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70事例から学ぶ自動車の振動・騒音対策法

定価(税込)  2,700円

著者
サイズ A5判
ページ数 312頁
ISBNコード 978-4-526-07788-3
コード C3053
発行月 2018年01月
ジャンル 機械

内容

低燃費化などを理由に自動車業界においては、昨今、厳しい軽量化の要求がつきつけられている。しかし軽量化をすれば、一方で剛性の低下による振動や騒音が新たな問題となる。実務に理論を活用するには,従来の教科書には書かかれていない“応用法則”を身につける必要がある。本書ではその具体例を紹介する。

石濱 正男  著者プロフィール

(いしはま まさお)

1947年東京都出身。東京大学工学部航空学科卒。マサチューセッツ工科大学留学。1996年東京工業大学博士(工学)。日産自動車(株)動力機構研究所次長、神奈川工科大学教授、防衛省技術顧問を経て、現在神奈川大学客員教授、中央環境審議会臨時委員、ISIDエンジニアリング社及びシステムプラス社技術顧問。

目次


第1部 自動車の振動騒音設計の基本

第1章 自動車開発プロセスの理解法 

1.1 今日の機械製品と振動騒音技術 

1.2 非常に複雑な機械システムとしての把握方法 

1.3 QFD(品質機能展開)による他性能との関係整理法 

1.4 感性評価に立脚した設計目標設定と設計への折込み法 

1.5 開発期間という時間のマネジメント法 

1.6 OEM,サプライアというネットワークでの開発 

1.7 国際商品という性格の折込み 

1.8 ‌性能計画図による目標設定から設計・試作・実験までの業務推進 9
参考文献 
第2章 主な自動車振動騒音現象のモデル 

2.1 アイドル振動 
2.2 シェイク 

2.3 シミー 

2.4 再加速時振動・運転性 

2.5 こもり音:低速,中速,高速 

2.5.1 低速こもり音 

2.5.2 中速こもり音 
2.5.3 高速こもり音 

2.6 ロードノイズ:ドラミング,低速,中・高速 

2.7 ギアノイズ 

2.8 風音 
第3章 自動車開発に使う振動騒音理論の基本 

3.1 振動騒音対策理論 

3.1.1 制振と防振

3.1.2 モード解析 
3.1.3 インパルス応答とコンボリューション 

3.1.4 アクティブ振動制御 

3.2 現象理解理論 

3.2.1 音源位置の探索法 

3.2.2 信号波形の特徴からの理解

3.3 騒音対策原理 
3.3.1 遮音を測る尺度 

3.3.2 遮音理論 
3.3.3 吸音理論 

3.3.4 放射効率の低下 

3.3.5 回折しにくい音にする 

3.3.6 聴覚のマスキング効果   


第2部 対策方法事例集

第4章 設計時点で思い出すべき振動騒音技術の定石 

4.1 振動騒音問題の12分類法 

4.2 伝達関数を中心に据えて対策を考える 
4.3 発明手法TRIZによる解決案創出の例 

4.3.1 入力の改善 
4.3.2 剛性向上設計 

4.3.3 減衰増加設計 
4.3.4 質量増加設計 

4.3.5 自由度の増加設計 

4.3.6 モード形状調整設計 

4.3.7 音響放射効率低減設計 
4.3.8 アクティブ振動騒音制御 

4.4 振動をフィードバック制御システムと考えての解決案創出 

4.4.1 自由度振動系でのパラメータ操作 

4.4.2 自由度の増加 
4.4.3 ‌ダイナミック・ダンパのチューニング周波数を回転速度に追随させる設計 

4.4.4 モードシェープの操作 

4.4.5 モードシェープミスマッチの利用 

参考文献 

第5章 定石はずれの誤解事例から学ぶ振動騒音技術・全70例 

5.1 設計編 

5.1.1 振動騒音現象全般での例 

(1) 部品の仕様に出力値(振幅など)だけを指定 

(2) 周波数領域でフィルター設計が万事可能という誤解 

(3) 吸音(減衰)または遮音(防振)の片方だけで済むという誤解 

(4) 内力と外力の混同 

5.1.2 騒音現象での例 

(5) 衝突音は固体振動で生ずるという誤解 

(6) 音速を超えて音波が伝播するという誤解 

(7) 粒子速度をベクトルとして認識しないこと 

(8) モノポール音源とダイポール音源の区別 

(9) 放射音場を少数のスピーカーで制御可能という誤解 

(10)気体の熱膨張を考慮しない音響設計 
(11)音源対策を透過損失対策と誤解 

(12)透過損失TLと挿入損失ILの混同 

(13)放射音源の数減少や扁平化による放射音低減への過大な期待 

(14)カバーをしたほうが静かになるという誤解 

(15)液滴の落下音は表面波で生じるという誤解 

5.1.3 振動現象での例 

(16)変位フィードバックで振動制御ができるという誤解 

(17)マウントの減衰がつねに役立つという誤解 

(18)自在継手は回転トルクのみ伝えるという誤解 

(19)摩擦を与えれば制振ができるという誤解 

(20)張力変動による振動数が弦振動と同一であるという誤解 
(21)弦振動モードはサイン波形であるという誤解 

