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<解析塾秘伝>実測との比較で学ぶ!CAEの正しい使い方
機械工学の実験で検証するCAEの設計・評価テクニック

定価(税込)  2,592円

著者
編集
監修
サイズ A5判
ページ数 176頁
ISBNコード 978-4-526-07798-2
コード C3053
発行月 2018年02月
ジャンル 機械

内容

人気シリーズ「解析塾秘伝」第7弾!今回のテーマでは「実験とCAE」をテーマに、「CAE解析結果と実測との比較・検証」の方法を伝授する。設計・生産現場の技術者から寄せられた疑問に対し、簡単な原理モデル(実物)を用いて、「正しい、実測・CAEの設定方法と結果の評価方法」について学べる入門書。

吉田 豊  著者プロフィール

(よしだ ゆたか)
1950年7月生まれ。滋賀県出身。
 1974年4月蓄電池メーカーに入社。鉛蓄電池の設計部門と研究部門を行ったり来たりしている間にパソコンが普及、業務の中に自作プログラムを取り入れる。「あいつ、パソコン得意や」ということで、有限要素法ソフト及び2次元CADの導入を任される。その後全部門からの依頼を受けるよう、CAEグループを新設。受託する際のフェイスtoフェイスの聞き取りを重要視する。当初4名だったグループも現在では十数名になっている。「構造」「振動」「流体」「熱」「衝撃」「鋳造」等、社内で起きる諸現象に対応すべく、相当数のCAEソフトを導入した。「3D-CAD」「統計解析」の導入・教育にも携わってきた。
 2015年7月蓄電池メーカー退社。
 2015年8月オフィスYYL起業、現在に至る。
 蓄電池メーカー在職中から、まだNPO法人になる前のCAE懇話会に発足当時から関わり、いつのまにか幹事の末席に。ぽろっと提案した「実験とCAE」が半ばライフワークとなっている。

岡田 浩  著者プロフィール

(おかだ ひろし)
1965年生まれ 福岡県出身。技術士(機械部門)。
 1991年に電機メーカーに入社。金属・樹脂材料の加工の影響を考慮した強度・疲労寿命予測、電子機器の放熱対策などに取り組むとともに、構造・熱・樹脂流動CAEの社内外の教育・推進に従事した。現在は、「金属・樹脂製品の加工法の研究・開発」「CAEを用いた設計・生産工程革新活動」に従事している。
 社外では、NPO法人CAE懇話会の関西支部幹事などでCAE推進活動にも携わっている。
 著書に『設計検討って、どないすんねん!』、『塾長秘伝 有限要素法の学び方!』(共著:日刊工業新聞社刊)、『解析塾秘伝 CAEを使いこなすために必要な基礎工学!』(著:日刊工業新聞社刊)がある。

目次

第1部 本書で取り扱う機械工学実験―CAEの概要と目的

第2部 実測とCAEの比較・検証
第1章 梁のたわみと応力を見る(材料力学編)
第2章 熱の移動を見る(熱伝導編)
第3章 空気の流れ(自然対流)を見る(流体力学編)
第4章 空気の流れ(強制対流)を見る(流体力学編)
第5章 水の流れ(強制対流)を見る(流体力学編)
第6章 手ぶりによる共振(振動編)
第7章 鉄橋模型の大変形(材料力学編)
第8章 手回しによる共振モードの変遷(振動編)
第9章 鉄橋模型の打振試験(振動編)
第10章 これまでの総括と、実測・CAEのワンポイントアドバイス

