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なぜ、日本でFinTechが普及しないのか
欧米・中国・新興国の金融サービスから読み解く日本の進む道

定価(税込)  1,944円

著者
サイズ A5判
ページ数 200頁
ISBNコード 978-4-526-07808-8
コード C3034
発行月 2018年02月
ジャンル ビジネス

内容

ICTを活用した高度な金融サービス「フィンテック」は、世界の金融の仕組みを確実に変化させている。ただ、日本ではフィンテックというキーワードの認知度は高まったが、実際のサービス利用には結びついていないのが現状。アメリカや中国など、今、世界の国々で積極的に利用されているフィンテックの動向を解説し、日本にとってより良い、新しい金融サービスを考える。

大平公一郎  著者プロフィール

(おおひら こういちろう)
国際社会経済研究所 情報社会研究部 主任研究員
米国公認会計士(Certified)、日本証券アナリスト協会検定会員

関西学院大学法学部卒業。証券会社での証券アナリスト業務を経て、2004年にNEC総研(現在は国際社会経済研究所)に入社。ICT市場動向調査、ICT企業の事業戦略調査などを担当し、近年は海外のフィンテック最新動向を主なテーマに調査研究活動を行っている。
著書に、「アジアの消費 明日の市場を探る」(共著、ジェトロ)

目次

はじめに
謝 辞

第一章 欧米から新興国へ広がりを見せるフィンテックワールド
1.1 フィンテック成長を支えるICTの発展とデジタルネイティブ
1.2 金融危機がフィンテック普及のトリガーとなった米国と欧州
1.3 新興国の金融サービス不足を埋めるモバイル・フィンテック
1.4 都市間競争:フィンテックを都市成長の原動力へ
1.5 スタートアップ企業への投資は米中の2強が続く

第二章 キャッシュレス化が進む決済 カードからモバイル、その先へ
2.1 キャッシュレス化のメリット・デメリット
2.2 米国:小切手からカード、そしてモバイルへ
2.3 シェアリングエコノミーと決済
2.4 音声へ移るイーコマース市場と決済
2.5 中国:イーコマースの普及と第三者決済サービス
2.6 欧州:カードファーストな北欧諸国
2.7 日本:キャッシュレス社会の構築を目指して

第三章 クラウド時代の資金調達:
オンラインレンディングとクラウドファンディング
3.1 米国:オンラインレンディングはスピードと利率が勝負の決め手
3.2 中国:2,000社近いP2Pレンディング事業者が覇を競う
3.3 欧州:英国では中小企業を支える重要な資金源へ
3.4 日本:認知度の低さが大きな課題

第四章 地域のニーズを取り入れたフィンテックサービスの発展
4.1 米国:人工知能時代の資産運用/ロボアドバイザー
4.2 中国:インターネットMMFの拡大が投資のすそ野を広げる
4.3 米国・欧州:国境を越えた人材流動化を支える格安海外送金サービス
4.4 欧州:英国で進む銀行のデジタル革命
4.5 インド:立ち上がる巨象 デジタル・インディアとフィンテック

第五章 誰がフィンテックサービスを担うのか
5.1 米国:スタートアップ企業が業界をリードする
5.2 中国:アリババとテンセントが支配する世界
5.3 欧州:スタートアップ企業を支える環境が充実
5.4 欧州:フィンテック企業を世に知らしめるFinTech50の取り組み
5.5 日本:SBIや楽天などインターネットに強い企業の取り組みが加速

第六章 フィンテックと政府推進か規制か
6.1 米国:積極的な促進はせず、競争環境の維持をねらう
6.2 中国:放任から管理へ移行
6.3 欧州:積極的にスタートアップ企業を支える英国政府
6.4 欧州:EUの改正決済サービス指令(PSD2)によるオープンバンキングへの道
6.5 日本:積極的にフィンテックを推進する政府

