編/シールド工法編・同解説』(土木学会)、『高速道路のトンネル技術史-トンネルの建設と管理-』(高速道路調査会)、『トンネル用語辞典【CD-ROM版】』(土木学会トンネルライブラリー26号) など。

三浦 基弘  著者プロフィール

(みうら もとひろ)
1943年、北海道旭川市生まれ。東北大学、東京都立大学で土木工学を学ぶ。専門は構造力学。東京都立小石川工業高校、東京都立田無工業高校、東京学芸大学、大東文化大学などで教鞭をとる。その傍ら、NHK教育テレビ「高校の科学 物理」「エネルギーの科学」の講師、月刊雑誌「技術教室」(農山漁村文化協会)編集長などを歴任。
主な著書は、『物理の学校』(東京図書)、『科学ズームイン』(民衆社)、『東京の地下探検旅行』(筑摩書房)、『光弾性実験構造解析』(共著、日刊工業新聞社)、『日本土木史総合年表』(共著、東京堂出版)、『世界の橋大研究』(監修、PHP研究所)、『身近なモノ事始め事典』(東京堂出版)、『発明とアイデアの文化誌』(東京堂出版)、『びっくり!すごい!美しい!橋とトンネルに秘められた日本のドボク』(監修、実業之日本社)など。

目次

第1章 トンネルを知るためのはじめの一歩
1 トンネルとは何かを改めて知ろう 「山や地下に造られた空間を指す」
2 足下にある身近なトンネル 「道路直下から大深度まで」
3 トンネルの特徴 「暗い、汚い、狭い?」
4 トンネルの構成要素と基本構造 「目に見えるのはトンネルの表面だけ」
5 日本が世界に誇る新幹線のトンネル 「新幹線トンネルの特徴」
6 より深く…地下鉄のトンネル 「地下鉄トンネルの特徴」
7 くねくね曲がる? 下水道のトンネル 「下水道トンネルの特徴」
8 四世代続いて造られたトンネル 「宇津ノ谷峠」
9 廃止になったトンネルの再利用 「トンネルの有効利用」

第2章 トンネルの歴史を振り返る
10 いつ頃からトンネルと呼ばれるようになったか 「日本初? の“トンネル”紹介」
11 山岳信仰とトンネル 「トンネルは避けられ峠が発達」
12 江戸時代にもいたトンネル技術者① 「武士と商人それぞれの事業」
13 江戸時代にもいたトンネル技術者② 「和尚さんの一大事業」
14 そもそもトンネルって? ① 「トンネルの語源」
15 そもそもトンネルって? ② 「トンネルの定義と分類」
16 まずは隠れ家としての利用から 「トンネルの起源」
17 かつてのライフラインだった水路トンネル 「箱根用水」
18 文明とともに発展したトンネル 「古代のトンネルあれこれ」
19 現代トンネルの原点ここにあり 「近世 ・ 近代のトンネルあれこれ」
20 難工事を経験したからこそのトンネル技術 「高熱との壮絶な闘い」
21 日本が世界に誇るビッグプロジェクト 「海底下のトンネルや長大なトンネル」
22 海外におけるビッグプロジェクト 「国をそして海をまたぐ壮大なトンネル」

第3章 トンネルはどのように通す?
23 トンネルに必要な力学入門 「地盤に掘った孔に発生する力はどうなっている?」
24 トンネルの周りの地盤の強さ① 「地盤を構成する土の種類と砂の強度」
25 トンネルの周りの地盤の強さ② 「粘土の強度とグラウンドアーチ」
26 鉄筋コンクリートの基礎知識 「専門用語の意味から性質を考える」
27 トンネルに働く力 「土圧と水圧」
28 トンネルの形と力学 「円形トンネルが丈夫な理由」
29 トンネルの形はどうやって決まる? 「四角形トンネルの優位性」
30 トンネルをどこに通すか 「高速道路を例にしたルート選定」
31 トンネルを掘る前に調査する 「自分の目や足で、そして様々な機器を使って」
32 トンネルをうまくつなげる 「計画通りに正確な位置のトンネルを掘るには?」
33 トンネルの設計と考え方① 「シールドトンネルの設計」
34 トンネルの設計と考え方② 「山岳トンネルの設計」
35 トンネルに勾配をつける理由 「長さや場所によって形式も様々」
36 山岳トンネルの造り方① 「山の中をハリネズミが掘り進むように」
37 山岳トンネルの造り方② 「断面を分けて安定性を保つ」
38 都市トンネルの造り方① 「茶筒のような機械で掘り進む」
39 都市トンネルの造り方② 「道路下の浅いところで密かに掘り下げる」
40 水底トンネルの造り方 「地上で箱を造って海に沈める」
41 トンネルを掘る前に地盤を固める 「地盤を凍らせることもある」
42 トンネルで使われる珍しい機械 「機械仕掛けの弁慶」
43 掘削中のトンネル周辺の環境 「環境保全に配慮した対策」

第4章 様々な災害に備えるトンネル
44 トンネルの安全設備 「トンネル等級と非常用施設」
45 トンネル火災発生、どうやって逃げる? 「避難の方式」
46 アンダーパス道路の冠水対策 「危険箇所を確認しておくことが重要」
47 地下鉄における浸水対策 「地下に水が流入しないための様々な取り組み」
48 トンネルは地震に強いのか? 「地下構造物の地震時特性」
49 地震に備えるトンネルの工夫 「想定外に備える」
50 トンネルと液状化 「発生のメカニズム」
51 水害を低減するトンネル 「神田川 ・ 環状七号線地下調節池」
52 トンネル内をきれいな空気に① 「ジェットファンによる送排気」
53 トンネル内の空気をきれいに② 「まだまだある換気方法」
54 様々なライフラインをトンネルで管理しやすく 「共同溝」
55 トンネル内の視界も良好に 「照明の色々」