はじめに

はじめに

 ものづくりに携わる技術者にとって何が一番大事かと常々考えていました。最後の計算尺世代である私は先輩達からは「設計なんてKKDや」と耳にタコができるほど言われたものです。「勘(K)と経験(K)と度胸(D)」というのですが、誰が言い出したのでしょうね。でもこれ、結構、「金的を射ている」言葉だと思っています。CAEに首まで漬かって四半世紀、自分で計算するより指導や講習の機会が増え、私自身がこの「KKD」を使っています。ただ私の場合は「論理に裏付けられた経験・勘と決断」と言い換えています。
 私がCAEに取り組み始めた頃は、自分で図面を引き、計算モデルを作り、手動でメッシュを作成し(対象モデルを計算領域毎に積み木を積み上げるように四角や三角などに区切り)、CAEソフトで計算を行い、製造に立ち会い、実験計画も作成し、現場監督の真似ごとまでしていました。CAEはどちらかといえば傾向を見るだけの、いわば片手間仕事でした。当初はビームモデル(筐体の枠などの計算の際に、立体モデルを作らず、断面積・断面2次モーメントをデータに持つ線分で作ったモデル)を、ハードウェアのスペックが向上し3DCADが使える近頃になるまでよく使用したものでした。それでも結果が予測できて十分業務に役立ったのは、実機を使った実験に何度も立ち会い、時にはCAEの結果を確認するために実験途中で改造し、同じ実験をさせてもらえたからだと思っています。「もの」を知っていて初めてCAEができる。この持論はそのころから私に根付いて、今でも私の中ではこれは「真理」だと確信しています。
 CAEという言葉を改めて私なりに定義しておきます。Cは言わずと知れた「コンピュータ」です。Aは「うまく使いこなす」。Eは「ものづくり」です。すなわち「コンピュータをうまく使いこなしたものづくり」。これが私の中のCAEです。
 NPO法人CAE懇話会発足当時(2000年)から関係者の待つ席に居り、解析塾の講義を片っ端から受講しました。有限要素法という名称は学生時代から知ってはいましたが、本格的に勉強しようとしたのはこのころからでした。解析塾の終了証明書は十数枚を数えまいSたが、果たして頭に入ったのかどうか。と言うよりも、解析塾で理論を習ううちに、私の中では「理論で実際問題は解けない」と結論づけてしまったようです。理論は知らないより知っていた方が良いに決まっています。しかし、実務担当者は理論展開よりCAEソフトの使い方とその評価能力に長けていることの方が重要であると現在も考えています。
 2003年のある日の幹事会。新しい企画の提案を求められました。CAE懇話会に初回から参加してきた私は、講義聴講型では「へえ、すごいな」で終わってしまうのがいささかもったいないように感じていました。どんな成功例を聞いても、すごい概念を示されても、今、直面している問題に適応できるものではありませんでした。正直なところ、睡魔と闘って負けるのが関の山でした。そこで全員参加型の「実験とCAEの体験」の実施をそっと提案してみました。開催するにあたって、こだわり、強調したのは「全員参加」というところです。同じ実験を参加者一人ひとりに自ら行ってもらう。それをその場でCAEソフトを使って解く。それも自分で条件を考えて計算してもらう。最初のイメージはそんなものでした。でも「面白いんとちゃうか」ということになり、CAE懇話会では言い出しっぺが主管することになっておりましたので、以来、私が主担当で、関西で「実験とCAE」を開催してきました。
 最初から現在のような形式にしようと思ったわけではありません。最初は企画だけ私が行い、実行は「誰かに丸投げ」というズルを狙っていましたが、行っていくうちに、自分のしたいことを他人に伝えるのは難しいと痛感しました。企業内での実験は極秘扱いが多く、外部には出せません。大学の先生方の実験は理論検証を目的としたものが多く、また、CAEソフトのベンダーさまでは実験自体を依頼できるものではありませんでした。その場で自ら簡単な実験をし、何度も見、何かを測定し、その場で解析し、自分の実験との乖離を実感してもらえば、参加者のCAEのレベルと結果の評価能力の向上に貢献できるのではないか。
 何よりも私のレベルアップがしたい。ついでに、失礼ですが、関西の解析技術者のレベルアップにつなげたい。その思いから次のような形式になりました。
  ①私がしたい実験の材料道具を準備する。
  ②参加者自身に実験準備から参加してもらう。
  ③実験は必ず映像を残す。
  ④測定する。(ひずみ・温度など)
  ⑤自分の実験を自分でCAEソフトを用いて解き、比較、評価してもらう。
   (同じ道具での実験なので互いに議論できたらもっとよい。)
  ⑥時には理論的な話しを聞く。
 そのためにはビデオカメラとCAEソフトが不可欠でしたが、幸いにも、下記に示すような計測器メーカーやCAEソフトベンダーさまから協力を得ることができました。
   (撮影と計測)株式会社フォトロン
   (解析)ソリッドワークス・ジャパン株式会社
 映像とひずみゲージの出力が同時に取りこめることがわかってからフォトロンさんには撮影と計測を、ソリッドワークス・ジャパンさんには設計者CAEで使用するソフトのインストールされたノートパソコンをCAEの操作を補助するインストラクターさま付きでお願いしました。