最後に -今後、我が国がとるべき方策-
文中に記述した以外の参考文献

はじめに

はじめに

「フィンテック(FinTech)とは、バズワードではないのか」
 2015年頃から新聞等で盛んに登場し始めたフィンテックについて、そのように感じた人も多かったはずだ。そして、今なおそう感じている人もいるだろう。しかし、世界の状況を見ると、ひと時の熱狂は収まったものの、フィンテックは確実に金融の仕組みを変化させている。
 また、フィンテックは金融業界に限った動きではない。金融はもともと経済の血液と言われてきたが、IoT(Internet of Things)やAI(人工知能)などの新しいICT、SNS (Social Network Services) などの新しいコミュニケーションツールによって社会全体がデジタル化される中で、その血液たる金融もまたデジタル化が求められている、ということであろう。
 日本ではフィンテックの普及が遅れていると言われる。調査の中で世界各国の人々と議論をすると、日本はICT先進国にも関わらず、なぜフィンテックがそれほど普及していないのか、という疑問を投げかけられることがある。そのもっとも大きな要因は、日本の人々が今の金融システムの在り方に満足している、という点にあるだろう。ただ、それは日本の金融システムが完成形であるからということではなく、新しいフィンテックのサービスや、それらが積極的に使われている社会をよく知らないということに起因しているかもしれない。本書では、世界の国々で利用されるフィンテックの動向を伝えることで、新しい金融サービスのあり方を読者の方々と共に考えるきっかけになれば、と考えている。
 私の属する国際社会経済研究所は、NECのシンクタンクであり、日々の調査活動の目的は、ICTがいかに人々の生活をより良いものにできるかを探るところにある。それと同時に、日本のICT企業が、世界の中でどのようなビジネス機会を見いだせるか、という点も重要視している。
 既に世界中で多くのスタートアップ企業や金融機関、インターネット企業などがフィンテックの分野で活躍しているが、日本の企業が世界に大きく羽ばたいている、という状況にはまだないだろう。海外の様々な企業によるフィンテックへの取り組みを可能な限り紹介しており、日本企業による今後のグローバル展開への参考となれば幸いである。
 本書の構成だが、決済や融資などフィンテックの主要分野、参入企業のあり方、政策・規制動向といった形で章に分け、その中で米国、中国、欧州、日本という地域ごとに記述することで、それぞれの特徴を比較できるように心がけている。
 第一章では、フィンテックの成り立ちについて、技術的な変化や人口動態の影響、さらに先進国と新興国でそれぞれ異なる背景をまとめている。また、激しさをます都市間競争やスタートアップ企業への投資、といった視点で、様々な国や都市の位置づけを確認している。第二章では、具体的なフィンテックのサービスとして、決済を取り上げた。日本でも最近注目が集まるキャッシュレス化に焦点をあて、各地のカード決済やモバイル決済の現状、シェアリングエコノミーと決済の関係、音声と決済といった点について解説している。第三章では、オンラインレンディング、クラウドファンディングといったインターネットを活用した資金調達手段についてまとめている。第四章では、米国のロボアドバイザー、中国のインターネットMMF、米国・欧州の海外送金など、地域ごとに発展の違いがみられるフィンテックサービスを取り上げている。また、足元で動きを見せているインドのフィンテック事情については、各章に分けることはせず、第四章にまとめて記載した。
 第五章では、スタートアップ企業、金融機関、インターネット企業などフィンテックサービスを提供する組織、さらにインキュベータなどフィンテックのスタートアップ企業を支える存在について、地域ごとに特徴を見た。第六章では、政府・監督機関の動きについて、フィンテックを推進する政策や、消費者保護などの観点から設けられる規制の導入など、地域ごとに異なるスタンスを意識しながらまとめている。
 そして最後に、世界のフィンテック事情を見た上で、日本が今後どのように動いていくべきかについて、筆者なりの考えを述べている。
 本書が読者の方々にとって、世界のフィンテックの流れを把握する一助となり、また日本のフィンテック発展に貢献できれば幸甚である。
2018年2月
大平 公一郎

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