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「酸素が見える!」楽しい理科授業
酸素センサ活用教本

定価(税込)  1,944円

著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-07673-2
コード C3034
発行月 2017年06月
ジャンル その他 ビジネス 化学

内容

空気亜鉛電池を使った軽量・小型で安全な酸素センサーにより、酸素濃度を即座に測ることができる手法と原理をやさしく手解きした本邦初の解説書(学習指導要領で認定の方向)。ものの燃焼や生物の呼吸の様子など、実験(授業)にすぐ使えるよう適用例も多数紹介している。

高橋 三男  著者プロフィール

(たかはし みつお)
独立行政法人国立高等専門学校機構 東京工業高等専門学校物質工学科教授として未来の科学技術者育成に努める。専門は物理化学で、液晶の分子間力研究。最近ではベニバナインゲンの根の灌水時における空隙組織形成の研究を実施する一方で、社会貢献として手づくりによる酸素センサを自作し、視覚障碍者による理科教育支援のための教材開発にも着手している。

著者略歴
1955年、北海道生まれ
1987年、東京理科大学大学院理学研究科博士課程修了、理学博士
現在:東京工業高等専門学校物質工学科教授
東京農工大学工学部電気電子工学科非常勤講師、東京理科大学理学部化学科非常勤講師、東京理科大学理学専攻科化学専攻非常勤講師など歴任
中学校・高等学校の非常勤教育歴:都立町田工業高等学校非常勤講師、京北高等学校非常勤講師、郁文館高等学校非常勤講師、東京都江東区辰巳中学校非常勤講師、中央大学付属高等学校非常勤講師、芝高等学校非常勤講師など歴任
専門:物理化学、科学教育、理科教育
著書:「新編高専の化学」「新編 高専の化学 第2版」「高専の化学問題集」「例題で学ぶ基礎化学」(森北出版:共著)。このほか編集として、「基礎からわかる分析化学」「基礎からわかる機器分析」「基礎からわかる生物化学」「基礎からわかる電気化学(第2版) 」(物質工学入門シリーズ) (森北出版)がある。

日本化学会・「化学と教育」誌 編集委員
 ①「食品の品質と酸素」(ヘッドライン 企画担当)(2005)
 ②「新世紀型理数科系教育の展開研究」(ヘッドライン 企画担当)(2006)
 ③「新世紀型理数科系教育の展開研究Ⅱ」(ヘッドライン 企画担当)(2006)
 ④「化学史研究の現在と化学教育」(ヘッドライン 企画担当)(2007)
 ⑤「生体内小分子の生理活性とセンシング」(ヘッドライン 企画担当)(2007)

空気亜鉛電池を使った酸素センサの基礎研究とそのセンサを用いた教材の開発に当たり、日本学術振興会科学研究費 基盤研究C(代表高橋三男 課題番号24501117)、および基盤研究C(代表高橋三男 課題番号15K01001)の補助を受けており、ここに謝意を表す。また国内・国際学会での研究成果発表において、日本学術振興会科学研究費 基盤研究B(代表松原静郎 課題番号23300292)、および基盤研究B(代表松原静郎 課題番号26282040)の補助を一部受けており、ここに謝意を表す。

執筆協力(50音順)
飯田寛志 (静岡県総合教育センター)
後藤顕一 (東洋大学食環境科学部)
薗部幸枝 (お茶の水女子大学附属中学校)
中山慎也 (出雲市教育委員会出雲科学館)
成田一之慎(北海道立教育研究所附属理科教育センター)

目次

目次

はじめに  
推薦のことば  

第1章 酸素センサはこんなに優れもの
1 空気亜鉛電池式酸素センサはなぜ生まれた?  
手軽で繰り返し使えるものを目指して
2いつでもリアルタイムで測定できる  
酸素濃度の推移が連続的にわかる!
3 初期・実験コストがとても安い  
値段を気にせずどんどん測れる気安さが売り
4 消耗品が少ない  
電池交換だけの手間いらずで扱いやすい
5 安全性が高い  
ケガや毒性の心配は無用
6 測定範囲が広い  
気体検知管の2倍はゆうに測れる

