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大人が読みたいニュートンの話
万有引力の法則の「完成」はリンゴが落ちて22年後だった!?

定価(税込)  1,296円

著者
サイズ 四六判
ページ数 136頁
ISBNコード 978-4-526-07751-7
コード C3034
発行月 2017年09月
ジャンル ビジネス

内容

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物理法則を中心に多くの功績を残したニュートン。その後は造幣局長官や国会議員を務め、女王から称号を授かるなど成功を収める。一度決めたら突き進む一途ぶりは、錬金術や魔術などに傾倒する要因にもなった。そんな偉大な科学者ニュートンの足跡を軽快に綴る。

石川 憲二  著者プロフィール

(いしかわ けんじ)
石川 憲二(いしかわ けんじ)
ジャーナリスト、作家、編集者
1958年東京生まれ。東京理科大学理学部卒業。週刊誌記者を経てフリーランスのライター&編集者に。書籍や雑誌記事の制作および小説の執筆を行っているほか、30年以上にわたって企業や研究機関を取材し、技術やビジネスに関する解説記事を書き続けている。主な著書に『宇宙エレベーター 宇宙旅行を可能にする新技術』『マンガでわかる宇宙』『マンガでわかる量子力学』(オーム社)、『大人が読みたいエジソンの話 発明王にはネタ本があった!?』『大人が読みたいアインシュタインの話 エジソンの発明と相対性理論の意外な関係』(日刊工業新聞社)などがある。

目次

プロローグ
ニュートンがリンゴで発見〇〇〇〇

第1章 ニュートンは松尾芭蕉と同時代の人 
■ 生まれたのは山奥の寒村ではなく街道に面した農村
■ 粗野な父と若く教養のある母
■ 母が家を出て行ってしまった事情とは
■ 母親代わりだった祖母への不思議な態度
■ 「中学校」へ進めたのは強運が重なったから
■ 成績がビリからトップになった理由
■ ケンブリッジ大学という新天地への旅立ち
コラム ニュートンにもネタ本があった?

第2章 「万有引力の法則」発見に伴うエトセトラ 
■ 「リンゴで発見」は本当か嘘か?
■ 「リンゴ」から「万有引力の法則」までの22年間
■ 虹が7色であることを決めたのはニュートン
■ ニュートン式望遠鏡が示す天才の証明
■ ロバート・フックはライバルではない
コラム ニュートン力学を初めて日本に紹介した志筑忠雄

特別講座 重力について人類はどう考えてきたか? 
■ ゴール前のニュートンにいいパスがやってきた
■ 3分でわかった気になる一般相対性理論(の一部)

第3章 近代科学の父か、最後の魔術師か? 
■ 禁止されていた錬金術研究に没頭
■ 廃人同然からの「ニュートン復活!」
コラム 日本にもあるニュートンの「遺物」

エピローグ
ニュートンに学ぶ人生設計術 

参考図書/参考資料

はじめに

プロローグ

ニュートンがリンゴで発見○○○○


 ももいろクローバーZのリーダー百田夏菜子さんは、テレビ番組の中でこんな穴埋め問題を出されたとき、考え抜いた末に「ビタミンB」と力強く答えた。彼女はいろいろな意味で大天才なので、その後も「グラニュー糖」「オリゴ糖」と珍解答を続け、ついには司会者が「もう正解でいいです」と匙を投げたところでスタジオは爆笑に包まれるのだが、これら一連のやりとりが、なぜ、おもしろく、そしてギャグとして成立しているのかといえば、それは、ほとんどの人が「正解」を知っているからである。
 そう、アイザック・ニュートンがリンゴの実の落下を見て万有引力(正確には万有引力の法則)を発見したというエピソードはあまりに有名だ。彼の人生を描いた本では必ず紹介されているどころか、冒頭の「つかみ」に使われているケースも少なくない。そんなことから、子供時代に偉人伝を読む機会の多い日本人にとっては、「エジソンは偉い人」というのと同じくらい共通した歴史認識になっているように思う。
 そのことに改めて気づかせてくれたのは、桃太郎、浦島太郎、金太郎の「三太郎」が登場する携帯電話ブランドau(KDDI株式会社)のCMだった。「浦ちゃんの法則」篇と名付けられた作品は、こんなふうに始まる。
 囲炉裏を囲み、思い思いに過ごしている3人。浦島太郎だけが少し変で、手から手へとリンゴを落としながら何やら考え込んでいる様子。不思議に思った桃太郎が声を掛ける。
桃太郎「浦ちゃん、何やってるの?」
浦島太郎「あのさあ、リンゴが木から落ちたんだよね」
桃太郎「それって普通のことでしょ」
浦島太郎「いや、地面がリンゴを引っ張っているってことない?」
 すると、それまで本を読んでいて無関心だった金太郎が、いきなり大声をあげる。
金太郎「君! 学校行ってみないか。そこに答えがあるかもしれない」
 CMの目的はあくまで宣伝なので、この先は「学生にはお得な割引サービスがあります」といった告知につながっていくのだが、重要なのはそこに至る過程だ。
 もし、私たちの多くがニュートンのリンゴにまつわる話を知らなければ、このCMは成り立たない。なぜなら、意味がわからず、共感できないからだ。それでは、広告にとってもっとも大切な訴求効果が期待できないので、企画段階で没になっていただろう。
 ところが、現実にはCMは放映され、多くの視聴者に受け入れられた(「どうしてリンゴが落ちることと学校に行くことがつながるのですか?」といった苦情が殺到したとは聞かない)。なので、やはり日本人にとっては「知っていてあたりまえ」の話だったのである。
 
