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事例でわかる めっき処理の不具合と対策

定価(税込)  2,160円

著者
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-07801-9
コード C3057
発行月 2018年02月
ジャンル 金属

内容

めっきは、下地となる金属部品も、めっきされる金属も多種多様であるため、目的に応じた処理を施さないと品質不良のような不具合を招く。本書では、不具合事例を工程別・めっき膜別に、図や写真を添えて「現象」「原因」「対策」を示し、実務に役立つ解説を行う。

飯川 三無  著者プロフィール

(いいかわ さんむ)
1948年 宮城県仙台市に生まれる
1971年 東北大学工学部金属工学科卒業
1971年 富士通株式会社入社
(株)富士通研究所にて、コンピュータ、および各種周辺機器に使用する各種材料の開発、各種材料技術の開発、分析技術の開発などに従事1996年富士通分析ラボ株式会社の創立に参画し、各種分析を通した電子機器、情報機器、半導体など富士通全製品の品質調査業務に従事
2008年 富士通株式会社を定年退職
2009年 コンサルティングとエデュケイティングを業務としたT-FAN材料技術研究所を設立し、現在にいたる
(社)日本金属学会会員

目次

第1章 電気めっきの基礎
1.1 電気めっきの目的
1.1.1 めっきの定義と分類
1.1.2 めっきの目的
1.2 最低限必要な電気めっきの電気化学
1.2.1 標準電極電位とめっき
1.2.2 電気めっきの定義
1.2.3 分極
1.2.4 ファラディの法則
1.2.5 電気めっきのプロセス
1.2.6 電気めっきの支配要因

第2章 電気めっきの設計要領・選択基準と不具合
2.1 電気めっき部品の設計要領
2.1.1 めっき部品設計時のフローチャート
2.1.2 めっき厚さ
2.1.3 下地材料と各種めっき膜の関係
2.1.4 部品形状と付きまわり
2.2 目的別電気めっきの選択基準
2.2.1 防食を目的とするめっき
2.2.2 機械的性質の付与を目的とするめっき
2.2.3 はんだ付け性・電気的接続性の付与を目的とするめっき
2.2.4 機械部品の装飾を目的としためっき

第3章 各めっき工程での不具合と対策
3.1 前加工工程
3.2 洗浄工程
3.3 前処理工程
3.3.1 脱脂工程
3.3.2 エッチング工程
3.3.3 酸洗と活性化
3.4 めっき工程
3.4.1 めっき作業の治具
3.4.2 めっき浴中の位置
3.5 後処理工程
3.5.1 最終洗浄
3.5.2 乾燥工程
3.5.3 その他の後処理

第4章 各種めっき膜の不具合と対策事例
4.1 銅めっきの不具合と対策事例
4.1.1 銅めっきの概要
4.1.2 銅めっきのくもり、色むら
4.1.3 銅めっき膜への鉛の混入
4.1.4 銅めっきのピット発生
4.1.5 プリント板のスルーホールめっき
4.1.6 半導体の配線への銅めっき応用
4.2 ニッケルめっき膜の不具合と対策事例
4.2.1 ニッケルめっきの概要
4.2.2 ハーメチックシールの剥離
4.2.3 はんだ付け不良
4.2.4 鉄材への直接ニッケルめっきによる錆
4.2.5 ハロゲンの存在
4.2.6 光沢剤の影響
4.2.7 後加工した部品でのニッケルめっき膜の剥がれ
4.2.8 ダイカスト部品へのめっき
4.2.9 装飾部品
4.3 すずめっき
4.3.1 すずめっきの概要
4.3.2 接点部品の厚さ不良
4.3.3 すずめっきのウィスカ
4.3.4 光沢レベルの取り決め
4.3.5 微摺動摩耗
4.3.6 すずめっき膜からの鉛の検出
4.4 亜鉛めっき
4.4.1 亜鉛めっきの概要
4.4.2 亜鉛めっきへのクロメート処理
4.4.3 ねじへの応用
4.4.4 亜鉛めっきのウィスカ
4.5 金めっき
4.5.1 金めっきの概要
4.5.2 金めっきによるともがね現象
4.5.3 接点への応用
4.5.4 はんだ付けと金めっき
4.5.5 めっき浴の新旧
4.6 クロムめっき
4.6.1 クロムめっきの概要
4.6.2 クロムめっき膜の6価クロム
4.6.3 クロムめっきのしみ
4.6.4 クロムめっきの人体アレルギ
4.7 銀めっき
4.7.1 銀めっきの概要
4.7.2 大気との反応性
4.7.3 水道水との反応性
4.7.4 銀めっき時の陽極