第2章 酸素センサの使い方はとても簡単
7 操作は簡単  
電池をセット後、しばらくしたら即計測
8 センサの校正は可変抵抗で行う  
酸素濃度を数値として直接読み取る仕掛け
9 エイジングは空気亜鉛電池で決まる  
電流がすぐ安定し、長持ちするのが理想
10 応答時間は外部抵抗で決まる  
小さいほど感度は高まる
11 電池はメーカーによって空気穴の数とサイズが違う  
酸素センサに適したものはどれか?
12 二酸化炭素と水に注意  
測定に影響を与える要素を取り除く

第3章 なぜ空気亜鉛電池が酸素センサになるの?
13 電圧源と電流源  
酸素濃度に比例した出力電流が流れることに着目
14 空気亜鉛電池式センサの基本回路  
酸素濃度を検知する固定抵抗と可変抵抗
15 外部抵抗が応答時間を制御する理由  
センサの感度を司る大事な役目
16 気圧は下がっても酸素濃度は変わらない  
空気亜鉛電池式酸素センサは酸素分圧を測っている
17 大気圧条件下での酸素濃度と酸素分圧  
高所では酸素分圧が変わる
18 空気亜鉛電池は酸素分圧を測定している  
ドルトンの法則から応用

第4章 空気亜鉛電池式酸素センサを使った理科実験
19 人間の呼吸  
呼吸代謝が高い人の呼気は酸素濃度が低い?
20 オクラの呼吸  
売り場に並ぶ緑黄色野菜は“死んでいる”のか?
21 きのこ(エリンギ)の内呼吸  
かなりの低酸素濃度下でも呼吸を続ける
22 使い捨てカイロで実験  
中身の鉄粉が微細で酸素とよく反応する
23 鉄粉カイロの酸化反応と発熱反応の仕組み  
酸化反応を促進しないとなかなか発熱しない
24 ロウソクの消炎実験  
密閉容器の中で炎が消えた理由を探る
25 トールビーカーを使った消炎実験  
酸素センサは複数箇所の同時測定にも好適
26 過酸化水素から酸素を取り出す  
酸素濃度の急上昇にも追従して測定できる

第5章 身近なところで酸素の働きを見てみよう
27 酸素には良い酸素と悪い酸素がある  
三重項酸素と一重項酸素を理解しよう
28 ビールのおいしさと酸素  
鮮度を長持ちさせる醸造法
29 清涼飲料水にビタミンCが入っている理由  
酸化を防げば品質低下を抑えらえる
30 牛乳の風味を保つ秘密  
酸素はおいしさの敵
31 賞味期限を延ばすマヨネーズの工夫  
植物油に含まれる酸素に着目してみた
32 製造ラインに空気を入れない仕掛け  
窒素を充填して酸素を追い出す
33 容器改良でおいしさが長持ち  
生鮮食品並みに劣化する醤油を守る
34 無酸素状態をつくる脱酸素剤  
酸素による食品の変質を防ぐ
35 超音波洗浄と酸素の役割  
気泡を連続破裂させて生じる衝撃波で汚れを落とす
36 ウルトラファインバブルの秘めた力  
知られざる機能を求めて気泡を極限まで小さくする

第6章 空気中の酸素濃度が高くても低くても危険
37 酸素濃度による人体への影響  
下限は18%、上限は条件次第
38 富士山とエベレストの酸素濃度・酸素分圧の違い  
体圧と外圧のバランスに注意しよう
39 がんは低酸素を好む  
多数の研究者が低酸素に着目してきた
40 がんは休眠する  
休眠がん細胞を探せ
41 マンホールで酸欠になる理由  
酸素も見えない、酸素欠乏空気も見えない
42 ピット内での酸素欠乏症  
雨水の滞留を見たら好気性菌の発生を疑え
43 バラストタンク船倉での注意点  
酸素が大量消費されている場所であることを認識
44 サイロ内の酸欠空気を吸って墜落  
階段上昇中に小窓から低酸素濃度の空気が噴出
45 LPガス地下配管のガス漏れ  
空気より重いため底部は酸素欠乏になる
46 入浴中のうたた寝は「気絶」?  
脳への血流減少で引き起こされる酸素不足
47 酸素が過剰になると有毒  
考えられない現象が現れる