 その他の会社さまにも私の思いつく実験によっては測定装置やCAEソフトをお貸し頂きました。ここでお礼申し上げます。
 実験の基本は「見る」ことです。写真ではダメで、必ず動きの中で見る、見る、何度も何度も、ゆっくり再生したり、高速で再生したり。そうすると現象全体が計測点も含めて頭に入ってきます。
 実験は常に3次元です。でもCAEはどうでしょう。CAEでもっとも重要な最初の手順はCAE用のモデル作りです。実験のどこに注目するかでモデルは変わるものです。実験しながら、3次元モデルが必要か、2次元、1次元でできないか、拘束条件、荷重条件、対称条件が使えないか、等を考えることがレベルアップに直結します。逆もあります。
 CAEを先に行って、どうしても実験したい時は、「この拘束はどんな設定が適切か」、「どうやって荷重をかけるか」など、過去の実験が心強い味方になってくれます。
 実験が必ずしもうまくいくとはかぎりません。ただCAEと違って、実験は常に事実です。事実は真摯に受け止めなくてはいけません。そのためのビデオ撮影です。なぜ期待通りの実験ができなかったかがわかれば、その実験は成功です。
 測定に関してはどうでしょうか。構造の実験、振動の実験で私がいつも使用するのはひずみゲージです。ひずみゲージを貼ったことのない技術者がずいぶんおられることは知っていました。なので参加者には必ず一人一枚自分でひずみゲージを貼ってもらうことにしています。この信号をデータロガーで受信するわけですが、残念ながら個人差があります。取れた数値が、主ひずみなのか、相当ひずみなのかの議論の前に、うまく信号が取れないことが多いのです。もしかしたら、ひずみゲージを固定するための接着剤を多く塗りすぎ、接着剤の特性を測定しているかもしれません。ただ、このようなことを自ら経験し、感覚を養い、数値の意味をよく考えてほしいと思っています。演習なので仕方がないのですが、実際の測定では名人級の人に依頼するのがよいでしょう。
 CAEに関してはどうでしょうか。測定は、ひずみゲージを貼った箇所の数値しか取れませんが、CAEでは全体の応力、ひずみなどが見えます。これが最も有用な点です。応力分布にしろ、ひずみ分布にしろ、常に全体が表示されますから、拘束条件や荷重条件の間違いに気づきます。何かおかしいな、と思う能力が不可欠です。また、この「何かおかしい」原因に、条件設定の間違い以外にも、CAEソフト自身のバグであったり、OS(私たちの場合はwindows)のメモリ管理の不具合だったりしますので、CAEの利用環境の整備にも注意が必要です。
 いろいろな実験を体験しておくと、他人の実験が追体験できます。依頼されたCAEでも背景や問題点が依頼者以上にわかると非常に有益なCAE結果を得ることができます。CAEの結果はこうだが、実際の現象は、実験での誤設定だろうという指摘までできるようになります。経験に裏付けられた勘と推断というわけです。
 実験結果とCAE結果の値を合わせることを強要する依頼者もいますが、それに固執するのは無意味だと私は思っています。私の講習の最初に「実験通りCAEできるか? CAE通り実験できるか?」なんてスローガンを揚げている場合もありますが、これはあくまでインパクトのためであって、違って当たり前なのです。ぴったり合ったなんていうのは、眉唾ものです。アナログとデジタルの世界が一致する訳がないのです。一致しなくても有効活用できるかどうかは、ひとえにみなさまの「頭(勘)」にかかっています。
 CAEを業務で活用するには、CAE技術者、設計技術者、ものづくりや実測の名人がタッグを組む必要があると私は思っています。それぞれが経験に基づく勘と決断力を持って協力すれば、鬼に金棒です。
 最近、CAEソフトのベンダーさまの中には「実験とCAE」と称して私の道具を参考にした講習会を催されていますが、私の意図が理解されはじめたものと喜んでいます。ただし、CAEソフトの結果図を盲信してはいけないと、ベンダーさま自身が言えるのかどうか、いささか危惧していますが・・・。
 これまで種々な実験をしてきました。最初からCAEをする気のない興味本位だけの実験も多々ありました。なにも計測しない実験は、実に簡単で、どこでも、その辺に転がっているものでできます。スローで見て、「えっ。こんなことになっていたの?!」という発見だけでも充分楽しめました。今回はその中から、私の提案する「実験とCAE」に相応しい題材を選んで紹介することにします。
 分野で分けると、次の4項目になります。
  ・構造
  ・振動
  ・流体
  ・熱伝導
 自然現象は、CAEの設定ほど綺麗に分けられるものではなく、上記にあげた項目の現象が混ざって起こるものですが、なるだけ個別の現象になるような実験を心がけました。CAEは、実験に比較して実に簡単に個別現象としての扱いができますが、誰かが最後に「これでいいんや」と言いきる必要があります。その評価能力、決断力を身につけるのが「実験とCAE」の目的です。
 自分の体で覚えた実現象は、きっとみなさまの「勘」に寄与するものと思います。この本がその基本となれば幸いです。

 2017年7月16日
 梅雨も明け、日差しを強く感じる初夏の書斎にて
吉田 豊 

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