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よくわかる機械の制振設計
防振メカニズムとフィードフォワード制御による対策法

定価(税込)  2,592円

著者
ページ数 192頁
ISBNコード 978-4-526-07799-9
コード C3053
発行月 2018年02月
ジャンル 機械

内容

本書では正しい振動理論に立脚してそれらの間違いを指摘し、振動の正体を解きほぐしていく。さらに、フィードフォワードによる振動制御の手法を伝授。センサを使用しないのでコストパフォーマンスの良い振動抑制が可能となる。「位置決めが決まらない」や「設計が終わっていて、これ以上修正できない…」。そのような現場で一度は試す価値のある方法である。

三好孝典  著者プロフィール

(みよし たかのり)
経歴:1963年兵庫県生まれ.1989年,大阪大学工学部 電気工学科卒.ローランド・ディー・ジー(株)に入社.在職中の2000年に豊橋技術科学大学 電子・情報工学専攻 博士後期課程修了.
2002年より豊橋技術科学大学生産システム工学系講師として赴任する.2005年,ミュンヘン工科大学客員研究員(1年間),2007年に同系准教授.2017年ベンチャー企業(株)IMI設立,取締役兼任.
専門:制御工学/ロボット工学,IEEE,日本ロボット学会,日本機械学会,計測自動制御学会会員.振動制御やパワーアシストシステムおよびIoT遠隔制御の研究に携わる.

目次

第1章 振動のメカニズムを知ろう
1-1 振動の何が悪いのか
1-2 振動と振動制御の分類
1-3 振動発生のメカニズムに基づく共振周波数の導出
(1)教科書で一般に使用される方法
(2)エネルギー変換の関係を用いる方法
Column① 虚数iは実在するか(1)
1-4 対象とする機械系と周波数伝達関数
1-5 ボード線図と陥りやすい錯覚
Column② 虚数iは実在するか(2)
1-6 フーリエ変換の意味
1-7 振動抑制の原理
Column③ テスターの電気屋,ノギスの機械屋

第2章 振動制御の常識・非常識
2-1 S字カーブは本当に振動を抑制するか?
2-2 バネは本当に振動を励起するか?
2-3 ラグランジュの運動方程式の簡単化した解説
2-4 剛性を上げることは振動抑制につながる?
2-5 ピシッと位置決めをするサーボが良いサーボではない
Column④ 複素数のイメージの難しさ

第3章 プリシェイピング法による振動抑制
3-1 プリシェイピング法の原理―共振を抑える制御法
3-2 プリシェイピング法の定式化
(1)インパルス応答の導出法
(2)減衰振動に対するプリシェイピング法
3-3 プリシェイピング法による防振の効果
3-4 反共振の特性はなぜ生まれる?
3-5 ノッチフィルタとの比較
3-6 共振周波数が2つ以上あるときの対応
3-7 プリシェイピング法のケーススタディ
3-8 プリシェイピング法の欠点は
Column⑤ 表社会sin~tと裏社会ej~t

第4章 デジタルシステムにおけるフィードフォワード制御
4-1 非線形最適化手法
4-2 時間多項式によるフィードフォワード制御
4-3 時間多項式による2次元搬送
4-4 状態表現によるモデル化
4-5 モデルの離散化
4-6 境界条件・制約条件の導出
4-7 最適性の定式化
4-8 Excelによる防振プロファイルの導出
4-9 Scilabによる防振プロファイルの導出
(1)プログラム詳解
(2)制約付防振プロファイルの例
(3)加速度の制約・不等式制約
プログラム1 Scilabによる2次計画法
4-10 MATLABによる防振プロファイルの導出
プログラム2 MATLABによる2次計画法

第5章 実プラントへの適用事例
5-1 スタッカークレーンへの適用例(取材協力:村田機械L&A事業部)
(1)本当にうまく制御できるのか
(2)スタッカクレーンへの応用
5-2 マテリアルハンドリング装置への適用例(取材協力:近藤製作所)

はじめに

はじめに

 本書は,振動対策に困っている技術者,悩んでいる設計者に読んでもらいたい本である.
 企業の開発・設計現場では,振動現象を思い込みや伝聞,これまでの慣習によって誤解している例が少なくない.そのために的外れの対策になっていることも多々ある.本書では正しい振動理論に立脚して,それらの間違いを指摘し,振動の正体を解きほぐしていく.さらに,フィードフォワードによる振動制御の手法を伝授する.
 フィードフォワード制御はセンサを使用しないので,コストパフォーマンスの良い振動抑制が可能である.また,機構や回路の設計変更を伴わないので,喫緊の課題にも対応可能である.「位置決めがピタッと決まらない」「振動が収まるのを待つのでタクトタイムが短くできない」「もう機械も電気も設計が終わっていて,これ以上修正できない…」,「もう出荷だ.明日までにこの振動を止めてくれ!」.そのような現場で一度は試す価値のある方法である.明日までにというと大げさに聞こえるが,本書で紹介しているプリシェイピング法は,本当にたった1日で振動抑制にチャレンジできる.
 「制御」というと多くの書籍が発刊されているが,そのほぼ全てがフィードバック制御理論に関するものである.原稿執筆時点でamazonにて検索すると,「フィードバック制御」が161件に対して「フィードフォワード制御」はたったの2件である.その2件も1件は本書で,もう1件は制御工学全般を網羅的に紹介した一般書である.フィードフォワードを詳しく解説した技術書としては,本書は日本で初めての書籍かもしれない.
 大学の授業でも「制御」といえばフィードバック制御に関する授業である.その有効性に疑念をはさむ余地は全くないものの,部品点数が増えて高コスト化する,パラメータチューニングを間違えると振動・暴走してしまう,手間ひまがかかり開発時間が増大する,などの問題が生じがちである.1日でフィードバック制御を導入するなど,絶対に不可能である.
 フィードバックとフィードフォワードは「治療」と「予防」の関係である.生じてしまった振動を止めるのがフィードバック.振動が起きないように予防するのがフィードフォワード.どちらが重要であるというわけではなく,どちらも重要である.どちらかだけでは片手落ちと言えよう.インフルエンザの通院には時間もお金もかかるが,手洗い・うがいなら,ほんの30秒で済む.病気で苦しむ前に,病気にならないように予防する.これが本書の“フィードフォワード制御による対策法”である.
 本書には,会社員時代の13年間に蓄積された,振動対策のノウハウが余さず詰め込まれている.筆者が大学に移ってから,恩師寺嶋一彦教授にご教授頂いた理論的思考のエッセンスも濃縮されている.その恩師も3月に退職を迎えられることとなり,これまでのひとかたならぬご指導とご恩に感謝の言葉も見つからない.また,企業様との共同研究では,村田機械株式会社の東俊光様,株式会社近藤製作所の深谷賢司様,さらに,ともに防振フィードフォワードに取り組んだ新潟大学の今村孝准教授,山梨大学の野田善之准教授に,深く感謝の気持ちを捧げたい.
 最後に,本書を執筆するに当たり,筆が進まず遅れに遅れた原稿を超特急でチェックし,出版までこぎつけて下さった日刊工業新聞社書籍編集部の天野様をはじめ,関係の皆様に深く御礼を申し上げる次第である.
2018年2月
著者

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