第7章 酸素センサは簡単につくれる
48 空気亜鉛電池の原理をおさらいする  
多量の負極活物質を入れられ、高いエネルギー密度が得られる
49 空気亜鉛電池の反応を知る  
正極と負極で何が起きているか?
50 空気亜鉛電池の放電電流特性  
電流値の下がり方に注目しよう
51 空気亜鉛電池の選択が重要(その1)  
放電電流が長時間一定であるものを選ぼう
52 空気亜鉛電池の選択が重要(その2)  
こだわりたい4つの条件とは?
53 酸素センサの回路はこうだ  
固定抵抗の組み合わせを変えて高出力対応
54 データロガーを使った自動計測  
長いスパンの推移がまるごとわかる
55 放電特性と空気穴の関係  
穴数や穴径を変えて実測してみた

第8章 酸素が見える・わかる授業の進め方
56 「ヒトの呼吸」に学ぶ酸素の働き  
量の増減のみならず、その進み具合を実感できた!
57 「昆虫の呼吸」に学ぶ酸素の働き  
ムシも生きている、息もしている
58 「植物の呼吸」に学ぶ酸素の働き  
野菜は死んだら呼吸しない!?
59 光合成に学ぶ酸素の働き  
明るい場所と暗い場所でこんなに違う
60 思考力を育てる光合成の学習  
同じ条件下で複数の測定データを集めてみる
61 光合成について生徒は考えた  
日陰で酸素が増える理由を探る
62 教員研修で酸素センサをつくってみた  
細かい作業がしんどくなったベテランも何とかなる
63 酸素センサの使い勝手を広める  
児童・生徒に手軽さと楽しさを伝える

column
定量性が大事  
測定に必要な「大事な間」  
バイオセンサは酸素センサの兄貴分?  
意外と重要!? 酸素センサの湿気対策  
食品の保存  
酸素濃度が低いときの植物への影響  
酸素濃度を測定する前に必要な校正とは  
葉にも個性がある  

付録 酸素センサ教材一覧  
索引  

はじめに

はじめに


 本書は、小・中・高等学校の先生方に酸素に関わる自然現象に対して、空気亜鉛電池による酸素センサを活用してもらうために書いた本です。酸素は、私たちの身の回りに絶えず存在しているため、その存在の重要性やモノを燃やすという特性などについて知識として知っているつもりでも、意外にその本質を知らないことが多いものです。それは、酸素自体が無味無臭で、無色透明で目には見えない物質(気体)のため、日常生活でその存在について実感することがあまりないからだと言えます。
 そこで、小学校の理科実験から、酸素を検知するセンサで測定できれば、酸素を実感することができると考えました。小学校から高校まで幅広い領域で使うために、酸素センサを作成する際の仕様条件を決めることに注力しました。誰でも簡単に原理が理解でき、誰でも簡単にセンサを作成できて、誰でも簡単に安全に扱えることにこだわりました。さらには、誰もが簡単に実験の後処理や修理ができ、誰もが容易に入手でき、コンパクトで小さなサイズであること。そして、何より誰でも自由気ままに扱える丈夫な装置(ボディ)であることです。ここで「誰でも」というのは、先生方だけでなく、小学校から高校まで幅広い層の子どもたちが含まれています。条件に見合うようにさまざまな試行錯誤を繰り返した結果、最終的にたどり着いたのが空気亜鉛電池を使った酸素センサでした。
 本来、空気亜鉛電池は、ボタン電池として長時間さまざまな機器の電源として使えるように開発されたものです。酸素センサを用途として開発されたものではありません。ところが、空気亜鉛電池が持っている特性を調べていくと、酸素センサとしての機能も兼ね備えていることがわかりました。ただこうした用途の場合、多くの電流が流れるため、電池の寿命が極端に短くなるのです。その原理を理解してもらうことが、本書を書いた理由の1つです。身近に入手できる空気亜鉛電池でも、工夫によっては操作が簡単で、安全性が高く、安価で、実験の後処理も簡単な理科実験に適した酸素センサに変身することができる、という例を伝えたかったのです。
 本書は大きく分けて、酸素センサの原理などに関する「基礎」(第1章~第3章)と、身の回りの酸素に関わる事象の「応用」(第4章~第6章)、教員が酸素センサを活用する「実践」(第7章~第8章)、という括りになっています。
 酸素センサに馴染みがない方は、酸素センサを使って授業を進める様子を紹介した第8章から読み始めると、イメージがつみやすいかもしれません。同章には、教員研修会などでの実施例も紹介していますのでご参考いただけます。また、センサを実際に作成することをご希望の方は、第7章をご覧いただければ、酸素センサの回路や空気亜鉛電池の特性などを載せています。
 第1章では空気亜鉛電池による酸素センサの優れた点、第2章では酸素センサの特性や使い方、第3章では空気亜鉛電池が酸素センサになる理由、そして第4章では学習指導要領に準じた実験などについて触れました。また第5章では、食品を中心とする日常生活における酸素との関わりについて、第6章では酸素欠乏による人体への影響などについて解説しています。
 本書は、酸素センサを扱う先生方のお役に立つことを願っています。さらに、多くの子どもたちが酸素センサを使って実験を行い、自分の酸素センサを持って自由気ままな実験が行われることを望んでいます。