第5章 トンネルの維持管理の秘訣
56 安定性を維持する特殊な構造物 「トンネル覆工コンクリートの特殊性」
57 トンネルの寿命 「トンネルも病気や怪我をする」
58 高齢化が進む日本のトンネル 「道路トンネルの場合」
59 トンネルの病気の原因① 「山岳トンネルの病気」
60 トンネルの病気の原因② 「シールドトンネルの病気」
61 トンネルの健康診断 「トンネル内の点検と診断方法」
62 トンネルを治療する 「トンネルの補修や補強工事」

第6章 これからのトンネルと社会を考えよう
63 山岳トンネルの新技術 「山岳工法の最先端技術」
64 都市トンネルの新技術 「シールド工法の最先端技術」
65 開かずの踏切解消のカギはトンネル? 「東京の私鉄に見る地下化」
66 これからのトンネルを考えよう 「トンネルの利用と維持管理の将来像」

【コラム】
●トンネルの入口と出口
●スキューバックの役目
●モグラのトンネル
●フナクイムシとシールド工法
●文学とトンネル
世界のトンネルベスト10
参考文献
用語の解説
索引

はじめに

はじめに




 トンネルは目立たない存在です。しかし、道路や鉄道、さらには上下水道、電気、通信など、社会基盤で活躍しているとても重要な構造物です。本書を通じてトンネルの様々な話題に触れながら、トンネルに対する理解を深めて頂ければ嬉しく思います。

 トンネルは、英語の“tunnel”からの外来語です。“tunnel”は、もともとフランス語で「」を意味する“tonne”に由来します。“tunnel”は中世の英語では「樽」の意味で用いられていましたが、やがて樽に形が似ていることから、18世紀に入ってから地中を通る人工・木造の建造物を「トンネル」と呼ぶようになりました。

 日本にはトンネルに近いもので「切通し」がありました。これは山や丘などを掘削し、人馬の交通を行えるようにした道です。トンネル掘削技術が発達していなかった明治時代以前には、切り立った地形の難所に道路を切り開く手段として広く用いられてきました。

 「堀貫」という語もありますが、本格的にトンネルを漢語にしたのは「隧道」。しかし、隧道は、墓の中の通路という意味もあるため、昭和40年以降は、トンネルの扁額に記入されることは少なくなりました。いつから変わったのか定かでありません。

 日本の国土の総面積は約37・8万㎢で、約70%が山岳地帯です。日本は島国であるとともに、山岳で占める山国でもあります。弓なり状の日本列島の海岸沿いは、平地が多く、町は開けてきましたが、山岳地帯の町はなかなか拓けていきませんでした。山岳地帯に道路ができ交通を容易にしたものはトンネルでした。しかし、初めから積極的にトンネルを造ってきたわけではありません。

 日本には古くから山岳信仰があり、山に穴を開けてトンネルを造ることをためらってきました。そのためトンネルのかわりに峠が発達したのです。峠という字は漢字ではなく国字で、室町時代にできたのでないかという学者もいますが、いつ頃にできた字なのかは定かではありません。峠は、「山の神が治める神聖な場所」とされ、峠を越える時には、神さまに捧げものをしていました。祠や道祖神を設けている所が多いです。祠は異郷の地から悪いものが入り込まないための結界の役割も果たしていたと考えられます。捧げることを「手向ける」と言います。峠の読みは、手向けの転とされています。

 山岳信仰でトンネルを掘ることを忌み嫌っていたことが変化したのは、明治に入ってからです。鉄道が敷設されるようになり、トンネルの必要性が生じたからでした。日本最初の鉄道トンネルは兵庫県の石屋川トンネルです。延長61mで1871(明治4)年に完成しました。ただし、このトンネルは山を貫いたものではありませんでした。周囲よりも高い場所を流れる「天井川」の下を掘った川底トンネルでした。木製の仮水路を設けて石屋川の水流を脇に導き、土手を取り除いてから川底を掘り下げ、レンガと盛土でトンネルを造りながら、川を復元するという開削工法がとられました。当時の最高の技術と知恵を結集した大変な難工事でした。1874(明治7)年に鉄道が開通しました。

 橋や建物が99%計算にもとづいて設計されるのに対し、トンネル屋の世界ではひところまで「KKD(経験、勘、度胸)」が幅を利かざるを得ませんでした。なぜなら、トンネルを造る第一の材料であるの性質が、鉄や木材とくらべて複雑で、バラツキが大きいからです。地山は均一な土質(性質)ではないのです。トンネルは地中に造られる構造物であり、利用されるのはその空間です。その空間を維持するために、支保構造物(コンクリートなど)を造ります。しかし、この構造物はあくまでも地山を安定させるための補助手段なのです。つまり、トンネル完成後の挙動(トンネルの変形)や安定性は、本質的に地山の特性に支配されるわけです。

 本書は、首都大学東京オープンユニバーシティ講座「とんねる学」や東京都立小金井北高校模擬授業「暮らしを支える社会基盤と“トンネル”の役割」などでお話しした内容がベースとなっています。さらに、トンネルにまつわる文化や歴史の話題も大幅に加えました。

 本書を執筆するにあたり、資料の調査をしていただいた首都大学東京図書館の松下麗さん、東京都東久留米市中央図書館の上田直人さんに感謝いたします。また、筆者二人は東京都立大学(現首都大学東京)の今田徹研究室でトンネル工学を学びました。今田先生の学恩に感謝いたします。最後に日刊工業新聞社の書籍編集部の鈴木徹さんと平川透さんには大変お世話になりました。ここに謝意を表します。

土門 剛、三浦基弘

買い物かごへ