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技術大全シリーズ
蒸留技術大全

定価(税込)  3,888円

著者
サイズ A5判
ページ数 388頁
ISBNコード 978-4-526-07782-1
コード C3043
発行月 2017年12月
ジャンル 化学

内容

原料と製品を精製する蒸留は化学産業には必要不可欠なものである。本書は技術者向けに蒸留技術全般を解説した、設計・運転のための実務書である。この1冊に蒸留技術に必要な技術体系を網羅する。

大江修造  著者プロフィール

(おおえ しゅうぞう)
昭和37年東京理科大学卒業後ただちに、石川島播磨重工業㈱(現IHI)入社。気液平衡の研究に従事。翌年、東京都立大学大学院の平田光穂教授の研究室に国内留学。昭和50年石川島播磨重工業㈱技術研究所・課長。この間、新機種開発提案募集で300件の応募から首位に選ばれて開発に従事。昭和48年米国蒸留研究機関(FRI)にて実証試験に従事、同年1号機の受注。昭和57年東海大学教授を経て、平成3年東京理科大学教授(東京都立大学大学院工学博士)。一般社団法人日本開発工学会会長(代表理事)。米国蒸留研究機関(FRI)顧問。
●主要表彰
米国化学工学会(AIChE)Honoree、平成20年10月(蒸留部会 大江セッションの開催)化学工学会 国際功労賞(日米における蒸留分野の技術研究開発の国際協力に対する貢献/平成23年度)
文部科学大臣 科学技術賞(インターネット技術による化学技術の理解増進/平成17年度)
●主要著書
「トコトンやさしい蒸留の本」(日刊工業新聞社、2015年)
「絵とき続「蒸留技術」基礎のきそ―演習編―」(日刊工業新聞社、2013年)
「絵とき「蒸留技術」基礎のきそ」(日刊工業新聞社、2008年)
「コンピュータ利用工学」(日刊工業新聞社、1994年)
「設計者のための物性定数推算法」(日刊工業新聞社、1985年)
「蒸留工学―実験室からプラント規模まで―」(講談社、1990年)
「パソコンによるケミカル・エンジニアリング・デザイン」(講談社、1985年)

目次

目  次

はじめに

第1章 序論
1.1 蒸留塔の計画から運転まで

第2章 蒸留技術のための物性推算法
2.1 物性推算法
2.2 蒸気圧
2.3 気液平衡

第3章 蒸留塔の理論段数
3.1 フラッシュ蒸留
3.2 水蒸気蒸留
3.3 蒸留の原理
3.4 マッケーブ・シール法
3.5 多成分系の蒸留
3.6 トリダイアゴナル・マトリックス法

第4章 回分蒸留
4.1 回分単蒸留
4.2 回分蒸留
4.3 回分蒸留における最小理論段数
4.4 多成分系
4.5 ホールドアップ量を考慮した多成分系回分蒸留計算

第5章 蒸留プロセスの設計法
5.1 共沸蒸留法
5.2 抽出蒸留法
5.3 塩効果蒸留法

第6章 蒸留塔の設計
6.1 蒸留の構造
6.2 充填塔
6.3 蒸留塔の選定基準
6.4 蒸留塔の計装制御
6.5 製作・設置上の留意点

第7章 蒸留塔の省エネルギー
7.1 蒸気再圧縮法 Vapor recompression(VRC)
7.2 分割型蒸留塔 Dividing Wall Column(DWC)
7.3 内部熱交換型蒸留塔 Heat Integrated Distillation Column(HIDiC)

第8章 蒸留塔の故障と診断技術―トラブル・シューティング―
8.1 トラブル対処法―トラブル・シューティング―
8.2 偏流による効率低下
8.3 ガンマスキャン
8.4 CATスキャン
8.5 振動による破損
8.6 サーモグラフィーによる診断

第9章 蒸留プロセスおよび蒸留塔の開発
9.1 蒸留プロセスの開発
9.2 水力学的性能試験
9.3 実用化試験 パイロットプラント
9.4 アングルトレイの開発
9.5 蒸留塔の受注