 考えてみれば、これはすごいことだと思う。
 このCMをちゃんと理解するには、「リンゴ↓引力」という流れを知っているだけでは不十分だ。万有引力の発見が、歴史上、非常に重要な出来事であり、それによって人類の知が大きく広がった……というところまでわかっていなければ、「リンゴの落下に疑問を感じた浦島太郎に学校へ通って知識への扉を開けるように勧める」という展開を楽しめないはずで、実は、けっこう奥深い内容になっている。そんなCMが、何の補足説明もなく、さらっとお茶の間に流れているところに、日本人の教養の高さを感じるのである。
 しかし、せっかくそこまでの知識があるのなら、できれば、その先まで考えを及ばせてみてほしい。
 ニュートンについて何人かと話をさせてもらったことがあるのだが、ほとんどの人はリンゴの実がボトッと地面に落ちたところで思考を停止してしまい、なかなかその先には進まない。このため、「リンゴの落下を見たことが、どうして万有引力の発見に結びついたのか?」といった本質的な部分がわかっていないのだ(あなたは説明できますか?)。
 これは大変にもったいない話だと思う。なぜなら、本当におもしろいのは、リンゴが落ちたあとのストーリーだからだ(要するに「リンゴ↓引力」の矢印のところ)。なので、本書では、まず、そこから説明していくことにする。
 なお、ニュートンのリンゴに関するエピソードは史実ではなく、あとからの創作だという説があり、それはそれで説得力があるのだが、このあたりの検討は後に回すとして、ここでは、とりあえず「あったもの」として話を進めていく。
 1665年の夏、ニュートンはウールスソープという村にある生家にいた。22歳になっていた彼は、ケンブリッジ大学を卒業後も学校に残って研究を続けていたのだが、このころ、もっとも恐れられていた伝染病であるペストが大流行したため大学は閉鎖され、仕方なく故郷に戻ってきていたのである。
 そんなある日、庭先で本を読むなりして過ごしていたニュートンの目の前でリンゴの実がひとつ落ちた。果樹園にいるのならともかく、そこにはたった1本の樹木しか植えられていなかったので、「そんな偶然あるか?」と突っ込みたくなるほどベストなタイミングだったわけだが、さらに幸運なことに「読書中だったのにたまたま視線をそっちに向けていた」という強運も重なり(笑)、リンゴの落下を、直接、観察することになる。
 そこで天才科学者は考えた……。
 「なぜ、物は下に落ちるのか?」
 この場合の「下」というのは地面の方向であり、たとえば北極と南極とでは逆の向きになる。ということは、落下という現象は地球が物を引き寄せている結果だと考えるのが自然だ。また、穴の中にも物は落ちていくので、引き寄せているのは地面ではなく、地球の中心部だと思われる。
 世の中には何もせずに空中に浮かんでいられる物体はないので(鳥だって飛ぶのをやめれば落ちてしまう)、この「地球中心部への引力」は万物に及んでいることがわかる。しかも、同じ物質であれば大きいほど強く働き、重く感じる。そこには何らかの法則がありそうだ。
 しかしそうなると、かなり大きな物体だと思われる月が地球に落ちてこないことはどう説明すればいいのか?
 月も地球と同じような天体である以上、その上ではやはり落下が起きるだろう。となると、月も物体を引き寄せている? いや、そうではない。地球も月もリンゴも、すべての物体はお互いを引き寄せる力をもっているのではないだろうか。そしてその大きさは質量や距離に依存する。
 それにもかかわらず月が地球に向かって落ちてこないのは、慣性により等速直線運動を続けているからで、それにより発生する遠心力と引力が釣り合っているから地球の周囲を公転し続ける。そう考えると、他の多くの天体の動きも合理的に説明できるはずだ。
 もしかすると、宇宙全体はこのような仕組み、つまり天体の運動と万有引力のバランスによって成り立っているのではないだろうか……。
 補足しておくと、このあたりの細かい思考の流れは、あくまで筆者の想像によるものだ。客観的な記録も残っていない350年近く前の出来事を正確に記述することはできないので、科学に詳しくない人でもわかりやすいようにストーリーを組み立ててみた。多少は正確さに欠けるかもしれないが、大筋ではまちがっていないと思うので、ここからニュートンへの理解を深めていっていただければ幸いだ。