 本書の執筆に際して、多くの先生方にご助言とご指導を承りました。特に桐蔭横浜大学の松原静郎教授には、研究開発や成果発表に科学研究費の補助をいただきましたのでお礼申し上げます。また、酸素センサが教材として製品化されるまでご尽力いただきました東洋大学の後藤顕一教授に感謝申し上げます。このほか、空気亜鉛電池による酸素センサ(髙橋式酸素センサ)を使って評価をいただいた多くの先生方へ、ご協力の感謝とお礼をここに申し上げます。最後に、執筆の機会を与えていただいた日刊工業新聞社出版局書籍編集部の矢島俊克氏をはじめ、関係の方々に厚くお礼申し上げます。

2017年6月
髙橋 三男


この書を
小・中・高等学校の
先生方に推薦いたします

 本書の著者であり、髙橋式酸素センサの開発者である髙橋三男先生は、以前より研究課題の1つとして、草の根の呼吸や昆虫の呼吸などについて調査研究を進めていらっしゃいました。草や昆虫も生物なので呼吸はしているはずですが、このような事象を調べるにはセンサを使っての測定が欠かせません。また、そのセンサは目的に合わせて新たに開発することが必要になります。髙橋先生は、酸素センサや二酸化炭素センサを種々開発・改良していく中で、ボタン電池を酸素センサとして活用する可能性を見出されました。
 本書は、髙橋式酸素センサを利用した単なる教材集ではありません。髙橋先生がこれまで研究を進められてきた過程が、この中に凝縮されています。そして、その原理や理論についても、専門性を裏付けとして非常にやさしく解説されています。専門用語も出てきますが、よく読んでいただくことで、科学を学修してきた方にはその内容を十分理解していただけると思います。また、何年にもわたる学校現場での実践を通した教材例や、生徒による研究例も掲載されています。必ずや読者の先生方のお役に立つものと思います。
 髙橋式酸素センサは3つの教材会社より市販されると聞いております。このことにより、こうした新しいセンサを小・中学校の理科や高等学校の化学・生物の分野で使うことが容易になります。さらに、新しい教材研究をする際のツール、あるいは科学部の生徒による研究のツールとして利用してください。
 すべての機器には限界がありますが、髙橋式酸素センサの限界に関しても本書に記載されています。先生方には、その限界を認識した上で、大いに活用され成果を上げていただくことが可能と信じております。

2017年5月
桐蔭横浜大学 松原 静郎

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