第10章 蒸留塔の設計に必要なデータ
10.1 物性データ
10.2 棚段塔の効率
10.3 充填塔のHETP

付表
参考文献
索引


はじめに

はじめに

 我々はモノに囲まれて生活している。モノは化学物質である。化学物質の原料は、多くの場合、蒸留技術によって、分離・精製される。しかし、化学原料を直接、目にすることは、ほとんどない。したがって、蒸留技術に直接ふれることも、ほとんどない。しかし、化学物質の製造には必須の技術である。
 日本経済の高度成長期は、昭和40~50年代であったといえよう。いまや、安定成長期に入っており、国内で化学プラント、したがって、蒸留プラントが新設されることは、ほとんどない。高度成長期に建設されたプラントに最新技術を融合させながら、運転されている。
 このため、蒸留技術に対する関心も、かつては設計などの理論面や新装置の開発にあったが、昨今は、運転技術の改善、例えば能力増強や故障診断に関心が移っている。開発の主体は一部の大企業や専業メーカーに移り、大企業は手を引いている。しかし、これは国内の状況であって、一度、目を海外に転ずれば、かつての国内の高度成長期と変わらず、否、それ以上に、新製品に対する関心は高く、事実、毎年、新製品が生まれている。
 著者は、一貫して蒸留技術における研究開発に、55年間従事してきた。前半の19年間は石川島播磨重工業(現IHI)において、蒸留技術の基礎的な物性面、次いで新蒸留装置の研究開発に従事した。後半は大学において、蒸留技術の基礎である気液平衡および応用面の設計法の研究に従事している。
 基礎的な面、すなわち、気液平衡の分野で「塩効果」のメカニズムについての提案が、「大江モデル」として認められている。応用面では新製品の「アングル・トレイ」が、開発時において、従来の多孔板トレイに対して倍の能力を有することが評価された。
 この間に、新製品の実証試験を通じて、世界の蒸留研究のメッカともいえる米国の蒸留研究機関FRI(Fractionation Research Inc.)との交流関係がうまれ、日本におけるFRIの活動をバックアップしている。また、国の蒸留研究の国家プロジェクトである省エネルギー蒸留の新技術の開発について評価を担当した。以上の研究開発で得た知見と経験を踏まえて、本書を執筆した。
 本書は、化学企業に従事する技術者の方々に読んでいただきたい。昨今、大学の講義科目から化学工学が消滅したり、化学工学の講義があったとしても、蒸留技術が必ずしも教授されるとは限らない。全く、蒸留技術のことを知らずに、企業の業務に従事せざるを得ない状況下にある。
 本書は、蒸留塔の設計技術に触れているので、実際の蒸留塔の設計や運転に従事する方にも参考となろう。実際の設計ともなれば、細部に至る設計指針も完備されているはずである。しかし、設計のプロセスなど基本的な考え方を本書で習得していただきたい。
 蒸留装置の運転でトラブルが発生した時、原因究明に困るが、原点に立って、理論を踏まえて、目前の現象を解析し、トラブルを解消する手立てとして、本書を活用していただければ、幸甚である。
 大学院の学生や研究職にある方も本書により、蒸留塔の設計の概要を知ることにより、研究の立ち位置を知ることが出来よう。
 蒸留技術を詳述するとなれば、膨大なページ数を必要とするが、「技術大全」としては、蒸留技術の全範囲をカバーすべきとして本書を執筆した。蒸留塔設計の基礎である気液平衡から設計方法まで、さらに、故障診断およびトラブル解消法、新装置の開発手法を述べた。
 米国の蒸留研究機関FRIが保有する試験データの利用を快諾していただいた事に、この場を借りて、同機関に謝意を表します。また、かつて勤務したIHIに、お世話になりましたので謝意を表します。
 最後に、本書を執筆するにあたり、適切な助言をいただいた日刊工業新聞社出版局書籍編集部の阿部正章氏に深謝申し上げます。
2017年12月
大江修造

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