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実践 エンジニアリング・チェーン・マネジメント
-IoTで設計開発革新-

定価(税込)  2,592円

著者
サイズ A5判
ページ数 212頁
ISBNコード 978-4-526-07736-4
コード C3034
発行月 2017年08月
ジャンル 経営

内容

SCM(サプライチェーン・マネジメント)を最大限機能させるため、設計・開発部門を効率化するエンジニアリング・チェーン・マネジメント・システムを整備し、「売れる製品の図面を、最少資源で、最短で」アウトプットするシステムを構築する方法を唱える。

日野三十四  著者プロフィール

(ひの さとし)
モノづくり経営研究所イマジン所長
マツダに30年以上勤務し、エンジン開発、開発システム整備、技術情報管理や技術標準化を推進後、2000年に経営コンサルタントとして独立。韓国の世界的電機メーカーを皮切りに、国内最大手の重工業メーカー、電機メーカー、産業機械メーカー、電力システムメーカーなどに対し、モジュラーデザイン(MD)のコンサルティングを行ってきた。2004年に広島大学大学院教授に就任、産学連携活動を通じてMDを普及。2008年に同大学退職、経営コンサルティング業を再開。日本アイ・ビー・エムなどのコンサルティング各社の顧問を歴任。2011年、MDをさらに普及させるべく、コンサルティング会社を中心とした「エンジニアリング・チェーン・マネジメント/モジュラーデザイン研究会(旧 日本モジュラーデザイン研究会)」を設立。

目次

目 次


まえがき

序章 エンジニアリング・チェーン・マネジメント(ECM)とは
1.利益源追求の理論と利益率最大化の理論
2.日本の設計現場比較考
3.日本電機業界凋落の原因と勝機
4.IoT/インダストリー4.0の成否を決定するECM
5.トヨタ自動車のECM革新「TNGA」
6.設計開発領域に対する苦手意識の克服
7.ECMの着眼大局
8.着手小局の順番
9.エンジニアリングチェーンの現状把握
10.最大公約数と最小公倍数

第1章 設計根拠情報データベース
1.マーケティング情報データベース
1.1 マーケティング情報システム
1.2 顧客の声(VOC)データベース
1.3 製品ベンチマークデータベース
1.4 公的規格データベース
2.設計基準データベース
2.1 製品システム構成と製品ラインアップ表
2.2 標準機能ブロック図
2.3 標準レイアウト図
2.4 設計部品構成
2.5 設計情報管理システム
2.6 製品システム設計部品関係表

第2章 設計開発知識ベース
1.新商品/新技術開発手順
2.モジュラーデザインの適用
3.製品企画プロセス
3.1 製品企画手順
3.2 製品企画書
3.3 製品企画仕様データベース
4.設計手順書と設計自動化手順書の整備法
4.1 設計手順書とは
4.2 設計自動化手順書
4.3 設計解説書
4.4 設計自動化手順書の作成単位
5.試行錯誤設計から理論的設計へ
5.1 作図設計から理論的設計へ
5.2 What-if Analysis設計の設計自動化手順書
5.3 多目的設計探査による全体最適設計/トレードオフ克服法
6.製品全体設計/基本設計の手順
6.1 好適方式選定と設計部品選択
6.2 機能設計自動化手順書
6.3 人間工学設計自動化手順書
6.4 レイアウト設計自動化手順書
6.5 意匠設計手順書
7. 見積設計の手順
7.1 見積依頼案件登録システム
7.2 見積依頼案件データベース
7.3 見積設計指示システム
7.4 仕様見積設計自動化手順
7.5 原価/納期見積手順
7.6 見積仕様書発行システム
8.エレキシステム設計手順
8.1 回路ブロック図
8.2 エレキプラットフォームの標準化と製品化
8.3 エレキ部品のモジュール化と設計手順
8.4 コモン・エレキシステム開発手順
8.5 回路図設計自動化手順
9.組込みソフトウェア設計手順
9.1 組込みソフトウェアのドメイン・エンジニアリング手順
9.2 組込みソフトウェアのアプリケーション・エンジニアリング手順
10.オーダーエントリシステム/コンフィギュレータ
10.1 オーダーエントリシステム
10.2 コンフィギュレータ

第3章 ビジネス情報と製品仕様のデータベース
1.データディクショナリ/ディレクトリシステム
2.ビジネス情報データベース
3.製品仕様データベース
4.データ自動授受システム

第4章 設計検証システム
1.Vモデル
2.品質検証体系図
3.統計的手法による因果則の定式化
3.1 特性要因図と実験計画法による因果則の定式化
3.2 日常的試験結果の多変量解析による因果則の定式化
4.開発段階での品質問題ゼロシステム
5.不具合防止の手段
5.1 社内試験法の事前確立(未然防止)
5.2 DRBFM(未然防止)
5.3 デザインレビュー(未然防止)

5.4 是正措置/予防措置システム(再発防止)
5.5 設計自動化手順書検証システム(再発防止)
6.不具合コード表
7.品質情報一元管理データベース

第5章 原価企画と原価維持
1.原価企画と原価維持論
1.1 原価企画管理体系図
1.2 配分原価の考え方
1.3 目標原価の再配分
1.4 原価維持
1.5 技術標準原価テーブル
1.6 量産後の原価構造の推移と原価改善
2.技術コストテーブル
3.製品別経営収支表
4.品質とコストの同時検討システム