(22)4気筒エンジンでは偶数次成分だけが支配するという誤解 

(23)‌運動エネルギー分布とポテンシャルエネルギー分布の片方だけの情報による構造改善 

(24)転がり軸受けをすべり軸受けよりも剛性大とする誤解 

(25)クランク軸受け荷重が回転速度とともに単調増加するという誤解 
(26)極低周波でのショックアブソーバーへの過度な期待 

(27)“車輪は軽いほど乗り心地が良い”という誤解 

(28)カバーに入る加振力の誤算 

(29)回転体は軸心のまわりで回転するという誤解 

(30)弾性軸の動バランスは2点でとれるという誤解 

(31)排気管はエンジンだけから加振されるという誤解 

(32)振動感覚にはマスキングがないという誤解 

(33)モード質量と等価質量の混同 

(34)動吸振器を衝撃対策に誤用 
(35)軸からの曲げモーメント入力を減らす考慮をしない構造設計 

(36)非対称軸のねじりによる軸心横振動の無視 

(37)支持剛性向上で板や梁の固有振動数が高くなるという誤解 

(38)固有振動数向上は軽量化と剛性向上のみという誤解 

5.1.4 振動と騒音の連成現象の例 
(39)合致(coincidence)効果の型どおりの適用 

5.2 実験解析編 

5.2.1 振動騒音現象全般での例

(40)短時間記録から細かいスペクトル分析を試みる無駄 

(41)‌連続ウェイブレット変換から時系列波形に戻そうとする無駄な試み 

(42)相関性を軽視した伝達経路解析 

(43)フィルター幅に入る複数の成分の分離不足 

(44)スペクトルのサイドローブの軽視 

(45)窓関数による漏れを考慮しない分析 

(46)観測点の波形が加振源波形に相似であるという誤解 

(47)加振をすれば対象物にエネルギーが入るという誤解 

5.2.2 騒音現象での例 

(48)乱流渦が音源そのものという誤解 

(49)インテンシティベクトルの逆方向を音源位置と誤解する 

(50)音源の寄与度を消去法で推定することによる誤差 
(51)反射波の影響を考慮しない騒音測定と対策 

(52)圧力型と自由音場型マイクの使い分けミス 

(53)計測波形が同一時間の音源波形と同一という錯覚 

(54)低周波音をヘッドホンで評価 

(55)車内騒音測定での気温や荷物の影響無視 
(56)聞いているのは音の周波数という誤解

5.2.3 振動現象での例 

(57)軸振動が周波数を変えずに支持体に伝わるという誤解 

(58)音速がエネルギー伝達速度であるという誤解 

(59)複素モード振動への実モード解析の誤用 

(60)材料の減衰による制振効果を試験片で評価できるという誤解 
(61)乗り心地は車体振動の実効値で評価できるという誤解 

(62)転がり接触を考慮しないギアやチェインの計測と解析 

5.2.4 振動と騒音の連成現象の例 

(63)振動⇔音への不可逆性 

(64)表面インテンシティから放射音響パワーを推定 

5.3 予測計算編 

5.3.1 騒音現象での例

(65)‌点音源付近での音響インテンシティ計算に,平面波の計算式を誤用 

5.3.2 振動現象での例 

(66)振動は1自由度で表現できるという誤解 

(67)梁の曲げに変位だけ考え傾きを考えない 

(68)マスばね振動系の高次モードへのばねの直列並列の混同 

(69)板の最低次振動モードがお椀型曲げという固定概念 

(70)絶対座標,併進座標,回転座標の使用間違い 



付録 第5章の補足説明

はじめに



 著者は東大航空学科3年生のときに「航空機構造振動論」という授業で小林繁夫助教授(当時)から振動学を最初に学びました。この航空宇宙開発では、振動騒音問題で発生する事故の原因を優秀な技術者が真摯に究明し、新技術を開発してきました。振動モード解析、統計的エネルギー解析、ランダム振動解析や相関技術による実験解析、有限要素解析など、今日私たちが使っている振動騒音技術の殆どが米国での航空宇宙分野で開発されたものです。他方、日本の自動車産業は、解析理論ではなく応用に注力し、品質を向上してきたと思います。しかし、基本となる理論を理解しないために、著者は技術的なミスを数多くおかしてきました。

 そこで著者は、この経験を通じて学んだ知識を、できるだけ体系的にまとめ、後輩の方々に利用していただくため、この本を執筆しました。この本が他の振動騒音の書物と大きく異なるところは、定石外れの誤解の事例集です。そしてそれに関連する代表的な自動車の振動騒音現象や基本理論の説明を加えました。

 この本を書くまでに支えていただいた下記の諸氏に、紙面を借りて感謝を申し上げます。日産自動車総合研究所時代の先輩諸兄の(故)三浦登、林義正、木村彰良、藤原靖彦の諸氏、同僚後輩の諸氏、留学先MIT教授のRichard H. Lyon、 Alan Oppenheim、 Steven Crandall氏、著者の学位取得指導をしていただいた長松昭男先生、背戸一登先生、神奈川工科大学石濱研究室の学生諸君、秘書の中村順子氏、日刊工業新聞社の阿部正章氏。本当にありがとうございました。

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