 とにかく、リンゴ(か他の何か?)の落下を見ただけで、大宇宙にまで発想を膨らませていけるところが、ニュートンという人物のすごさである。
 評価の基準にもよるが、「歴史上、もっとも偉大な科学者は誰か?」という質問への答として、ニュートンの名前を挙げる識者は多い。その理由は、物理学だけでなく数学、天文学、さらには化学や自然哲学などの幅広い学術分野で多大な業績を残したからだ。さらに反射式望遠鏡などの道具の開発・製作でも実績があり、技術者としても高いレベルにいたことがわかる。
 ライバルとなるのは古代ギリシャのアルキメデスと相対性理論のアインシュタインあたりだろうが、アルキメデスは古すぎて伝えられている逸話がどこまで真実かわからないし(しかも、けっこう非科学的)、アインシュタインは物理学の狭い分野で一点突破型の活躍をしただけの人なので、総合成績ではとても及ばない。
 電磁気学などを中心に19世紀後半から始まる新しい物理学研究のムーブメントは、200年近くにわたって「これ以上の進歩はない」と信奉されてきたニュートンの力学がけっして万能ではないことを証明した。特に、20世紀になって登場した相対性理論と量子力学は物理学に大革命をもたらしたのだが、そういった歴史の塗り替えがあったからといって、ニュートンの価値はまったく下がってはいない。なぜなら、これらの新しい理論も彼の研究成果を下敷きにしたものであり、ニュートンがいなければ生まれなかったからだ。そう考えていくと、「近代科学の父」という称号は、やはり彼に与えられるべきなのである。
 ……と「わかったふう」に語ってきたものの、実は現段階で筆者はニュートンのどういうところが偉大なのか、完全に把握しているわけではない。万有引力の法則を発見するまでのストーリーは知っていても、それ以外の功績については、そんなに詳しいわけではないからだ。
 したがって、ここからはさまざまな資料を調べ、読者と同じ目線でアイザック・ニュートンという偉人の「すごさ」を解明していきたい。目標は、巻末のエピローグで「結局、ニュートンとはこういう人だ」とかっこいい結論を出すことだ。それを目指して、がんばっていくので、最後までおつきあいいただければ幸いである。
*ももいろクローバーZ
 「ももクロ」としても知られる5人組の女性アイドルグループ。筆者は雑誌の仕事などを通して30年以上、日本のエンターテイメントを追っているが、そんな「プロの目」で見ても彼女たちは群を抜いていると思う。なんといってもすごいのはメンバー全員がそれぞれの持ち場で活躍している点で(普通のグループやバンドでは半数がお金を稼げればいいほうだ)、しかもそれに必要な才能は努力で開花させたといった成功ストーリーも含め、芸能史に残る奇跡だと考えている。
*「浦ちゃんの法則」篇
 以下のサイトにCM動画へのリンクが貼ってあるので、気になる人はどうぞ(CM↓もっと見る)。
 https://www.au.com/pr/cm/3taro/
*CMは放映され
 大きなお金が動くテレビCMだけに、企画段階でニュートンに関する認知度調査ぐらいはしていた可能性が高い。その結果をもとに、「リンゴから万有引力へという流れは中高生より上であれば8割以上は知っているので大丈夫です」とクライアントを説得したのではないだろうか(多様な関係者が関わるプロジェクトで企画を通す最大の武器は数字である)。
*大宇宙にまで発想を膨らませていける
 一応、誤解がないように補足しておくと、「万有引力の法則」の発見につながる一連の発想は、リンゴの落下を見た直後にすべて完結したわけではない。後述するように、最初のヒントをもとに何年間も思考実験を続け、数十年後にようやく理論が完成したのであって、「科学史を塗り替える大発見」とは本来そういうものだ(思いつきだけでは歴史は動かせない)。

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