第6章 設計文書編集システム

第7章 ECM/SCM連携システム
1. 生産準備プロセス
2.ECM/SCM連携システムの全体像
3.BOS/BOM連携システム確立とSCMへの展開
4.生産部品構成の標準化
5.IoTとECMとPLM/PDM

第8章 ECM事例
1.プラスチック原料混合機メーカーによる取り組み
2.天井クレーンメーカーによる取り組み
3.水平循環方式地下駐車装置メーカーによる取り組み
4.成功につながる3つの要因

あとがき
参考文献
索引

はじめに

本書は、製造業の経営を革新する
標準化とシステム化の本である


標準とは会社の行くべき先を示した羅針盤である
標準を確立して、改訂し続ける会社は氷山のごとし
標準を持たざる会社は発泡スチロールのごとし


標準とは先人が跳んだ棒高跳びのバーである
バーが見えるから、後輩はバーを飛び越えようとする
バーがなければ、低いところをぴょんぴょん跳ぶだけ



まえがき


戦後の日本工業の発展を振り返ると、1960年代に日本独自の全社的品質管理(TQC)が生まれたことだった。当時の低賃金と相まって「高品質で低価格」の日本製品が誕生し、1970年代から世界の製造業を席巻した。日本の台頭に大きな危機感を持った米国で1979年に『Japan as Number One:Lessons for America』が発刊され、続いて1981年に『Theory Z:How American Business Can Meet The Japanese Challenge』が発刊されてそれぞれベストセラーになった。
 それから欧米製造業による日本もうでが始まった。彼らは単に「見て帰って自社に応用する」だけでなく、日本の属人的なやり方をシステム化して社内に普及させた。サプライ・チェーン・マネジメントはトヨタ自動車が仕入れ先と一体経営する「系列」を理論化したものといわれている。このようにしてかれらは1980年代末には日本に追いつくレベルまで到達した。そして日本に追いつくだけではなく、日本を追い越すために日本の弱みであるデジタルイノベーションを開始した。日本がジャパンアズナンバーワンに浮かれて1990年にバブル経済崩壊を引き起こして以後、なかなか立ち直れない原因はここにある。
 本書は、再び実力で「ジャパンアズナンバーワン」を実現するための処方箋「IoTで設計開発を革新するエンジニアリング・チェーン・マネジメント(ECM:Engineering Chain Management)」を提供する。サプライ・チェーン・マネジメント(SCM)はおよそ30年前から世の中に展開されてその理論化も済んでいるが、成功したSCMは少ないといわれる。その理由は、上流のECMを整備しないままSCMを展開しているからだ。商品企画から図面発行までのシステム化と設計情報を生産部門へシームレスに展開するシステム「ECM」の確立こそがSCMを機能させる原動力であり、バリュー・チェーン全体として経営の生産性を上げ、利益を増やす。
 日本の名門企業といわれた大手電機メーカーや重工業メーカーで、近年、経営が傾くような赤字の計上、身売り、経営破たんの危機が起きている。いったい何がこのような名門企業の変調を引き起こしているのか。それぞれの理由は、マーケティング軽視の過剰設備投資、身の丈を超えた製品への進出による度重なる納期遅れ、没落企業のM&Aによる共倒れ、そして粉飾決算などがあるが、真の原因は、GE、シーメンス、アップル、サムスン電子などの世界の巨人との本格的なグローバル競争時代の到来だ。日本各社はそれに対して一獲千金を狙うような小手先の無理な手段で対処しようとしたことが、企業の命取りになりかねない事態を招いた。
 日本の国内総生産(GDP)は米国、中国に次いで世界第3位だが、国民1人当たりの国内総生産性になると経済協力開発機構(OECD)加盟国35か国中20位まで下がってしまい、米国のわずか62%しかない。製造現場の生産性については、日本は長らく他国を圧倒してきており負けていない。問題はホワイトカラー部門、特に製品の価値を決定し全社の生産性を左右する最上流の設計開発部門の生産性が低いことだ。筆者は20世紀末から内外の製造業の設計現場を見てきた。欧米やアジアの先進企業は20世紀末から21世紀初めにかけて設計開発プロセスの革新/ECM構築に取り組んで、設計現場を知識集約型の組織芸の世界にした。一方、日本企業の設計開発現場は、日本を代表する大手企業でも家内制手工業時代の労働集約型の属人芸/個人芸のままだ。そして各社の中・長期経営計画を見ても、筆者が知る限り設計開発プロセスを革新する動きがほとんどない(唯一トヨタ自動車を除いて)ことに大きな危機感を抱いている。日本企業はECM革新に取り組んで全社の生産性を高め、高利益利率の会社にすることが正道だ。
 筆者はトヨタ自動車の研究家でもあるが、日本企業は日本の優良企業「トヨタ自動車」からもっと学ばなければならない。トヨタは、到来した本格的なグローバル競争時代を勝ち残るために2010年からTNGA (Toyota New Global Architecture) 活動に取り組んでいる。その具体的な成果が出始めるのは2020年ごろであり、その間は投資ばかりがかさんで利益は出ない。それでも長期的に絶対に必要な活動と位置付けて取り組んでいる。実に息の長い活動を営々と続けているわけだが、近年は競合する自動車メーカーから次のような声が聞かれる。