索 引

例1 プレス加工の不具合によるニッケルめっき後の錆発生
例2 切削加工不良による引目
例3 脱脂液からの引き上げ時の不具合
例4 電解エッチング時の珪酸の付着による無めっき
例5 前処理不良による無めっき
例6 前処理不良による剥離
例7 治具接触不良による表面の異常
例8 めっき液中鉄分の影響による表面のざらつき
例9 後処理不良によるニッケルめっきの腐食発生
例10 後処理不良によるすずめっき品の表面黒化
例11 アルカリシアン銅めっき後の表面のくもり、色むらの発生
例12 銅めっき膜中への鉛の混入
例13 銅めっき膜表面のピット発生
例14 銅めっき膜表面のピット発生
例15 プリント板のヴィアめっき
例16 半導体の配線ヴィア内部の穴(ヴォイド)
例17 ハーメチックシールの剥離
例18 純銅製の接点でのはんだ付け不良
例19 ニッケルめっき品の錆
例20 ニッケルめっき膜の腐食
例21 光沢剤に含まれる硫黄による腐食穴形成
例22 光沢ニッケルめっきの後加工による剥がれ
例23 亜鉛ダイカストめっき品のふくれ
例24 亜鉛ダイカスト品の錆発生
例25 ニッケルめっき品のネックレスによる皮膚のかぶれ
例26 バレルめっきでの膜厚のばらつき
例27 すずめっき膜からのウィスカによるショート障害
例28 半導体端子部からのウィスカ
例29 黄銅にすずめっきした際の亜鉛の拡散によるウィスカの発生
例30 光沢すずめっきのはんだ付け時の外観不良
例31 すずめっき接点の微摺動摩耗による導通不良
例32 すずめっき接点の微摺動の繰返し回数による抵抗値の変化
例33 すずめっき膜からの鉛の検出
例34 3価クロメート膜の6価への移行
例35 各種のクロメート処理膜中の6価クロムの検出
例36 亜鉛めっきしたねじに錆が発生
例37 亜鉛めっき部材のショート障害
例38 亜鉛めっきのウィスカによるショート障害
例39 接点の挿抜不良
例40 銅端子の錆
例41 プリント板のはんだ付け不良
例42 はんだバンプの剥離
例43 金めっきが赤い色調となり外観不良となった
例44 クロムめっき膜からの6価クロム検出
例45 クロムめっきのしみ発生
例46 クロムめっき品のネックレスによる皮膚のかぶれ
例47 温泉地で電子機器が接続不良
例48 銀めっき部品で乾燥工程後に黒色化
例49 銀めっき膜からカドミウムを検出