 「本当は我々がチャレンジャーのはずなのに、業界最大手のトヨタさんが一番熱心に会社を変革しようとしている。ここまでやるのかと驚くことばかりだ。」
 TNGAとは研究、設計、開発、生産、サービスまで、クルマ造りに関するすべてを変革しようとする活動であることが次第に認識されてきたのだ。TNGAは、上流のECMを革新してその効果をトヨタ生産方式やサプライ・チェーンに反映し、ブルウイップ(牛追い鞭)のごとく後工程に行くほど効果を増幅させるバリュー・チェーン改革活動だ。その過程において、経営革新に王道なしとの考えで一獲千金/濡れ手で粟のような手段は決して考えず、地道に仕事を研究してシステム化する正道を歩んでいる。
 日本企業は、仕事の上流からやり方を改善し、ドミノ倒しで全社の経営革新を実現するアプローチをとらねばならない。本書はその支援をするために執筆した。新技術開発からアフターサービスまで、特に全社の生産性と利益を左右する源流の製品開発プロセスにスコープしてあるべき姿のECMを構築してシステム化するセオリーを展開した。世界のERP(Enterprise Resources Planning)/PLM(Product Lifecycle Management)のパッケージソフトはモノづくり領域を含めてほとんどを標準化しているが、唯一「設計開発プロセスはこうあるべし」とのソフトがない。だから本書の理論は世界初といっても過言ではないと思っている。
 前著『実践モジュラーデザイン(MD)』(日経BP社)は設計の方法の変革である。この10年ほど、MDを世に普及させる活動をしてきたが、その過程でわかったことは、世の中は設計の方法の変革もさることながら、本当に必要なことは「設計開発プロセスの変革」であることだった。そこで今回、あらためて、MDを構成要素の一つに位置付けたうえで設計開発プロセスの革新を目的とした本書を執筆することにした。
 現代はIoT(Internet of Things)で製造業がサービス業に変身する第4次産業革命の時代になり、IoTの成否が企業の勝敗を決するといわれている。しかしIoTは、そのシステム基盤を米ジェネラル・エレクトリック社や独シーメンス社がいち早く確立して世界のシステムを制圧し、後発の日本が進出する余地は彼らのシステムとの互換戦法かコバンザメ商法しかなく細々と生き残るしかないといわれている。そういう中で日本が独自性を発揮して勝ち残るにはどうしたらいいのだろうか。
 IoTはいまのところ商流革新/製造革新/SCM革新の域を出ていないのでその効果は設計が済んだ製品に限定されており、新しい設計が必要な商機に迅速に対応できるようにする動きがない。現代は3Dプリンタや知能ロボットなどの登場で図面からモノを造るまでの時間は劇的に短縮されようとしている。残る課題は商機に応じて図面を発行するまでの時間を劇的に短縮することだ。そこに切り込むIoTこそ最大にIoTを機能させる。そのために社内でモノづくりの上流のECMをシステム化して図面作成までの時間を短縮し、下流のSCMと情報連携して社内外系列間のバリュー・チェーン・システムを構築することが最後で絶対的な勝利の方程式だ。
 日本企業が設計開発プロセス革新/ECM化に取り組めない理由は、経営陣が「設計開発プロセスがよくわからない」の一言に尽きる。その結果経営者は、製造現場改善や事業構造転換に精を出し、バリュー・チェーンの源流であるECMの事業プロセス改革/革新に着手しない。
 技術系出身の経営者でも自己の経歴は限られた領域であり、製造業の血流だが比較的定型的な部品表システムさえ理解している人は少ない。それでは血流がどこかで目詰まりを起こしているかどうかの診断や組織の隅々まで部品情報をさらさら流して組織が活性的に活動できるようにする戦略を描くことができない。
 そこで本書では、序章で日本企業にとってECM革新の重要性とその概念を説明するとともに、事務系でも技術系でも経営者が設計開発領域を苦手としないでECM革新にスムーズに取り組むための処方箋を記す。第1章以降は、ECMを構築するための事例付きテンプレートを多用したマニュアルに徹し、経営者がざっと眺めれば全体像が良くわかるとともに、社員はテンプレートに自社の製品の情報を流し込めば設計開発プロセス革新/ECM化ができるようにしている。本書を読まれた管理者、社員の方は、経営者に本書のまえがきと序章だけでもいいから読んでいただくよう勧めてほしい。
 
 本書は、モノづくり経営研究所「イマジン」所長である日野三十四が全般を執筆したが、執筆に当たって日野が主催する「エンジニアリング・チェーン・マネジメント/モジュラーデザイン研究会」メンバー諸氏に、本文や図表/テンプレートのドラフトを作成いただき、日野が最終的に仕上げたことを記す。

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