はじめに

はじめに

 電気化学を基礎として、水溶液中の金属イオンを陰極に析出させることを電着といい、これを利用して、耐食性の付与、耐摩耗性の付与、電気伝導性・はんだ付け性の付与、装飾などを目的に部品などの表面に多種の金属被膜を形成する操作を「電気めっき」という。
 めっき技術そのものは、古代メソポタミア文明にすでにあったといわれており、奈良・東大寺の大仏はこの文明の継承者であるペルシャ人(現代のイラン人)の指導のもとに作られたといわれている。
 このように、めっき技術自体は長い歴史があるが、実際に現代の「電気めっき」と同じ原理・方法でめっきが行われたのは、1840年にイギリス・エルキントン氏による金、銀、銅めっきに関する特許である。また、1850年頃には、日本の当時の薩摩国(鹿児島県)に伝わり、島津家では、鎧などに金の「電気めっき」を応用していた。すなわち、特許から約10年の間に、またたくまに全世界に普及した画期的技術であった。さらに、現代でも、時代の新しい要求に応えるべく、日々進化している技術であることは自明である。
 本書では、この「電気めっき」について、その初歩の技術を解説する。
 最近までは、「めっき処理メーカ」と「めっき処理を必要として発注する設計者などの部品メーカ」の関係は発注者と受注者のみの関係であり、例えば、不具合の発生に対しても、協調関係はあまりみられなかった。
 ところが、近年、めっき膜に求められるさまざまな要求が従来の装飾・防食だけではなくなってきていることで、めっき膜自体の品質管理が重要になってきた。すなわち、めっき膜の不具合が部品そのものの不具合となる事例が多くなり、「めっき処理を発注したメーカ」の責任が問われるようになってきた。さらに、2006年のRoHS規制、2008年のREACHなどの欧州による化学物質規制によって、めっきした部品に規制値を越える規制物質が含まれていた場合は、「めっき処理したメーカ」ではなく、「めっき処理を発注したメーカ」が責任を問われることになった。
 これらのことによって、「めっき処理を発注したメーカ」でも、「めっき処理したメーカ」との協調関係を築き、めっき技術を上手に使いこなすことが必要になってきた。すなわち、部品の設計者や品質管理者が「めっきとその周辺」を広く知っておく必要が生じてきた。
 本書では、「めっきした部品を発注・販売するメーカ」の部品の設計や品質管理に携わる技術者が「めっき」とは何かという基礎を学び、「めっき」による不具合発生はどのようにしたら防止できるのかなどの「めっき」技術についての初歩を豊富な不具合事例を元にまとめた。
 本書を参考にすることで、これまでは「めっき」の門外漢だった方々に「めっき」関係者になるための技術を提供できるものと確信する。さらに、すでに「めっき」に直接関わっている「めっき」関係者の方々にもご参考となる不具合対策の考え方を提供できるものと期待する。
 なお、本書のごとく、不具合事例を多くまとめた「めっき」関係の書籍はほとんど見られない。この意味から、現場で手早く調べたり、教育用などにも適していると考えている。
 ただし、筆者も「めっき処理を発注するメーカ」の一員であったため、「めっき」には素人である。そんな筆者が部品の不具合原因調査分析や、良品分析などの品質調査の仕事を通じて、「めっき」と出会い、諸先輩から学び、かつ、独自に事例を集めた結果が本著である。このため、「めっき」の専門家からみれば、幼くかつ間違いも多くあるのではないかと思っている。是非、ご意見をいただきたい。
 本書の内容は、電気めっきの初歩の基礎、電気めっきの選択基準、めっき工程の一般的事例、さらに各種めっきの不具合事例から構成している。
 上記内容は日刊工業新聞社刊の榎本利夫、佐藤敏彦両先生の著である「実用めっき教本」から、友人でもある両先生の同意のもとに、多くの図表を引用した。これは、上記の「実用めっき教本」の著に筆者も深く関わったことによる。
 また、一般的には、外部に公表されないような、不具合事例を提供していただいた、エムデン無線工業株式会社様、富士セイラ株式会社様、岩機ダイカスト工業株式会社様、その他ご協力頂いた諸氏に改めて、厚い感謝の意を表する。これらのご協力がなければ、本書は成立しなかった。
 最後に、本書刊行に理解を示していただいた日刊工業新聞社・出版局担当の国分様はじめ、スタッフの方々に厚く感謝申し上げる。
平成30年1月
飯川 三無 

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